十二人の死にたい子どもたち (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 2635
感想 : 212
  • Amazon.co.jp ・本 (495ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167911508

感想・レビュー・書評

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  • 冲方丁氏の小説は『マルドゥック』シリーズは全部読んでいるのだが、他の小説を読んだのは初めてかもしれない。
    結論的に言うと、非常に楽しめた小説だった。

    あらすじ的には、安楽死を望む12人の少年少女たちが廃病院に集まり、一緒に決行しようとするのだが、そこには既に少年1人の遺体があり、12名の少年少女たちはその亡くなった少年をそのまま放置して安楽死を決行するか、他の方法を取るか、その都度採決をして決めていくという話である。

    『12人』『採決』というと、往年の名画『十二人の怒れる男』を思い出さない訳にはいかない。映画『十二人の怒れる男』はアメリカの裁判で陪審員12名が被告人を有罪とするか無罪とするか全員一致で裁決するという状況を映画化したものであるが、有罪を主張する陪審員11名と無罪を主張する1名という最初の評決から、徐々に無罪を主張するヘンリー・フォンダ演じる陪審員8番が、裁判で取り上げられた証拠の矛盾点を一つ一つ取り上げていき、他の陪審員を説得していくという法廷劇である。映画の場面のほとんどが陪審員控え室だけで撮影されているこの映画を見て、僕も子供心に『なんじゃこりゃ』と思いながらも、その面白さに引き込まれた記憶がある。

    この『12人の死にたい子供たち』は、この名画『十二人の怒れる男』へのオマージュであることは間違いないのだが、ふと、読みながら
      今から死のうとしている子供たちが、そんな細かいこと気にするかな
    ということだった。
    この疑問は本書を読みすすめるにつれ分かっていくのだが、12人それぞれの過去が明らかになっていき、そして、13人目の少年の謎が徐々に解き明かされるにつれ、この小説の言わんとしていることが明らかになっていく。

    本書は、堤幸彦監督によって映画化されたようだが、僕はまだ見ていない。
    やはり、同じ場所で同じ境遇の子供たちが12人も登場すると、
       あれ?これって誰だっけ?どんな背景持ってる子だっけ?
    ってなってしまう。(←それは僕の読み込み方が浅すぎるだけかw)
    これが映像だと、そういった部分はなくなるので良いのかもしれない。

    しかしながら、後半にいくにつれ、登場人物の色合いが分かりやすくなり、物語に引き込まれてくる。
    そして、このさわやかな読後感は、非常に良かった。

    『死にたい子供たち』の物語なので、この本に出てくる子供は、
      親からの虐待
      不治の病に冒された子供
      いじめ問題を抱えた子
    などそれぞれであるが、病気は致し方ないとしても、それ以外は周りのサポートや対処により自殺などを考えなくても良いのだということに読者は気づくことになるのだ。
    ある意味、この本はエンターテインメント小説ではありながらも、鋭く社会をえぐった社会派小説でもあるのだ。

    • やまさん
      kazzu008さん
      こんばんは。
      いいね!有難うございます。
      いますごく降っています。
      いつ止むことやら。
      やま
      kazzu008さん
      こんばんは。
      いいね!有難うございます。
      いますごく降っています。
      いつ止むことやら。
      やま
      2019/11/22
    • hs19501112さん
      「十二人の怒れる男たち」をオマージュした邦画を昔観たことを思い出しました。

      ブレイク前の三谷幸喜の作品で
      やはり「愛していると…」前...
      「十二人の怒れる男たち」をオマージュした邦画を昔観たことを思い出しました。

      ブレイク前の三谷幸喜の作品で
      やはり「愛していると…」前の豊川悦司さんが主要キャラを演じていた半コメディ映画です。

      ご存じだったりしますか?

      タイトルの詳細は失念してしまったのですが

      やはり「十二人の」というワードは使われていたかと。
      2020/12/06
    • kazzu008さん
      hs19501112さん。こんにちは。
      コメントありがとうございます。

      おっしゃっている映画はたぶん『12人の優しい日本人』ですね。...
      hs19501112さん。こんにちは。
      コメントありがとうございます。

      おっしゃっている映画はたぶん『12人の優しい日本人』ですね。
      すごく気になった映画で、裁判員制度がまだなかった日本では話題になったという記憶があったのですが、実はまだ見たことがありません。

      それにしても日本では裁判員制度もあまり根付かないですよね。
      たぶん日本人は、政治なり、裁判なりを「自分よりも偉い人がちゃんと決めること」であるという意識が強くて、「自分たちのような普通の庶民が物事を決める」ということに歴史的にも慣れていないからなんでしょうね。

