ナイルパーチの女子会 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 45
  • Amazon.co.jp ・本 (403ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167910129

感想・レビュー・書評

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  • 痛い、痛い、痛いーっ!

    今まで読んだ柚木麻子イチ、ヤバイっす。

    女友達との距離感が分からない、お嬢様キャリアOL栄利子。(まあ、読んでいく内に、男友達との距離感も分かっていない感があるけど)
    家が恵まれていて、お金もあって、仕事も出来て、見た目もキレイだけれど、女友達が出来ない。
    そんな栄利子が、お気に入り主婦ブロガーの翔子と出会ってからの、怒涛のストーカーぶりにまずはドン引きしましょう。

    連絡が取れなければメールラッシュ。
    どころか、突然の自宅押し掛け。
    話を合わせてくれないと不機嫌に。
    でもって後からゴメンねラッシュ。

    そうです。
    まさに「メンドクサイ女」のテンプレートと化していく。
    これ、男女の関係でもあるよね。
    そんなヤツだと思ってなかったと言われるまでの、変型を成し遂げてしまう人。

    しかし。これが女同士になると、不思議なことに関係を薄くすることは出来ても、バチっと断ち切ることが難しくなるのかな、と思った。
    同性だから、ずっと、分かり合えるのではないか。
    同じ視点で話が出来るんじゃないか。
    愛情ではなく絆なら、一生続くのではないか。

    ……何より、群れることの出来ない女は、欠陥品なのではないか。

    そんな幻想と恐怖の中で、栄利子は翔子を脅してまでも、親友としての契約を結ぶ。
    また、友達作れる側女子として登場する真織でさえ、自身の結婚式を親友たちへの生贄として捧げるために奮闘?する。

    女性タレントでも、同性に慕われる人とまったく受け入れられない人に分かれたりするけど(そして、同性に支持されることは一種のステータスにさえなるけど)あれって一体何なんだろう。
    女同士のもつれ合いヒエラルキーに、極力関わりたくないんだよな……と思ってしまう私は、ちょっと栄利子側に踏み込んでるんだろうな(笑)

    群れなくても自分一人でやっていける、と言い切れない弱さが、女性という立場にはあるのかもしれない。

    解説の重松清は『BUTTER』と重ね合わせて読んでいたけれど、私は『コンビニ人間』を思い出しました。
    普通であろうともがく、歪さ。
    自分の世界の押しつけか、相手の世界の押しつけという、ワンサイドゲームしか知らない関係。
    ただ、醜い衝突を繰り返すことで、おぼろげながら関わりの「形」を見つけ出しているようにも思う。
    そこを救いとして読めるといいな。

  • 仲良くなると、その人のことをもっと知りたくなるし
    もっと一緒にいたくなるし
    もっと独占したくなる…

    それが友だちだったらどうだろう
    私は違うと言い切れるだろうか
    私はこんなことしない
    でも心の中で同じ気持ちを全く持たなかったとは言えない
    私を、私だけを特別扱いしてほしいという
    欲求を持たなかったことはないのだから

    うっとおしい、重い、気持ち悪い存在になっていたこともあったのだろうか
    この常軌を逸したこじらせ女子のように

    多かれ少なかれ
    女子はこんな経験をしてるんじゃないだろうか

  • 「認められたい」「共感してほしい」という思いは誰もが内に秘めているのかもしれない。その思いが強くて歯止めがきかなくなってしまったのが、栄利子なのだろう。
    『伊藤くんAtoE』でも痛々しいキャラクターを通じて人間の本心のようなものを描いている。うわーなんだコイツと思わせるのが上手い。

  • キャリアウーマンの栄利子と、主婦ブロガーの翔子。出会ってしまった同い年の女二人…。
    あぁ、凄い作品でした。同世代の女性が書く女性にしっくり来ないわけがない。主人公も
    柚木さんご自身も(ついでに私も)年齢が近いので、もうリアル過ぎるほどにリアルです。
    胸が痛くて痛くて、山場ですらない場面でも度々胸が抉られる。読まなければ良かったと、
    早く終わればいいと、妙なテンションで読みました。「だから女は」で片付けないで欲しい
    ほんとに、各々が一生懸命なだけなのです。ほわほわした女子が元ヤンの如き本性を現した
    あの瞬間の衝撃ったら…Σ(゜Д゜)楽しいとはとても言えないけど、お見事の一言でした!

