プロローグ (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 137
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167910198

感想・レビュー・書評

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  • 『プロローグ』(文春文庫)と『エピローグ』(ハヤカワ文庫JA)の同時刊行という異業(笑)に、つい、手を伸ばしてしまった……。

    あらすじとしては、こうある。

    「小説の書き手である「わたし」は物語を始めるにあたり、日本語の表記の範囲を定め、登場人物となる13氏族を制定し、世界を作り出す。」

    そうして始まるや否や、『千字文』が渦巻く21ページ目にして、笑いが生まれる。
    これは、凄まじい。
    けれど、同時に日本語とは一体どこまでを見通せる可能性を持った言語なのか、と考える。
    私はその、何パーセントを語彙として所持していて、残りは存在さえ知らないのか。

    ストーリーとしては正直、分かりやすくない。
    なのにハードカバー版のレビューを読んでいたら、皆ちゃんと「読んで」いて、感心する。
    私みたいなふざけたレビューもまあ、役に立つこともあるかもしれないから、いいか。

    筒井康隆の『残像に口紅を』を彷彿とさせる。
    文字が減ってゆく世界(セカイの規定はどうあれ)に対して、文字が取得されてゆく世界。
    語りが物語として創造されてゆく工程。
    「私小説」として、自らが構築したこの世界を、またパーツに分けては分析する。
    語彙の構成、使い方、長さ、数……。
    データ化された、それらを紐解くことで、自分を知ることになるという試み。面白い。

    『古事記』のテキストくらい、データとしてすぐに手の届くところに置いておいてくれ、とか。
    PDFは書式を潰すからデータ保持には良くないとか。
    あ。私も、ATOK良いよって言われて使ってみたら、変換しにくくて非常に難儀したことあるの、思い出したよ。
    電子機器を使って読み書きするという形態はメジャーになりつつあるけど、真摯に向き合わんとする人を見るのは初めてだった。

    日本はなんだかんだ言って、まだまだ紙を神聖視しているとは思う。
    ああ。『エピローグ』に迷い込んでしまいそう。

  • 自分って何だろう?誰だろー?って思った
    自分の中にある色んな性格だったり考え方が人間として現れる
    私の中には誰がいるんだろう、なんて名前つけよーかなー?って考えると楽しくなってくる
    でもその中に共通性っていうのが自分の主張できる個性なのかもしれないなって

  • 紙面上に創造される仮想の土地と架空の13氏族。全ては文字列で出来てる。
    日本語で。
    数式で。
    古典の引用文で。
    プログラミング言語で。
    教養と造詣を深めてなければ読み解けない執筆余談。
    ときどき旅行記。写真付き。
    語り手が断りも入れずに分裂増殖。
    それがだんだん陰謀論じみてきたり。

    様々なアプローチで文学を解体している...のか??それとも、とんち??
    流れるように連なる文章のほとんどが脳みその表面をつるつる滑っていく読書だった。素養ナシ。
    そして急に村某龍の悪口が飛び出してきたところで声を上げて笑う。

  • 文学も爆発しちゃうのか…(;´・ω・)
    その日の気分次第で楽しく読めたのかな?
    セットで買ってしまった『エピローグ』は積読山に埋めるw

  • 小説をプログラミングするという発想を発端に、書き手の話と椋人(「エピローグ」のクラビトの先祖なのか?)や羽束ら小説の登場人物の話が幾重にも重なりあって、「わたし」を形作っていくのを物語るという壮大な「私小説」。単行本で読んだ時はわからなかったが、今はなんとなく理解できる。

  • 2018年2月10日第一刷。
    「文學界」連載も楽しみに読んでいた。
    私小説とは概ね徒然なる日常を書くもの。随想からの跳躍ありき。
    本作もまさに徒然なる日常と、その都度考えたことを徒然に書いているらしい。
    が、そこは円城塔。凡人の思考ではない。

