コンビニ人間 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.84
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本棚登録 : 650
レビュー : 46
  • Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167911300

作品紹介・あらすじ

「普通」とは何か?現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作36歳未婚、彼氏なし。コンビニのバイト歴18年目の古倉恵子。日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる――。「いらっしゃいませー!!」お客様がたてる音に負けじと、今日も声を張り上げる。ある日、婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしい、と突きつけられるが……。累計92万部突破&20カ国語に翻訳決定。世界各国でベストセラーの話題の書。解説・中村文則

感想・レビュー・書評

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  • 今まで読んだ村田沙耶香の中でいちばん軽快で読み易かった。主人公はまあ現実的な言葉で表現してしまえばおそらく一種の発達障害で、幼少時からちょっと他の子とは感情の動きや咄嗟の対応方法などにズレがでるわけですが、幸か不幸か本人はそれを深刻に受け止める感性がなく、わりとひょうひょうとしているので、生き難そうではあるけれど卑屈ではなく、妙にポジティブですらある。

    ただ面倒くさいことはイヤだとは感じるし、家族に迷惑をかけたくないという良識はあるので、周囲を観察、模倣し、浮かない努力をすることはできる。そしてそんな彼女にピッタリ当てはまる型を彼女はひとつだけみつける。それが「コンビニ店員」だった。

    他者とのコミュニケーションが苦手でも、マニュアル通りに真面目に行動していれば有能な店員であることはできる、その与えられた「役割」にすっぽりはまっていることが何より安心という心理は私にもわかる。家族や友人にとっては異質で浮いた存在である彼女が「コンビニ店員」という器にだけはしっくり馴染めて居心地が良かった。ある意味天職。

    前半はそんな彼女がなんとか上手く生きている様子に、お、前向きお仕事小説みたいじゃん、と思いつつ楽しく読んでいたら、中盤で白羽というクソろくでもないクソ男が登場、一気に村田沙耶香の毒が全開に。こいつだけは最後まで好きになれなかった。でもこういう人間「いるいる」って感じなんだよなあ。恐ろしいことに。

    白羽の何がこんなに不快なのか考えてみたけれど、一見似たような社会の「異物」であっても、主人公はそれを他人のせいにしないし他者を否定しないので一種の潔さがあるのに対し、白羽はすべてを他人のせいにし、他者を否定・攻撃することで自分を正当化しようとするのがひたすら気持ち悪い。ある意味言ってることは正論かもしれないけれど、どうしても「お前が云うな」とツッコミをいれたくなってしまう。

    白羽や主人公のような極端な人間ならずとも世界はけして生き易くはない。一見なんの努力もせずにすいすい生きているようにみえる人も実は内心いろんな鬱屈を抱えていることもあるだろう。その想像力を失くして自分だけが被害者だと思わないように気を付けていないと、誰もが白羽のようになってしまう可能性はなきにしもあらず。

    ラストは私はハッピーエンドだと思った。当人がハッピーな気持ちを維持できるならそれがベスト。

  • 文庫化されたら必ず読もうと思っていた作品。コンビニに勤める30代の女性の物語くらいの知識しかなく、まさかこんなサイコというか、コメディのような作品だとは思わなかった。主人公の古倉惠子は18歳から36歳の今に至るまでコンビニの勤務経験しかない。「ふつう」の感覚を持ち合わせていなくて、子供の頃はよくトラブルを起こしていたが、コンビニのようなマニュアル化された世界がとてもマッチしていて、また家族も安心したためひたすら働いている。客として利用したことしかないが、コンビニの驚くほど細かい描写に感服する。コンビニ店員ほど過小評価される業種も珍しい。惠子はふつうを装うために、コンビニ店員仲間の女性のしゃべり方を学習し、30代女性にふさわしいファッションセンスも吸収していく。とにかくコンビニ店員としては完璧なのだが、人としては空洞のようなもので考え方もゾッとするほどサイコだ。ただ、作中で語られる「ムラ」の圧力はよくわかるし、誰しも少なからず世間体を保つためにやっていることはあるだろう。途中から出てくる白羽(シロアリの暗喩か)という男が気持ち悪く、彼がまた凄まじい思想の持ち主だ。狂ってるのは惠子か白羽か、あるいは世間か。文章がとても読みやすく、しかし惠子の内面が面白いやら恐ろしいやらであっという間に読み終わる。

  • 書店に立ち寄ったら平積みしてあって購入。その日のうちに読了。

    主人公は子供のころから感情や思考が「普通」ではない。家族や周囲を悲しませたくないという気持ちもあるが、それでもどうしたらいいのかわからない。唯一、コンビニ店員であるときだけ世界の歯車になれる。他の人と同じ「普通」になれる。

    読んでいて、主人公にけっこう共感していた。白羽の発言にもところどころ。

    バーベキューのシーンは特に心が痛かった。そんなに無神経に、土足で人の心を踏みにじるなよ。
    自分の周りでも、マジョリティを自認してる人たちが彼らと違う人をからかい、ネタにして笑っている場面がある。