  • 生態系の異なる湖に放流してしまったために、他の魚を食べつくし、環境を破壊してしまったナイルパーチ。
    本来は狂暴ではないにもかかわらず、人間の都合で偏見を持たれてしまい、挙句自らの居場所も失いつつあるこの魚をモチーフに、女性同士の友情とは何なのかについてを鋭く突いたのが本作です。

    ともに主人公である、栄利子と翔子の関係はナイルパーチと既存種の魚の関係にあたります。
    でも見方を変えると、派遣社員の真織と栄利子の関係にも、父親と翔子の関係にも同じことが言えます。
    恐らく、人間誰しもナイルパーチになり得るし、箱根旅行で栄利子が発した言葉にあるように、ナイルパーチを生み出してしまう社会のシステムとか世間の風潮とかに対する違和感が隠れた主題になるのでしょう。
    そこはなかなか面白いと思いました。

    かつて『本屋さんのダイアナ』の感想で、「物語が破綻してもいいから、柚木さんはもっともっとはじけちゃっていいと思います」と書いたのですが、本作でいよいよ本領を発揮し始めたようです。
    過去作と比べて柚木さん自身の思うまま、自由に描いているようで、物語のスケール感が一回り大きくなったように感じました。
    もちろん弊害もあって、栄利子の崩壊っぷりがやり手のキャリアウーマンという設定と合ってないとか、派遣社員の真織から栄利子への要求およびラストの攻撃は常軌を逸しているとか、細部でリアリティを感じにくくなったのも事実です。
    そのあたりは今後の課題かもしれませんが、進む方向は間違っていないと思います。

    思えば女子高でのいじめが描かれたデビュー作『終点のあの子』からほぼ一貫して他者との関係性について描き続けてきた著者にとって、本作は集大成的作品であると同時に、現時点の最高作であろう『BUTTER』にも繋がる重要な一冊になるものと考えます。
    発表する作品から目が離せない作家になってきました。

  • 共感がほしい。わかり合いたい。

    その欲望は不自然なものではないし、ネットやSNSが普及する前から当然備わっていたものだ。
    相手の意見をよくよく聞く努力をするのも、言葉を尽くして自分の感情を説明しようと努めるのも、違いを知り似ているところを認め、ともに生きていきたいからだ。

    女友達はやっかいだとよく言われる。
    表面的で本音を隠していて裏ではドロドロしている。恥部はさらけ出し合わずに、だけど程よく自分を落したコミュニケーションをとることで相手の自尊心を守り、危うい均衡を保っている。

    以前会社の先輩から「あの子と仲が良いみたいだけど、あの子が○○してたこと知らないんでしょ?ほんとの友だちじゃないね」と言われたことが心に引っかかっている。
    何がどう引っかかっているのか、この本を読んで謎が解けた。

    エリート商社ウーマンの栄利子は人気主婦ブロガー翔子の怠惰な日常を臆面もなく綴る等身大の生き方に惹かれ、無理やり親友になろうとする。学生時代の女友達との確執がトラウマとなり人並みに友人が作れないことにコンプレックスを抱える栄利子は、「親友とはこうあるべきだ」という「型」に翔子をはめ込み、「彼女のため」に辛辣な批判を投げかけ、日常のあらゆる場面をともに過ごそうとする。互いに疲弊し、歪んだ自分自身に嫌気がさした頃、トラウマの原因となった圭子から、栄利子はこう言われるのだ。
    仲の良い友人関係のピークが終わり、やがて別れてもう名前も思い出さなくなっても、大人になってばったり会った時に気分良く立ち話ができればそれで十分だ。
    それは上っ面だけ取り繕った関係で、分かったふりだ、偽りの親しさはつらいだけだと言う栄利子にさらに圭子は続ける。
    「その時こそ、二人が離れていた間、培ってきたスキルが花開くんじゃないのかな。女の上っ面の慰め合いや井戸端会議を、軽蔑したり、バカにして笑う人もいる。でも相手の心をえぐって真実を突きつける辛辣さが、人を傷つけないように配慮された言葉よりも高尚だなんて誰が言えるのよ?あの能力はすごいことだと、今なら分かる。」「女の一瞬でもその場を楽しくする花火みたいな社交性や、能天気な調子の良さや、次に繋がらないかもしれない小さな約束が、根本的な解決にはならなくても、実はいろんな人を救っているんじゃないのかな。」

