羊と鋼の森 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 4608
レビュー : 503
  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167910105

作品紹介・あらすじ

第13回本屋大賞、第4回ブランチブックアワード大賞2015、第13回キノベス!2016 第1位……伝説の三冠を達成!日本中の読者の心を震わせた小説、いよいよ文庫化!ゆされている。世界と調和している。それがどんなに素晴らしいことか。言葉で伝えきれないなら、音で表せるようになればいい。高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、調律の世界に魅せられた外村。ピアノを愛する姉妹や先輩、恩師との交流を通じて、成長していく青年の姿を、温かく静謐な筆致で綴った感動作。解説は『一瞬の風になれ』で本屋大賞を受賞した佐藤多佳子さん。豪華出演陣で映画完成!外村青年を山﨑賢人、憧れの調律師・板鳥を三浦友和、先輩調律師・柳を鈴木亮平、ピアニストの姉妹を上白石萌音、萌歌が演じています。6月8日公開。「才能があるから生きていくんじゃない。そんなもの、あったって、なくたって、生きていくんだ。あるのかないのかわからない、そんなものにふりまわされるのはごめんだ。もっと確かなものを、この手で探り当てていくしかない。(本文より)」

感想・レビュー・書評

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  • 森の匂い。夜になりかける時間の、森の匂い。それは黒いピアノの蓋の開いた森から流れでます。
    ぽつん、ぽつん、と単発だったピアノの音が、走って、からまって。葉っぱから木へ、木から森へ、音色になって、音楽になっていきます。
    わたしには、その音色は光のようで、粒や波となって降り注いでいるようにも思いました。
    それは外村くんが見つけた美しいもの。

    素直な子だなぁ。それが主人公の外村くんに対する第一印象でした。その印象は最後まで変わらないまま。そこへ、調律師としてひたむきに音と向き合ううちに、はじめの頃には見えなかった彼の一途な面や、意外と頑固なところなどが顔を出してきて、外村くんを形作っていったように思います。
    外村くんの先輩たちや、双子の姉妹、そして、調律師として向き合ってきたピアノやお客さんたち。彼ら彼女らと出会うことによって、今まで我を通したいと思ったことのない彼が“わがまま“とか”こども“とか言われて、やっと自分がどうしたいか、そんな対象となるものが出来たことに気づきます。外村くんは、どちらかといえば不器用な方だと思います。ひとつひとつ、気づいて、確認して、納得して、そして前に進む……そんな印象です。でも、それでいい、それがいいと思えるのです。
    こんなにも初めて出会った美しいものに真摯に向き合える彼の姿に、深く静謐な美しい森を感じました。

  • ピアノの演奏あるいはその奏でる音を、豊饒な文体で華麗に表現した小説に、恩田陸著『蜜蜂と遠雷』や中山七里の探偵にしてピアニストの岬洋介シリーズなどがあげられる。
    これらの小説がピアニストの視点で書かれているのに対し、本書はピアノ調律師といういわば裏方が、主人公となっている。
    高校の時に調律に魅せられた主人公が、調律師となって調律の森へ深く分け入って行く成長物語。
    彼が務める楽器店の諸先輩たちとの交流、訪問先での出来事等、全編静謐な筆致で描かれており、読者は調律師の世界の仕事小説としても読むことができる。
    原民喜の「明るく静かで澄んでなつかしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のように確かな文体」という文章が、「文体」を「音」に変えて調律の理想として再三語られている。
    その他いろいろと応用ができそうな美しい文章だ。

  • 文庫出版待ちをしていた1冊。
    待った甲斐がありました。数時間であっという間に読了。
    心穏やかに幸せな気持ちになれるお話しでした。

    日ごろから人の記憶には、視覚・聴覚・嗅覚がとても影響していると思っています。
    例えば懐かしい音楽を聴くとそれを聞いていた時の思い出が鮮明に蘇ったり、夕立の後の匂いを嗅ぐと小学生の頃の夏休みを思い出したり・・・。
    きっと誰にでも経験のあるこういう体験をもっとぎゅっと凝縮し全身・全心で感じているのが主人公の外村くんなんだと思います。

