内田樹による内田樹 (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2017年12月5日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784167909888

みんなの感想まとめ

テーマは著者自身の著作や思想を振り返ることで、読者に新たな視点を提供することにあります。著者は、自らの経験を基にした哲学的な考察を展開し、特に「成熟」や「学習」を巡る問題について深く掘り下げています。...

感想・レビュー・書評

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  • 自著について著者自身によるブックガイド。
    というより、「あとがき」のようなもの。
    いろんな書評本はあるけれど、こういう形を取るのもアリだな、と思う。

    レヴィナス絡みの本はやや苦しい。
    レヴィナスがホロコーストを体験(経験)した結果、自分が存在することそのものに懐疑を抱き(という言葉は相応しいのか分からない)揺れたのだ、ということはとてもよく「分かる」。
    そして、レヴィナスのその揺れが内田樹を惹きつけたのだろうとも。

    「人がほんとうに哲学を必要とするのは、哲学書の行間に自分自身が今日生きる支えとなり、導きとなるようなたしかな叡智を求めるときです。テクストにすがりつくように知恵を求める者にだけテクストはその深い意味を開示する。」

    そしてその、「体験」による「言葉に出来ないもの」は村上春樹の「壁と卵」に繋がる。
    面白い。

    「ある時期の、ある種の出来事については言語化しないし、できない。そういう種類の『空虚』を抱え込んだまま、戦後日本の平和で凡庸な日常を生きていった男たちを多く数えたのが父の世代です。」

    また、自分的にメジャーすぎて手を出してこなかった『下流思考』の部分では、読まないとなーと思わされる。(うまいな……)

    「子どもたちの『学習能力』が『貨幣』であり、提供される教育コンテンツが『商品』であるとするなら、子どもたちが学校という市場で最優先するのは、最少の学習努力で教育商品を獲得することになります。いかに少ない学習努力で、価値ある商品(卒業証書や技術資格)を手に入れるか、それが子どもたちの最優先の関心事となります。」

    大人たちの憂いは、大人たち自身が作り出している。
    もっと言えば生徒たちへの憂いは、教師自身が作り出していると読める。

    全体を通して、「成熟」とは何かということを考えさせられる。
    機能的で「スマート」な生き方・社会は「成熟」とは言えない。
    では、私自身が「成熟」するためには、どのような思考生活が必要なのだろうか。
    うーん。。。

  • 内田樹自身による自分の著作物紹介。
    リストアップされた自著の解説、というよりそれを契機に思いついた話を展開するというウチダ先生のいつもの流れ。ともあれ1冊で何冊分ものウチダ節を聴けるお得なものとなっている。
    1.ためらいの倫理学
     著者のデビュー作。フェミニストなどの「正しさ」に欠けている「倫理」の考察。
    2.先生はえらい
     中高生向けに初めて書かれた師弟論、教育論。教師に勇気を与える内容。内容が大学入試に多く採用されることで有名。
    3.レヴィナス序説
     コリン・デイヴィスによるレヴィナスの解説書を和訳したもの。
     フランソワ・ポワリエ「暴力と聖性」は読みやすい。
     サロモン・マルカ「レヴィナスを読む」
     以上3翻訳はいずれも絶版。
    4.困難な自由
     レヴィナスによるユダヤ教についての試論。
     内田氏が最初に触れて虜になったレヴィナスの書。
    5.レヴィナスと愛の現象学
     内田氏によるレヴィナス解説書の第一弾で代表作。
    6.街場のアメリカ論、街場の中国論、日本辺境論
     最初の2冊は神戸女学院での講義録から作成
     最後の1冊は新書大賞2010受賞作品。
     →いずれも日本のプロの社会学者には出来ない視点からの考察
    7.昭和のエートス、おじさん的思考
     昭和的なものへのオマージュと、リベラルで真面目で勤勉な日本の正しいおじさんによる常識的な世相批判→ウチダファンが増大する契機となる
     大きな義理と小さな義理の対立→小さな義理を大切にする
    8.下流志向
     市場原理主義の教育への持ち込みにより、学びや労働の意義が損なわれている現状批判。

