太陽は気を失う (文春文庫 お 27-5)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167911355

作品紹介・あらすじ

あの日、私はあと十五分も土手でぼんやりしていたら、津波に吞まれていたかもしれない。奇跡のような十五分に恵まれた自分と、そうでない人とを比べて思う――。福島県の実家で震災に遭遇した女性の実人生に基づく表題作をはじめ、ままならない人生を直視する市井の人々を描いた大人のための名品14篇。第66回芸術選奨文部科学大臣賞受賞作

感想・レビュー・書評

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  • 一話一話は短くて読みやすいですが、内容は深くて考えさせられます。人生の後半の年代が主人公なので若い方には実感がないと思うけれど、私はけっこう身につまされました。
    とにかく今を大切に毎日を生きる、その積み重ねが人生を作り上げると改めて思いました。
    特徴的だったのは、女性の主人公は前向きなのに、男性がその反対なんですよ。そのあたりは実際どうなのかな?知りたくなりました。

  •  人の晩年の淋しさを癒やすのは、その日その日の充足か、過ぎ去った良き日の記憶であろう。味わい深い老夫婦の会話など短編14話が収録されています。乙川優三郎「太陽は気を失う」、2015.7刊行、2018.9文庫。第2話「海にたどりつけない川」、第6話「日曜に戻るから」、第7話「悲しみがたくさん」、第12話「さいげつ」がお気に入りです。

  • Amazon引用

    内容紹介
    あの日、私はあと十五分も土手でぼんやりしていたら、津波に吞まれていたかもしれない。奇跡のような十五分に恵まれた自分と、そうでない人とを比べて思う――。
    福島県の実家で震災に遭遇した女性の実人生に基づく表題作をはじめ、ままならない人生を直視する市井の人々を描いた大人のための名品14篇。
    第66回芸術選奨文部科学大臣賞受賞作

    内容(「BOOK」データベースより)
    あの日、私はあと十五分も土手でぼんやりしていたら、津波に呑まれていたかもしれない。奇跡のような十五分に恵まれた自分と、そうでない人とを比べて思う―。福島県の実家で震災に遭遇した女性の実人生に基づく表題作をはじめ、ままならない人生を直視する市井の人々を描いた大人のための名品14篇。芸術選奨文部科学大臣賞受賞作。

    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    乙川/優三郎
    1953年、東京都生まれ。千葉県立国府台高校卒業後、国内外のホテル勤務を経て96年、「藪燕」で第76回オール讀物新人賞を受賞し、デビュー。96年、「霧の橋」で第7回時代小説大賞、2001年、『五年の梅』で第14回山本周五郎賞を受賞。02年、『生きる』で第127回直木賞受賞。04年、『武家用心集』で第10回中山義秀文学賞、13年、『脊梁山脈』で第40回大佛次郎賞、16年、『太陽は気を失う』で第66回芸術選奨文部科学大臣賞、17年、『ロゴスの市』で第23回島清恋愛文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 太陽は気を失う、という言葉に惹かれて。重たいというか、暗い雰囲気の短編揃い。いろいろ考えさせられる。ただでさえ不安なのに、ほんと、不安にしかならないな。読みづらいところもあったけれどこの作家さんの文章美しい。他のも読んでみたい。

  • 短編集
    ※太陽は気を失う
     ・彼のことを思うと泣けるから、今だって縁は続いているに違いない。
    ※日曜に戻るから
     ・たった一人であれ思慮深く生きる人を知ることは、新しく百人の世間を築くより貴重に思われた。
    ※悲しみがたくさん
     ・美しい中に美しさ以上のものがなければ女も絵も魅力的とは言えません。
    ※誰にもわからない理由で
     ・なぜそんなものが好きなのか、集めてどうしていたのか そんなことが淋しい女の心の張りになることを、百合子も自分が生きる小さな世間の中で知っていた。
    ※まだ夜は長い
     ・持っていたカメラを向けたが、あとで写真を見ると、そのとき見たものとは違おう気がした。
     ・ギブソンとサイドにオリーブをくれ
     ・次の一杯を飲むうち、素晴らしい考えが涌くかもしれなかった。
    ※解説
     ・はたして、人はなにかを失わずになにかを得ることはできないのだろうか。
     ・ひとりひとりの「生」を肯定するかのような乙川さんのまなざしに、私たちは、自分もまた肯定されたような安らぎを覚えるにちがいない。

  • しっとりと人生の黄昏や落日を感じさせる作品の多い短編集。整っていて、穏やかな気持ちでページを繰っていける。終わりのほうに収められていた「さいげつ」がよかった。
    全14編のうち、女性たちの生き方はシングルマザーを選んだり料亭のおかみだったり生活が苦しい主婦だったりとけっこうバラエティに富んでいるのに対し、男はけっこう大きな企業を勤め上げ十分な蓄えのあり、昔を振り返ろうとする中高年が多い印象。

  • 2019.7.1(月)¥250(-20%)+税。
    2019.7.4(木)。

  • 激動の青春と、緩やかな晩年。
    どう過ごすのが幸せなのか、考えてしまう。
    いつになっても思い通りにならないのが、人生なんだろう。

  • 14の短編でなる本だが、朝日新聞の書評で『みな惚れ惚れするほどの名品ぞろい』とあったので、初めて読む作者であったが買ってみた。
    月初めに買いに行った時には、先月の新刊だったのにいつもの本屋の棚になく、少し間を開けて行ったら置いていた。
    何だかあまり前向きに本を読む気になれなくて、一話ずつぼちぼちと読み進む。
    気持ちの問題は本とは関係ないことで、この本には悪いことをしたかも。

    人生も終わりにかかった人を描く話が多く、定年、発病、死別、離別、浮気、災害などによって無理やり区切りを付けさせられる中で立ちのぼる、それぞれが歩んできた道に対する哀愁、心残り、悔恨や、これからのいつ終わるとも知れぬ人生に対する諦念、戸惑い、あるいは意志や希望などが、綺麗な文章で描かれていて、今の私のささくれ立った心に沁みてくる。

    そろそろ会社生活も終わりに近づき、これからの人生を妻や子どもとどう生きようかと考えるが、定年後の生き方を描く「日曜に戻るから」「まだ夜は長い」「単なる人生の素人」は、もうすぐ直面する話で他人事ではなく身につまされる。
    確かにここに書かれている男たちと同じ生き方だったと思う。
    そして、仕事がなくなり、積極的にやりたいこともなければ、正にここに書かれているような無聊の生活が来るのだろう。
    身につまされるというよりは、どうしていったら良いのだろうという漠然とした不安感。
    一方、女性を描いた話はどれも運命に弄ばれる凄惨な人生の経過を描きながら、それでも黙々と前を切り開こうという話が多く、その強さには心打たれるが、仕事しかなかった男のダメ加減が益々際立ち、焦燥感が煽られる。

    『人の晩年の淋しさを癒すのはその日その日の充足か、過ぎ去った良き日の記憶であろう』
    過ぎ去った日の記憶が良いものになるのかどうかもこれから次第のように思われ、その日その日を何で充たすのか…、途方に暮れてもいられない。

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著者プロフィール

1953年 東京都生れ。96年「藪燕」でオール讀物新人賞を受賞。97年「霧の橋」で時代小説大賞、2001年「五年の梅」で山本周五郎賞、02年「生きる」で直木三十五賞、04年「武家用心集」で中山義秀文学賞、13年「脊梁山脈」で大佛次郎賞、16年「太陽は気を失う」で芸術選奨文部科学大臣賞、17年「ロゴスの市」で島清恋愛文学賞を受賞。

「2022年 『地先』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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