億男 (文春文庫 か 75-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167910266

作品紹介・あらすじ

「お金と幸せの答えを教えてあげよう」。宝くじで三億円を当てた図書館司書の一男は、大富豪となった親友・九十九のもとを訪ねる。だがその直後、九十九が三億円と共に失踪。ソクラテス、ドストエフスキー、福沢諭吉、ビル・ゲイツ。数々の偉人たちの言葉をくぐり抜け、一男のお金をめぐる三十日間の冒険が始まる。

感想・レビュー・書評

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  • 1.著者;川村氏は、多彩な顔を持つマルチ人間。映画プロデューサー・小説家等。自宅にテレビがなく、幼稚園に行かず、小学生の頃は、父親と名作映画を毎週見続けたそうです。優秀な映画製作者に贈呈される『藤本賞』を最年少で受賞。初の小説「世界から猫が消えたなら」は21か国で出版。大ヒット作「君の名は」など、多数の作品を手掛け、国際映画賞等を受賞。
    2.本書;宝くじで3億円を当てて億万長者になった一男(主人公)を巡る「お金と幸福」について考えさせる小説。一男は、失踪した弟の借金(三千万円)を返済すべく、昼は図書館司書、夜はパン工場で働く。そんな頃、老婦人に貰った福引券で宝くじを当て、それが3億円当選していた。この3億円を巡り、チャップリン等の偉人の言葉を噛みしめつつ、真の幸せを追求していく物語。7章構成。
    3.個別感想(印象に残った記述を3点に絞り込み、感想を付記);
    (1)『第1章』より、「九十九(一男の親友);“福沢諭吉の『天の上に人を造らず、人の下に人を造らず』ってやつ、知ってるだろ?” “あれ、『人間はみんな平等だよ』みたいな事を言っていると思ってるだろ” “違う” “その後にある文章を知ってるか?” “『実語教』に、『人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なり』とあり。されば賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとによりてできるものなり” ・・・“つまりは『身分の貴賤上下は生まれながらのものではなく、学問の有無による』という事さ”」
    ●感想⇒『人間はみんな平等』について、『法の下に平等』と言われるように、人間は法的権利・義務においては平等です。但し、生活上での不平等感はあると思います。生まれた環境に差(資産の有無・親族関係・・・)があります。しかし、どんな環境であろうとも、この世に生を受けた以上、不平等を嘆いても仕方がありません。所与の条件で、目標を持ち、達成に向けての努力が重要です。その努力は、人生の糧となり、自信になります。また、『身分の貴賤上下は生まれながらのものではなく、学問の有無による』というのは、精神的な貴賤だと思います。健全な精神を作るには学問と道徳観ある人に学ぶ事です。道徳心の無い例です。“車に高齢者マークを貼っていながら、荒っぽい運転で交通ルールを守らない人” “スーパーで、ばら売りリンゴを数個買うだけなのに、置いてあるリンゴを全部素手でこねくり回す人”等、道徳心が欠如し、自分さえよければよいという考えなのでしょう。お金はなくとも、人への気配りが出来る人でありたいと思います。“氏より育ち” “人のふり見て我がふり直せ”ですね。
    (2)『第4章』より、「九十九(一男の親友);最近ようやくボクも気付いたんよ。世の中、金じゃ買えへん事もぎょうさんあるって事を。プライスレスっちゅうやつやな。忘れられへん思い出とか、大切な友情とか、かけがえのない家族の愛情とかそういうやつや。そういう金で買えへん幸せっちゅうもんを幾つ持っているかっていうのが、人生の豊かさを決める」「そうプライスレスや・・・なんつって!んなはずあるかいボケぇ!この世の中、金さえあればなんでも済むやろ!」
    ●感想⇒しばしば、“お金があれば何でも出来る”と言われます。一理かも知れません。私事です。経済的に大学進学出来る状況ではありませんでした。それでも、学びたいという一心で、奨学金とアルバイトで何とか進学・卒業できました。その過程では、沢山の人に有形無形の温情を頂き、忘れる事はありません。恩師から教えて頂いた、“励ましや読むべき書物の紹介・・・”などです。自慢ではなく、お金には変えがたいものがあると言いたいのです。『この世の中、金さえあればなんでも済むやろ!』という割切った考え方には賛同出来ません。
    (3)『第7章』より、「“人生に必要なもの。それは勇気と想像力と、ほんの少しのお金さ”チャップリンは言う。“戦おう。人生そのものの為に。生き、苦しみ、楽しむんだ。生きていく事は美しく、素晴らしい。死と同じうように、生きる事も避けられないのだから”」「僕たちは人生そのものの為に戦い、苦しみ、そして生きていくしかない。勇気と想像力と共に」
    ●感想⇒チャップリンは、子供の頃、貧困と苦難の日々で、救貧院に何度も収容される生活を送ったそうです。その後の努力で、映画史のなかで最も重要な人物の一人と言われるほどの成功を納めました。私は、チャップリン映画の中では、『街の灯』が好きです。そのラストシーンの会話です。『花売り娘「あなたでしたの?」、放浪者「目が見えるようになったのかい?」、花売り娘「ええ、見えるようになりましたわ」』目頭が熱くなります。このような感動はお金では買えません。“人生に必要なもの。それは勇気と想像力と、ほんの少しのお金さ”『ほんの少しのお金』は人それぞれです。私は、お金に変えがたい精神生活を送れれば、“衣食住出来るレベル+少しのα”で十分。生きるという事は、悪い出来事もありますが、勇気をもって乗越えれば、生きるって満更でもないのです。
    4.まとめ;ビル・ゲイツが言っています。「うまくお金を使う事は、それを稼ぐのと同じくらい難しい」と。「ほとんどの宝くじ高額当選者は十年後、元の生活に戻ってくる」そうです。人間の欲求はお金だけではなく、精神的な喜びを求めると思います(手段として何がしかのお金が必要かもしれませんが)。それには、人との出会い、読書での知識習得・疑似体験・・・など、枚挙にいとまがりません。作家の五木寛之さんが書いていました。「人間は大人になって死ぬまでの間、お金の事で苦労しながら生きてゆきます。・・・お金の方が主役で自分はそれに振り回されているつまらない存在の様に感じられる事があります」と。人間は、生まれ育った環境が異なります。そうした中で、お金に振り回されず、自分ならではの幸せを願って、夢をもって生きていきましょう。(以上)