    解説で書かれていたように、
    「分かり合わなきゃ、共感できなきゃということから失うもの」の大きさについて、書かれた小説だと思う。

    分かり合えなくてもいい、共感できなくてもいい、
    過去や現在について、全ての事実を知らなくてもいい。
    違いを知って、知ってもらって、
    話したいことをそのまま受け止めて、話したくないことは無理に聞き出さず、
    適切な距離感を示す境界線を丁寧に丁寧に引いて、その線の位置をときどき見直して手直ししながら、私らしくその人らしく生きていければいい。
    それは決して表面的で上っ面な付き合いなんかじゃない。とてつもなく骨が折れる、相手を尊重した付き合い方だ。

  • 友達を作るためには、自分ではなく、思いやりが必要。相手の気持ちを考える事がいかに大切であるか、人間関係を考えさせられる衝撃的な小説だった。

  • 私はタイトルの「女子会」というスウィート響きに惹かれ、この本を手に取りました。
    ところがこのお話全然甘くない!むしろ激ニガ。
    育ちのいいエリート、だけど友達がいない栄利子。主婦ブログ界では人気者の、女ぎらいな翔子。偶然の出会いから、一度は意気投合したはずの二人が、互いの存在にじわじわと首を絞められていく様を描いた小説です。
    読みつづけるのが苦しくなるほど痛々しい、彼女らの姿。二人にとってその出会いは幸せだったのでしょうか。
    著者は『本屋さんのダイアナ』の柚木麻子さんです。冒頭の5行、末尾の4行をここまで繊細に描いた作家を私は他に知りません。
    読み終えた時の、ほのかな清涼感がクセになること間違いなし。是非ご一読ください。

  • 女性同士の関係に色々考えさせられる一冊。

    正直、中盤くらいまでは鬱々としていて読み進めるのが辛かったが
    後半は登場人物の発言が胸を打つものが多かった。

    個人的に同性の友人の多い私でも、
    人との関係に疲れたり悩むことはゼロではないので
    身につまされる一文もところどころあった。

    男性が読んで面白いのかはわからないけど、女性には勧めたい。

  • 久々に、パンチ効いてる〜!となった作品。

    主婦ブロガーの翔子と、バリキャリの栄利子。
    お互い不器用で、自分の居場所が欲しいがあまりに相手のことを思いやれない。
    まるで共食い。まさにナイルパーチ。

    思いのほか怖いシーンが多く、ゾッとしながらもつい読み進めてしまいます。

    衝撃的だったのは栄利子の会社の後輩OL真織。
    寿退社が決まってて、キラキラしてて、みんなから好かれる存在なのに、彼女もまた彼女で問題をかかえてる。


    マウンティングという言葉が一般的になりつつあるけど、
    女同士ってどうしてこうも…
    わたしの周りにはそんなにたくさんいませんが、いるいるこういう子、って思ってしまうシーンもありました。


    大人数でワイワイ女子会をすることが全てではなく、本音で話しができる、信頼しあえる友達が1人だけいれば、それで十分なのだと、改めて教えてもらった気がする。

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著者プロフィール

柚木 麻子は日本の小説家で、1981年 東京都世田谷区生まれ。

立教大学文学部フランス文学科卒業。
大学在学中から脚本家を目指してシナリオセンターに通い、ドラマのプロットライターを勤めたこともあった。
卒業後は製菓メーカーへの就職を経て塾講師や契約社員などの職のかたわら小説の賞に応募し、2008年に第88回オール讀物新人賞を受賞した。受賞作「フォーゲットミー、ノットブルー」を含む初の単行本『終点のあの子』が2010年に刊行された。

2014年に『本屋さんのダイアナ』で第3回静岡書店大賞 小説部門受賞。
『伊藤くんA to E』『本屋さんのダイアナ』『ナイルパーチの女子会』『BUTTER』が直木賞の候補作となる。

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