武道館 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2018年3月9日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (368ページ) / ISBN・EAN: 9784167910280

作品紹介・あらすじ

【正しい選択】なんて、この世にない。
「武道館ライブ」という合言葉のもとに活動する少女たちが、最終的に”自分の頭で”選んだ道とは――。

様々な題材を通して現代を描き続けてきた著者が今回選んだのは「アイドル」。
視聴者のあいだで物議を醸したドラマ化を経て、待望の文庫化。
解説には、音楽家として多くのアイドルをプロデュースしてきたつんく♂を迎える。

結成当時から、「武道館ライブ」を合言葉に活動してきた女性アイドルグループ「NEXT YOU」。
独自のスタイルで行う握手会や、売上ランキングに入るための販売戦略、一曲につき二つのパターンがある振付など、
さまざまな手段で人気と知名度をあげ、一歩ずつ目標に近づいていく。
しかし、注目が集まるにしたがって、様々な種類の視線が彼女たちに向けられるようになる。
そして、ある出来事がグループの存続さえも危うくしてしまい……。

「人って、人の幸せな姿を見たいのか、不幸を見たいのか、どっちなんだろう」
「アイドルを応援してくれてる人って、多分、どっちもあるんだろうね」

恋愛禁止、炎上、特典商法、握手会、スルースキル、無料文化、卒業……
この数年であっという間に市民権を得た言葉たちの中には、
アイドルという存在から発生したものも多い。
新しい言葉が生まれた場所から見えてくるのは、今を生きる人々の様々な一面。
現代社会での生き方を模索するすべての人へ送る、真摯な物語。

みんなの感想まとめ

人生の選択と葛藤を描いた物語で、アイドルグループ「NEXT YOU」の成長と苦悩を通じて、現代社会における生き方を模索する姿が描かれています。主人公たちは「武道館ライブ」という目標に向かって努力を重ね...

感想・レビュー・書評

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  • えぇ、朝井リョウさん、なんでこんな思春期の女の子の解像度高いの…?
    当時悩んでたことを今励ましてもらえたように感じるフレーズもあった。
    私はアイドルの世界なんて全く知らないただのアイドル好きだけど、本当にこんな葛藤をする人もいるのかも、と実際自分が好きなアイドルたちに当てはめて読んでしまった。
    悩みながらも選んだ選択肢を正解にしていくしかない。それはその通りだなと思う。

    ・・・
    「たぶん、真由はいま、何食べても、何食べなくても太るよ。それはもう、私のお父さんがハゲたのと同じことなんだよ。止められないんだもん、ハゲてくの」
    ・・・
    「いま、高一でしょ。真由はね、太ってるんじゃなくて、変化してるんだよ。真由がいま太るのは、背が伸びたり足のサイズが変わることと一緒で、真由が何かをサボったり、 なまけてるからじゃない。誰かへの裏切りでもない。本当はそれで、傷つけられる必要もない」

    • きたごやたろうさん
      またまた私の本棚に「いいね」をありがとうございます。
      朝井リョウさんの本はほぼ全部読んでいますが、確かに特にデビューの頃の作品は、女子力高い...
      またまた私の本棚に「いいね」をありがとうございます。
      朝井リョウさんの本はほぼ全部読んでいますが、確かに特にデビューの頃の作品は、女子力高いですよね。
      秋元康さんのようです笑。
      2024/11/29
  • 最初はアイドルの話かと、半ば冷めた目で読んでいたけど、主人公愛子の「アイドルの自分」と「本当の自分」の葛藤が面白くて熱くなっていく。
    歌って踊ることが好きと、幼なじみと過ごすことが好きは、アイドル前からあったことで決して矛盾しない。
    でも、アイドルとして生きていくためには、選択をしなくてはいけない。それが、その時代の流れで時代のルールなのだ。十年後、二十年後は変わっているかもしれないけど。
    「正しい選択なんてこの世にない。たぶん、正しかった選択、しか、ないんだよ」
    「何かを選んで選んで選び続けて、それを一個ずつ、正しかった選択にしていくしかないんだよ」
    愛子の選択、杏佳の選択に幸あれ。そう祈った。

