十二人の死にたい子どもたち (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 1384
レビュー : 128
  • Amazon.co.jp ・本 (495ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167911508

感想・レビュー・書評

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  • 冲方丁氏の小説は『マルドゥック』シリーズは全部読んでいるのだが、他の小説を読んだのは初めてかもしれない。
    結論的に言うと、非常に楽しめた小説だった。

    あらすじ的には、安楽死を望む12人の少年少女たちが廃病院に集まり、一緒に決行しようとするのだが、そこには既に少年1人の遺体があり、12名の少年少女たちはその亡くなった少年をそのまま放置して安楽死を決行するか、他の方法を取るか、その都度採決をして決めていくという話である。

    『12人』『採決』というと、往年の名画『十二人の怒れる男』を思い出さない訳にはいかない。映画『十二人の怒れる男』はアメリカの裁判で陪審員12名が被告人を有罪とするか無罪とするか全員一致で裁決するという状況を映画化したものであるが、有罪を主張する陪審員11名と無罪を主張する1名という最初の評決から、徐々に無罪を主張するヘンリー・フォンダ演じる陪審員8番が、裁判で取り上げられた証拠の矛盾点を一つ一つ取り上げていき、他の陪審員を説得していくという法廷劇である。映画の場面のほとんどが陪審員控え室だけで撮影されているこの映画を見て、僕も子供心に『なんじゃこりゃ』と思いながらも、その面白さに引き込まれた記憶がある。

    この『12人の死にたい子供たち』は、この名画『十二人の怒れる男』へのオマージュであることは間違いないのだが、ふと、読みながら
      今から死のうとしている子供たちが、そんな細かいこと気にするかな
    ということだった。
    この疑問は本書を読みすすめるにつれ分かっていくのだが、12人それぞれの過去が明らかになっていき、そして、13人目の少年の謎が徐々に解き明かされるにつれ、この小説の言わんとしていることが明らかになっていく。

    本書は、堤幸彦監督によって映画化されたようだが、僕はまだ見ていない。
    やはり、同じ場所で同じ境遇の子供たちが12人も登場すると、
       あれ?これって誰だっけ?どんな背景持ってる子だっけ?
    ってなってしまう。(←それは僕の読み込み方が浅すぎるだけかw)
    これが映像だと、そういった部分はなくなるので良いのかもしれない。

    しかしながら、後半にいくにつれ、登場人物の色合いが分かりやすくなり、物語に引き込まれてくる。
    そして、このさわやかな読後感は、非常に良かった。

    『死にたい子供たち』の物語なので、この本に出てくる子供は、
      親からの虐待
      不治の病に冒された子供
      いじめ問題を抱えた子
    などそれぞれであるが、病気は致し方ないとしても、それ以外は周りのサポートや対処により自殺などを考えなくても良いのだということに読者は気づくことになるのだ。
    ある意味、この本はエンターテインメント小説ではありながらも、鋭く社会をえぐった社会派小説でもあるのだ。

    • やまさん
      kazzu008さん
      こんばんは。
      いいね!有難うございます。
      いますごく降っています。
      いつ止むことやら。
      やま
      kazzu008さん
      こんばんは。
      いいね!有難うございます。
      いますごく降っています。
      いつ止むことやら。
      やま
      2019/11/22
  • いやー、面白かった!平日の夜なのに読了したら午前3時。引き込まれて450ページを一気に読み切ってしまった。

    物語のあらすじは、以下の通り。
    いわゆる集団自殺のお話。ネットで知り合った12人の自殺希望者が集まるのだけど、会場には既に1人の死体があり、13人目はいったい一体誰なのか...というところから話が進んでいく。

    まず12人の書き分けが非常に上手いので、キャラクターの把握は難しくなかった。章毎に主観のキャラクターが変わっていくのも構成としてグッド。だんだんと手の内や考え方が明らかになっていくのが良かった。

    そして面白いのは、12人が全会一致のルールを守り抜くところ。13人目の死体を前にしても、このまま自殺を決行するかどうかを話し合う。
    議題は徐々に、いったい誰が殺したのか、どのような経緯があったのかと移行していく。と、同時に12人の過去や死にたい理由が明らかになっていく。
    複雑な立場や思惑が絡まりつつも、彼らは話し合って決を取っていく。それが物語に緩急をつけて飽きさせない。

    全ての真相は終盤で明かされるのだけど、自殺を決行するかどうかは最後まで論議にかけられる。
    全てのキャラクターの主観を体験した読者は、その時点で驚くほど没入しているし、物語の決着に向けて最後まで惹きつけられる。