    「調律師」という職業は、ピアノに関わったことのない人にとってはきっと馴染みが薄いかと思いますが、私は10代のころ、妹とピアノを習っていました。そして今は姪っ子たちが習っています。家にも年に一度、調律師の方に来ていただいていますので、調律師という職業のことも、調律していただくことによってピアノの音が全く変わることも知っています。そしてやはり担当していただく方によって音が別物になることも。
    いつも同じ方に来ていただくようにしていますが、ある年、都合がつかずべつの方に来ていただいたときは、やはり音に違和感が出てしまって弾きずらかったことをよく覚えています。
    私でさえそんなことを感じるのですから、ピアニストの方にとって「調律」は相当重要なことなんだろうなって思います。

    いつも我が家に来ていただいていた調律師の方は、とても物腰が柔らかく穏やかな方でした。ピアノの調律をするという作業に興味があってよく見学していましたが、今思えばかなり邪魔だったんだろうなって思います(笑)

    この物語の中には激しいイベントは出てきませんが、静かに流れていく時間のなかで、しっかりと目標を持ち、そこに向かって「こつこつ」と努力をしながら人生を歩いてゆく大切さを教えてくれているような気がしました。

    読み終えた後、心が優しさで満たされました。
    ぜひ、多くの方に読んでいただきたい1冊です。

  • ピアノを15年以上も弾いていたのに、こんな音の世界があったなんて...今のデジタル化された高速で過ぎ行く時間の流れとは全く違った時を刻んでいたようでした。人工的な音を排除した自然に囲まれた中で育った主人公の音と向き合う姿が、ただただ謙虚な姿がたまらなく良かったです。もう少し大きくなったら娘たちにも読んで欲しい一冊となりました。明日は久々にピアノの鍵盤に触れて見たくなりました。

    • winghighbridgeさん
      ちょうど読み始めました!
      来週は、宮下さんの講演会に行ってまいります。
      ちょうど読み始めました!
      来週は、宮下さんの講演会に行ってまいります。
      2018/04/04
    • lalamama1さん
      講演会ですか^^羨ましいです。
      講演会ですか^^羨ましいです。
      2018/04/04
  • 森・・・そうだな、読んでいる間じゅう森のイメージが浮かんでいた。人の背丈に対して木々は高くそびえ、目に入るのはまっすぐ伸びる幹ばかりで、青空や葉擦れの雑音さえも遠く、その代わりに動物たちの足跡や降ってきた雪の欠片が目の届く範囲にある、そんな森。
    外村青年の抱くイメージにたびたび出てくる森の描写がとても印象的、視覚的というか・・・幻想的な雰囲気なのに、なぜかすんなり想像できてしまう不思議な描写だったから、それに引っ張られたんだろうなと思う。
    限られた範囲の物語で、出てくる人もごく少数。しぜん、外村以外の各々の心のうちも深いところまで垣間見る感じになる。でもあくまで外村という「外」からの目を通してなので、入り込み過ぎず、重い物語になっていないのが気持ちよかった。

    和音のピアノとの出会いから「わがまま」になっていく外村青年の様子もいいなぁと思う。成長する、階段を一つ登るって、そっか、わがままを言えるようになることでもあるんだな、と。つまり自分がどうしたいか分かるってことだ。右も左もわからず手探りな時期に「わがまま」は出せない。
    心に残る言葉はいろいろあったけど、この一連のシーンが一番響いた。

  • 好きな道を選んでも、
    才能がないかもしれないという不安感。
    この道を行く事が間違ってるかもしれない。
    それでも前に進みたい気持ちはある。