  • 著者がこれまでに刊行した著書や翻訳書をとりあげ、それについて著者自身があらためて振り返りながら解説をおこなっている本です。

    もともとは著者の大学での講義にもとづく内容で、毎回著者の本のいずれかをとりあげ、それについての発表と、著者のコメントがまとめられています。ただし著者は「文庫版のためのあとがき」で、「僕は授業で話しているうちに、「全くそんな話をする気のなかった話」に果てしなく逸脱するという悪癖がありまして」と語っているように、たんなる著書の内容の要約ではなく、あらためてそれぞれのテーマにかんする著者の考えが述べられており、本書にとりあげられている著書をすでに読んでいるという読者にとってもたのしめる内容なのではないかと思います。

    とりわけ著者自身が「若書き」と評している『ためらいの倫理学』については、「フェミニスト」と「ポストモダニスト」を「仮想敵」としており、また大学の紀要に発表された論文であったことから語り口にも相応の配慮がなされていたということから議論がはじまって、だれもが反対できない「正しさ」への疑義と著者自身の考える「言論の自由」の意味についての考察が展開されており、興味深く読みました。

  • 新聞の文章は記憶に残らない。


    教育崩壊の原因とは?
    なんで勉強しないといけないの?という子供からの疑問に、答えてしまったから。

  • つらつら読みこなせるようになった。
    反面、自分の辞書にはまだ載ってない語彙が沢山ある。
    使えないことが、ストレス!
    わかるけど、使えない。
    使ってみたいけど、使う相手がいない?
    この哲学を持って、実践することしかないから、当たり前か!

  • 『街場の教育論』を学生時代に読んだ当時は、こんな風に自分の考えている靄を整然と言葉にしてくれる人がいることが嬉しくて感激したものだったけど、最近になって、少なくとも今この人の文章に感じるこれは尊敬ではないのだなと思うようになったし、この人のこと、好きかといわれたら首肯しかねる。嫌いではないけれどね。

    彼の意見はあくまで彼の意見に過ぎなくて、それこそ「正しさではない」ことがわかるようになったのは私がそれなりに賢くなったからなので良いことだ。正しくないことがわかるというのはつまり見上げるような存在でもないということで、だから尊敬も憧れもしない。ただ、肌に馴染む言葉がそこにあるだけ。考え方の親和性がこれほどに近いひともいるだろうかと思う。そして親和性が高いだけの言説というのは、自分をこれ以上賢くしてくれない感じがするのだ。今すでに私の中にあるものを強化するだけで、目新しくない。たぶんそういうのはもっと知らないことを知ったあとにすることであるべき。

    そうはいっても自分の立ち位置を再確認するためにも、この本で紹介されていたものはいずれ必ず読むと決めた。

  • 2018.3.2
    レヴィナス関連の本以外は読んだことのある本で、言ってることは同じなのだが、当然まだわからないこともあり、何度も何度も同じ話しを繰り返して読むことにする。