    ネタバレ抜きで結末への感想を述べるなら、全員が満足な結末になって良かったし、それが爽やかとも言える読後感に繋がっている。

    あと、外の世界から隔絶された廃病院という設定も良い。箱の中に密閉された緊迫感が非常に良かった。

    ワケありな子ども達が非日常の世界で救いに出会う様は、辻村深月の「かがみの孤城」ぽくもあった。


    個人的には、過激思想家のアンリに完全論破された性悪メイコがわなわな泣き出すシーンが一番熱かったw

    映画化が決まっているとのことで、今から楽しみ。単なる新人俳優のお披露目会みたいにならなければ、面白い映画になるかもね

  • 久しぶりに冲方作品を読了、最近の映画化作品であり作家生活20周年記念作品らしい。マルドゥックスクランブルから蒼穹のファフナー、メディアは違えどもSFから入り込み、本屋大賞受賞の天地明察から連なる時代小説に嵌り、ここにきて本格ミステリである。しかもなんとも挑戦的タイトルである。期待値が高かった…そして期待値のはるか斜め上を行く読み応えであった。

    ここで述べるまでもないが「12人の怒れる男」を彷彿させる、このハリウッド作品を視聴したのはかなり昔のことであるが、密室劇ならではの緊迫感は息をするのを忘れるほどに没頭した記憶がある。その後「12人の優しい日本人」という邦画があったようだがこちらは視ていない。共通項として12人のディスカッションにより真相と思われたものが徐々に壊れていくさま、新たに提示される証拠と、それが示す新事実のスリルの連鎖が人の心を捉え、高い評価を受けているだろう。

    この設定を「死にたい子ども」に置き換えてクローズドサークルの密室劇を見事に完成させている。解説の言葉を使えばミステリ的謎解きと、「死にたい子ども」たちの行く末を両立させた上での着地である。ネタバレを恐れずに言えば、最後のどんでん返しサービスも盛り込まれていた。

    ミステリ的構成としても、解決へのヒント、伏線全てのピースが嵌まりきっての決着であり、探偵役の少年「シンジロウ」が非常に魅了的だった。彼の活躍をもっと見てみたいと思ったが設定上無理なのかもしれない。

    ミステリの分野でもこれだけの完成度の作品が上梓されるとは!冲方丁という作家、ますます見逃せない存在となった。

  • 「十二人の死にたい子どもたち」
    十二人の子供たちの主張とは。


    冲方丁の初の現代ものの長編ミステリ。主人公は死にたい十二人の子供達。様々な動機を以て、秘密の場所にやってきた彼らが目にしたものは、ここにいるはずのない子供の遺体だった。


    十二人の子供達以外は知るはずのない場所にいるべきではないもう一人の子供がいる。しかも、死んでいる。一体誰が手引きをしたのか。死んでいる子供は一体誰なのか。この謎がミステリの核になっている。そして、十三番目の子供(ゼロ番)が登場するという想定外、且つ誰もその子供を殺していないという奇妙な状況下に置かれることになる中、それでも彼らは当初の目的通りに安楽死を実行するのか。これがもう一つのポイントと思う。この2つを両輪として物語が進行していく。


    更に十二人の安楽死の集いには原則がある。その原則とは全員一致であること。ゼロ番が死んでいるという異質な状況下でも安楽死を実行するには全員が賛成する必要がある。一人でも反対がいれば実行に移せない。最初はケンイチだけが反対に手を上げ、ゼロ番の死の不自然さに疑問を呈するが、時間が経つにつれて一人また一人と反対が増えていく。十二人の立ち位置は、どんどん変わっていく。この全員一致が物語を面白くしているのは間違いない。


    また、十二人の子供達が何故死を望んでいるのか。其々がその動機を告白することになるのだが、まだ人生の半分も生きていない子供達が命を捨てようとしているという状況は物語をヘビーにしている。そんな動機で死ななくても良いだろうというものから安楽死を望みたくなるものや、それは安楽死で達成出来るものなのか?と首をひねってしまうもの等、動機は様々。


    しかし、何よりも問題なのは彼らの動機の多くに大人が絡んでいること。未熟な大人によって、自ら死んだ方が良いと考える、思い込んでしまう子供が出てくるのは不幸以外の何物でもない。



    登場人物のキャラが立っているのもポイント。お陰で十二人と登場人物が多いが、誰と誰が被るといったことは起きない様に思える。其々の個性があるお陰で、例えば子供が死のうとしている状況下でもヘビー過ぎないレベルの空気感になっている。例えば、それは●番の子のお陰であったりする。また、強烈過ぎる個性により、○番の子には共感することが出来なくなる。基本的に十二人の子供達を見る目はフラットになっているものの、告白のシーン辺りからこの子供の考えは理解し難くなってくるのだ(〇番の様な子供がそのまま大人になったケースは沢山あると思う苦笑)。


