冬の光 (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2019年3月8日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (480ページ) / ISBN・EAN: 9784167912376

感想・レビュー・書評

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  • 主人公はもちろんですが、登場人物が豊かな設定で濃いです。さらに、もちろんですが、人物像設定以外も濃いです。

  • 篠田節子さんは初読みの作家さん
    男性心理をメインに描いた作品で大人のディープな世界観だった。

    『冬の光』
    東日本大震災のボランティア後に、四国遍路を終えた帰路フェリーから冬の海に忽然と消えた父
    高度成長期の真っ只中で企業戦士として働き、専業主婦の妻に家庭を任せ順風満帆だったはずの父
    何故、父は帰らぬ人となったのか・・・
    物語は、四十年にも及ぶ父とその愛人との繋がりと、長年裏切られた憎しみと恨みを抱えた母、
    その影響を受けた姉妹の関係性が軸になっている。
    父の死がどこか釈然としない次女の碧は、数日間の休暇を使って父の最期の旅路に出掛ける。そこに過去の父の経験が重なる形で物語は進行する。


    感想
    これは人生も程なく折り返し地点を過て、ゴールを自然と意識し始めた年齢層の方がより入り込み易い作品だと思った。

    父と愛人との繋がりは、肉体的なもの以上に精神的な部分が相当に強かったのだろう。義父が言うように素人女はダメだが、学生時代から惹かれる部分をそのまま強固に磨き上げて来た女性はそう容易く代わりがきく存在でも無かったんだろう。
    妻の怒りもご尤もだが、その役割はきっと家庭を完璧に守ってくれた良妻賢母の妻では難しかったのかもしれない。

    でもなぁ愛人との付き合い、四十年は長過ぎる。
    自立した大人同士の繋がりは希少だし、ましてや男女の仲であれば、長くなる程、形を変えて意味を持つのかもしれない。若い頃と違い一定の距離感は保ちつつも、心の奥底に根付いている関係。日常的に意識しなくとも特別なのだろう。

    描いていた企業戦士の目標に辿り着けなかった父は何を胸に秘めて、何を感じていたのか・・・
    旅路の終わりに次女の碧が、父の心情に少し寄り添えたのが救いだった。

    本作は、家族や会社といった社会との関わりにおける「孤」の存在の意味を問われていると感じた。
    四国遍路では地位も名誉も肩書きも関係ない。
    退職した父の大企業を名乗る名刺も必要ない。
    そこにあるのは圧倒的な弧の存在だろう。定年退職を控えた世代には特に響く内容だと思う。

    読み進める内に、結局のところ父は妻にも愛人にも心の内を曝け出せていなかったことが、切なくて虚しく感じた。
    これは男の美学なのかプライドなのか、それとも世間体なのか、はたまた世代の問題なのか?

    そんな父が震災での生死に直面し、生涯独身となった愛人の死に様を胸に秘めた追悼旅の道すがら、不貞行為に及んでしまったのは、男のさがというよりも短期間で凡ゆる局面を目の当たりにした人間の、種の本能のように思えた。善悪はさておき、それによって補えた部分が確かにあったのだろうと思う。

    二十代の頃に本作を読んでいたら、碧と同じく、父という存在に生々しい性的な要素がみえて拒否反応を起こしたかもしれない。もうすっかりそのお年頃は越えたんだなぁと自覚させられる大人向けの作品だった。

  • 重くて長かった。話しに引き込まれてたけど、後半のお遍路の展開に読むのがしんどくなった。
    精神を病んだお遍路の女性と知り合い、性行為を行ったのにはガッカリしたし、その描写が気持ち悪くて吐き気がした。この男は結局はそうなるの、妻があんな気持ちになるのは当然。なんか、最後は後味が悪かった。

  • 四国の八十八か所めぐりのあと
    帰りの船から行方不明になり後に死体で発見
    された父
    それから次女は父の足跡をたどる
    次女の視点、父の視点で物語は展開していきました
    その人の人生は時に違う解釈で受け止められる
    本人にしかわからないこともまた多い
    そんなことを読みながら感じました

