山本周五郎名品館III 寒橋(さむさばし) (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2018年6月8日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (480ページ) / ISBN・EAN: 9784167910907

作品紹介・あらすじ

生涯、膨大な数の短編を遺した山本周五郎。

没後五十年を経た今なお、読み継がれる作品群の中から、

選びに選ばれた名品。

短編選集決定版の第三巻(全四巻)



武士の、同輩への友情と、許婚への断ち切れない愛情との葛藤を描く「落ち梅記」。

浪人の、赤ん坊に対する人情が愛情に変わっていくプロセスを描く「人情裏長屋」。

長屋住まいの一家の、究極の人情ともいうべきものを描く「かあちゃん」。

亭主への、また父の娘に対する「情」の交錯がドラマに複雑さを与える「寒橋」。



ほか、「なんの花か薫る」「あすなろう」「落葉の隣り」「茶摘は八十八夜から始まる」「釣忍」など、全九編。



巻末に沢木耕太郎氏による解説エッセイ「寒橋のまぼろし」を収録。



さまざまな「情」が乱反射する、「情」の万華鏡ともいうべき一冊。

みんなの感想まとめ

さまざまな人間関係や情感を鮮やかに描き出す短編集で、友情や愛情、家族の絆が織り交ぜられた物語が展開されます。「落ち梅記」では武士の友情と愛情の葛藤が、また「人情裏長屋」では浪人の子供に対する人情が感動...

感想・レビュー・書評

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  • 敗戦から5年後の1950年に発表された作品。

    母を愛おしく思い大切にする父。母は病弱で早くに他界するが、父の深い愛に育てられた娘。その純粋な娘が自分を大切にしてくれる良人に恵まれる。とても幸せな日々が続くと思われたが。。。

    ***************

    純粋な娘の心は良人の不貞行為で無残にも裏切られる。良人は即座に謝るも娘の心はずたずたに傷つき、動揺し、発狂寸前まで行ってしまう。

    そんな娘を見かねた父は、病床から意外な事実を娘に打ち明ける。

    良人の不貞行為は実は父自身の不貞行為であり、父の恥を隠すために良人が罪をかぶってくれていたんだ、と。

    だから女中の中のお腹の中の子は、実は良人の子ではなく父自身の子なのだと。

    夫婦である以上、良人も浮気ぐらいするかもしれない、そのときは堪忍してやってくれ、夫婦の間の間違いはお互いに堪忍しあい、お互いに労り、助け合っていかなくちゃならない、それが夫婦だよ、と。

    そう言い残して他界した。

    純粋な娘は泣いて喜ぶ。やっぱり信じてた良人はそんな人じゃなかった。父にも正直に話してくれてありがとう、と泣いて感謝した。父が事実を言ってくれなければ一生苦しむところだった。

    娘は良人に言う、全部父から聞いたと、取り乱したりして堪忍して、と。二人は寄りを戻し、普段の生活が戻ることになった。

    良人は、娘が寝沈んだあと、静かに義父の仏壇に向かい、お父つぁん、ありがとう、もうこれっ切りです、決してもうあんなことはしません、と言うのであった。

    ***************

    時代背景が異なるが、僕は言いたい。

    いつの時代も愛しい妻を裏切ったり苦しめたり悲しませたりしては絶対にいけない。お父つぁんの言う通り、お互いに労り、助け合っていくことが必要だ。

    どの夫婦にも思いがけず様々な困難が襲い掛かってくるものだ。うちも思いがけない困難に何度も襲われた。

    **********

    「○○君そっくりの、目がぐりぐりしている子が欲しい」と妻は言った(うちは小学校からの幼馴染なので君付けで呼ばれています)。

    長く辛い道のりを経てやっとの思いで懐妊したときの二人の喜びは、暗く長く出口の見えないトンネルの向こうに一筋の明かりが見えた気分だった。

    その光もつかの間、急転直下、母体を守らなければならず緊急手術へ。。。

    病室で麻酔から目が覚めた妻は僕に言う、赤ちゃんは?!返す言葉がなかった。二人で泣いた。

    このような悲しい出来事が何度かあり、あるとき二人で話し合った。体の負担も相当なものだから、もうこれで最後にしよう、と。

    残念ながらドラマのようには行かなかった。そこで僕たちは色々な選択肢を探ったが、最終的に二人で生きていく道を選んだ。

    この他の困難など、他のご夫婦の方々と同様、数えきれないほどある。

    でもその度に力を合わせて乗り越えてきた。夫婦とはそうして愛を深めあっていくものだと思う。

    *********
    妻思いのお父つぁんの言う通り、夫婦はお互いに労り、助け合っていかなくちゃならないと思う。そこに二人の思いが幸せとして積もり重なり、良い二人の人生へとつながっていくのではと思った。

  • 「落ち梅記」
    武士の審議と友情。

    「寒橋」
    時三とお孝。
    父の世話をする奉公人おたみは、父が亡くなり、体調を崩し実家へ帰ると子供を産む。
    世間も妻も時三が間違いを起こしたと疑わず、本人の時三もそれを認めるが、実は…。

