降霊会の夜 (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2018年6月8日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784167910815

作品紹介・あらすじ

忘れちまう罪は、嘘をつくより重いんだ──



別荘地で暮らす、初老の〝私〟は、嵐の日に庭に紛れ込んだ女から、降霊会に招かれる。

生者と死者が語り合う降霊会。

〝私〟が会いたいと念じたのは、小学校の時の友人、山野井清。

〝私〟は、ある理由から彼を記憶の片隅に押しやっていた──。



そして、〝私〟は、さらに翌日も再訪するように誘われる。

会わねばならぬ人、安保闘争が激化する青春時代に知り合った百合子に会うために……。



私たちは、戦後の急速な発展の中に、何を置き忘れてきたのか。

戦後という時代に取り残された者たちへの、心揺さぶるレクイエム。



「浅田さんの描く昭和の風景は、どれほど痛みに貫かれていたとしても、

いつもどこかあたたかい」──森絵都・解説より。

感想・レビュー・書評

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  • 読み終えてみればホラーのようでもありひとりの男の告解でもある。
    長き人生の間には様々な出会いはあるが、誤解や勘違いが積み重なって辛い思い出となることも多いし、別れ際の一言が呪いのように生涯ついて回る場合もある。
    気軽に読める一冊、というよりはモヤモヤがいつまでも纏わりつく本でした。

  • 浅田次郎先生の小説を初めて読みました
    なかなか面白かった。
    ラストが昔の怪談話風で
    ウヒョーとなりました。

  • 昭和の時代背景も生きている。死者と生者のわだかまりがほぐれていく。「鉄道員ぽっぽや」や「地下鉄に乗って」などのタイムスリップものだが、一味違う。

  • 著者と私は同世代で、妄想世代である。プラタナスを最後、鈴懸の木と表記したのも解る気がする。「来しかたを さながら夢になしつれば 覚むるうつつの なきぞ悲しき」未練がましい男と薄情な女のものがたり

  • 降霊会の夜 浅田次郎
    読了
    さよならの本でした。
    56歳の私には淋しく悲しく考えさせられる話でした。
    浅田次郎著 2作目です。
    私より上の世代の方の時代の話。
    降霊会っていう言葉だけ、気になりますよね。
    私的には純文学です。ホラーではありません。
    ミステリーではありません。

  • 読後感がスッキリしない。
    主人公が生きてきた人生の中で忘れられた者からのメッセージを受け取り何を思うのか。
    さよならの一言さえも言わないのはなぜか。
    浅田次郎の作品の割に全体がもやがかかったように陰気で、登場人物の誰にも共感ができなかった。

  • 雷の夜に助けた女性から雨宿りのお礼にと、降霊会に誘われた主人公。
    そこで忘れかけていた自身の過去に思わぬ再会することになる…。

    前半は、同級生のキヨをめぐる霊たちとの再会を描く。
    裕福な家庭で育った主人公のゆうちゃんは、貧しいキヨに対して疎ましさと後ろめたさを感じ、どこか溝を作ってしまう。
    戦後復興期、大人も子どもも必死に生きている中、誰も救うことができなかった子の哀切が胸に迫る。

    そして、学生運動が盛んな時期、自堕落な青春の中で出会った恋人の霊を呼び出そうとする後半。
    若さゆえの傲慢さによって愛することも愛されることも自ら手放した主人公。
    時を経てもどこか独りよがりな主人公が過去と向き合った時、残ったのは救済ではなく鉛のように重い悔恨の念。
    どこか虚しさの残るラストは後味が悪くほろ苦かったです。

  • 人生の振り返り

  • 戦後の幼友達、発展途上時の若者になったユウちゃんの交友関係。ユウちゃん家族の情け深さはユウちゃんには伝承されなかった。昭和の時代が良くも悪くも懐かしくなる。

  • ズシンと重い物語だった。
    浅田次郎の王妃の館の次に読んだので殊更にギャップがキツい。

    主人公の短い幼い日の、そして生涯忘れるこたができなかった山野井清(キヨ)という少年のいじましさ。最期、父親に甘えるようにお願いしたことが、子犬に名前を付けてあげて、そのあとは捨ててしまっても良いから。という言葉。シベリア抑留の父親の体験を聞き、もう捕まって欲しくないと願った少年。当時でも簡単にはその想いに思い至らないのなら、戦争から遠く離れた今は尚更だろう。見守ってくれるお月様でなく、まっすぐ解決してくれる太陽が欲しかったのか。胸に突き刺さる言葉だった。時代が変わっても今も本質的に同じことが起こっている。

    この前半でもだいぶお腹一杯なのだが、後半は主人公の恋愛(百合子の描写で室生舞を思い浮かべた)。インバイトしたい人でなく、想いが強い霊魂が集まって来てしまう。真澄がボロボロになるまで愛するほど主人公の男に魅力があるように思えないが、本人もそう感じているのでは?だからどこか、見て見ぬふり、言わざる、聞かざる、という本書にあるような江戸っ子の粋のもう一つの顔で、絶妙な距離感で人と接してるのではないか。幼少期、主人公の祖母が生々しい現実を突きつけてくれたが、キヨの壮絶な最期を目の当たりにして無意識に辛い現実を避けてきたのかも。一方、本当にcold heart の持ち主なら、そもそもこの降霊会に参加することはなかったのではないか。不思議なエンディングは主人公に死期が迫ってるからかもしれない。

    そして読者も自身の悔悟を振り返らざるを得なくなる。私も、過去も、今この時も自分の平穏を守るために、気付いていながらも距離をとっているものがあるのではないか。戦争の犠牲者という時間も関係性も遠い人たちだけでなく、もっと身近な人たち。
    そんなことをまっすぐ突きつけてくる、胸がえぐられる物語だった。

  • 久しぶりの浅田さん、やはりとても温かく感動した、特に前半。
    死ぬ前にわかり合えることはどんなに幸せか。人それぞれの事情がある。
    妙な意地張って機会なんて伺ったりしないで素直にすぐには自分の課題でもあったなあ。
    伝えたい感情があっても伝えるすべや泣いてすっきるする涙もでないのが、肉体のない魂の世界かあ。

    秋の夜長に怪談でも読もうと思ったけど、いわゆる怪異話ではなかった。

  • いつもの浅田さんとは少し雰囲気が違う本。
    見なかったふり、忘れたふり…。それはきっと誰にでもある罪。だからこそ、胸にせまる。自分の中のそんな罪に向き合わされる本。

  • 2018年11月16日読了

  • 一つの出来事にも人の数だけ言い分があって、後で知るとそうか!と納得することがありますね。でも、霊が降りてくる・・・。を実は信じておらず今ひとつ話に入り込めなかった。

  • 【忘れちまう罪は、嘘をつくより重いんだ──】生者と死者が語り合う降霊会に招かれた作家の?私?は、そこで思いもかけぬ人たちと再会する……。青春時代に置き忘れたものとは。

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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