革命前夜 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
4.18
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本棚登録 : 3205
レビュー : 254
  • Amazon.co.jp ・本 (467ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167910310

作品紹介・あらすじ

この国の人間関係は二つしかない。密告しないか、するか──。第18回大藪春彦賞受賞作!革命と音楽が紡ぎだす歴史エンターテイメントバブル期の日本を離れ、ピアノに打ち込むために東ドイツのドレスデンに留学した眞山柊史。留学先の音楽大学には、個性豊かな才能たちが溢れていた。中でも学内の誰もが認める二人の天才が──正確な解釈でどんな難曲でもやすやすと手なづける、イェンツ・シュトライヒ。奔放な演奏で、圧倒的な個性を見せつけるヴェンツェル・ラカトシュ。ヴェンツェルに見込まれ、学内の演奏会で彼の伴奏をすることになった眞山は、気まぐれで激しい気性をもつ彼に引きずり回されながらも、彼の音に魅せられていく。その一方で、自分の音を求めてあがく眞山は、ある日、教会で啓示のようなバッハに出会う。演奏者は、美貌のオルガン奏者・クリスタ。彼女は、国家保安省(シュタージ)の監視対象者だった……。冷戦下の東ドイツで、眞山は音楽に真摯に向き合いながらも、クリスタの存在を通じて、革命に巻き込まれていく。ベルリンの壁崩壊直前の冷戦下の東ドイツを舞台に一人の音楽家の成長を描いた歴史エンターテイメント。解説の朝井リョウ氏も絶賛!この人、〝書けないものない系〟の書き手だ──。圧巻の音楽描写も大きな魅力!本作を彩る音楽は……ラフマニノフ 絵画的練習曲『音の絵』バッハ『平均律クラヴィーア曲集』第1巻 『マタイ受難曲』リスト『前奏曲(レ・プレリュード)』ラインベルガー オルガンソナタ11番第2楽章カンティレーナ ショパン スケルツォ3番 ブロッホ『バール・シェム』より第2番「ニーグン」 フォーレ『エレジー』 ベートーヴェン 『フィデリオ』 ……etc.

感想・レビュー・書評

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  • 歴史と革命と音楽をテーマにした、大変、重厚な物語でした。

    主人公の眞山柊史はドレスデンの音楽大学で、ピアノを学ぶ23歳の日本人留学生で、バッハの平均律に深い思い入れを持っています。

    話は昭和の終わった日から始まります。
    柊史は教会で見かけた美貌のオルガン奏者のクリスタ・テートゲスに好意を持っています。
    ラカトシュ・ヴェンツェルは、ハンガリーからの留学生で、バイオリンの天才。
    パートナーであるピアニストをすぐに変えてしまうことで有名です。柊史も何度目かのパートナーに選ばれます。
    他にイェンツ・シュトライヒはやはりヴァイオリン科の逸材で、柊史とも友好関係にあります。
    スレイニットはベトナムからのピアノ科の留学生でラカトシュにのめり込むあまり、才能を潰されたという噂の女性です。
    柊史には、日本にいる父の友人の息子でヘルベルト・ダイメルという友人もいます。ヘルベルトの娘、ニナ・ダイメルが母親の亡命にショックを受けて柊史の元に駆け込んできて、柊史は彼女のために尽くします。

    そのころの東西ドイツはまさに革命前夜。
    誰が国家保安官(シュタージ)であるとか、スパイであるとか、又は亡命を目論んでいる、などとさまざまな憶測が飛び交います。

    柊史は、憧れのオルガニスト、クリスタがいつの間にか、ラカトシュと組んで、ヘルベルト・ダイメルより預かった、彼の父が作曲した曲を二人が大変息の合った演奏をするのを聴いて、ショックを受けます。
    そこらへんから、実に様々な東西ベルリン周辺の歴史と人間模様がからみあって展開していきます。

    あちらの大学生は皆、大人だと思いました。そうでなければ、激動の歴史の中で生きていけなかったのでしょう。
    そして、ベルリンの壁崩壊。
    彼らの青春も終わりを告げられます。

    • くるたんさん
      まことさん♪こんにちは♪
      まことさんのレビューに惹かれて手にしました。
      この時代のこの国で生きることの様々なしがらみにはやっぱり言葉が出ませ...
      まことさん♪こんにちは♪
      まことさんのレビューに惹かれて手にしました。
      この時代のこの国で生きることの様々なしがらみにはやっぱり言葉が出ません。

      終盤はものすごい力強いピアノの音を聴いた気分です。
      圧巻でした。
      ありがとうございました(*ˊᗜˋ*)/
      2020/07/02
    • まことさん
      くるたんさん♪こんにちは。