    私も今の仕事に就いた時は
    このままこの道を進んでいいのか漠然とした恐怖感に苛まれていた。
    才能がない、向いてないと言われたらどうしよう。
    それでもこの道を進みたい気持ちと
    もっと他に向いてる道があるのではないかという気持ちとの板挟みに悩まされる日々。

    この本を読んで
    久しぶりにそんな気持ちを思い出した。
    働き始めてもうすぐ10年。
    昔は散々悩んでいたけど、
    それでも前に進み、
    言い訳せずに努力を出来ることが
    才能なのかなと今なら思う。

    久しぶりに初心に戻り、
    自分の仕事へのスタンスを振り返ってみようと思った。


  • 読みはじめて半分までは、何か起こるわけでもない日常を描いているにしても淡白すぎるなという感じ。
    でも後半化けた!
    秋野さんとのシーンあたりから、先輩たち、双子との関わりが急に面白くなった。
    変わらず展開、文章は淡々としているのに前半から続けて読んでいると、なぜか心が踊って止まらない、という感じ。
    ドキドキを引き立たせるため、あえての淡白な展開だとしたらすごい!

  • 「才能っていうのはさ、ものすごく好きだっていう気持ちなんじゃないか。」

    けっして天才ではない主人公が、もがき苦しみながらも、人として、そして調律師として少しずつ少しずつ成長していく物語。

    山の中で育った主人公の、森の風景を通して表現する音が、美しい。

    彼の活躍を心の中で期待して、応援しながら本を閉じた。

  • 読むには読んだが、読了はせず途中で読むのをやめた。なんて言うのか、薄いのだ。そう、それはまるで早春の湖に静かに現れた薄凍りの様に薄くて脆いのだ。
    こんな文章なのだ。本屋店員さんなんかは好きかもしれないけれど、下手な少女漫画の回想ページのような、なんと言うか、中学生が教科書の隅っこに走り書いたポエムのように「だからなんだよハゲ」なのだ。

    p.s.
    本書の雰囲気が気に入ったのならば、池澤 夏樹のスティル・ライフ (中公文庫) をオススメする。結局のところ、読了の満足感はそれまでの読書経験に依拠されるのだ。

  • 私の中のピアノ3部作『森のピアノ』『蜂蜜と遠雷』そして我校が誇る宮下パイセンの『羊と鋼の森』。
    何と言いましょうか、透明感のある、全てにおいてやさしいと言いましょうか、闇だらけの自分が読んでいて恥ずかしくなるくらいの清潔さ。助けてください。お願いします。
    登場人物全てが、私の身の回りには存在しない宇宙人で、今振り返ると中1ぐらいの自分なら、私もなんとか登場出来そうなステージかと・・・
    心に闇を抱えている人は是非読んでほしい。いや、読んで自分の生き方を反省して下さい。最低だなお前ら。
    まず思ったのが我が子には是非登場人物のような人間になって欲しいと、聞いてるか、娘達よ、この純粋さはお前らには1ミリも感じないぞ、パパは泣きたくなってきたよ。

    って、考えますと、宮下パイセンはこの小説を一番読んで欲しいのはご子息ではないかと、私なりにやさしく思うのでありました。テヘペロ。

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著者プロフィール

宮下 奈都(みやした なつ)
1967年福井県生まれ。上智大学卒業。2004年、「静かな雨」で文學界新人賞に入選し、デビュー。日常に起こる感情の揺れを繊細で瑞々しい筆致で描きだす作品で知られる。『スコーレNO.4』が書店員から熱烈な支持を集め、注目を浴びる。
代表作に、2016年本屋大賞、ブランチブックアワード2015大賞、「キノベス!2016」などを受賞した『羊と鋼の森』があり、2018年6月に映画公開される。ほか、福井からトムラウシに移り住んでいた頃の日々を描いた『神さまたちの遊ぶ庭』や、福井での身辺雑記や本屋大賞受賞前後のエピソードなどを描いた『緑の庭で寝ころんで』がある。

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