橋を渡る (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2019年2月8日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (528ページ) / ISBN・EAN: 9784167912208

作品紹介・あらすじ

『悪人』『路』『怒り』『国宝』の吉田修一が放つ
新次元の群像ドラマ、文庫化!

ビール会社の営業課長、明良。
部下からも友人からも信頼される彼の家に、謎めいた贈り物が?
都議会議員の夫と息子を愛する篤子。
思いがけず夫や、ママ友の秘密を知ってしまう。
TV局の報道ディレクター、謙一郎。
香港の雨傘革命や生殖医療研究を取材する。結婚を控えたある日……
2014年の東京で暮らす3人の選択が、
未来を変えていく。

驚愕の最終章を見逃すな!

「週刊文春」連載長編。
「文春砲」が火を噴く中で生れ、激しい賛否を呼んだ傑作!

吉田修一流リアリズムの大きな挑戦――(解説・阿部公彦)

感想・レビュー・書評

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  • 吉田修一にハマって読み続けた中の〜一冊。
    悪人〜横道世之助、
    国宝〜なんてすごい人なんだろう!苦しみ、悲しみ悶えながら読んだ。
    吉田リアリズムで説得力抜群
    なんせ、あちらこちらのセリフに痺れる
    読んだのは何年も前
    それでもこのくらいのことは思い出す。畏敬の念は拭えない。
    好きダァ。
    理想は何度も読みたい、現在読書数を目指してるので。
    好きな作家ベスト10の一人。

  • ネタバレになるけれど、2015年から70年後の世界が描かれていて、構成といい、文章といい、とても面白かったけども、わたしが経験した70年後の世界はもっと面白いのかも。

    つまり今、82だから12の時から、現在70年後の世界にいるってこと。

    12歳の時(1953年)は今普通に使っているものは無かったか、初期段階。

    例えば、テレビジョンの放送が始まって、ブラウン管のでかい箱を駅頭で見上げた記憶。
    電話は黒いダイヤル式、冷蔵庫は氷で冷やし、たらいで洗濯(14歳ころ一層式洗濯機ハンドル絞りつきになった)などなど...

    人間関係の世界はっていうと、それも変遷だ。社会機構、体制様変わり。

    LGBTSなど無いような世界、いや闇の中か忖度の世界だった。
    セクハラはあった、けど、それも闇の中か忖度の世界だった。
    離婚が少なかったけど、夫婦関係も問題が内包してだけ、などなど...。

    しかし、ゆっくりと浸かってきているので、自分がどの位置にいるか自覚しないだけ。

    そう、すっかり慣れている自分にびっくりだ!

  • 吉田修一の見せるもうひとつの世界。
    リアル。現実から少しずつずれていく。
    このひとの描く世界は手を伸ばすと触れそうで、人物が重厚で魅力的。
    主人公のひとりにおいてさえも、見えているものだけでなく、その奥に隠されているものがあり、読み進めてハッとする。

  • 読了したとき、まさか、こういう展開⁈と驚かされた。許せないことが起きてしまった時、人はどうするのだろう。人生はある日、突然に暗転する。登場人物それぞれの描き方が非常にリアルで面白かった。

  • 今までにない読了後の絶望感と希望。この先私はどう生きたらいいのか…そんな事まで考えてしまう。

  •  まさに橋を渡るような読書体験だった。春、夏、秋と橋を渡った先には奇妙な冬の景色がある。それは虚構に違いは無いが、我々自身の選択によってはある意味有り得る未来図とも言える。

     初めの三篇は極平凡な純文学的作品に見える。iPS細胞、東京都議会野次問題、雨傘革命、マララ・ユスフザイ、東京オリンピック等等、当時としてはタイムリーだったのだろう、リアルと地続きの距離感と世界観で物語は展開する。日常に潜む言語化し難いモヤモヤを抉りながら。人間ってこういうところあるよね、みたいな。それぞれの掌編の繋がりは稀薄で、態々一つの作品としてやる意味あるのかな、なんて考えたけれど……。

     最終章「そして、冬」に於いて物語は一気に七十年後の未来へと飛躍する。そこはユートピアともディストピアともつかない「不感の湯」のような妙な心地のする世界だった。まるで承前三篇の答え合わせのようだが、果たして正しく解答は導き出せたと言えるだろうか。

     
     文明は発達し、寒暄を忘れ、もはや不感症のようになってしまった冬を抜けると、再び祝福の春が巡ってくる。

     善人なおもて往生を遂ぐ。況や悪人をや。独り善がりの正義は時として取り返しのつかない過ちを犯す。然しそんな過ちを回避する為には、自分の信じる正しさを貫き、時に世界すら敵に回して戦う勇気が必要にもなる。正義とは利己や保身ではなく、利他と公共の為に戦う力だ。