    「人情裏長屋」
    抜群の件の腕前を持ちながら裏長屋に住み四六時中飲んだくれる浪人松村信兵衛。
    その長屋に移り住む子連れの浪人が、ある日子供を預かってほしいという。しかたなく信兵衛が育てることにするが、また子供を返してほしいと戻ってくる。

    「なんの花か薫る」(再読)
    喧嘩して娼家に逃げ込んできた武士、江口房之助をかくまったお新、房之助に一緒になりたいと言われたことを本気にし、最後に悲しい思いをする武士と娼婦の物語。

    「かあちゃん」
    近所づきあいも避けるほど一生懸命働き必死で生きていこうとする母と5人の子供たちの明るく力強い家族の物語。

    「落ち葉の隣」
    繁次 おひさ 参吉

    「茶摘みは八十八夜から始まる」
    五郎右衛門 平三郎 本田政利

    「釣忍」
    棒手振りの定次郎とおはん。ある日たずねてきた男は定次郎の兄で実は越前屋の跡取りだと告げる。黙って身を引こうとするおはん。

  • 「山本周五郎」の短篇時代小説集『山本周五郎名品館Ⅲ 寒橋(さむさばし)』を読みました。
    『山本周五郎名品館Ⅰ おたふく』に続き、「山本周五郎」の作品です。

    -----story-------------
    生涯、膨大な数の短編を遺した「山本周五郎」。
    短編選集決定版の第三巻(全四巻)

    武士の、同輩への友情と、許婚への断ち切れない愛情との葛藤を描く『落ち梅記』。
    浪人の、赤ん坊に対する人情が愛情に変わっていくプロセスを描く『人情裏長屋』。
    長屋住まいの一家の、究極の人情ともいうべきものを描く『かあちゃん』。
    亭主への、また父の娘に対する「情」の交錯がドラマに複雑さを与える『寒橋』。

    ほか、『なんの花か薫る』『あすなろう』『落葉の隣り』『茶摘は八十八夜から始まる』『釣忍』など、全九編。

    巻末に「沢木耕太郎氏」による解説エッセイ『寒橋のまぼろし』を収録。

    さまざまな「情」が乱反射する、「情」の万華鏡ともいうべき一冊。
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    「山本周五郎」作品に深く傾倒する「沢木耕太郎」が、300篇にも達しようかという膨大な作品群を読み返して独自の視点と切り口で4巻36篇を選び、各巻の末尾に斬新かつ詳細な解説エッセイを執筆したアンソロジー作品の第2巻で、以下の9篇が収録されています。

     ■落ち梅記
     ■寒橋
     ■人情裏長屋
     ■なんの花か薫る
     ■かあちゃん
     ■あすなろう
     ■落葉の隣り
     ■茶摘は八十八夜から始まる
     ■釣忍
     ■解説エッセイ「寒橋のまぼろし」 沢木耕太郎

    「沢木耕太郎」が選び抜いた巨匠「山本周五郎」名品ですからね… 面白くないわけないですよねー 本作品も、9篇とも愉しめましたね。

    そんな中で特に心に残ったのは、

    冤罪と知りつつ藩政を立て直すために黙って罪をかぶるという忠義に殉じた武士の、同輩への友情や、気持ちを抑え込みつつも断ち切れない許婚への愛情との葛藤を描いた『落ち梅記』、

    裏長屋で人気者である浪人の、赤ん坊に対する人情が愛情に変わっていくプロセス… ひとりの浪人の胸のすく活躍と人情味あふれる子育ての物語を描いた『人情裏長屋』、

    若侍をかくまった岡場所の女のシンデレラストーリーが迎える残酷な結末… 岡場所の女たちの好意が憎悪に変わる瞬間、薄情な若侍の無邪気な行動を描いた『なんの花か薫る』、

    改易で岡崎藩にお預けとなった殿様の相伴役を買って出た男… 自らも痛みを抱いた武士の落魄した者への労りの情と、それによって甦る誇りの存在を描いた『茶摘は八十八夜から始まる』、