    自分自身の内面をきちんと見つめ、
    自分にとっての「本当」を見出していくことが
    SNSをはじめ周囲の風にのまれない生き方なんだろうな。
    朝井リョウさんの文章を読んでいると、それだけで楽しくなる。

  • 《若い頃にしかできない選択は、時にあまりにも残酷だ》

    「インメガ」本屋大賞受賞を機に、朝井リョウさんの「推し」に関する作品を読もうと思って手に取った。
    こちらは推されるアイドル視点のお話✧*。

    「武道館ライブ」を合言葉に活動してきた女性アイドルグループ「NEXT YOU」。彼女たちは徐々に人気と知名度を上げていくがー…。

    こちら、刊行されたのは11年前。
    読んだ方はきっと分かってくれると思うのですが、11年前にこのラストを描いた朝井リョウさん、すごくない!?天才すぎでは!?Σ( ˙꒳​˙ )
    今でこそ許容されてるのかな、と思うけど当時は絶対無理だったでしょ!!!
    この構成もよかったなぁ✧*。

    こちら、刊行当時のアイドル文化や空気感をかなり取り込まれた作品だな、と感じた。
    作中で扱われている事件は、実在のあの事件を連想する読者は多いハズ。
    完全なフィクションなのに、現実で見たことがあるような感覚がずっと続くところが怖い…!
    特にSNSの空気とか、ファンの距離感とか、アイドル本人より周囲が物語を作っていく感じとかが妙に生々しくて。

    剣道の試合とアイドル活動の対比がとても印象的だった。
    剣道はルールが比較的明確で、勝敗も見える。
    一方アイドル活動は努力したから報われるとは限らないし、評価基準も曖昧、好かれるかどうか、が大きい世界。
    だからこそ、剣道の試合の場面の度になんか胸がギュッとなった。
    剣道って「礼」で始まって「礼」で終わる競技なんですよ。
    その誠実さと、アイドル業界の消費の速さ・残酷さの対比にもグサッときた。

    アイドルって、自分の気持ちを歌っているようで、実際は与えられた言葉を歌っている側面もあると思っていて、その借り物の歌詞に、自分の人生や感情が重なってしまうのが切なくて苦しい。でも美しくもあるのかもしれない。

    人生は取捨選択の連続であり、正しい選択はない。
    自分で選び取ったものを、信じ続けるしかない。
    そして武道館という場所は憧れの象徴でもあり、人生の通過点でもある。
    彼女たちが選び取った人生とは…?刊行当時のことを懐かしみながら見届けてほしいです✧*。

    解説がつんく♂さんというのが、またすごい!(ㅅ´∀`*) スゴイ

    • mariさん
      ultraさん

      私、小さい時にWink見てテレビの前で踊っていたみたいですよd('∀'*)
      ultraさん

      私、小さい時にWink見てテレビの前で踊っていたみたいですよd('∀'*)
      2026/05/21
    • 図書館が好きなのさん
      この本、娘(推し活推進派)が読んだみたいなんですよ。

      で、あんまり刺さらなかったと……


      でもね!面白いからお母さんも読んでみなよ、とは...
      この本、娘(推し活推進派)が読んだみたいなんですよ。

      で、あんまり刺さらなかったと……


      でもね!面白いからお母さんも読んでみなよ、とは言われました。まだ未読…笑

      インメガも読ませたのね。

      そしたらさ、少ーし、ほんの少ーし、グッズを買う量が減った気がする。

      今のところ……。

      ほとぼり冷めたら復活するんかな?笑笑

      とりあえず朝井リョウ作品は読まねば!!♡
      私の推し♡♡
      2026/05/22
    • mariさん
      館なのさん

      娘さんも読書家なのですね.。゚+.(・∀・)゚+.゚
      親子で同じ本を楽しめるなんて素敵♡

      娘さんはあんまりでしたか(;'ω'...
      館なのさん

      娘さんも読書家なのですね.。゚+.(・∀・)゚+.゚
      親子で同じ本を楽しめるなんて素敵♡

      娘さんはあんまりでしたか(;'ω'∩)
      確かに、当時を知っている大人の方が面白く読めそうな気はします!
      あんまりだったとしても、この作品のメッセージは受け取ってくれていたらいいですね(˶'ᵕ'˶ )‪︎
      人生において大切なことが描かれている作品でしたよ✧*。