     而して戦う為に必要な武器は殺意でもミサイルでもない。一冊の本が、或いは一本のペンがあればそれだけで人間は戦える。そうして戦う人は皆、子供も教師も関係無く、一人の気高い兵士だ。

     本書を読み了え、今一度橋を渡り、虚構から現実へと帰還を果たせば、橋の向こうには違う景色が見えていることだろう。

  • 週刊文春連載の吉田修一の連作中編。

    「春 明良」

    明良と歩美の夫婦は息子孝太郎とその恋人結花に振り回されながらも
    まずまず平凡で平和な暮らしを営んでいた。
    いくつかのほころび。平凡に見えていた日常はふいにその深淵をのぞかせる。

    「夏 篤子」

    篤子の夫、広貴は都議会議員。都議会での女性議員セクハラヤジ問題が飛び火し、身辺にいやな噂が流れるにつれ、篤子は「もっとひどい事件がたくさん起きて、みんなセクハラ事件のことなんか忘れてしまえばいいのに」という妄想にさいなまれる。

    「秋 謙一郎」

    謙一郎は雑誌記者。
    ある日、謙一郎は婚約者の薫子が浮気をしていることに気づく。
    謙一郎は軽井沢の別荘に薫子を呼び出し、そこからふっつりと記憶が途切れる。

    この話がこわいのは実は謙一郎が薫子を「殺していた」ということが途中から明かされ、逃亡生活へと移る点。主人公はどこかの時点から読者をだましているはずだが、それがどの時点からかは明かされない。
    居心地の悪いまま、次の章へと続く。

    「そして、冬」

    ここで舞台は2015年前後から唐突に未来の世界、2085年の東京へと移る。
    iPS細胞の培養から生まれた「クローン人間」サインが普及し、
    実年齢を超越した「若さ」を手にした人類。
    空を飛ぶエアロ・ヴィーグル、意識下の夢を可視化する「ブレイン・シネマ」など
    高度に発達した文明下に過去から現れた「タイムトラベラー」謙一郎が出現する。

    この未来図は前三章の登場人物たちが「その後どうなったのか」が直接語られ、過去と未来をつなぐ話となっているはずだが、正直うまくいっているようには思えない。

    過去にしばられ、その上で納得感のある「未来」へとつなげる構想の部分がどうにもチグハグでうまくつながっていない。タイムトラベラーとなった謙一郎にしても、やみくもに過去に戻ろうとするんじゃなしに、得られた力でもっといろんなことができるはず。

    壮大な「ホラ話」なんだけど、「なんとなく気持ち悪い」印象のまま、話が終わってしまう。

  • 様々な人のストーリーが混ざって最後のラストにつながる構造。
    人物一人ひとりに重みがあった。
    許せること、許せないことだけが人生じゃないよなと思わされた。

  • 春、子供のいない夫婦が預かっている、海外赴任中の姉の高校生の息子が、彼女を妊娠させる。夏、市議会議員の妻が、夫の収賄を知って苦悩し、秋、数カ月後に結婚を予定している順風そうなテレビディレクターが、彼女を殺してしまう。そして冬、時代は一気に70年後に飛ぶ。冬の視点者は、「サイン」と呼ばれる、特殊な生まれ方をし、通常の人間とは区別されて生きている男。その「サイン」は、秋、テレビディレクターが追いかけていた研究者が作り出したものである。サインの妻が、春の夫婦の血縁者であったり、もう一人のサインの夫が、夏の市議会議員の血縁者だったりすることが、だんだんわかる。70年前の出来事が、影響している世界。あの時の選択は、間違いだったのか。

    初読みの時にはあまり印象に残らず、忘れていたけれど、今回、おもしろくてのめり込むように読んだ。週刊文春連載だったらしく、「セウォル号沈没事件」「都議会セクハラヤジ問題」「iPS細胞」「香港の雨傘デモ」など、当時、世間を騒がしていたニュースが、そのままの形で出、正しいとは何かという問いかけが、ちりばめられている。そして、その影響を受けた70年後は、人間がストレスから解放された社会であり、しかし、その下で、犠牲になっているものがある。

    どうということのない夫婦の生活が、吉田修一が書くと、面白いのはなんでなんだろう。春、子のない夫婦のもとに届いた、差出人不明の酒、米の回収は、他の人の感想を読むまで、気づかなかった(ちゃんと書いてあるんだけどー)。

    良かった比喩。朝、泥酔状態の若いホスト三人が歌舞伎町のマンションに帰り、登校する小学生が出てくるシーン。
    「兵士が野戦病院に担ぎ込まれるように彼らが消えると、代わりに叶音ちゃんが元気よく飛び出してくる。」

