- 文藝春秋 (2018年7月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784167911089
作品紹介・あらすじ
あの戦争と歴史をめぐる12人との対話。
私たちは「昭和」をこう生きた。君たちはどう生きるのか?
「半藤昭和史」のエッセンスがここに!
【目次より】
澤地久枝 ふたつの戦場 ミッドウェーと満洲
保阪正康 指揮官たちは戦後をどう生きたか
戸髙一成 なぜ日本人は山本五十六を忘れないのか
加藤陽子 天皇と決断
梯久美子 栗林忠道と硫黄島
野中郁次郎 撤退と組織
吉村昭 東京の戦争
丸谷才一 戦争と艶笑の昭和史
野坂昭如 無責任論
宮部みゆき 幕末から昭和へ 熱狂の時代に
佐野洋 清張さんと昭和史
辻井喬 戦後六十年が問いかけるもの
みんなの感想まとめ
歴史を振り返り、私たちが「昭和」をどう生きたかを考察する対談集は、戦前・戦中の出来事を通じて人間性や組織論、国際感覚について深く掘り下げています。12人の著名な作家や専門家との対話を通じて、歴史を同時...
感想・レビュー・書評
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半藤一利の昭和史に関する対談集。
対談なので、話し手お二人のどちらかを知っていれば共感できること、基本的に楽しく会話していらっしゃるので昭和に関する興味関心の入り口になりやすいことなどをまず感じました。
巻末にこの本が編まれた経緯について触れられています。これまで重ねてきた対談から昭和史に関するものを選んで一冊の本にしたんだとか。
「昭和史」というタイトルながら太平洋戦争をめぐる対談がほとんどでしたが、このように単発の対談を集めて一冊の本にしたからでしょう。
その太平洋戦争については、従軍経験のある人、空襲などを体験したことがある人、「戦後」の記憶のある人、研究している人、それ以外の人と、立場によって語る内容とスタンスが違うのは当然なのでしょうけれど、読者にとってはその違いが目立ちます。そして、それがとても面白い(戦争の記憶に「面白い」は不謹慎かもしれませんが、でも面白い)のです。
まず、本対談集のホスト半藤さんは「体験したことがある人」「戦後の記憶のある人」兼「研究している人」。
で、「体験したことがある人」との対談が一番話が弾んでいるように読めます。吉村明さんとの対談が最たるものです。最近読んだ「昭和史の10大事件」にも出てきたドゥーリトルのマフラー問題が決着(?)しています。
それから「戦後の記憶のある人」丸谷才一さんとは、切り取る話で大盛り上がりしています。あんまり楽しそうなので、織田作之助の「世相」読む気になっちゃいました。
ですが体験談は当然感情移入が激しくなります。満州に関する話題の中で自戒していますが、やっぱり大変だったこと、悲惨だったこと、または大変な状況なのに楽しかったこと、あっけらかんとしていたことなど、物語としては面白いものの昭和【史】にはなりにくい。
「研究している人」との対談は、特に「指揮官たちは戦後をどう生きたか」などは読んで粛然とした気持ちになりました。一方で戦術レベルで作戦行動を論っている人もいますが、これは後知恵感が鼻につきます。
あと、敗戦で思想の柱のようなものを失ってしまったことを野坂昭如や辻井喬が語っていますが、これってただの「今どきの若い者は」論だよねえ…。あなたたちが、失ったものに代えて金儲けを柱に据えたんじゃないの?
以下、各対談に一言ずつ。
ふたつの戦場 ミッドウェーと満州 澤地久枝
澤地久枝さんはお名前は存じ上げているけれど著作を拝読したことがないかたの一人。
ミッドウェーの検証をなさっていたのは知りませんでした。
ただ、「通説がおかしいのでは」前提で話が進むので、結果論では何でも言えると感じてしまいます。
満州については経験だけで歴史を語ることを戒めつつも貴重な体験が語られています。満州については、溥儀の名前と日本人が威張っていたこと、敗戦で立場が逆転して酷い目にあったことくらいしか知らない自分にとって、語られている内容すべてが興味深いものでした。
指揮官たちは戦後をどう生きたか 保阪正康
戦いが終わった後の指揮官に焦点が当てられることは稀で、初めて知ることが多く、感心したり、腹を立てたりしながら読みました。真摯さに触れて粛然とさせられる人もいれば、唾棄すべきと感じさせられる人も。それにしても辻政信に投票した人は何を考えているんだろう。
なぜ日本人は山本五十六を忘れないのか 戸髙一成
山本五十六「米との国力の差を認識して開戦に積極的ではない中、乾坤一擲の真珠湾奇襲を成功させた智将」という通り一遍の内容でまったく満足せず、長岡藩士であった出自まで掘り下げた貴重な対談。阿川博之の「山本五十六」を読みたくなりました。
それにしても、さすがの山本長官も自分が美少女化されるとは思っていなかったことでしょう。
天皇と決断 加藤陽子
まもなく退位される今上天皇は行動のほか、お言葉としてもご自身のお考えを示されてきました。昭和天皇についてはもはやかなわないこととはいえ、伝聞ではなく直接お考えをお話しになるのを聞きたかったものです。「昭和天皇独白録」読んでみようか悩みます。そういえば高須クリニックの院長先生が原本を買って寄贈したなんて話もありましたっけ。
栗林忠道と硫黄島 梯久美子