    結末はある程度想定内ではあった。しかし、ゼロ番の死をきっかけに十二人の子供達が、安楽死を達成するという目的の為とは言え、自らの死にたい動機を告白し、そしてゼロ番を引き入れた人物が判明したことによって、彼らは少なからずすっきりした気分になったということが分かる幕引きになっている。自分が抱えている不安を誰かに話すことで気持ちが落ち着いたり、考えを整理できることがある。それに近い感覚に陥り、改めて自分が死にたい理由を他人に語ることで、本当に死にたいのか?死ぬことで目的を果たせるのか(セイゴの様に非常にセンシティブな動機もある)?を改めて考えることが出来たのではないか。


    このちょっと光が見える形での幕引きによって読了感は悪くない。フィクション内のこの十二人の子供達は光を見つけることが出来そうだ。しかし、一方で、現実社会に置き換えて考えてみると、彼らに対して何をすることが出来るのかを考えることになる。現実には、彼ら十二人の子供達の様な子供はきっといるはずで、フィクションで終わらすべきではないのだ。だから、子供達に対して何が出来るかを考え続ける必要がある。


    フィクションに留まらないメッセージが込められている一冊。

  • 子どもたちの死にたい理由が、それぞれどう書かれているのか気になって読みました。

    自分の中では死にたい、死ぬしかない、と思っている理由は、実は他人から見れば「そんなことで」と思うことが多いんだと思いました。(もちろん、中には多くの人が共感する理由も書かれていました。)
    無知ゆえの死にたい理由や、学校や家族といった狭い世界に住むゆえの死にたい理由なんかは、それこそ「子ども」ならではだと思います。ただ大人であっても共通する部分はあると思います。

    物語の中で、子どもたちは集まり話し合い、それぞれの選択を取ります。犯人探しという形で物語は進みますが、あくまでそれは物語を進めるギミックであり、大切なのはそれぞれの死にたいという思いがどこにたどり着くかだと思います。
    子どもたちに必要だったのは狭い世界を抜け出し、「死にたい理由」≒「悩み」を相談することだったんだと思います。

    実生活においても、いくつかのグループに所属し、悩みは相談したほうが良いというのが伝わってきました。

  • 他人から見たら理解できないことも
    生きる理由にも死ぬ理由にもなる。
    誰かに話すことで、誰かと議論することで、誰かと繋がることで救われることもある。
    あらゆる自由があるのかもしれない。

  • 予想外の衝撃的な展開でした。

    読者の感情が揺さぶるために、死を扱う作品は多いですが、人を死なせて感動を生み出すのがセオリーという嫌いはあると思います。

    ですが、本作は死を望むという極限の精神状態を描くとともに、誰も殺さずに人の心を突き刺すような感動を与えます。

    そして自殺というネガティブなテーマから生きる意味を取り戻すという大逆転を見せた本書は素晴らしいと感じました。

  • タイトルから連想される通りのミステリー展開+思想的なメッセージ性も強い長編小説。

    「構想12年」ということらしく、確かに舞台設定や登場人物のキャラクターがかなり細かく練られた上で描かれた作品なのだなと感じた。

    捉え方によってはめちゃくちゃ奥が深いなぁと感じられる一方、ミステリーが伏線の長さの割にたいしたことなかったなと感じたので☆4評価です。

  • さまざまな理由で集団自殺をすることを決めた12人の子どもたち。しかし、現場には物言わぬ13人目が。13人目は自殺なのか、それとも12人のなかに殺人者がいる?謎を解いたとき、彼らは何を選ぶのか。
    集団自殺のグループとすることで、クローズされていない場所でのクローズドサークルが完成しており秀逸。13人目の謎だけでなく、それぞれが抱える秘密があるという、二重の謎解き展開も素晴らしい。読後感もよい。ちょっときれいにまとめすぎていて、なんとなくみたことある展開だなぁと思ってしまったが、それでも十分楽しめた。

  • 存在しないはずの十三人目。おかしいと思わないの?

    映画の予告を見て、原作おもしろそうだなぁと思って手に取った。今まで読んだ冲方作品とは毛色の違う印象のまま読み進めると、じわじわと物語に引き込まれていった。
    集団安楽死に集まった少年少女、それぞれの理由や背景が明るみになるに連れて、読者側も死と生について考えさせられる。
    とはいえ、ミステリーとしての要素も十分楽しめる。誰が嘘をついているのか、気になって読むのをやめられない一冊。

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著者プロフィール

冲方丁(うぶかたとう)
1977年、岐阜県生まれ。4歳から9歳までシンガポール、10歳から14歳までネパールで過ごす。早稲田大学第一文学部中退。小説のみならずメディアを限定せず幅広く活動を展開する。
『マルドゥック・スクランブル』で日本SF大賞、『天地明察』で吉川英治文学新人賞、本屋大賞、北東文芸賞を受賞し、第143回直木賞にノミネートされた。『光圀伝』で第3回山田風太郎賞受賞。
代表作となる『天地明察』は2011年にコミック化、そして2012年に岡田准一主演で映画化されヒット作となる。2019年1月、『十二人の死にたい子どもたち』が堤幸彦監督により映画化。

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