  • 「お金と幸せの答え探し」の話
    急に大金を手にしてしまった主人公がどう大金と向きあうかを 読んでて一緒に考えさせられる作品

    読みやすく、ページ数も多くなく 無理なくそして面白かったです
    自分もギャンブルはしませんが、宝くじ大好き

    ただ自分もまず「億男」にならないと始まらないですね

    俺が宝くじあたったら まずやりたい事…
    「とりあえずVolvicで風呂を沸かす」

    器小さっ!!…

  • 以前、話題になったと思い購入。出てくる金持ちの言動が嫌すぎる。家に大金を隠し持ったり、競馬に明け暮れたり、金の宗教を作ったり。主人公自体が宝くじの大金に翻弄されていて、持っていかれたお金に執着して渡り歩いている。主人公の借金で逃げ出した嫁さんも、大金があっても駄目なら、どうすれば良いのかわからない。真意を求めようとして、もう一度読み進める気力が無い。お金はやっぱり戻って来るのだが、最後は娘とのシーンでヨリも戻るのかな?

  • タイトルに惹かれて読みました(^-^)
    お金は人を変えると聞きますが、もし自分が大金を手にしたらどう変わるだろう?と思いながら読んでいきました。宝くじが3億当たっても豪遊せずにちょっとした贅沢をしながら今の生活のまま暮らしていきそうな予感がします。

    一男と万佐子さんの出逢い方がとても素敵なところや、登場人物に漢数字が使われているところがいいですね!