  • 図書館で借りて、どうしてもまた読みたくなり文庫になっていたので購入。内容をすっかり忘れていて、ラストに引き込まれました。

  • 各章に主人公がいて、その目線から出来事や家族や友人が語られる。
    ささいな事もあるし、深刻な事も。
    そして各章でなんだか中途半端に終わった問題が
    最終章で回収される。
    回収の仕方がSFチックな事に好き嫌いは
    あるだろうけれど、私はこのお話しのSF味は
    好きだと思った。
    ただ、もっと回収して欲しかった。

  • 新宮明良・歩美、赤岩篤子・広貴、里見謙太郎・薫子の3組が絡むエピソードが展開し、最後に70年後の世界が出現するという奇想天外なストーリーだが、楽しめる著作だ.佐山京二教授の研修成果が実現されて、サイトと呼ばれる人種が出現している未来の世界が、なんとも奇妙な感じだが、実現性も感じられる.謙太郎が対馬で太鼓を叩く場面が何故か印象的だった.

  • 3章までは吉田修一の絶妙な表現力含めて楽しく読めたけど、4章目で脱落。ちょっとシチュエーションが吉田修一の文体に合わない気がして最後まで読むことが出来なかった。載せたメディアの性質もあったと思うけど残念。各章がつながらなくても良いので、この雰囲気のまま最後まで書き進めてもらいたかった。

  • 妻と暮らすサラリーマンの男性、都議会議員の夫を持つ女性、結婚を間近に控えたテレビのディレクター。彼ら3人がそれぞれに主人公。
    画廊に勤める妻に新人画家が執拗につきまとったり、議会での性差別的なヤジ問題に巻き込まれたり、新しい生殖技術の取材に立ち会ったりなど、生活や仕事の一環で携わったことが何らかの形で未来に影響していく。

    感情の微妙な部分を描くのがやっぱり上手いなと思い、それだけでまあまあ満足していたのだが、最終的にはSFになってびっくりした、
    この作家さんはリアリティがある作品の方が好き。

  • SFチックになる前は、とっても引き込まれたのだけれど、そのあとの宇治十帖的なパートの話がいまひとつ入ってこなくて、んんん?となってしまった。
    でも、全体的に見ると。ワクワクする感じを得る物語らしい物語だったきがする。

    単に、わたしが未来の想像ができていないんだろうなあ。

  • あの『悪人』や『怒り』と同じ系統の群像劇を期待して読み始めたら何だか違う。現代を舞台にした3編はそれぞれにつながりがなく、最後の4編目で時代は2085年に。私の苦手なSFチックな話になっているという。
    現代の3編でそれぞれの主人公やその周囲の人は、ちょっとした悪事や倫理・正義にもとる行動をとるかとらないかという狭間におかれる。「橋を渡る」ってどういう意味だろうかと思うけど、人間として越えちゃいけないものを暗示しているんだろうかと思いながら読んだ。
    4編目の未来でそれまでの3編がつながるんだけど、かといってよかったとも悪かったともいえない読後感。いやいやどっちかというと「そして、冬」ってだけあって、よくない未来。かろうじて、1編目でさわやかな若カップルだった孝太郎と結花が年を重ねた2085年にサインの響と凛にかけた愛情が救いかな。
    吉田修一のうまさって現代をリアルに描くところや多様な立場の人の機微を描けるところだと思っているので、未来まで描かなくていいかな。

  • まさかのSFで驚きと残念感が、、、。
    時間を置いて読んだせいか、冬の章で、この人誰だっけ?ってなるので、一気に読み進めた方がよいかも。
    最後の章以外は、さすが吉田作品って感じ。

  • ビール会社の営業課長・明良、都議会議員の妻・篤子、テレビ局の報道ディレクター・謙一郎。各々が人生の中で下した小さな決断が驚愕のラストにつながる。
    多少の不自由はあるが、決して不幸な暮らしはしていないほとんどの現代人。私一人ぐらいなら、他人にバレなければ、ちょっとだけならと、些細だけども非道徳的行動を各自が起こすことによって、未来は暗くなる。この意欲的で実験的な作品の数十年後の評価が気になる。

  • ★2019年7月14日読了『橋を渡る』吉田修一著 評価B
    時代の空気を色濃く映す作品。
    吉田修一氏の作品の中でも、太陽は動かない、ウオーターゲーム、怒りなどの社会系に含まれる作品。
    都議会セクハラオヤジ問題、iPS細胞、香港の民主主義運動など今風のニュースを織り込みながら、現代の市井の一般人の生活を描く。
    ただしこの作品は前半3編から最後の一編で突然70年未来へ舞台は進む。
    普通の生活を送る人々の断片を切り取るうまさはさすがである。

  • 「春」の章を読んだ時にハズレたかと思った。
    「夏」の章でようやくこの作者らしいザラッとした感じが出てきた。そして「秋」の章で本領発揮という感じがした。
    最後の「冬」を読み始めると何の話かと分からなくなるが、進むに連れそういう事かと読めてくる。
    ただこの「冬」の締め方がいいかは疑問だ。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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