コンビニ人間 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.67
  • (834)
  • (1647)
  • (1261)
  • (329)
  • (97)
本棚登録 : 16140
レビュー : 1713
  • Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167911300

作品紹介・あらすじ

「普通」とは何か?現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作36歳未婚、彼氏なし。コンビニのバイト歴18年目の古倉恵子。日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる――。「いらっしゃいませー!!」お客様がたてる音に負けじと、今日も声を張り上げる。ある日、婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしい、と突きつけられるが……。累計92万部突破&20カ国語に翻訳決定。世界各国でベストセラーの話題の書。解説・中村文則

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 今まで読んだ村田沙耶香の中でいちばん軽快で読み易かった。主人公はまあ現実的な言葉で表現してしまえばおそらく一種の発達障害で、幼少時からちょっと他の子とは感情の動きや咄嗟の対応方法などにズレがでるわけですが、幸か不幸か本人はそれを深刻に受け止める感性がなく、わりとひょうひょうとしているので、生き難そうではあるけれど卑屈ではなく、妙にポジティブですらある。

    ただ面倒くさいことはイヤだとは感じるし、家族に迷惑をかけたくないという良識はあるので、周囲を観察、模倣し、浮かない努力をすることはできる。そしてそんな彼女にピッタリ当てはまる型を彼女はひとつだけみつける。それが「コンビニ店員」だった。

    他者とのコミュニケーションが苦手でも、マニュアル通りに真面目に行動していれば有能な店員であることはできる、その与えられた「役割」にすっぽりはまっていることが何より安心という心理は私にもわかる。家族や友人にとっては異質で浮いた存在である彼女が「コンビニ店員」という器にだけはしっくり馴染めて居心地が良かった。ある意味天職。

    前半はそんな彼女がなんとか上手く生きている様子に、お、前向きお仕事小説みたいじゃん、と思いつつ楽しく読んでいたら、中盤で白羽というクソろくでもないクソ男が登場、一気に村田沙耶香の毒が全開に。こいつだけは最後まで好きになれなかった。でもこういう人間「いるいる」って感じなんだよなあ。恐ろしいことに。

    白羽の何がこんなに不快なのか考えてみたけれど、一見似たような社会の「異物」であっても、主人公はそれを他人のせいにしないし他者を否定しないので一種の潔さがあるのに対し、白羽はすべてを他人のせいにし、他者を否定・攻撃することで自分を正当化しようとするのがひたすら気持ち悪い。ある意味言ってることは正論かもしれないけれど、どうしても「お前が云うな」とツッコミをいれたくなってしまう。

    白羽や主人公のような極端な人間ならずとも世界はけして生き易くはない。一見なんの努力もせずにすいすい生きているようにみえる人も実は内心いろんな鬱屈を抱えていることもあるだろう。その想像力を失くして自分だけが被害者だと思わないように気を付けていないと、誰もが白羽のようになってしまう可能性はなきにしもあらず。

    ラストは私はハッピーエンドだと思った。当人がハッピーな気持ちを維持できるならそれがベスト。

  • ようやく読んだ村田沙耶香さん芥川賞受賞作のコンビニ人間。
    「何も言えねぇ…!」という読後感(名言の使い方違う)。

    36歳未婚女性。
    幼い頃から周りと違う行動で両親を悩ませ、「どうしたら『治る』のかしらね」と言われ、自分は修正しないといけないのだなと思う。コンビニ店員となって初めて、世界の正常な「部品」としての私が誕生した。その大学生のときから始めたコンビニバイトも18年目になる。

    世間の「普通」から離れた主人公が、「普通」に見せようともがき、世の中の当たり前に斬り込んでくる。読みやすく心地よい文章の150頁程度の短い話なのに、息苦しさを覚えて何度も顔を上げて息継ぎをして読んだ。

    "正常な世界はとても強引だから、異物は静かに排除される。まっとうでない人間は処理されていく。そうか、だから治らなくてはならないんだ。治らないと、正常な人達に削除されるんだ"