  • これを書いているのが女性だというのが不思議でならない
    不倫の話をここまで男に寄り添った視点で書けるものだろうか

    結局は家族を想って亡くなったという、最後は優しい話でした

  • 良かったです。とても良かったです。一気読みです。
    こういうヒューマンドラマ好きです。
    主人公康宏の人生を描いた作品。紘子との関係がメインで書かれているが、家族や震災・自身の仕事を通して人生の儚さを私は感じました。切なく儚い。心に残る作品になりました。

  • はぁ〜‼︎ やっぱり篠田節子さんの小説は、大人のお話なのだ。というか、歳をとってから読む方が、この味わいがわかる気がするのです。読んで良かった。

    四国遍路を終えた帰路、冬の海に消えた父、康宏。企業戦士として家庭人として恵まれた人生、のはずだったが…。死の間際、父の胸に去来したのは、20年間、愛し続けた女性のことか、それとも? 足跡を辿った次女、碧が見た冬の光とは…。

    こんな短い紹介文では表現しきれない、464ページでした。
    読んでる間ずーっと感じていたのは『人生は長く、人は強いけれど弱い。一生、清廉潔白な人などいるだろうか?』ということ。

    紹介文では20年間愛し続けた、とあるけど、それだって、実際そうなのか?というと、私は違う気もした。卒業後、学生運動からきっぱり足を洗って企業戦士になった康宏に対し、大学という社会の中で自身の正義感から闘争を続け、孤高の人となっていた紘子。気になる存在でもあり、愛していた時期もあるけれど、お互いのズレから、まるで寄り添えなかった時間の方が長かった気もする。
    また、康宏の家族愛は、決して嘘ではなかったことも充分わかるし、妻・美枝子との充実した日々だっていっぱいあったのは確かなことなのだ。

    愛情も憎しみも、寛容も怒りも、喜びも哀しみも…どんな感情であれ、1つの感情だけで生きていけるほど人生は短くない。逆に、忘れたり、執着がなくなったり、時間と共に辛い感情も薄れてきたり、そういうことがあるからこそ、生きていけるんじゃないかなぁ…などと感じました。

    私個人としては、いわゆる“男に甘い”ということかもしれないけれど、康宏が亡くなった直後の美枝子の態度は、余りにも極端に冷たく感じてしまった…。
    亡くなった人はもう言い訳も何も言えないのだから、心の中で気にかけてあげるのは、家族しかないんだなあなんて思ったり。

    父の旅をなぞってみる碧と、康宏が実際に辿った道や心の中、それが交互に描かれ、人は自分が見ているものが真実だと思いがちだけど、それだけじゃない、ということを強く感じました。

    私も、1番心に残ったのは若い住職の言葉でした。
    『どんな経緯にあったにせよ、どんな亡くなり方をなさるか、などということは、最後の、最後の、ほんのささいな分かれ道に過ぎないのですよ。ご安心ください。』
    こんな言葉に人は救われるのですよね。

    印象に残ったフレーズを少し。
    ーーーーー
    大人の男女の出会いや別れに、告白も宣言もない。いや、色恋に限らず、日常的な人間関係もそんな風にいつとはなしに始まり、いつのまにか疎遠になって終わっていたりするものだ。

    絵に描いたようなハッピーリタイアだった。にもかかわらず、異様なまでに空虚な気分に押し込められている。赤茶けた終末の風景の中に一人、立っているようだ。

    結局のところ、人生とは背負った重荷なのかもしれない、と思った。自分を生かしてきたものは、背骨がきしむほどの荷物だった。それが推進力となって自分を生かしてきた。
    ーーーーー
    大人に読んで欲しい作品です。