    2023年大晦日に読み納め(?笑)したことをここに記す。

  • 宝くじにより突然3億円手にした男の話。

    その使い道を相談する為大学時代の親友九十九に会いに行き相談したがその夜一緒に豪遊し、朝気がつくと九十九と3億円が消えていて九十九の旧友3人に話を聞き、3億円を取り返していく物語。

    富は海の水に似ている。それを飲めば飲むほど喉が渇いていく。

    九十九は大金持ちになり「お金と幸せの答え」を見つけようとしていた。

    お金によって奪われた大切なものは、欲。

    富を得た多くの人間がそれで幸せを失った。

    欲は人間を狂わせるがそれと同時に私たちを生かしている。
    人生に必要なものは、それは勇気と想像力とほんの少しのお金という言葉が胸に深く刺さった。

  • お金の話。欲がありすぎても、無くてもうまくいかない

  • 図書館とパン工場で働く主人公に、三億円が当たるというあらすじを読んで面白そうと思って図書館で貸し出しました。でも、思っていた感じのお話の流れじゃなくて、、んーー。
    もちろんお金と幸せについてのお話とは知っていたけれど。九十九さん、、そこまでしなくても一男さんに伝える方法が他にあったのでは?!と思ってしまった(笑)

    一男と万佐子の出会い方が書かれていた場面は、素敵だなと思いました。
    お金と幸福について考えさせてくれたのと改めて自分のお金の使い方を見直そうと思いました。

  • 三億円の宝くじを当て、いきなり「億万長者(億男)」となった図書館司書の一男(カズオ)が、大学時代の親友九十九(ツクモ)のもとを訪ねて行き〝お金と幸せの問題〟の相談に端を発する、奇想天外な青春小説。 九十九が一男の三億円と共に失踪する謎を追いながら、古今東西の偉人たちのお金にまつわる格言のアレコレ、落語の演目「芝浜」を絡ませて展開する物語は、「幸運と悲運」が循環する人生で〝人間に必要なもの〟を問いかける、真っ向勝負の黙考小説。

  • 読んでいる本と現実が一致する、あるいは現実が追いかけてくるという状況は往々にしてありますが、こんなにもシンクロしてしまうのは中々にきつかったです。「家族で幸せに暮らしたいだけ」と熱弁する一男を拒絶する万佐子は強欲で身勝手だと思うけど、それに反論できない一男と自分がもどかしく、そして苦しい。まどか(彼女だけが数字にまつわる名前ではないのも示唆的です)の背伸びを見るにつれ、なお苦しい。まあそこは私個人の感想であまり他人受けしないでしょうけど、そんな一冊でした。

    もうちょっと一般的な事を書いておくと、大金によって翻弄される登場人物の描写、微妙な歪み方、そして満たされない感情(川村さんはここが上手いですよね、いつも)、その辺りの配合が実に良く練られていて、ぐいぐい読み進んでしまいました。結局結論はぼんやりとして、読者それぞれの心のうちにある。「青い鳥」以来のベタな展開かもしれませんけれど、私は好きです、このパターン。

    落語がちょいちょい挟まれますが、「昭和元禄落語心中」を思いだして(またネタが被るんだ)ちょっと懐かしかったです。あれも原作読もうかなあ。

    あ、一応書いておきますが、3億当てたわけではないですよ(笑)。

  • お金とは?を考えさせられる本。ただストーリーには期待し好きてしまっていたせいか私はあまり面白くなかったです。

    お金ってら紙切れなのに、あるのと無いのでは気持ちも周りも変わる。恐ろしいですよね...
    そんな意味も含めて様々な視点で書いているところは面白いです。

    ※本の概要※
    宝くじが当選し、突如大金を手にした一男だが、三億円と共に親友が失踪。「お金と幸せの答え」を求めて、一男の旅がはじまる!

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著者プロフィール

かわむら・げんき
1979年、横浜生まれ。
上智大学新聞学科卒業後、『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』『寄生獣』『君の名は。』などの映画を製作。2010年、米The Hollywood Reporter誌の「Next Generation Asia」に選出され、’11年には優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。’12年に初の小説『世界から猫が消えたなら』を発表。同書は本屋大賞にノミネートされ、佐藤健主演で映画化、小野大輔主演でオーディオブック化された。2作目の小説にあたる本作品『億男』も本屋対象にノミネートされ、佐藤健、高橋一生出演で映画化、’18年10月公開予定。他の作品にアートディレクター・佐野研二郎との共著の絵本『ティニー ふうせんいぬものがたり』、イラストレーター・益子悠紀と共著の絵本『ムーム』、イラストレーター・サカモトリョウと共著の絵本『パティシエのモンスター』、対談集『仕事。』『理系に学ぶ。』『超企画会議』。最新小説は『四月になれば彼女は』。


「2018年 『億男 オーディオブック付き スペシャル・エディション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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