      このあたりはやはり歴史的に王政や立法府を民衆の手で打ち壊したという経験のあるヨーロッパ諸国に一日の長があるのだと思いますね。

      2020/12/06
  • 廃病院に次々と現れる子どもたち。
    安楽死のための集いが、思わぬ出来事により、紛糾していく。

    定期的に決を採りながら、議論を進める参加者たち。
    『十二人の怒れる男』『十二人の優しい日本人』同様、12人の意見はだんだんと変わっていく。

    情報が集まり、推理と議論の活発化する後半が、おもしろかった。
    推理と議論を楽しむためのミステリ。

  • 死にたい理由に限らず、それぞれ誰もが考えてる事はなかなか他人からは理解して貰えない。伝え方も表現の仕方もそれぞれだから、考えてる事が正しく伝わらない事もある。
    だから一方的に、他人の考えを否定することなく、自分の考えを押し切らなければ、その柔軟性から新しい道が開かれる…事も ある。
    私自身の気持ちが落ちてる時に読んだから更にネガティブになったんだけど…
    最後まで読んたら、何も解決した訳じゃなくても、それでもいいか!って思えたから良かった笑

  • いやー、面白かった!平日の夜なのに読了したら午前3時。引き込まれて450ページを一気に読み切ってしまった。

    物語のあらすじは、以下の通り。
    いわゆる集団自殺のお話。ネットで知り合った12人の自殺希望者が集まるのだけど、会場には既に1人の死体があり、13人目はいったい一体誰なのか...というところから話が進んでいく。

    まず12人の書き分けが非常に上手いので、キャラクターの把握は難しくなかった。章毎に主観のキャラクターが変わっていくのも構成としてグッド。だんだんと手の内や考え方が明らかになっていくのが良かった。

    そして面白いのは、12人が全会一致のルールを守り抜くところ。13人目の死体を前にしても、このまま自殺を決行するかどうかを話し合う。
    議題は徐々に、いったい誰が殺したのか、どのような経緯があったのかと移行していく。と、同時に12人の過去や死にたい理由が明らかになっていく。
    複雑な立場や思惑が絡まりつつも、彼らは話し合って決を取っていく。それが物語に緩急をつけて飽きさせない。

    全ての真相は終盤で明かされるのだけど、自殺を決行するかどうかは最後まで論議にかけられる。
    全てのキャラクターの主観を体験した読者は、その時点で驚くほど没入しているし、物語の決着に向けて最後まで惹きつけられる。

    ネタバレ抜きで結末への感想を述べるなら、全員が満足な結末になって良かったし、それが爽やかとも言える読後感に繋がっている。

    あと、外の世界から隔絶された廃病院という設定も良い。箱の中に密閉された緊迫感が非常に良かった。

    ワケありな子ども達が非日常の世界で救いに出会う様は、辻村深月の「かがみの孤城」ぽくもあった。


    個人的には、過激思想家のアンリに完全論破された性悪メイコがわなわな泣き出すシーンが一番熱かったw

    映画化が決まっているとのことで、今から楽しみ。単なる新人俳優のお披露目会みたいにならなければ、面白い映画になるかもね

  • もっとミステリーかと思って、謎解きに取り組むつもりで、12人の登場時の行動を表にして読んでみたけど、そういう類の謎解き小説ではなかった。むしろ、対話を通じて、異なる事情や死にたい理由を対立させることで、死にたいと思っていた子供たちが、自分を相対化、客観視していくことが、醍醐味のストーリー。対立しながらも対話を続ける中で、死ぬこと自体が目的・喜びなのでは無く、生きることを大前提としていて、その自分の生が何らかの理由で歪められているから死のうとしている自分が居ることに気づいていく。そう、死にたいと思うのは、生きたいという欲求の裏返しなんだという気づきに至る。『死ぬまで生きていて良い』というメッセージと、対話により自己を相対化・客観視してある意味の視野狭窄から抜け出していくことや、自分で解決出来なくても人に頼ることで解決できることがあるというストーリーから、対話や連帯の大切さを改めて感じさせられた物語だった。

  • 廃病院に集まった、十二人の子どもたち。
    かれらはインターネットのサイトを通じて強い自殺願望を持っていると認められ、その夜集団自殺を決行するために集まったのだ。
    しかし、全員が揃ったとき、十二人が眠りにつくはずの地下室のベッドには、既にひとりの少年が横たわっていた。