    あるとき主人公の働くコンビニに、婚活目的の白羽がバイトとして入ってくる。コンビニで働く同じバイト仲間を負け組、底辺の奴らと見下し蔑み、尊大で横柄な態度をとる白羽。客へのストーカー疑惑で、速攻でバイトを辞めさせられた白羽を、都合がいいからと家に置くことにする主人公。
    ここから最後までのキレキレな展開に震える。今は夏なのに、というか梅雨でジメジメしてるのに、震える。

    自分は世界を構成する部品だという考えは、どうせ自分は取替えのきく存在なのだと、普通は(あ、「普通」って言っちゃった)ネガティブな方向に働くと思うのだけど、この主人公はある意味とてもポジティブに、コンビニ店員という部品であることに自分の価値を見出していて。
    村田作品らしいこの倒錯した感じ。
    コンビニ人間は世界二十か国語に翻訳されているというから、村田さんの世界観はワールドワイドになりつつあるのかも…。他の国の人の感想も聞いてみたいところだ。


  • 小説はあまり普段読まないが、ベストセラーは一応世間を知るためにたまに読むことにしており、これはその1冊

    なるほどね
    しかしこういう「普通」じゃないことに特化した内容が支持されるということは、世間の多くは皆が何らかの「普通」という名の仮面を被って生きているのだろう
    その中には、包み隠しながら現実と自分のギャップに苦しむ人間もいれば、白羽のようにそれを世間のせいにしてガキのような戯言ばかり言う人間もいる
    また主人公恵子のように、どうも人とは違わない行動さえしておけば、世間は穏やかなのだなと悟って仮面を上手に被れる人間や、はたまたそこ間を時と場合によって彷徨いながら、このままでいいのだ!
    と思った次の日には、やっぱり世間に馴染めない…なんてクヨクヨしたりするような人間
    恐らくさまざまな「コンビニ人間もどき」が沢山いるのだろう
    こういう小説が支持される世の中に、なんだか安心してしまった…

    自分も若い頃は世間とズレていることが悲しかったり、皆と同じように出来ないことが辛かったが、歳を取るとなんでそんな事に悩んでいたのか?今となっては、まったくもって不思議である
    コンビニの部品になるという感覚は、職場にいる自分も同じだなぁと共感
    仕事にプラスにならないことが、無駄な時間と考えてしまう自分の協調性のなさも会社の部品として働いているということなのだろう

    とにかく世間でいうところの「普通」という概念なんか、下らないのさ!と最後は爽快に終わるストーリーなのだ

    しかーし
    本人はそれで良い
    自分の家族や親しい友人がもし主人公恵子のように36歳になっても結婚もせず、彼氏もおらず、コンビニでアルバイトをしていたら…
    いいよいいよ好きでやってるんだから、とか、本人が幸せならそれでいいんだよ!
    と心から言えるだろうか…
    ここでの妹の痛切な叫びが印象的だった
    「お願いだから、普通になってよ」
    考えさせられる…
    過去、結果的に世間とズレた人生になった時に、母親に「何が楽しくて生きているのか」と言われたことを思い出した
    この時、え?私は幸せですけどなにか?
    という思いと、ああ、母親に申し訳ないことなのか…と気づいた
    家族の立場になると、普通ではない人間が身近にいることで辛い思いをさせるのだ
    それは理解はしておかなくては…

    コンビニの活気溢れる描写と、自分がまるでその店の店員になったかのような視覚描写が見事で、働いたことのないコンビニでまるで働いたような錯覚になった
    手を動かしながら、全身が耳となり、視界はバスケットボール選手のように広くなるのだ
    しかしコンビニの店員さんて大変ですね…
    やる事が多岐に渡るわ、最新のテクノロジーを駆使しなくてはいけないわ、覚えること多過ぎだわ、かつスピードが求められ、
    常に全神経を使って働いておられる!
    しかしながら、そんなことに無頓着で無神経かつ理不尽な客の相手もしなきゃいけない
    ちょっとでもレジを待たせると怒鳴るオジサンもいるしさ…
    ホントいつも尊敬し、感謝しております
    (白羽がコンビニ店員を底辺の人間と言ったが、底辺の人間はお前だろーが!と罵っておきました)