      今、タイムラインを見ていたら、発見してびっくりしました。
      須賀しのぶさんの本は『また、桜の国で』も読まれ...
      くるたんさん♪こんにちは。

      今、タイムラインを見ていたら、発見してびっくりしました。
      須賀しのぶさんの本は『また、桜の国で』も読まれていますよね!
      まさか、私のレビューでとは思わなかったです(*^^*)
      2020/07/02
  • 終盤の力強さは圧巻。

    舞台はベルリンの壁崩壊直前の冷戦下の東ドイツ。

    一人の日本人ピアニスト留学生の目線から描いた物語。

    音楽部分には手こずったけれどこの時代のドイツ情勢は興味深いものがあった。

    仲間かそうでないか=密告者しないかするかの二つしかない人間関係、国に残っても去ってもどちらにも残る逃れられない苦しみに心打たれる。

    少女ニナの考え、この年齢で社会情勢の中での自分の確固とした意思にはこちらまで心揺さぶられたな。

    人として自由に息をつけ生きられる、自分の音を奏でられることの尊さもまた胸を打つ。

    終盤は圧巻。まさに力強いffフォルティッシモの連続。
    誰もの関係、心情が複雑に絡み合い群衆の叫びと一体になって力強く響く、そんな時間を体験した。

    • まことさん
      くるたんさん♪

      少女ニナの行動力には、私も驚きました。
      確か、平成になった日から始まりましたよね。
      私も、存在していた、あの時間に...
      くるたんさん♪

      少女ニナの行動力には、私も驚きました。
      確か、平成になった日から始まりましたよね。
      私も、存在していた、あの時間にあんな凄い歴史が存在していたなんてと思うと驚きでした。
      2020/07/02
    • くるたんさん
      まことさん♪こちらにもありがとうございます♪
      そうですよね、平成になったあの年、ドイツでこのような時が流れていたとは…。
      毎回思うけれど、あ...
      まことさん♪こちらにもありがとうございます♪
      そうですよね、平成になったあの年、ドイツでこのような時が流れていたとは…。
      毎回思うけれど、あの時代の欧州の社会情勢に左右される人生には言葉が出ません。
      2020/07/02
  • フォロワーのまことさんのレビューを読んで気になっていた作品。
    書店で訴えかける何かを感じて購入。
    ブクログで評価を調べてみたところ、かなりの高評価。
    期待大で読み始めた。

    読み始めは・・・蜜蜂と遠雷のような雰囲気の小説なのかなぁ?
    自分の好みの小説とはちょっと違ったか!?と思ったが・・・。


    音楽にはあまり詳しくない私は、小説に出てくる音楽のYouTubeをBGMにしながら、音楽のイメージを頭に思い浮かべながら読み始めた。

    これは今から30年ほど前の時代。
    ベルリンの壁が崩壊される前の東ドイツに音楽留学したマヤマの話。

    美しい音楽と共に、当時の東ドイツの情勢がヒシヒシと伝わってくる。

    ある程度は当時の状況は分かっていると思ったが、この小説は凄い。
    映画を見ているかのように、当時の世界に読み手を連れ込んでしまう。

    自分自身が東ドイツに迷い込んだような錯覚に陥る。
    そうなってからの展開はとても早い。

    最後は全身鳥肌が立っていた。
    久々の感動。

    超大作。誰にでも超絶オススメできる作品。

    普段小説なんて読まない旦那にも、これは超絶オススメ!!と本を無理やり渡してしまった。

    そのくらい素晴らしい作品!

    • まことさん
      bmakiさん♪こんにちは!

      お読みいただき、嬉しいです(*^^*)
      重厚で、ドラマティックなストーリーでしたね。
      須賀しのぶさん...
      bmakiさん♪こんにちは!

      お読みいただき、嬉しいです(*^^*)
      重厚で、ドラマティックなストーリーでしたね。
      須賀しのぶさんの他の作品も読んでみようと思い、今、積読中です。
      2020/05/05
    • bmakiさん
      まことさんこんばんは。
      素敵な小説のレビューありがとうございました。
      これは凄い小説ですね!
      最初読み始めるまで時間がかかりましたが、...
      まことさんこんばんは。
      素敵な小説のレビューありがとうございました。
      これは凄い小説ですね!
      最初読み始めるまで時間がかかりましたが、物語にのめり込んでしまってからはあっという間でした!