    ですかね… 特に『なんの花か薫る』のやるせない、憤りを感じる結末は印象深かったですねー とても残酷だけど、薄情も情のひとつだとすれば、情を描いた見事な作品なのかもしれませんね。

    「山本周五郎」の作品って、描かれている時代は違っても、登場人物に気持ちがシンクロして、心が揺さぶられるところがあるんですよね… 描かれているのは、人間としての普遍的なテーマなんでしょうね。

  • 一抹の悲しみが残りました。

  • 髙田郁さんが「なんの花か薫る」のことを書かれていたので、山本周五郎自体、あんまり読んだことがないので、せっかくだからとその短編が収録された文庫を。
    なんと、編者は沢木耕太郎。

    切ない話が多くてあっという間に読めた。
    私がハマったのは「茶摘は八十八夜から始まる」。人はやり直すことができるのか?
    私も昔はとにかくよく呑んだ。今夜はやめよう、と朝思っても夕方になればまあいいか、とまた呑んでしまう。
    呑んでも満たされないから、素行も乱暴になる。
    作中の二人がどうなるのか、ハラハラして読んだ。
    酒を断ったと思っていた政利が、実は情で酒を差し入れられていた‥目撃した平三郎といっしょになって、水でも引っ被ったようなショックを受けた。

    今回の印象的なフレーズは、政利が改心できるか聞かれた平三郎が、信じると返したときの父の言葉。
    「芯まで腐った木にも芽の出ることがある、だが、その芽は必ずしも腐った幹のよみがえった証拠にはならない、〜」

  • あの国民的作家山本周五郎作品の沢木耕太郎セレクト版、全四巻中の三巻。作品も解説も絶品。

    落ち梅記、寒橋、人情裏長屋、なんの花か薫る、かあちゃん、あすなろう、落葉の隣り、茶摘みは八十八夜から始まる、釣忍、の九篇を収録。

    人情裏長屋と母ちゃんが有名であろう。私的には寒橋の切なさと感動が良かった。ついて良い嘘というものがある。

  • いつでも山本周五郎は素晴らしい。
    短編の文体と筋立て、結末、どれも秀逸。

  • 沢木耕太郎セレクション「山本周五郎名品館3」.

    人情裏長屋が傑作.映画化する場合の主人公を演じるのは,沢木耕太郎のお勧めは大友柳太朗だが,35歳ぐらいの仲代達矢がいいかなあ.

  • 「山本周五郎名品館Ⅲ 寒橋」山本周五郎 (編:沢木耕太郎)

    山本周五郎の短編集。相変わらずのクオリティ。
    この一冊ではなんと言っても「人情裏長屋」と「かあちゃん」です。くさいと言われようがベタと言われようが、泣けちゃうものは泣けちゃうのです。
    このあたりは個人的な好みなのか都合なのか分かりませんが、加齢してなおのこと涙腺が緩くなったような気がして、「人情裏長屋」「かあちゃん」で泣けてくるというのが加齢した結果なら、それはそれで歳月というものも悪くないような。
    特に「人情裏長屋」は、つまりはチャップリンの「キッド」なんですが、よく出来ています。素晴らしい短編。
    「オールタイム全人類短編小説大会」があったら、「日本・時代小説部門」代表として出場して欲しい出来です。

  • 繁次が切ない、この短編に出てくる皆が切ない。

  • 【名作揃いの短編傑作選・第三弾!】夫に恋する女とその父の愛を描く「寒橋」、置いて行かれた子を育てる浪人「人情裏長屋」、これぞ肝っ玉母さん「かあちゃん」等九編。

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著者プロフィール

(やまもと・しゅうごろう)
1903~1967。山梨県生まれ。小学校を卒業後、質店の山本周五郎商店の徒弟となる。文芸に理解のある店主のもとで創作を始め、1926年の「文藝春秋」に掲載された『須磨寺附近』が出世作となる。デビュー直後は、倶楽部雑誌や少年少女雑誌などに探偵小説や伝奇小説を書いていたが、戦後は政治の非情を題材にした『樅ノ木は残った』、庶民の生活を活写した『赤ひげ診療譚』、『青べか物語』など人間の本質に迫る名作を発表している。1943年に『日本婦道記』が直木賞に選ばれるが受賞を辞退。その後も亡くなるまで、あらゆる文学賞の受賞を拒否し続けた。

「2025年 『山本周五郎[未収録]時代小説集成』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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