風のベーコンサンド 高原カフェ日誌 (文春文庫 し 34-19)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 59
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167910471

作品紹介・あらすじ

心の痛みに効く、とびっきりのカフェご飯!東京の出版社をやめ、百合が原高原にカフェを開業した奈穂。かつてペンションブームに沸いたが、今はやや寂びれ気味の高原にやってきたのは、離婚を承諾しないモラハラの夫に耐えかね、自分の生活を変えるためだった。そんな背水の陣ではじめた奈穂のカフェには、さまざまな人が訪れる──。離れた娘を思う父、農家の嫁に疲れた女性、昔の恋に思いを残した経済アドバイザー……。「ひよこ牧場」のバターやソーセージ、「あおぞらベーカリー」の天然酵母のパンや地元の有機野菜など、滋味溢れる食材で作られた美味しいご飯は、そんな人々に、悩みや痛みに立ち向かう力を与えれくれる。奈穂のご飯が奇跡を起こす6つの物語。ジューシーなチキンのコンフィとモミジイチゴをのせたベビーリーフサラダ/高原野菜と鶏肉のチーズクリームシチュー/特製さくさくベーコンサンド/“男前な口どけ”のイチゴ入り泡雪羹/5種類のお豆のカレー/蕪と水菜と胡桃のサラダ/百合根のポタージュ/薔薇のシロップに漬けたくずきり…etc.女性を主人公に多くのベストセラーを輩出してきた著者が、自らレシピを試して「絶対においしいものだけ」がぎっしり詰まった連作集は、読者に栄養をたっぷり届けます。解説は漫画家の野間美由紀さん。──人間の心の機微の中にはいつも謎が隠れている。そんな謎を優しい目線で描いたこの小説も、紛れもなく上質なミステリーなのである。(解説より)料理研究家の高山かづえさんが作る高原カフェレシピも特別収録!

感想・レビュー・書評

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  • 少し前の浩太さんのレビューに惹かれて買ってきた。

    結婚生活に疲れ、東京の出版社を辞めて、信州の高原の村にカフェを開いた奈穂。そのカフェに様々な人が訪れて来て…という6つの短編からなるお話。

    最初の話はほんわか普通にいい話って感じだったのだが、次の話からは離婚調停中の夫が訪ねてきたり、「わざわざこんな村に移住してきてエコライフしてますみたいな顔してる、そういう人たちがうざったいの」と言う農家の嫁から愚痴られたり、10年前に同じように村に来て評判も良いパン屋さんの思わぬ悩みに当てられたり、全体としてお話の印象はさらっとした感じになっている中で、時折ドキッとするところが出て来る。
    そうした小さな毒気はさらりと切り上げられて話は進むので多少物足りなさは残るのだが、ふわふわした雰囲気だけではないところは面白い。

    最後から二つ目の話の、昔の恋に思いを残した経済アドバイザーの若い頃の肩肘張った生き方とそこから抜け出そうとする今の姿に好感。
    田中さんの正体は途中からはバレバレだったけど、まあ、いいかな。

    色々料理が出てきたが、最後のリゾートホテルの料理が一番おいしそうに感じたのは、毎日カフェの献立を考えている奈穂さんには申し訳ない。

    • 浩太さん
      高原なのに爽やかさはあまりなかったようで申し訳ありません。良いと思い続編をすぐ購入したのですが、もっとドロドロしていました(残念)
      高原なのに爽やかさはあまりなかったようで申し訳ありません。良いと思い続編をすぐ購入したのですが、もっとドロドロしていました(残念)
      2023/05/06
    • ニセ人事課長さん
      浩太さん

      こんにちは。コメントありがとうございました。

      この作者さん、初読みでしたが、爽やかな中にちょっとしたスパイスがあって、...
      浩太さん

      こんにちは。コメントありがとうございました。

      この作者さん、初読みでしたが、爽やかな中にちょっとしたスパイスがあって、悪くなかったと思ってます。

      続編については、貴兄のレビューも拝見し、行こうかどうか少し迷いましたが、怖いもの見たさみたいな感じもあって、読んでみようと思っています。
      2023/05/06
  • 「お勝手のあんシリーズ」と同様に美味しそうな料理が一杯出てくる。巻末にはベーコンサンドと淡雪羹のレシピも掲載されていた。
    信州の高原が舞台だが、私には若い頃に何度も行った原村を連想させた。大ブームのペンション村が年を経る毎に寂れて行くが、そこに35歳の訳あり女性が一人でペンションを改修してカフェを開業する。地域の牧場やパン屋さんの力を借りながら、カフェのメニューも向上して行く。
    モラハラの旦那との離婚騒動や知人の離婚、使っていたパン屋の閉店等、暗い話題もあるが、爽やかなイメージの高原という背景もあり、それ以上に高原を盛り立てていこうという住人達の努力や、幾つもの恋の物語、父と娘との物語などもあり、気持ちを明るくさせる。
    早速、続編をAmazonで注文してしまった。

  • 主人公が立ち直って前向きに生きていこうとする姿がよかったです。百合が原高原の人達は優しい人が多くて主人公も助かったと思います。カフェ、すごく羨ましいです。気軽に入れて、気取らず美味しいものを食べれる、そんなカフェをちかくで見つけたい。