      「インメガ」で推し活の極みを見てしまったからなのですかね…!
      館なのさんはちょっとホッとしますよね(´▽`)

      私こっち系の朝井作品は結構好きでした‪(*ˊ ˋ*)‬
      私も朝井ファンダムに入ろうかな♡
      あるんか知らんけど←
      2026/05/22
  • すごく良かったなー。
    アイドルが武道館ライブを目指す話。エンタメ小説かと思いきや、これがなかなか深かった。

    ネットの誹謗中傷に反応しないスキル、そんなのはじめから備わってるわけないよね。ちょっとしたことで大炎上してしまう世の中だから、人の注目を集める立場の人は本当に大変。

    「正しい選択なんてこの世にない。たぶん、正しかった選択、しか、ないんだよ」
    「何かを選んで選んで選び続けて、それを一個ずつ、正しかった選択にしていくしかないんだよ」
    自分で選んだ人生、良いも悪いも自分次第だと私は常々思っているのだが、まさにそういうこと。
    誰のせいにもせず、進んでいくしかない。

    個人時に高校剣道全国大会の会場で地元の体育館が出てきたのが嬉しかった。
    今年ももうじき同じ場所で開催される。
    剣士たちよ、がんばれー。


  • 推しの子を彷彿とさせるアイドルの物語。
    アイドルという掟の中で正解を見出せず苦悩する少女たちの仕事に対する恋愛に対する揺らぎが生々しく響いた。

    怒れるくらい好きなこと、か。
    そんなに感情を出せるのが羨ましい。
    私は怒るという感情はストレスに繋がるだけですぐ消化しようとしてすぐに諦めたりしょうがないって思う癖がついてしまった。
    だけど怒れるくらい何かに夢中になれることがあるって幸せなんだよな。
    バカにされたら覆すほどのチカラ、私も持ちたい。

    朝井リョウさん、こんなにも女の子の心境が分かるなんて、、面白いだけじゃないね、、

  • 8年ほど前の作品、アイドル像は少しは変わったのだろうか…。
    長年生活に寄り添ってくれていたアイドルが活動終了し、なんとなく心に空白ができて、何かで埋めたいなとこの本を読みました。

    朝井リョウさんの作品は何作目だろう。(もちろん作品の雰囲気には一貫性があるけれど)毎回主人公が自分史を語っているように、ほんとうにすんなりと心に入ってくる文章だと思う。

    アイコもアオイも幸せそうで良かった。
    こういう結末にしてくれた朝井さんに感謝します。
    余談ですが、ケーキの描写がとても美味しそうで、さすが!と思いました。

  • 朝井リョウさんの作品を読破したいという気持ちが湧いており選んだ作品。
    アイドルのリアルが詰まった物語。終盤に向けてどんどん面白くなっていき後半一気読みした。10年程前にドラマ化もしており過去の動画を検索したりもした。
    細かい心理描写はさすが!
    アイドルも普通の人間なんだなぁとこれから見方が変わりそう。

  • ●感想
    近年の著者の作品を先に何冊か読んで、とても興味深かったせいか、私が、この作品を時代をズラして読んでしまった感があって、旬感がなかった。
    あと、自分の頭で選んだ、というが、恋愛感情って本能だから、頭で選んだのか?と思っちゃって、アイドルになることを選んだのとはまたちがうのでは?と思ってしまった。
    「〜とは、こういうもの」という固定観念は、何を対象にしてもつきまとうものだが、それは時代や場所によって180度変わるものも含まれる。…というような当たり前の感想しか残らなかった。