  • 内田樹による内田樹
    内田本27冊目

    単なる自著の解説かと思いきや、まあそんなわけもなく、本当に読んでいて面白い内田本だった。やはり、なんといってもレヴィナスの話が一番面白い。人は、自分が最も面白いと思っている事を話すことが、最も面白い文章を書く上での条件なのだろう。
    レヴィナスの文献を読むとき、それを批評しようとするのではなく、弟子になり、体感を同期するということが良いと話している。その文章を読んでいても意味が解らないが、しかし、その文章を読める主体にならなければならないと感じさせる本、これが内田樹にとってのレヴィナスであったのであろう。最後に話す、下流志向の解説で、現代日本の境域の在り方と全くの真逆の学びの在り方がそこにある。読み手にたいして、成長を促す本、そう読み手に錯覚させる本、いや、その本を読んだとき誰でもよいので誰かが自分がこの文章で呼びかけられている人であると名乗り出るような本。これがレヴィナスの本ということ。レヴィナスの哲学(を内田樹が説明している文章)で共感したことは、おのれの無根拠性ということである。レヴィナスは、空前のホロコーストの中で、生き残った。それがなぜだかまったくわからない。自分がいま生きているということに対する根拠が全くない状況に置かれた。そして、レヴィナスはそれゆえにその後の人生において、ゆっくりと、そして早急に、自分がなぜ生き残ったのかという根拠づけとして、自らの哲学を、すすめる。究極の虐殺をされながら見殺しにしたユダヤの神に対してそれでも神を信じると、共同体の人々によびかけること。これがレヴィナスの仕事だった。神は人間を助けてはくれない、だからこそ、秩序は自ら作り出さなければならない。自らの存在の無根拠性に立った時に、自分の根拠を自ら作り出さねばならないという考え方は、サルトルの実存主義に似ていると自分は思い、非常に共感した(何かに似ているとしてその思想を同定してしまうのはそもそも弟子失格なのであるが)。レヴィナス関連の内田本は、正直なところ難しそうで敬遠していた節がある。ただ、やはりこの本をよんでそれらの本を読んでみたくなった。
    もう一つ面白かったのが、昭和のエートス、おじさん的思考の話。内田樹は、おじさんというときに自分の父を想像している。自分の父の個性を知りたいと思ったとき、その人のすっていた空気がどのようなものかを理解した上で、それを控除して考えなければならないという考え方にはとてもうなずけた。内田樹の本を読んでいて、毎度のごとく、自分の額縁に対する知識を意識して話す話し方に、とても感動するが、今回の話は、額縁を外して考えるということの具現でありとても面白かった。
    ここまでかいてみて全くまとまらない。とどのつまり、この文章を真に言語化して、人に説明できるレベルにないということであり、それがわかったというこの事実が、この本の他の何にもまして素晴らしいところなのだろう。

  • そりゃ、ただのブックレビューにはならないですよね。ここでチョイスされている作品達は、レヴィナス関連を除き、殆ど読んだものばかり。なので、各作品に通底する部分が揺るがないのは実感済み。で、毎回いちいち納得させられている訳だけど、本作は、そのひとつひとつを今の言葉で語りなおすというもの。”そういえばそんなこと書いてあったな”っていう、自分的再確認にもなるし、その上新たな知見にも触れられるという、かなりおいしい内容。それぞれの著作に立ち返るのが確実だけど、本作でサラッとおさらいってのもアリだと思う。そんな一冊でした。

  • 著者自身による自作の解説紹介という珍しい体裁の本、収録されている中で、半分くらい読んでいない物があるので、この本を取っ掛かりにして読んでみるの面白いかも

  • 初期の頃を含む自己書評。一貫していることがよくわかります。

  • 【多数の著作から選ばれたベストワークス】内田樹の思想を知り、辿る上で欠かせない著作十一作を著者自らが解説する。現在の日本と世界の問題を解くために重要となる一冊。

  • 本のジャンルをブックレビューとかではなく、エッセイにした理由はあとがきを読んでもらえればわかると思います。

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著者プロフィール

1950年東京都生まれ。神戸女学院大学名誉教授、神戸市で武道と哲学研究のための学塾凱風館を主催、合気道凱風館師範(合気道七段)。東京大学文学部仏文科卒、東京都立大学人文科学研究科博士課程中退。専門は20世紀フランス文学・哲学、武道論、教育論。 主著に『ためらいの倫理学』、『レヴィナスと愛の現象学』、『寝ながら学べる構造主義』、『先生はえらい』など。第六回小林秀雄賞(『私家版・ユダヤ文化論』)、2010年度新書大賞(『日本辺境論』)、第三回伊丹十三賞を受賞。近著に『日本型コミューン主義の擁護と顕彰──権藤成卿の人と思想』、『沈む祖国を救うには』、『知性について』など。

「2025年 『新版 映画の構造分析』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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