    私小説では語り手は単純に「わたしは云々」と書き始めるが、この小説の「わたし」は「小説そのもの」のことだから、不用意に「わたしは云々」と書き出せない。
    そのうちに著者の要素がいろいろなキャラクターに分散、分身、仮託、委託、されていく(?)
    さらには堂々たる「わたし対わたし問答」も生起し、それが詰まらないトートロジーに堕さない。

    私小説を刷新するのか~、たいそうなこってすな~、アホな読者にはわかりませんわ~、とやっかみ半分で読んでいたところもあったが、
    「これが私小説と言うと私小説とは云々と言いがかりをつけられそうだが、まあ無視してよろしい。だってこういうことばかりしている生活なのだ」
    と言われてしまえば、もうシャッポを脱ぐしかない。

    神秘主義などの衒学趣味とITが融合したら、とか。
    あるいはITがごく当然な世界における衒学趣味は、というか。

    「エピローグ」との関連については……榎室春乃やイザナミ・プロジェクトなど出てくるが……わからず。
    まっこと、アホな読者である。

    ところでドリフトグラスが登場するので連想したのが「グラン・ヴァカンス」だが、あながち遠くはない、と思いたい。
    というのもPC内に残された物語が、切り離されたままどう熟成するか、という視点は、通じるものがある。

    お子さんご誕生おめでとう。
    ……と、書くのは決して文芸界ゴシップをひけらかすためではない。
    中盤で唐突に登場した『赤ちゃんプログラム』が、終盤に向かうに従って大事な小道具になる。
    そして濃淡あれど子育てに関わり何がしか考えたことのある人間には、感じ入らざるを得ないリリカルなニュアンスが終結にある。
    要は生まれてきてくれてありがとう、と。
    その感慨は創作上のキャラクターに対しても、現実に直面し続けざるを得ない実人物に対しても、言いたい言葉になるのだ。

    ところで先日柴崎友香「春の庭」を読んだから連想するんだけど。
    柴崎友香「春の庭」芥川賞選評で、【建物は上から見ると”「”の形をしていた】と読んで、読む気をなくした、と村上龍。
    円城塔はわざと似た表現を340pに置いて、老害村上龍へのあてつけをしている。

  • 『エピローグ』(ハヤカワ文庫JA)と纏めて。
    本書と『エピローグ』は、解説も含め、円環のように繋がっている。どちらを先に読んでも構わないが、両方を読むことを強く勧める。

  • いわゆる私小説であり、わたしの小説でもあるというのはどうかな。わたしの小説、わたしを(書く)小説、わたしが小説。かなりSelf-Reference ENGINEですね。単行本既読なので2回目ですが明らかにより面白くなったしより理解できたと思います。

  • 【『エピローグ』(早川書房)が同時発売!】語り手と登場人物が話し合い、名前が決められ世界が作られ、プログラムに沿って物語が始まる。知的な企みに満ちた壮大な「私小説」。

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著者プロフィール

円城塔(えんじょう とう)
1972年、北海道生まれ。東北大学理学部卒。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。複数の大学で研究員を務める。34歳の時、研究を続けることが困難となり、2007年にSEとして一般企業に就職。2008年に退職、専業作家となる。
デビューのきっかけは、研究のさなかに書いていた「Self-Reference ENGINE」。各所で認められデビュー作となった。2007年『オブ・ザ・ベースボール』で第104回文學界新人賞、2010年「烏有此譚」で第32回野間文芸新人賞、2012年『道化師の蝶』で第146回芥川賞、同年『屍者の帝国』(伊藤計劃との共著)で第31回日本SF大賞特別賞、第44回星雲賞日本長編部門をそれぞれ受賞。他にも2012年に咲くやこの花賞(文芸その他部門)、2017年「文字渦」で第43回川端康成文学賞をそれぞれ受賞している。
その他代表作に『これはペンです』『エピローグ』などがある。「新潮」2016年5月掲載号で川端康成文学賞を受賞した短編小説、『文字渦』が2018年7月に発売された。

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