    ●本概要
    【正しい選択】なんて、この世にない。
    「武道館ライブ」という合言葉のもとに活動する少女たちが、最終的に”自分の頭で”選んだ道とは――。

    様々な題材を通して現代を描き続けてきた著者が今回選んだのは「アイドル」。
    視聴者のあいだで物議を醸したドラマ化を経て、待望の文庫化。
    解説には、音楽家として多くのアイドルをプロデュースしてきたつんく♂を迎える。

    結成当時から、「武道館ライブ」を合言葉に活動してきた女性アイドルグループ「NEXT YOU」。
    独自のスタイルで行う握手会や、売上ランキングに入るための販売戦略、一曲につき二つのパターンがある振付など、
    さまざまな手段で人気と知名度をあげ、一歩ずつ目標に近づいていく。
    しかし、注目が集まるにしたがって、様々な種類の視線が彼女たちに向けられるようになる。
    そして、ある出来事がグループの存続さえも危うくしてしまい……。

    「人って、人の幸せな姿を見たいのか、不幸を見たいのか、どっちなんだろう」
    「アイドルを応援してくれてる人って、多分、どっちもあるんだろうね」

    恋愛禁止、炎上、特典商法、握手会、スルースキル、無料文化、卒業……
    この数年であっという間に市民権を得た言葉たちの中には、
    アイドルという存在から発生したものも多い。
    新しい言葉が生まれた場所から見えてくるのは、今を生きる人々の様々な一面。
    現代社会での生き方を模索するすべての人へ送る、真摯な物語。

  • 『武道館』 朝井リョウさん

    1.興味の原点と物語への入り口
    普段アイドルにはまったく関心がない私が本書を手にしたのは、大好きな朝井リョウさんの作品だからだ。

    家族の本棚から何気なく選んだ一冊だったが、読み進めるうちに「アイドル」という枠組みを超えた、人生の選択に関する切実な問いへと引き込まれていった。
    ------------
    2. 「正しさ」ではなく「正しかった選択」へ
    物語の中で主人公たちは、世間の目やファンの理想、自身の葛藤の間で激しく揺れ動く。

    その中で強く心に残ったのが、「正しい選択なんてこの世にない。正しかった選択、しかないんだよ」という碧の言葉だ。私たちはつい最初から「正しい道」を探そうとする。しかし、最初から約束された正解などどこにも存在しないのだ。
    ------------
    3. 自分の足で選び、生き切る覚悟
    自分で決めるとは、選んだ道をその後の生き方によって「正しかった選択」へと育て上げていく覚悟を持つことなのだろう。

    他人の期待に流されず、自分の意思で選び取ること。

    後悔しない選択とは、完璧な道を選ぶことではなく、自分が選んだ道を誇れるように誠実に生き切ることなのだと教えられた。

  • 幼いころから歌って踊ることが大好きで、アイドルデビューした愛子。
    ところが1年で、初期メンバーのひとりが卒業してしまい……。

    日本武道館ライブを目指して、一歩ずつ進んでいく〈NEXT YOU〉。
    望まない仕事や、炎上や批判を乗り越えながら、頑張る彼女たちの熱量がすごい。

    なりたかったアイドル、なりたかったわけではないアイドル。
    それぞれが、アイドルの在り方と向き合っていく。

    最後まで彼女たちのパワーを感じる物語。

  • オタクになってから読み返すと、初めて読んだ時とは全く違う作品だった。
    印象に残ったのは、「正しい選択」とは何かという問い。正しい選択とは、自分で選んだ道を信じ続けて、正しかったと思えるように生きること

    絶対的センター碧や愛子の恋愛には共感する部分もあったが、オタクの立場からすると「それも全部承知の上でアイドルになったんじゃないの?」という気持ち
    だからこそラストには違和感が残った。脱退して別の人生を選び、その選択を信じて歩んできたなら、それも一つの正しい選択のはず。それなのに、13年後に初期メンバーとして武道館のステージに立つ結末は、作品のテーマと少し矛盾しているように感じた。