    誰にでも天職はあるし、居場所はある
    自分の力でしかそれは探せないし、見つからないのだ

  • 主人公は36歳独身のコンビニアルバイト。
    世間から見たらいい歳して独身で定職にも就いていないのは少数でしょうが、
    自分でお金を稼いで誰にも迷惑をかけず、自立した生活を送っている主人公はマトモな人間だと思います。

    白羽が登場したあたりからラストは主人公が人間らしくなるハッピー(?)エンドかと思いましたが、全く逆でした。

    コンビニという空間が主人公の元々持つドライで無機質めいた性格に拍車をかけている様は少し怖くもありましたが、
    私も世間から見たら少数派の人間なので、ここまで世間の「普通」から振り切った主人公は見ていて清々しかったです。

    そんな訳で主人公には好感を持ちましたが、白羽には本当にイライラしました。
    お金も、一人で生きる生活力さえない癖に他人に害を与えるなんて、それこそマトモではありません。

  • 村田沙耶香 著

    こんなふうな作品に出会った事もなければ、衝撃的な内容であるにも拘らず、すごい作家さんだなぁと感心してしまった。村田沙耶香さんの本は 初めて読みました。
    淡々としている 作風で入ってゆくのに かなり衝撃的な でも、スイスイ読み続けて あっという間に読めてしまった。
    「普通」って本当になんだろう…
    人と何か 根本的に違う人間?であるのでは?って自分で感じた訳でもないのに まわりの人たちと 違ってる事で 父や母を困惑させているようだが、自分を可愛がってくれる親を悲しませる事は本意ではないので 必要なこと以外の言葉は喋らず、自分から行動しないようになった
    私にとっては黙ることが最善の方法で、生きていくための一番合理的な処世術だった 主人公の古倉さん…
    彼女が、「コンビニ店員」としての 自分を生きることに どんな形であれ 自分の居場所を見つけ 人を真似てまで成りすますことに 人として とても頭の切れる女性で 素晴らしいとさえ思った そして 私は何故かあの名言を思い出していた

    「意識が変われば行動が変わる
    行動が変われば習慣が変わる
    習慣が変われば人格が変わる
    人格が変われば運命が変わる」
    随分昔、 友達から聞いた名言だけど…。
    たしか ウィリアム.ジェームズの名言は心が変わればから入るはずだったが、私としては 意識という入り方の方がしっくりくる(余談であるが…)
    彼女は成りすます事で 普通とされてる人間同士の中に入ろうとしていたのに、コンビニ人間として 自分と同じ細胞のように思ってた ほかのコンビニ店員の皆が 「ムラのオスとメス」になってしまっているという下りは悲しく 不穏な雰囲気を感じさせた。
    結局 コンビニのことを一番に考え 真面目に遂行している人間が ゴシップの方が優先される店員に振り回されるなんて有り得ない。
    でも、かなりリアルで 改めて 普通とされるものに疑問を感じた。
    生きにくい世の中は一つのユニークって事を許さない形で作られてるのか?誰もが同じじゃないと不安に晒されて 異物であると思うものを取り除くのに必死になっているのか?勿論、人の気持ちや空気を読みにくい事には問題も多いだろうし、やみくもに自分の感情だけで 物事を起こしてしまうことは、誰かを傷つけてしまう可能性も大きいし、その事に 自分は何も感じたり出来ないからといって許されるものではないと思うが、、反対側に立っている人間が優位とは限らないだけでなく…なんだか この作品を読んでると不思議と皆同じ ゴシップ好きな、人の欠点ばかり漁ってる人間の浅ましさを露わに見た感じがした。(それが 普通とされている 俗に言う世の多くの人間達なのか…)

    ラストは「この手も足も、コンビニのために存在していると思うと、ガラスの中の自分が、初めて、意味のある生き物に思えた」と感じる古倉さんが 健気に感じた。
    実際 どれだけの人が そんなふうに感じ生きているだろうか