    この少年は誰なのか、なぜ、何のために、ここにいるのか。自殺なのか、それとも…
    謎を解き明かしてすっきりした後で自殺したいグループと、とにかく早く自殺したいグループにわかれて、話し合いをはじめ…


    それはもう、まさかそんなことはどうでもいいからサッサとやってしまおう、になる訳はないので…
    もしやひとりずつ減っていく展開?
    …などと思いながら読み進め、誰も自殺を選ぶことなく終章をむかえて、奇妙な爽やかさで読み終えた。

    いじめや虐待や病気、死んだ方がマシと思う出来事にあっても、その感情を吐き出すことで、出口を探す力が自分の中にあるのだと気付かされた子どもたちは、きっともう自死を望むことはないだろう。

    明日があるとは限らないから、今日を精一杯生きよう!
    …なんていう熱い志には、わかっちゃいるけど、どうにもそうなれないフラフラヨロヨロ低温の私には、“死ぬまで生きる”という感覚が、案外しっくりきてしまったせいか。
    バッドエンドでもハッピーエンドでもない、モアベターエンドが、思いのほか良かった。


    それにしてもシンジロウくん、いい子だなぁ。
    クラスにひとり、こんな子がいれば、イジメなんてなくなるんじゃないか…
    いや、こんな子が教師になってくれれば…

    オマケ。
    解説で、『十二人もの』ということでいくつか作品があげられていましたが、私は『11人いる!』の方を思い出しながら読んでました。

  • 著者の本で唯一読んだことのある「天地明察」とは全然違うテイストで驚いた。長編ミステリ。
    何らかの理由で「死にたい」と志願し廃病院に集まった12人の子供たち。しかしそこにはなぜか既に死んでいると思われる人がひとりいて、それは誰か・どうしてここにいるのかを子供たち同士話しながら謎を解いていく。
    主に会話のやり取りで話が進んでいくのだけれど、その口調の違いによる個性の描写が見事。話し合いの中でそれぞれ明かされる、死にたい理由・抱えている事情と相まって、とてもリアルで自分がその場にいるような臨場感を感じた。

  • 久しぶりに冲方作品を読了、最近の映画化作品であり作家生活20周年記念作品らしい。マルドゥックスクランブルから蒼穹のファフナー、メディアは違えどもSFから入り込み、本屋大賞受賞の天地明察から連なる時代小説に嵌り、ここにきて本格ミステリである。しかもなんとも挑戦的タイトルである。期待値が高かった…そして期待値のはるか斜め上を行く読み応えであった。

    ここで述べるまでもないが「12人の怒れる男」を彷彿させる、このハリウッド作品を視聴したのはかなり昔のことであるが、密室劇ならではの緊迫感は息をするのを忘れるほどに没頭した記憶がある。その後「12人の優しい日本人」という邦画があったようだがこちらは視ていない。共通項として12人のディスカッションにより真相と思われたものが徐々に壊れていくさま、新たに提示される証拠と、それが示す新事実のスリルの連鎖が人の心を捉え、高い評価を受けているだろう。

    この設定を「死にたい子ども」に置き換えてクローズドサークルの密室劇を見事に完成させている。解説の言葉を使えばミステリ的謎解きと、「死にたい子ども」たちの行く末を両立させた上での着地である。ネタバレを恐れずに言えば、最後のどんでん返しサービスも盛り込まれていた。

    ミステリ的構成としても、解決へのヒント、伏線全てのピースが嵌まりきっての決着であり、探偵役の少年「シンジロウ」が非常に魅了的だった。彼の活躍をもっと見てみたいと思ったが設定上無理なのかもしれない。

    ミステリの分野でもこれだけの完成度の作品が上梓されるとは!冲方丁という作家、ますます見逃せない存在となった。

  • 「十二人の死にたい子どもたち」
    十二人の子供たちの主張とは。


    冲方丁の初の現代ものの長編ミステリ。主人公は死にたい十二人の子供達。様々な動機を以て、秘密の場所にやってきた彼らが目にしたものは、ここにいるはずのない子供の遺体だった。


    十二人の子供達以外は知るはずのない場所にいるべきではないもう一人の子供がいる。しかも、死んでいる。一体誰が手引きをしたのか。死んでいる子供は一体誰なのか。この謎がミステリの核になっている。そして、十三番目の子供(ゼロ番)が登場するという想定外、且つ誰もその子供を殺していないという奇妙な状況下に置かれることになる中、それでも彼らは当初の目的通りに安楽死を実行するのか。これがもう一つのポイントと思う。この2つを両輪として物語が進行していく。