    もし自分が今のメンバーを応援しているファンだったら、正直あまり歓迎できない。武道館は今のメンバーが努力を積み重ね、13年間継続してようやく掴んだ夢の舞台。そのステージに立つのは、その道を歩み続けたメンバーであってほしい。過去のメンバーへの感謝はあっても、そのポジションはもう今のメンバーのもの。

  • 『武道館』というアイドルにとっての成功の証に焦点を当て、夢を追うことの美しさ、その過程で待ち受ける残酷さを描いた作品。自分の人生を自分で選び、自分で引き受けることの尊さを教えてくれる一冊でした。

    「限りあるものをどう使うかに、その人らしさが出る」、アイドルとしての自分に費やす時間、体力、そして心。それらは無限ではなく、だからこそ、何に賭けるかが「その人らしさ」になる。愛子が武道館を目指す過程は、まさに「限りあるもの」をどう使うかの選択の連続であり、その選択が彼女自身を形作っていく。

    これまでアイドルとは無縁の生活でしたが、作中で描かれる夢の実現とその裏にある孤独や葛藤が自分の人生と重なり、一気に読んでしまいます。

    自分の人生をどう使うか——その問いに、真っ直ぐ向き合いたくなる作品でした。

  • 序盤はあんまりかな?後半にかけての展開がおもしろすぎて一気読みしてしまった。最近推し活に勤しむ私には少々しんどい内容でした。アイドルも大変だ。。

  • 『武道館』
    朝井 リョウ (著)

    ---

    ### **あらすじ**
    「【アイドル】という職業が背負う十字架を、一度すべて言葉にしようと思いました。すると、不思議と、今の時代そのものを書き表すような作品になりました」(著者)

    結成当初から「武道館ライブ」を目標に掲げて活動してきた女性アイドルグループ「NEXT YOU」。握手会の工夫や販売戦略、振付のバリエーションなど、さまざまな手法を駆使しながら着実に人気を集めていく。しかし、知名度が上がるにつれ、彼女たちは“アイドル”という立場が持つ光と影の両方を目の当たりにすることになる。

    「人って、人の幸せな姿を見たいのか、不幸を見たいのか、どっちなんだろう」
    「アイドルを応援してくれてる人って、多分、どっちもあるんだろうね」

    恋愛禁止、炎上、スルースキル、特典商法、卒業――現代アイドルを取り巻く言葉の数々を掘り下げながら、彼女たちの選択の先に何が待つのかを描く。

    ---

    ### **感想**
    朝井リョウさんの作品をいくつか読んできましたが、共通しているのは、若者たちの悩みや葛藤、未来への不安と希望をリアルに描いている点です。本作もその延長線上にあり、アイドルという華やかな世界の裏側にある苦悩や決断が丁寧に綴られています。

    特に印象的だったのは、少女としての純粋な気持ちと、アイドルとしてのプロ意識との間で揺れる葛藤の描写です。「アイドルはファンに希望を与える存在」という理想の裏には、自己犠牲や外部からの厳しい視線がつきまとい、彼女たちは常に選択を迫られます。その選択が正しかったのかどうかは、後になってからしかわからない――そんな人生のリアルな側面も、本作ではしっかりと伝わってきます。

    ティーンの女子には特に共感しやすい内容ですが、アイドルを消費する側としての視点を持つ大人にも、多くの気づきを与えてくれる作品です。華やかな舞台の裏にある現実を知ることで、「アイドル」という存在をより深く理解できる一冊でした。

  • アイドルの裏側にある葛藤や苦悩、選択を覗き見できた気分。
    ファンが持つ理想のアイドル像に 従順でいることの大変さが高い解像度で描写されている。

    主人公である愛子は女性アイドルグループNEXT YOUのメンバーであり幼い頃から歌って踊るのが大好き。
    しかし人気と知名度が上がるにつれ、望まない視線も向けられるようになり複雑な気持ちが膨れていく。
    異性と並んで歩いたら熱愛だと騒がれる。
    ブランド物を身に着けたらやっかみのような声が上がる。
    CDに握手券を付けたら同じ物を何枚も買わせていてずるいと言われる。
    ネット上に上がる声はいつも悪意に満ちていて手のつけようがない。
    ただ、そんな人ばかりではない。
    純粋に応援してくれるファンがたくさんいる。
    きっとそういう人は「画面の中の推しを眺められればそれで十分」というような静かな人たちばかり。
    だから批判が目立つ。
    本書に出てくるアイドルたちにはこのサイレントマジョリティの存在を感じながら強くなっていってほしい…と切に願わずにはいられなかった。