    とにかく、切りとり方が、斬新であるこの作家さん すごいですね。

  • いやー、面白かった。一日で一気読みしてしまった。

    この主人公の古倉恵子のように社会とうまく結合出来ない人って結構いると思う。

    特に今の日本の社会は価値観の違う人間を排除しようとする力がすごく強いし、彼女のように「自分は人と違っている。このままじゃ社会から排除されてしまう。」と認識し、恐怖してしまった場合は、それを「直そう」という感情で押しつぶされそうになってしまう。

    彼女の場合、自分が「人と違っている」ことがそもそもどうしてけないのかということがまず理解できない。
    自分の妹に言い訳の仕方を聞く主人公のいじらしさ。この社会の標準てきな人たちと違ってしまっている自分をどうしたら目立たないよう、そっと生きていけるのかだけを目的に生きている主人公。

    自分をコンビニのアルバイト「店員」という形にはめ込むことで自分の個性を殺し、社会の歯車として自分を埋没させる。このようにしか生きることができない人がどんどん増えていると感じるのは自分だけだろうか。

    主人公とステータス的には同じであるが、対比として描かれる白羽のずるさというか、計算高さはこの社会のいびつさを如実に表していると思う。

    自分の中では、ここ数年で読んだ純文学の中でトップ3に入る傑作。

  • ページ数少ないのもあり、スラスラ読めた。
    こんな人らは、ムラ社会的な日本では、住みにくいわな。
    「社会の歯車になりたくない!」ってのは良く聞くけど、逆はあまり聞かんな。主人公は、後者というか、普通になれないけど、合理的なんで、普通を装う。
    普通でなく、特異で周りに馴染めず、自身の道を行くのは、芸術とか音楽とか◯◯の申し子というアーティストだけ?
    そういう意味では、この人は、「コンビニの申し子」やな。
    個人的には、普通でなくても、自分の好きに生きたらええやん!と思う。
    他人に迷惑掛けずに!
    あっ!これがムラ社会に洗脳されてるって事なんかな(ーー;)

  • 個性重視、ありのままに、多様化を認めるなどと言いながら
    普通でないと変人、異端児扱い

    学校を卒業したら、就職、そして、結婚、当然のことのように
    出産、育児・・・それが当たり前、普通

    「当たり前」「 普通 」って何だろう

    こんなふうに生きたくても生きられず、もがき苦しんでいる人もいる
    ここに出てくる古倉恵子や白羽のように

    コンビニの制服を着て、「いらっしゃいませ!」と声を張り上げ
    会釈をした
    そのとき、私は、初めて、世界の部品になることができたのだった。私は、今、自分が生まれたと思った。世界の部品としての私が、この日、確かに誕生したのだった。

    コンビニのマニュアル通りに働くことでしか、社会と繋がっていると実感できない古倉恵子
    しかし、見方を変えれば、コンビニにちゃんと自分の生き方を見出して、生きがいも感じている
    誰が何と言おうと 素晴らしいことではないか

    はじめは、白羽の言動が不気味で気持ち悪いと思っていたが、

    「現代は機能不全世界なんですよ。生き方の多様性だなんだと綺麗ごとをほざいているわりに、結局、縄文時代から何も変わっていない。生きづらいどころではない。ムラにとっての役立たずは、生きていることを糾弾されるような世界になってきている」
    と顔をおさえ、泣き出す白羽の悲痛な叫びともとれる言葉は、
    小説の世界ではなく、まさしく現代社会の抱えている問題そのもの
    昨今、ニュースを賑わしている事件とも相まって、胸が痛かった

  • 非常に読みやすく、一気に読んだ。芥川賞受賞作品と言う事で、なるほど、文学的に評価が高いと言う事は頷ける。

    ストーリーの面白さを求める人には正直合わないと思うが、私は著者がこの作品を通じて「普通」「当たり前」と言う価値観への強烈な皮肉をメッセージしていると捉えた。その一本のメッセージの元に物語を思い出して見ると、家族や友達、仕事仲間、あげくは世間一般が、いったいどれだけ共通の「普通」と言う価値観を押し付け合っているか、それから一歩でも外れたら、裏で表で一斉に攻撃されるかを主人公の話として伝えている。