    人が幸せかどうかはその本人がどう思うかが一番だと思うのにな。

    ラストシーンではコンビニ人間として復活して喜んだ。
    でもちょっとした後で、途中登場していた、コンビニで他の客に注意しまくって最後につまみ出された中年男性も主人公と同じようにコンビニ人間だったのかなとも思うようになって、最終的には主人公もこうなってしまうのだろうかと思うと複雑な心境になった。

    少し前に読んだ今村夏子の『こちらあみ子』を思い出した。

  • 村田沙耶香『コンビニ人間』文春文庫。

    テレビで芸人などが絶賛していた芥川賞受賞作。正直言って、面白いとは思わなかった。36歳で未婚の女性主人公がコンビニ店員でいる時だけが、社会とつながりを持っていると勘違いする話。主人公の異常性ばかりが際立ち、生理的に受け付けない作品だった。

    どこが面白いのか解らん。自分がただただへそ曲がりなのか……

  • 前知識なく読んだけれど、とてもとても面白かった。

  • 普通ってなんだろう。
    企業で働く。結婚している。子供がいる。生活している。養ってもらっている。
    人それぞれに価値観があって、それが人それぞれの普通。
    そこに「評価」という概念が、評価を必要としていなところにも生じてくるので、みんなと同じような行動を取らざるを得ない。

  • コンビニ人間、すごいタイトルだ。
    しかし、内容がちゃんとタイトルにかえってくる。
    軸が何個かある気がする。福岡さんの動的平衡のようなもの(部分的に変わりながらも全体的には変わらない「コンビニ」という世界、それは主人公にとっての全体である)、「普通」なんてわからないが、ある種「均一」を強制されるようなコンビニで働くことにより「人間」となる、関わる人に影響を受け、またコンビニで働くことで役割を与えられることにより「人間」を保つ主人公。
    いくつかの軸すべてが一つに向かっているのか、いや、もともとは、この作品のテーマは一つなのだろう、見事である。
    合間合間に主人公が疑問に思うことが、とてつもなく哲学的な問いになっている。
    まさに、「普通・正常・常識とは何か」を作品全体を通して問うている。
    まっとうな人間なんていないはずなのに、いわゆる「普通」・正常でないと無理やりにでも直さなくちゃならなくなる世界に私たちもいる(そんなのおかしいよね)。
    でも、主人公は必死に「人間」になろうとする、それがコンビニ人間だ。

    白湯を飲むあたりに、その「何者でもなさ」を感じる。

    「ねえ、指示をくれればわたしはどうだっていいんだよ。ちゃんと的確に教えてよ」

    「コンビニの『声』が聞こえるんです」

    「いえ、誰に許されなくても、私はコンビニ店員なんです。人間の私には、ひょっとしたら白羽さんがいたほうが都合がよくて、家族や友人も安心して、納得するかもしれない。でもコンビニ店員という動物である私にとっては、あなたはまったく必要ないんです」

    一つ前に読んだ、『報われない人間は永遠に報われない』とは正反対と言っていいのかわからないが、『コンビニ人間』には整頓された、その構造美が、『報われない〜』には勢いと流れ、心地いい倦怠感があった。

    2018.8.8

  • 「普通」に疑問を感じてもそこから外れた人間は「修正」される。「普通」を飲んだとしてもそれに則って生きるのは難しい。だけど、そもそも「普通」とは?

    ラストの主人公の判断が正しいかはわからないけど、晴々とした気分で読み終えました。

  • これは素晴らしかったな。もちろん、芥川賞受賞作ってことで入手。タイトルからは、いまひとつ内容の想像が出来なかったんだけど、感情の無い、無機質な人間とつながっとったんですね。なるほど。徹底して常識が身につかない主人公の造形も圧巻で、それに振り回される周りのドタバタも見もの。こういう系統の作風ならば、是非他の作品も読みたいと思います。

  • 2時間で読了。絶対共感できない生き方なのになぜか共感できるところが多々あり、面白かった。
    自分って何で形成されているんだろう。私もそのとき周りにいる人に影響されて、無意識に真似したり、真似までいかなくても似てしまったりしている。喋り方はもちろん、服装や髪型、性格まで一緒にいる人が変われば変わっているかも。でも自分は持っているつもりで、主人公みたいな人を攻撃はしないまでも茶化す側だろうと思う。多様性を認める社会になってきていて、私もその意識を強く持っているのに、世の中のコンビニ化、また私の中のコンビニ感はまだ続きそうだ。
    その感覚は果たして、世の中を良くしていくのか、生きづらい人を増やしてしまうのか。。。

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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた さやか)
1979年、千葉県印西市生まれ。二松學舍大学附属柏高等学校、玉川大学文学部芸術学科芸術文化コース卒業。
2003年『授乳』で第46回群像新人文学賞優秀賞を受賞しデビュー作となる。2009年『ギンイロノウタ』で第22回三島由紀夫賞候補及び、第31回野間文芸新人賞受賞。2010年『星が吸う水』で第23回三島由紀夫賞候補。2012年『タダイマトビラ』で第25回三島由紀夫賞候補。2013年、しろいろの街の、その骨の体温の』で第26回三島由紀夫賞受賞。2014年『殺人出産』で第14回センス・オブ・ジェンダー賞少子化対策特別賞受賞。2016年『コンビニ人間』で第155回芥川龍之介賞受賞。
2018年8月末、『地球星人』を刊行。

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