    NEXT YOUを脱退し、女優業の夢を追った杏佳も印象的。
    初めは映画や写真集など目立った仕事があったが、だんだんスケジュールに空きが出てきた。
    するとネットがここぞとばかりに『応援はしているけれど、アイドル以外の道で生きていけるほどの商品価値はないことはきちんと知らしめておきたい、そしてそんなことこちら側はずっとずっと前からわかっていた』という醜い心理が露呈した冷たい批判を喧伝する。
    何をしてもあーだこーだ言われるアイドル。
    時代が変わってもこの粘り濃い視線は形を変えてつきまとう。

    アイドルに歪んだ理想像を押し付けるファンや性格が悪いネット民の処刑場のような1冊だった。
    メディアの芸能人に対する雑な扱いにモヤモヤを感じたり、推しの炎上を経験したことがある方必見。
    ハッとさせられる名言がそこら中に散りばめられている。

  • 友人の紹介で本作を手に取りました。「女性アイドル」を題材とした本作。1人の少女がアイドル活動を行いながら、夢や恋愛などに想いを馳せていくというストーリー。

    刊行された年を見ると2015年とあり、当時のことを少し調べてみると、傷害事件やスキャンダルといったことが起こり、アイドルが悪い意味で注目がされていた時代であり、すごくタイムリーだったのだなと思います。

    その当時と比べると、アイドル卒業生が結婚したり、暴露系YouTuberの存在によりアイドルの偶像性が少し落ちただけでなく、YouTuberやインフルエンサーのようにいわゆる一般人でも人気者になれる時代になったので、アイドルというものの捉え方が少し変わったように思いました。

    アイドルの恋愛全てが肯定されるべきとは思いませんが、貶すほどではないっていうところが本音ですかね…

  • 昭和世代の僕からしたら、「武道館」ってすごく崇高な場所と思ってたけど、今の時代はそうでもないのかと思う。「武道館」と言うネームバリューがない。
    この作品はあまり刺さらなかった。

  • 武道館を目指すアイドルの話。
    リアル世界で実際に起こった事も書いてあって、なんだか虚実ないまぜ。
    アイドルと言うイメージは、多分アイドルやっている人でも違うんだと思う。
    そして、その時代に寄っても。
    何だかその変遷も感じられた。
    恋愛事情なんかもあって、そりゃそうだろうなと思いつつ、絶対恋愛なんてありえない!裏切りだみたいに思う人もいて。

    何だか難しいよな、アイドルって。

    若い時に比べて、アイドルを見る目は変わった感じがする。
    同じ顔って言われるのも分かる気もしつつ、その人たちにお金を掛けてしまう気持ちも分かったりする。

    なんか結局凄いんだよなアイドルって。
    歌に踊りにバラエティに演技。
    超人だわ。

  • アイドルであり高校生。スルースキル、煽り耐性、音ハメダンス、恋愛、友情、ファン…。何か青春。

  • この文庫本ではなく、単行本読了時に書いたレビューです。ご容赦ください。<(_ _)>

    冒頭───
     右手で母の手を、左手で父の手を握っていた。
    「こうでもしていないと、愛子はすぐ踊ったりしちゃうから」
     危ないのよほんとに、とぼやく母の照れくさそうな横顔が、通りを走る車のライトに照らされている。
    「踊りながら道路に飛び出したりしてな。変質者だと思われるぞ」
     続けて父がそう言うと、後ろを歩いている大地の両親がおかしそうにくすくすと笑った。両親と手をつないでいるようすを大地に見られるのはなんとなく恥ずかしかったけれど、両親の言うことは本当だし、実際、そんなことを気にしていられないくらい、愛子の心の中は忙しかった。