    更に十二人の安楽死の集いには原則がある。その原則とは全員一致であること。ゼロ番が死んでいるという異質な状況下でも安楽死を実行するには全員が賛成する必要がある。一人でも反対がいれば実行に移せない。最初はケンイチだけが反対に手を上げ、ゼロ番の死の不自然さに疑問を呈するが、時間が経つにつれて一人また一人と反対が増えていく。十二人の立ち位置は、どんどん変わっていく。この全員一致が物語を面白くしているのは間違いない。


    また、十二人の子供達が何故死を望んでいるのか。其々がその動機を告白することになるのだが、まだ人生の半分も生きていない子供達が命を捨てようとしているという状況は物語をヘビーにしている。そんな動機で死ななくても良いだろうというものから安楽死を望みたくなるものや、それは安楽死で達成出来るものなのか?と首をひねってしまうもの等、動機は様々。


    しかし、何よりも問題なのは彼らの動機の多くに大人が絡んでいること。未熟な大人によって、自ら死んだ方が良いと考える、思い込んでしまう子供が出てくるのは不幸以外の何物でもない。



    登場人物のキャラが立っているのもポイント。お陰で十二人と登場人物が多いが、誰と誰が被るといったことは起きない様に思える。其々の個性があるお陰で、例えば子供が死のうとしている状況下でもヘビー過ぎないレベルの空気感になっている。例えば、それは●番の子のお陰であったりする。また、強烈過ぎる個性により、○番の子には共感することが出来なくなる。基本的に十二人の子供達を見る目はフラットになっているものの、告白のシーン辺りからこの子供の考えは理解し難くなってくるのだ(〇番の様な子供がそのまま大人になったケースは沢山あると思う苦笑)。


    結末はある程度想定内ではあった。しかし、ゼロ番の死をきっかけに十二人の子供達が、安楽死を達成するという目的の為とは言え、自らの死にたい動機を告白し、そしてゼロ番を引き入れた人物が判明したことによって、彼らは少なからずすっきりした気分になったということが分かる幕引きになっている。自分が抱えている不安を誰かに話すことで気持ちが落ち着いたり、考えを整理できることがある。それに近い感覚に陥り、改めて自分が死にたい理由を他人に語ることで、本当に死にたいのか?死ぬことで目的を果たせるのか(セイゴの様に非常にセンシティブな動機もある)?を改めて考えることが出来たのではないか。


    このちょっと光が見える形での幕引きによって読了感は悪くない。フィクション内のこの十二人の子供達は光を見つけることが出来そうだ。しかし、一方で、現実社会に置き換えて考えてみると、彼らに対して何をすることが出来るのかを考えることになる。現実には、彼ら十二人の子供達の様な子供はきっといるはずで、フィクションで終わらすべきではないのだ。だから、子供達に対して何が出来るかを考え続ける必要がある。


    フィクションに留まらないメッセージが込められている一冊。

  • 今の世の中、圧倒的に足りないものは、人と話しをすることだと思う。

    的外れな感想かもしれないけれど、読み終えたとき、一番最初に浮かんだ気持ちがこれだった。

    12人の死にたい子供たちが集団自殺を決行しようとした場に現れた13人目の少年。すでに死んでいるように思われる13人目は誰なのか。何故ここにいるのか、誰かが連れてきたのか、自殺なのか、他殺なのか。
    そして、自殺を決行するのか、しないのか。決行する条件は意見が全員一致すること。ひとりでも決行に反対する人がいたら、全員一致するまで話し合うこと。

    12人は13人目の謎を解くため、自殺を決行するかどうか決めるため、話し合っては決をとることを繰り返し、そして、最後には大きな決断を下す……。


    話し合いを進めていく毎に、徐々に他人の性格や立場、抱える問題、育ってきた背景、死にたい理由が明らかになっていく。反発する者も出てくる。けれども、子供たちは話し合う。

    この繰り返しの中で、よく「人と仲良くしなさい」とか「他人を理解しましょう」と言われてきて、納得できなかったことを思い出した。結局は他人なのだから、他の人のことを全部理解することは出来る筈がないのに、と。

    本当に大切なのは、相手の話を聞いて、相手と話し合って、相手の嫌なところも許すことが大切なのでは?と、この本を読んで考えさせられた。

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著者プロフィール

作家

「2021年 『月と日の后』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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