      素敵な小説のご紹介ありがとうございました!!
      2020/05/05
  • 革命前夜 須賀しのぶ著

    1.舞台
    ベルリンの壁がまだ存在する東西ドイツが舞台。
    主人公は日本人の留学生ピアニスト。

    音楽を志す学生。祖国に誓うそれぞれの想い。

    2.時代
    日本はバブル。ドイツは東西分断。
    日本とドイツの当時の風景、描写。
    そして、人物を通じての世相。

    そこから見えてくるものは、生きる、生き抜くことへの執着です。
    国家と我の人生を対比して、それぞれの人物がもがきながら、解をみつけようとする姿です。

    3.内容
    静かなるも疾走感が溢れる文体。
    音が溢れるだけでなく、異国の空気、風、そして光が行間から流れる文体。

    4.最後に
    本が好きならば、是非、この 革命前夜 の世界に身を置いてみてほしいと願います。

    改めて作家の方の創造力に感謝です。

  • バッハを敬愛し、東ドイツ(DDR)へ音楽留学した、眞山。
    しかし、強烈な個性を持つ演奏家たちに触れ、自分の音楽を見失っていく。

    第18回大藪春彦賞受賞作。

    ピアニスト、ヴァイオリニスト、オルガニスト。
    さまざまな音楽家と、DDRの街にとけこんだ音楽。

    自分の音楽を模索する、演奏家としての物語が、まずしっかりしている。

    くしくも留学は、昭和から平成へと変わる日。
    西と東の違い。
    共産主義国家のこわさ。

    音楽だけでなく、政治的、社会的問題ももりこまれ、ベルリンの壁崩壊前夜の雰囲気を感じられる。

    独特の味わいがある歴史小説。

  • 丸善書店でゴリ押ししていた一冊。歴史×音楽×青春、圧倒的エンターテイメントの売れ込みでしたが、まさにそのとおり。ミステリー要素まであり。めちゃくちゃ面白かった。余韻から抜け出せない。

    昭和が終わったまさにその日に、東ドイツにピアノ留学したマヤマが直面するDDRの状況、圧倒的な才能と自分の音楽との対峙、そして革命。ぜひともスピンオフが読みたい。

  • 図書館の予約で何週間か待ってやっと到着したが、すでに次の予約がたくさん入っているようで「延長不可」とのこと。人気の小説のようだ。

    主人公・眞山柊史は、音楽留学のため東ドイツへ向かうところからこの物語は始まる。彼が日本をたったのはちょうど時代が昭和から平成に変わるその日。そして、留学の先は、第二次世界大戦後、東西に分断されたドイツの東側、つまり西のドイツ連邦共和国に対するドイツ民主共和国(DDR)だ。

    彼の年齢は23歳、平成元年が1989年なので、1966年生まれということになろうか。従って、あの東西分断のためにベルリンの壁が築かれた1961年を知らない世代である。

    彼は留学の地で、ピアニストとして自身の技術の錬磨を目指すが、同じく様々な国から音楽を求めて来ている留学生たちと接する中で、自らの音楽の追求にスランプを感じたり、また当時のDDRならではの事件に巻き込まれていく。

    冒頭から、ラフマニノフやバッハなどの曲目が登場し、常に音楽が背景に物語が進んでいく。それらの曲をBGMに読み進めていけば、よりリアリティを感じながら物語を楽しむことができる。

    音楽留学の世界、至高の音楽を追究する世界は、これまで自分にとっては未知の世界であり、その点にも興味深かったが、そのドラマが分断中の東ドイツ、シュタージに監視され、隣人を心から信じることに規制されるような生活環境下で繰り広げられていく点で、スリリングな展開にどんどん物語の中に引きずり込まれていくようであった。

    現在も分断中の北朝鮮から来たピアニスト、ベトナム戦争という歴史を持つベトナムからきたピアニスト、そしてドイツと同じく敗戦国である日本から来た主人公、分断中の東ドイツで出会う美人オルガニスト、ベルリンの壁崩壊と突破口となるハンガリー出身のヴァイオリニスト等と、国家的な背景も様々で、しかも個性もそれぞれに特徴的なキャスティングだが、音楽といういわゆる共通語を通じてドラマが展開していく。

    ベルリンの壁崩壊の「革命前夜」までの物語。その劇的なエンディングは、その後に展開される新しいドラマを読者に想像させてくれる。

  • 2020.8.25書店で購入しました。須賀しのぶさんが、文春文庫に、なっているとは!
     面白さ、間違い無し!まだ読んでないけど、FIVE☆つけちゃいましょう。