  • 家族は大事に思いつつ、自分の人生を生きる。はたから見れば好き勝手に精力的で良い人生を送っているのに、近距離で感じてみると切ない。

    娘(次女)が父の足跡を追いかけてみて、父の生き方を娘なりに飲み込めたのも良かったと思います。

    事実の認識は全て合っている訳ではなくて良い感じにずれていて。けど、残された側にはポジティブさが印象に残るラストで。

    ある意味で複雑だけど、すっと読めるストーリーでした。

  • ほんとに著者女の人?っていうくらい男の視点が細かく書かれ、語り口も硬質。事実を並べればしょうもない男なんだけど、本人の語りで読むと、そんなこともあるか…と思わせてしまう描写力。一人の人間の中に存在する多面性、弱さ、人間くささがよく描かれている。
    でも莉緒との関係は余計だ。気持ち悪い。
    ところどころ光った表現がある。
    「動物は着替えたりしない、という前衛アーティストの言葉そのままに、昔とまったく変わらぬ身なりで」
    「人生の終焉の迎え方としてはね、今の日本がおかしいんですよ。リーダーシップを譲るべき時に次世代に譲らず、それどころか介護という形で何十年も負担をかけて、未来を紡ぐ芽をつぶしていく。そうやって生物的限界を超えて長生きしているのは、我々だけですよ」

  • 人は人を理解できない、家族においても。
    ミステリータッチの、人間存在の危うさを問う小説。
    四国遍路を終えた後、海から死体で見つかった父は自殺なのか、それとも事故なのか。
    次女が真実を求め、父の足跡を辿り、遍路の旅に出る。
    1章、4章、6章は、次女の視点で。2章、3章、5章は父の視点で。
    読者は両方を俯瞰することで、表層でしか自分以外の人間を見ていないことに気づかされる。

    解説からの孫々引きになるが、「現代社会における文学の役割は・・・”自分の主張のみが正しい”とする狂信主義へと人々が傾くのを阻止することだ」には、同感の意を強くする。

  • なんだかなー。

  • 2人にどのような絆があるにしろ、途切れながらもずっと関係を続けていた事は妻にとってどれ程の裏切りか。
    ならば誰とも結婚しなければいい。
    紘子紘子紘子 康宏がすぐ思い出すのは紘子
    紘子の感覚もどうかしてると思うけれど、康宏の感覚が私には許せない。
    美枝子は離婚という選択が無いとしても、よく何度も許せてきたなと思う。
    その度に裏切られ、最後までも
    なんて自制心のない、自分勝手な人。
    梨緒の事も、結局はエゴ。
    いい人なフリをして結局する。最低。
    誰にも共感できない。

  • 腹が立った。
    主人公の、不倫相手が死んだからって俺には何も残ってない何もない的な絶望を無意識に自分に酔いながら抱えている感じが本当に無理。支えてくれた妻を喜ばすために生きようとか、娘や孫の成長を楽しみながら生きようとか、生きがいって自分で見つけるものだよ。てか紘子が好きで忘れられないんだったらダラダラ会ってねえで離婚してたんまり養育費払えばよかったのに。そうしない中途半端な感じが、逆にリアル、、なのか?
    紘子に電話したことを申し訳ないと思っているのが腹立つ。被害者は奥さんだぞ?
    女性の作家さんの作品だと知ってびっくり。

    • Jon Jonさん
      本当にどうしようもない男で、腹が立ちましたね。
      おっしゃる通り、女性が書いたとは思えない感覚の作品でした。
      本当にどうしようもない男で、腹が立ちましたね。
      おっしゃる通り、女性が書いたとは思えない感覚の作品でした。
      2025/07/19
  • 激しい学生運動の中で出会い、青春を共に過ごした康宏と紘子。康宏が就職を機に青臭い理想を捨てて現実を生きるようになっても、研究の道に進んだ紘子は正論を振りかざして権力に楯突くことを止めず、康宏を辟易させた。一度は疎遠になった2人だが、断ち難い関係はやがて康宏の家族の知るところとなる‥。
    常に戦い続ける紘子を孤独と決めつけ励まし支えているつもりでいたが、それは自分の傲慢だったのかもしれない。ラストでふとそう気づく場面が印象的だ。
    そして、娘から見た父の人生はほんの一部で、亡くなったあとでは真実を知る術もないと、読者を切ない気持ちにさせる。
    読む人によっては単なる不倫の話でしょ、となるかもしれないが、紘子に呆れ疲弊しながらも惹きつけられ続けた理由や、遍路の道中の心理の変化などに考えさせられるものがたくさんあった。

