山本周五郎名品館II 裏の木戸はあいている (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2018年5月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (480ページ) / ISBN・EAN: 9784167910716

作品紹介・あらすじ

生涯、膨大な数の短編を遺した山本周五郎。

没後五十年を経た今なお、読み継がれる作品群の中から、選びに選ばれた名品。短編選集決定版の第二巻(全四巻)





大火で焼けた家を自力で再建し、孤児を引き取り奮闘する大工と健気な少女を描く「ちいさこべ」。

将来を誓った男をひたすら待ち続ける女が迎える、無残だがどこか美しい結末「榎物語」。

生きるために暗愚を装い続けた若殿の悲劇「若き日の摂津守」。



ほか、「法師川八景」、「よじょう」、「裏の木戸はあいている」、「こんち午の日」、「橋の下」、「ひとでなし」など、全九篇を収録。



巻末に沢木耕太郎氏による解説エッセイ「彼らを輝かせるもの」を掲載。

みんなの感想まとめ

多様な人間ドラマが織りなす短編群は、江戸時代の情景を鮮やかに描き出し、読者に深い感慨をもたらします。孤児を引き取る大工の奮闘や、待ち続けた女性の無残ながら美しい結末、知的障害を演じる若殿の悲劇など、各...

感想・レビュー・書評

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  • 沢木耕太郎さんが選んだ山本周五郎短編作品シリーズ2巻目。

    これまたいずれをとっても味わい深い人間の様を言葉で描く秀逸なものばかり。
    短編でありながら多くの登場人物がその時代、その環境で必死に生きる様や心の機微を描き分ける山本周五郎さんの筆力に脱帽する。
    多作の作家なのにどんなに読んでも、既視感既読感がなく、何度読んでもこちらの心が動く様がたまらない。

    以下備忘録もかねて。

    『ちいさこべ』
    棟梁の意地。親の死を受け容れられず目の前の仕事に固執する様。

    『法師川八景』
     憐憫・慈愛・思慕・情愛が混じり合ってしまった想いを愛情と思い込む若さ。

    『よじょう』
     棚からぼたもち。
     自分が何も変わらずとも周囲が動く、変わる。
     幸が転がり込む。他人が自分を見る目、見方は不確かなもの。

    『榎物語』
     似たような寂しさや孤独感に互いに惹きつけられ、共鳴しているだけのことを愛情を思い込む稚拙な感情。
     p224より抜粋:
    子どもの指切り約束のようなもの
    互いの頼りない気持ちがよりあっただけ。
    成熟した男と女ではない。

    『裏の木戸はあいている』
    「善意」「救い」とは何か。
    テレビ局のチャリティ番組24時間テレビの偽善を感じる笑。

    『こんち午の日』
    義理難さが裏目に出る。
    妻は結婚後すぐにろくでなしのごく潰しと出奔。
    恩義は相手や周囲に通じるのか。
    自分の劣等感や負い目を手玉に取られ、相手に利用される様。
    本当に心底想ってくれる人を選ぶ難しさ。

    『橋の下』
    幼馴染を若気の至りの熱量で傷つけ、駆け落ちしてしまった過去の選択への逡巡と現在未来への諦念。
    P355より抜粋:
    どんなに重大だと思うことも、時が経ってみるとそれほどではなくなるものです。
    略)
    (何も持たず乞食をしながらでも)それでもなお、私は生きておりますし、これはこれでまた味わいもあります、そして、こういう境涯から振り返ってみると、なに1つ重大なことはなかったと思うのです、恋の冷える時間はごく短いものでしたし、友の出世もさしたることではない、友達はその後さらに出世をしたでしょう、以後略

    P359:
    怒りや悲しみや、苦しみさえも、いいものです

    「心に傷をもたない人間がつまらないように、あやまちのない人生は味気ないものだ」

    『ひとでなし』
    人間の多面性。他者との関係により様々な面が浮き出る。自分が何者であるかも大切だが、人との関りもそれと同様に重要。誰と出逢うか、どのように関わるか。