  • 1980年代後半、眞山柊史は東ドイツのドレスデンへピアノ留学へ赴いた。音楽の才能溢れる学生が世界中から集う学内で、柊史は圧倒的な音楽の才をまえに自分の音を見出せずにいた。ベルリンの壁崩壊直前の冷戦下の東ドイツを舞台に、一学生の柊史は歴史的革命の渦へと徐々に巻き込まれていく。

    ピアノ、ヴァイオリン、オルガン……本書には様々な楽曲が登場するので、折角なので実際の音楽を聴きながら読みました。
    序盤はドレスデンの音楽学校での人間模様が中心ですが、現地の人々との交流を通して徐々にその背景に渦巻いている東ドイツと西ドイツを隔てる大きな壁の存在が浮き彫りになっていきます。西ドイツへ想いを馳せる人々の心情、監視下に置かれる人々の存在、自由を手にするための奮闘・裏切り、ベルリンの壁崩壊直前の混乱の様子など、ストーリーを通してその土地と人の熱がありありと伝わってきました。
    「この国には密告するか、しないかの二通りの人間しかいない」――比較的序盤で登場人物の一人が口にするこの言葉は、終始引っかかるものがありました。柊史はもちろん読み手自身も登場人物への不信感が拭えずに終始読み進めることになります。

    数年前にベルリン~ドレスデンへ旅行へ行ったこともあり、実際に目にした地や建物が作中に多数登場していたのも個人的な魅力の一つでした。須賀しのぶさんは著者としても作品としても初見だったのですが、こんなにも重厚な作品を書かれるとは嬉しい発見です。他の作品もぜひ読んでみたい。

  • 初読みの作家さんにして最高の当たりを引いた高揚感がすごい。面白い。とにかく終わりまで読み続けてしまうほど面白い。ついこの間『熱源』を読み終わった後のような興奮。歴史小説(と言っていいのか?)だから当然自分にとっては異世界の話だが、まるでその場にいるような臨場感が味わえる。長いけれど、気づいたら400ページ駆け抜けていた。

    ここまで絶賛してきたが、内容についても少し触れておく。物語は昭和が終わり、平成へと時代が変わった1989年の東ドイツ(作品の中ではDDR)から始まる。ピアノ留学に訪れた眞山柊史は、今まで自分が暮らしていた日本とDDRのあからさまな違いに戸惑い、スランプに陥っていた時に教会で見事なオルガンの演奏を耳にする。しかも弾いていたのが美しい金髪の女性、クリスタ。最初は避けられていた眞山だったが、次第にクリスタと関わることでDDRの闇に足を踏み入れることとなる。ナチスのゲシュタポのような秘密警察であるシュタージ、彼らの行う密告、そしてシュタージの目を盗み西への亡命を企てる人びと。
    この国の人間関係は二つしかない。密告するかしないか。というクリスタの恐ろしい言葉を聞き、眞山はそれでもDDRを覆う監視の眼に屈さず、彼女や避難所と称される教会の人びとと関わることを辞めない。

    物語は終始眞山視点で語られるため、誰が見方で誰が敵だかを勘ぐりながら読んでいくようだった。いざとなったら家族でさえも密告してしまうという世界は恐ろく、きっと同じ状況に置かれたら眞山のように精神が不安定になってしまうだろう。また留学しているのは眞山一人だけではなく、ハンガリーから来たヴァイオリニストのヴェンツェル(むかつくけどどこか嫌いになれない)、北朝鮮から来たピアニストの李、そしてベトナムからのピアニストスレイニェットも物語を構成する上で重要な役を演じる。そして何より演奏のシーンがどれも表現が立体的で、まるでピアノやヴァイオリンの音が本から聞こえてくるような気さえする。
    巻末の解説で朝井リョウさんがおっしゃっているが、この本を読むまでベルリンの壁の崩壊は自分にとって単なる歴史的事実でしかなかった。だけどこの物語があるおかげで壁の中にいた人々が確かにいたこと、そして暮らしていたことが分かり、壁が崩壊する過程や原因を深く内部に迫りながら考えることができるのだ。そしてその新しい視点を与え、考えさせてくれるのが、この小説の大きな魅力だと思う。
    しかし欲を言えば巻頭に町の位置関係などが分かるドイツの地図がほしかったなと思う。

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著者プロフィール

『惑星童話』にて94年コバルト読者大賞を受賞しデビュー。『流血女神伝』など数々のヒットシリーズを持ち、魅力的な人物造詣とリアルで血の通った歴史観で、近年一般小説ジャンルでも熱い支持を集めている。2016年『革命前夜』で大藪春彦賞、17年『また、桜の国で』で直木賞候補。その他の著書に『芙蓉千里』『神の棘』『夏空白花』など。

「2019年 『荒城に白百合ありて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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