    田舎ならではの嫌なところとかもちゃんと書かれていてよかったです。

  • 出版社でばりばり働いていた都会暮らしを止め、かつてリゾート地として一世を風靡した長野方面の「百合ヶ原高原」に移住し単身でカフェを開業した女性の物語。
    とにかく美味しそうな料理がたくさん出てくるのだが、タイトルにもなっているベーコンサンドの描写がすばらしく、特に食べてみたいと思った。冬が厳しく、地産の厳選食材を使うため利益になかなかつながらない。地元の人や同じく移住してきた人に冬は商売にならないから閉めた方がが良いとか、この地域の何が良いのといったことを言われても、好きだから来て、冬も営業したいからする、と。大変なことも多くあるだろうが、日々生き生きと楽しく暮らしている様子に、好きでやっている人が1番強いなぁと改めて思った。美味しい食べ物と高原の四季折々の自然にも触れられる清々しい本。続編も楽しみだ。

  • ランチメニューがすべて美味しそうで読んでいても目の前に湯気が出ているように感じる素敵な話。
    この商品はなんだろうって調べながら読む楽しみもあった。

  • バブルの頃はペンションブームで沸いていた…長野県ではあるだろうけれど、架空の「百合が原高原」
    元はペンションだった建物を居抜きで手に入れ、広い厨房を利用してカフェを開いた奈穂。
    店の名は「カフェ Son de vent(ソン・デュ・ヴァン)」
    “風の音”という意味らしい。
    女手一つで高原にカフェを開くなんて、素敵!なんてうらやましい!!
    …と読み始めるけれど…

    人にはそれぞれ抱えている事情がある。
    モラハラ夫に心を壊され、やっとのことで立ち上がって始めることができた店なのだ。
    心の拠り所であり、彼女は“お城”と言うが、プリンセスのそれというより、戦うための城塞かもしれない。

    それでも、料理のことを考える一生懸命な姿勢は好感が持てる。
    料理の描写ももちろん美味しい。
    そう思うのは村の人たちも同じ。
    カフェに集う常連たちは、親切に助けてくれて、奈穂は感謝の気持ちでいっぱい。
    しかし、ひっそり一人で訪れる人々は、やはり事情を抱え…

    外から入ってくるIターン移住者の苦労と、家を継ぐことを決め、新しい道を模索するUターンの若い世代。
    しかし、それを素晴らしい、うらやましいと、どうしても思えない者もいる。

    そんな人々の気持も全部包み込んで、高原は美しい。

    『風音』『夕立』『豊饒』『夢鬼』『融雪』『花歌』

    ーーーーーーーーーーーー
    ひよこ牧場の工藤南だけが、なんだかすべてのことがとてもうまく行っているように感じる。
    父親の反対を押し切って乳牛を入れて、今の業態を確立するまではとても苦労をしたのだとは言っているけれど…

    「あおぞらべーかりー」の伊藤夫妻には、主役になれるくらいの物語があった。

    ベーコンサンドの田中さんの正体は、割と早い段階で想像できましたよね?

    立ちはだかる存在というのが村の人々ではなく、大きなリゾートホテルというのも、奈穂が余所者意識に長く囚われることなく、“地元住民側”の意識を強く持つきっかけになっていて、いい感じにお話が進んでいる。


    続編が出たようなので、読むのが楽しみ。

  • 【美味しい小説】
    高原が舞台となれば、美味しい乳製品、加工肉、ジャムとパンに決まってますね!その通りでした(*´ω`*)
    菜穂が作るカフェのゴハンも、地元食材をふんだんに使った、ここでしか食べられない至福のご馳走。
    題名にあるカリカリのベーコンサンドもとても美味しそうに書かれてますが、私はひよこ豆のカレーやブルーベリーのジャムをつけたパンが食べたい!
    豊かな自然、新鮮な食材、おせっかいで世話すきで噂好きな田舎の人間関係。
    舞台が田舎だと単調になりがちなお話を、来店するお客さんが持ち込むちょっとした謎を含んだ噂話で盛り上げてます。
    都内からも旦那からも逃げ出した悲壮感が窺える部分や、寂れた高原で飲食店を営む事に対するリアルな経営難が書かれていて、悩みも多く、全面的に明るい小説ではないですが、菜穂や周りの人達が美味しい食事を取りながら、幸せを感じていく展開が心地よくて読みやすかった。

  • 今は廃れた高原でカフェを開く女性の物語。
    地元の人と他から来た人たちが懸命にここで生きているのが伝わる温かいお話でした。
    何よりカフェメニューが美味しそう!食べたい!
    高原のシチューも食べたいし、ベーコンサンドや苺の淡雪羹も食べたい!
    美味しいものは心を癒します。

  • 最初からすんなりと、するする物語に惹き込まれた。不思議。
    出てくる料理が美味しそうなのも良かった。
    穏やかだけど、程よく事件?も起こり、心地よく読める本だった。

  • 少し前に坂木司さんの「和菓子のアンソロジー」を読んで、この人の他の本を読んでみたいなぁ、と思って検索したら、なんと図書館で4ヶ月予約待ちしていたこの本の作家さんだった。

    なんとな〜く疲れている時は、美味しそうな食べ物が出てくる本を読むと元気が出る。美味しそうな食べ物が出てくる話は、大抵前向きな終わり方をするからだ。
    人生に若干の諦観がつきまとい始めたオバさんには、サクっと読め、気持ちの良い風を感じられる話。疲れた時にはちょっと出来過ぎでもハッピーエンドが良いのだ。2019.5.19

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著者プロフィール

 小説家、推理作家。
『RIKO-女神の永遠』で第15回横溝正史賞。
 猫探偵正太郎シリーズ、花咲慎一郎シリーズ など。

「2021年 『猫日記 Cat Diary』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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