硫黄島での戦いは知識として概略は知っていました。バロン西のエピソードや天皇陛下が上陸した時に靴を脱いだ話を読んだこともありますし、映画「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」も見ました。
でも「硫黄島については、日本軍があそこであんなに頑張ったばかりに、本土に原爆を落とされたと言う人もいるんですよね」と言う話は初めて聞きました。
そんなことを言ってしまう心なさ、またはそんなことを言わざるを得ない境遇を思うと自然に背筋が伸びる想いです。
撤退と組織 野中郁次郎
例えば「失敗の本質」やビジネス書などで同様の話を読みました。ただ、この知識を行動や決断に還元できるかと言われると…自信はありません。
東京の戦争 吉村明
空襲の体験談を語る二人。凄惨な話のはずなのに楽しそうです。悲惨なものであっても思い出は思い出だということなのでしょう。
戦争と艶笑の昭和史 丸谷才一
「阿部定事件」をネタに盛り上がっています。事件の名前を聞いたことはあるのですが…みんなそんなに楽しんだのでしょうか。本の名前がいくつか挙がっていますので、そんなに楽しいのなら読んでみようと思います。それにしても、同じちょん切っちゃった話でも、先日あった弁護士のをちょん切ってトイレで流した事件に比べるとあっけらかんと明るく楽しそうです。
無責任論 野坂昭如
年寄りが「いまどきの若い者は」って嘆いてる話。敗戦直後の「僕らの父親世代」がお粗末だったけど、責任があるのは私たち年寄りではなく、団塊の世代の親御さんの責任って何だよそれ。
でも、野坂昭如が言うとなぜか憎めません。改めてお名前を聞き写真を拝見すると、死んじゃったんだなーとしみじみ思います。
幕末から昭和へ 熱狂の時代に 宮部みゆき
「時代の熱に同調せずに、淡々と穏やかに頑張れるかどうかで、人間は真価を問われる」って宮部みゆきが言ってますがこれ、難しいですよね…。ベクトルが逆に向いている人って一定数いますが、その人たちのベクトルの長さってたいていものすごく長いですよね。どっち向きのベクトルにも巻き込まれちゃいけないって、言うは易し行うは難しの典型では。自分にはできるかな…。
清張さんと昭和史 佐野洋
この対談集で唯一太平洋戦争が関係ない対談。松本清張がそれだけ偉大だったということなのでしょう。
自分にとって松本清張はまさに「点と線」が代表作の推理作家なのですが、もともと「芥川賞作家で時代小説作家」なんですねえ。恥ずかしながら膨大な著作のほんの一部しか読んでいない証拠です。
戦後六十年が問いかけるもの 辻井喬
自分にとっては辻井喬より堤清二として印象に残っている方ですが、亡くなってしまいました。
そんな年寄り二人の「今時の若い者は」対談。ここからの日本がチャンスはあると楽観視できるのか、ダメだと思うのかを、野坂昭如ならともかく、「週刊文春」「文藝春秋」の編集長とセゾングループの総帥が他人事のように好き勝手語られてもなあ、と思ってしまいます。
対談集なんてそんなものなのかもしれませんけれど。
ふたつの戦場 ミッドウェーと満州 澤地久枝
「本の話」2000年3月号・「諸君!」1999年10月号(文藝春秋発行)
指揮官たちは戦後をどう生きたか 保阪正康
「文藝春秋SPECIAL」2008年夏号(文藝春秋発行)
なぜ日本人は山本五十六を忘れないのか 戸髙一成
「新潮45」2011年1月号(新潮社発行)
天皇と決断 加藤陽子
「中央公論」2010年9月号(中央公論新社発行)
栗林忠道と硫黄島 梯久美子
「Fole」2007年4月号(みずほ総合研究所発行)
撤退と組織 野中郁次郎
「Φ(ファイ)」1998年10月号(富士総合研究所[現・みずほ情報総研]発行)
東京の戦争 吉村明
「文藝春秋」2001年10月号(文藝春秋発行)
戦争と艶笑の昭和史 丸谷才一
「オール讀物」2008年6月号(文藝春秋発行)
無責任論 野坂昭如
「Voice」2000年11月(PHP研究所発行)
幕末から昭和へ 熱狂の時代に 宮部みゆき
「オール讀物」2010年2月号(文藝春秋発行)
清張さんと昭和史 佐野洋
「オール讀物」2009年1月号(文藝春秋発行)
戦後六十年が問いかけるもの 辻井喬
「論座」2005年9月号(朝日新聞発行)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
澤地久枝さん、保阪正康さん、戸髙一成さん、加藤陽子さん、梯久美子さん、野中郁次郎さん、吉村昭さん、丸谷才一さん、野坂昭如さん、宮部みゆきさん、佐野洋さん、辻井喬さん。これら12人の方々と半藤一利さんとの「昭和の時代」をテーマにした対談集です。
半藤さんの著作は、今までも何冊も読んでいますが、本書においても半藤さんの言葉は強く心に沁み入ります。この真っ当な想いは、大切に持ち続けなくてはなりません。 -
声に出して笑ってしまった。自然を愛して「足るを知る」大人になりたい
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あの戦争と歴史をめぐる12人との対話。私たちは「昭和」をこう生きた。君たちはどう生きるのか?
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信用のおける歴史対談。特に栗林忠道と硫黄島の後半は、なるほどと思うところが多かった。
再読しました。
知識人と思われる方々がどんどん鬼籍にはいってしまう。こういう本はもっと読まれるべきだよね
著者プロフィール
半藤一利の作品