    『若き日の摂津守』
    村木嵐さんの『まいまいつぶろ』を思い出す。愚者を装い生き延びる藩主の心のうち。

    風景描写や季節の移ろいにも人々の思いや時間の経過が映し出され、言葉で書かれていないものが浮き出る。
    時代は異なれど、人間や生きることが地続きであることを再認識。
    自分一人ではないと何か支えを見つけた、そんな1冊だった。

  • いいです。勧善懲悪、予定調和ながら泣かせる。日本人のベースは、こういった物語で作られていったのだろう。テレビドラマでもよく見られるわけだ。

  • 国民的作家山本周五郎の珠玉の短編集。選者はあの沢木耕太郎。これが面白くないはずがない。様々なテーマ、舞台。山周の守備範囲の広さには驚かされる。

    直木賞ほか文学賞を全て辞退したという山本周五郎。没後50年が過ぎても今でも多くの作品を簡単に入手することごできる。作品数から言えば司馬遼太郎と並ぶ国民的な作家であろう。

    「ちいさこべ」「法師川八景」「よじょう」「榎物語」「裏の木戸はあいている」「こんち午の日」「橋の下」「ひとでなし」「若き日の摂津守」

    本書は、沢木耕太郎が4巻に9作品ずつ合計で36編の短編小説を選んだもの。さすがにいずれもレベルが高い。映像化するなら「ちいさこべ」が良くまとめられている。

  • ちいさこべ。受け入れる強さ優しさ
    法師川八景。凛とした美しさ
    よじょう。「まったく世間なんてものはへんなもんだ、なにがどうなるかわかったもんじゃねえ」
    榎物語。これはハッピーエンドなのか、そうじゃないかわからないが結果ハッピーエンドであって欲しい。
    裏の木戸はあいている。隠れた善意も素敵。
    こんち午の日。豆腐屋のはなし
    橋の下。
    素敵な意地の生き方がありました。

  • 沢木耕太郎セレクション「山本周五郎名品館2」.

    色んなパターンの9編の短篇が収録されているが,どれも味わい深い.ハッピーエンドでない話もあるが,主人公はどれも不器用な人達である.
    最後の「若き日の摂津守」がスカッとするなあ.

  • 55

  • 「山本周五郎名品館Ⅱ 裏の木戸はあいている」山本周五郎 (編:沢木耕太郎)

    山本周五郎の短編集。
    相変わらずのクオリティ。
    「ちいさこべ」。火事に焼かれて家屋敷と両親を失った大工の若棟梁。同じ火事で行き場を失った孤児たち、その面倒を見る娘さん。
    三つ巴それぞれの事情が描かれるだけなんですけれど、こういうお話しが染みてくるのは、世界には理不尽な都合で孤独になったり死んでしまったり不遇になったり、自力でどうにもならないことが多くある、まあつまり人生は運不運次第の受け身なゲームである、ということが感じてくる年齢以降なんだろうか、改めて思いました。
    「ちいさこべ」は何度もドラマにもなっているらしく、最近は現代に置き換えてマンガにもなっているそう。マンガをちょっと読んでみたい気もします。

  • 清々しいほどに一途な人間を描いた物語。沢木耕太郎の解説エッセイも楽しみ。

  • 【没後五十年、今なお輝きを放つ短編傑作選。全四巻の決定版!】膨大な山本周五郎の短編群から選びに選ばれた名品――「ちいさこべ」「法師川八景」「榎物語」「こんち午の日」「橋の下」等九編。

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著者プロフィール

(やまもと・しゅうごろう)
1903~1967。山梨県生まれ。小学校を卒業後、質店の山本周五郎商店の徒弟となる。文芸に理解のある店主のもとで創作を始め、1926年の「文藝春秋」に掲載された『須磨寺附近』が出世作となる。デビュー直後は、倶楽部雑誌や少年少女雑誌などに探偵小説や伝奇小説を書いていたが、戦後は政治の非情を題材にした『樅ノ木は残った』、庶民の生活を活写した『赤ひげ診療譚』、『青べか物語』など人間の本質に迫る名作を発表している。1943年に『日本婦道記』が直木賞に選ばれるが受賞を辞退。その後も亡くなるまで、あらゆる文学賞の受賞を拒否し続けた。

「2025年 『山本周五郎[未収録]時代小説集成』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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