    遥か昔、ステージ上で
    「普通の女の子に戻りたい!!」と泣き叫んで、芸能界を引退したアイドルグループがいた。
    今から遡ること40年近くも前の話になる。
    「普通の女の子」。その気持ちは、取りも直さず、

    “若くて、女の子で、歌うことと踊ることが大好きで、大好きな人のことも大好きだという状況は、どうして成り立たないのだろう”

    という、この作品の中に出てくる気持ちに近いはずだ。

    彼女たちは「普通の女の子」と同じように、友達を作ったり、何かを学んだり、誰かに恋をしたりという、ごく当たり前のことがしたかったのだ。
    この発言から約半年後、人気絶頂の最中、彼女たち三人は揃って芸能界から去ることになる。
    「キャンディーズ」から「普通の女の子」に戻って、自分を見つめ直すために。

    アイドルはアイドルとして存在し続けるために、様々な制約を課せられる。その中で最も重要な掟は、恋愛禁止。彼氏や彼女を作ってはいけない。
    それは、昔も今も同じだ。
    ファンの幻想を壊せば、アイドルとしての価値はなくなるのだから。

    アイドルとして生きていくのか、普通の女の子に戻るのか、結局自分自身の意志でどちらかを選ぶしかない。
    この作品の主人公「愛子」は、本当の自分として生きていくために、大好きな人を大好きだと言うために、アイドルの地位を捨てることを選択する。

    この作品は、アイドル好きだと公言する作者朝井リョウ君の目線で見たアイドル論だ。
    ただし、単なるアイドル論として語れないのは、彼女らに限らず、人間誰もがその成長の過程で、進むべき道を自分で選び取って生きて行かねばならないからだ。
    右へ行くか、左へ行くか、人生が一度きりのものである以上、選択肢は常にひとつ。後戻りはできない。
    選んだ道を正しかったかどうかは、自分のその後の生き方で決まる。
    でも実際には、本当に正しい道を選んだかなんて、誰にも分からない。

    “「正しい選択なんてこの世にない。たぶん、正しかった選択しか、ないんだよ」”

    そう思い込んで生きていくしかないのだろう。

    キャンディーズが活躍していた頃と同じ時期、ラジオの深夜放送「落合恵子のセイヤング」を聴いていた高校時代の私の心の中に今でも刻まれている言葉がある。

    リスナーから送られてきた手紙の内容は、田舎から東京に一人出てきたものの、寂しくて、辛くて、哀しい毎日を送っているというものだ。
    でも、その手紙の最後の台詞がこうだった。
    「誰が選んだ道じゃない。自分で選んだ道だもの」
    結果的に苦しい選択をしたとしても、それは飽くまで自分で選び取った道なのだ───。

    自分の歩んできた道をあらためて考えさせられる作品だった。

    アイドル話をここまでの作品に仕上げる朝井君の手腕はさすがだ。ただし、この作品では、これまでの彼独特のキラキラ光るような比喩があまり見られなかったのが残念でもある。

    さて、東宝を退職し、会社員生活との二足の草鞋を辞めて、作家業に専念するこれからの朝井君。
    今後どんな作品を産みだしてくれるのか、別の意味で楽しみだ。

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著者プロフィール

朝井リョウ・作家。1989年岐阜県生まれ。2009年『桐島、部活やめるってよ』で、「小説すばる新人賞」を受賞し、デビュー。11年『チア男子!!』で、高校生が選ぶ「天竜文学賞」を受賞。13年『何者』で「直木賞」、21年『正欲』は第34回「柴田錬三郎賞」を受賞し、どちらも映画化された。作家生活15周年記念作品『イン・ザ・メガチャーチ』は第9回「未来屋小説大賞」を受賞した。その他著書に、『どうしても生きてる』『時をかけるゆとり』『死にがいを求めて生きているの』『スター』『生殖記』等がある。

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