  • 巡り合わせというか縁というか…父さん結構人生楽しんだんじゃないの?

  • 買って帰ったら
    「それ、あるよ」と家族に言われて
    悔しかったので急いで読んだ本

    篠田節子のベストだ!
    って感想を多く見かけたので
    ワクワク読んだけど
    個人的にはベストじゃない
    全然、ない

    あまりそそられるとこもなく
    肩入れしたくなるキャラも出ず
    パッパの貞操観念の低い感じとか
    わりと上からなとことか
    仲良くしたくないと思った

    一番印象に残ったのが
    トロ箱2つにいっぱいのサンマ
    去年、サンマ一匹しか食うとらんな…
    なんてこと思い出した

    そんな感じの本
    篠田節子なので
    星は2つ
    もっと好きなのあるからな

  • 家族が大事であるのには変わりないけど、忘れられない大事な人がいるのもまた人生だなと思っているのでわからんこともないのだが、それにしても女々しくて不器用で、良くも悪くも優しいおじさんだな

  • リアリティのある文章。恋愛と結婚、男女関係、信仰、社会的地位、男社会の競争。欲のままに生きた等身大の男の人生と、どこか冷静でありながらも父の残像を追いかけ辿ろうとする次女の決意。他人事にはなれない物語がそこにはあって、引き込まれた。

    康宏は紘子を青臭いと揶揄していたが、康弘こそ青二歳のままだったと思う。

    結婚、家庭、孫という安定的で凡庸な幸せに満足せず、一時的な同情や情事に自分の存在意義を見出さそうとしていた。

    四国遍路での結願を経て、漸く家族のもとへ戻ろうとした時に命を落とした。自分勝手に生きた代償なのか、

    康弘を家族のもとへ帰ろうとさせた動機は、四国遍路の終了が主ではない、気がする。フェリー予約後に紘子の名前を検索し、紘子に感謝を述べる後輩たちがいることを知り、青二歳だと見下していた紘子が未来を担う後輩たちのために“役に立っている”姿を見て、ボランティアや四国遍路をしながら自分探しの旅をしている自分に恥じたのではないか。そこでやっと家族と向き合おうとしたのではないか。

  • 流される男と流されない女のお話って感じなのかなあ。
    世代や性格が違うせいか、めっちゃ性に奔放な康宏と紘子にもついていけなかったし。
    康宏は「何者にもなれなかった自分」に虚無感を感じているのかなとも思ったけど。
    康宏がホントに恵まれた人生すぎて、正直何ゼイタク言っとんねんくらいにしか思えなかった。
    終わりくらいの、康宏と梨緒の濡れ場はめっちゃ爽やかな朝に読んでたせいか「朝っぱらから何を読まされてるんだ私は…」感が半端なかった。

    康宏と紘子の話に絞っても良かったと思うんだけど、娘の碧に後を追わせたのは何故なんだろうと考えてしまった。

    これ、男性が読んだらまたちがう感想が出たんじゃないかなあって思う。

  • 以前どこかの本屋さんのPOPを見て気になっていた本。

    人の行動にはそれぞれの理由があって、理解できることも理解できないこともある。

    物語ではどうしても登場人物には光というか、正義を求めがちだけど、必ずしも感情移入させたりせず、淡々と人間って綺麗なところや理屈で説明つくところだけじゃないよねというのが書かれている気がした。

    最後は救われるところもあってよかったです。

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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