    これは残念ながら、事実であろうし、時代の流れとともに都会ではまだ比較的多様性を認められつつあるが、日本と言う狭い島国ではまだまだ「こうなって当たり前」と言う共通価値観が根強くあり、それから外れると、とても生きづらい世の中である事は間違いない。著者の今の時代への皮肉が炸裂している作品で、後は読書に考えるように言われている気持ちになった。

  • 「普通」の定義は不確かに揺れていて、人は虚しくその中心に吸い寄せられるように「擬態」しているのかもしれません。それが上手いか下手か、だけの問題。その中身は考え方によってはスカスカなのかもしれません。だけど、見方によっては十分な個性があるのかもしれません。サカナクションの「アイデンティティ」をお供に。

    恵子は死んだ小鳥を見て「かわいそう」と思うのではなく「食べよう」と考えるような子供でした。慎重に思考するにしても、前者の方が「子供らしい」「常識的」「普通」なのでしょう。だけど、他の子供たちが死んだ小鳥のために花を摘む行為を見て、花に対する無自覚な残虐さと小鳥への憐れみに矛盾を感じている姿はある意味で聡明です。それに、「食べよう」という言葉はその対象が小鳥であるばかりに不気味がられましたが、人間は沢山の他の動物を食べて生きています。動物は共生するものでもあり、観賞の対象でもあり、資源でもあります。ここでの恵子の抱える問題の一つは、彼女もまた、他の子供たちの思考を想像することは出来ない、というところです。「擬態」までは出来ても「共感」は出来ません。その原因は、彼女の徹底した物事への無関心です。ゆえに、表面的にはそれらしく装って社会に混ざることが出来るけれど、一対一で接することになった途端、粗が露呈して「異物」と見なされてしまいます。

    そんな中、恵子にとって一番「擬態」しやすかったのがコンビニ店員でした。36歳の彼女はコンビニ店員としてはきっと相当優秀です。それでも、彼女はあくまで表面的に装うことしか出来ていないようです。確かに、仕事上の知識や経験は全くもって他に応用される気配はありません。そのためか、彼女は36歳という年になっても、中身が空洞のような人のままです。自他両方への無関心がそうさせるのでしょうか。

    恵子は、自分と他の人達をきっぱり分けて、他は自分とは明らかに違う者として描写します。それは、家族をはじめとする周りの者に自分が異質な存在だと言われ続けてきたからこそなのですが。ただ、果たしてそうなのだろうか、という疑問がぼんやりと残ります。まず、意地悪な目でみると、恵子以外の人が「普通」だとすれば、何とも虚しいものがあるのです。どの人も、中身らしい中身は無さそうなのです。確かにいかにも「普通」らしい人生を歩んでいる側の人が何人も出てきます。だけど、恵子がもう少し毒舌なら「しょーもな」位言いそうな具合です。むしろ「普通」らしい人達も、実はそれぞれに「普通」に上手いこと「擬態」している、と考える方が少しはマシにみえます。

    では、中身らしい中身は無ければいけないものなのでしょうか。それが、意外と要らないのかもしれない、焦らなくてもいつの間にか出来上がっているものなのかもしれない、というのがオチ、と読むと明るすぎるでしょうか。

    質の高い物語ゆえ当然だと思いたいけれど、まだまだ咀嚼しきれていないし、思うところも、ぐちゃぐちゃな状態で頭にふわふわ漂っています。フラストレーション。一番消化不良なのが白羽さんという存在。でも、考え始めると、楽しくはなくて、何だか辛くなる一方なので、この辺りで閉じておきます。

全1713件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1979年千葉県生まれ。玉川大学文学部芸術文化学科卒。2003年「授乳」で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)受賞。09年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島由紀夫賞、16年「コンビニ人間」で芥川龍之介賞受賞。その他の小説に『マウス』『星が吸う水』『ハコブネ』『タダイマトビラ』『殺人出産』『消滅世界』『地球星人』、エッセイに『となりの脳世界』『私が食べた本』などがある。

「2020年 『丸の内魔法少女ミラクリーナ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

村田沙耶香の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ジェイムズ・P・...
朝井 リョウ
辻村 深月
有効な右矢印 無効な右矢印

コンビニ人間 (文春文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×