弥栄の烏 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 904
レビュー : 69
  • Amazon.co.jp ・本 (387ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167912727

作品紹介・あらすじ

累計130 万部の大ヒット和風ファンタジー第一部完結!松本清張賞史上最年少受賞のデビュー作『烏に単は似合わない』から一巻ごとに読者を魅了して成長してきたシリーズの第一部完結の第6巻。八咫烏の一族が支配する異世界・山内を舞台に繰り広げられる、お后選び・権力争い・外敵の進入。大地震に襲われた山内で、100年前に閉ざされていた禁門がついに開かれた。崩壊の予感が満ちる中、一族を統べる日嗣の御子・若宮は、失った記憶を取り戻すことができるのか。そして、人喰い猿との最終決戦に臨む参謀・雪哉のとった作戦とは――。一巻から周到に張り巡らされてきた伏線がすべて回収され、この世界の大いなる謎が驚愕とともに明かされるクライマックス。大人気キャラの受難、神秘の謎とどんでん返しに驚愕した後に、未知の感動が味わえる堂々完結の一冊。巻末には、先輩の大作家・夢枕漠さんとの熱い対談を収録!講談社コミック「烏に単は似合わない」第二巻も同時発売。

感想・レビュー・書評

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  • いや、これはすごいお話だった…!
    5巻はゴクたる人間の志帆目線の話だったが、6巻は5巻と対となる八咫烏目線の話。
    志帆が逃げ出したときに山神に焼かれたのが誰であったのか、ますほが必死に助けて欲しいと頼んでいた火傷の者は誰であったのか。
    禁門が開かれ、大地震が起こり、山内が壊滅的な被害を受けたこと。若宮は山神が仕えるようになった経緯。そして怒った山神が村を襲った時、山内に総攻撃を仕掛けた猿と八咫烏との戦い…。

    今巻は、真赭の薄の活躍ぶりがすごい。若宮より、雪哉より、ますほの巻だったのでは。

    自分は真の金烏だと、堂々としていて自信家で、時に横柄で傲慢ですらあった若宮は影を潜める。
    山神が何者であるのか、山神と八咫烏の本来の関係はどのようなものだったのか、本来持って生まれるはずだった金烏としての記憶を取り戻せず、若宮は焦り苛立ち苦悩する様子を見せる。

    神様の名前や由来はなかなか覚えられないのだけど、明かされる山神と烏と猿の関係には驚いたよね。
    3巻で突如現れた大猿には戦慄したし、大猿は皆やっつけるべき敵としてしか見えていなかったのに、大猿の語る猿側の物語では、全く違う様相を見せる。
    もともと土地神であった猿と烏。八咫烏は外から連れてこられた神に山を勝手に明け渡す。美しく閉じられていた山内は、都風の朝廷が置かれ、山神の座を渡すことに抵抗した猿ではなく、全て烏のものとされる。それなのに、烏は神に供物を供えることも神の神使としての役割も放棄して逃げ出し、美しい山内に入り浸った…。

    大猿らが八咫烏らを恨み、襲うのにはただ「食べる」だけでない理由があったのだ。3巻で若宮に殺された子供の猿も、おそらくその仇をとろうとした兄弟の猿も、そして捨て身の突撃を仕掛け、雪哉の戦略にはまって殲滅された猿たちも、ただ哀れでかなしい。

    八百万の神のいた日本。最近は、科学技術の発達により古来からの信仰が失われ、神と人との関係が変容した現代を舞台に、忘れ去られた神様にスポットをあてるお話が増えているが、この八咫烏シリーズも、村人からの信仰を集め、力を得ていた山神が、変わり果てた人との関係の末に迎えた最期の物語ということになるのか。
    不知火が見え、次第に山の端から集落が消えていっていた山内。山神の力の衰えが如実に影響していたのだろう。そして、山神が消えれば、山神の影響が大いに及んでいた山内だけがそのまま残るとは考え難い。
    阿部さんは、自ら作り上げた世界観の「世界」の存在自体を根底から覆えそうとしているわけで、「おそろしい子…!(白目)」というほかない。

    でもこれで終わりではなく、外伝と第二部に続く。
    一体どのように繋がっていくのだろう。 

  • 先月、単行本で読んだばかりですが、再度1巻から読み返してからの再読です。
    いろいろ忘れてしまっていた部分、読み流してしまっていた部分を整理してから読むことができたので、より物語を味わいながら読むことができました。
    それゆえか登場人物たちのつらさや苦しさが、より強く感じられて切なくなってしまいました。

    第一部の物語を覚えているうちに、第二部に取りかかりたいけれど、1年1冊の刊行ペースだから続きが気になってしまうかも…でも読みたくてうずうずするなぁ。
    20年後の物語、どんな展開になるのか楽しみです!

    巻末は著者と夢枕獏さんとの対談…こちらも豪華!
    夢枕さんの『陰陽師』シリーズを読みたくなりました。
    以前、友達にすすめられて最初の1冊だけ読んでいたのですが、それも随分前…改めて読んでみようかしら。

  • 八咫烏シリーズ第六弾、第一部完結は、猿と八咫烏の最終決戦!
    『玉依姫』のアナザーストーリーと、遥か過去の真実が衝撃。
    第一章 開門  第二章 断罪  第三章 治癒
    第四章 迷走  第五章 完遂  終章 こぼれ種
    用語解説、登場人物紹介、山内中央図有り。
    ・対談 阿部智里×夢枕獏・・・制作秘話の交流が楽しい(^^♪
    八咫烏側からの視線での『玉依姫』のアナザーストーリー。
    山内での大地震、若宮が山神に使える経緯と神域での出来事。
    山神と志帆の行動が山内にも影響を与えていた。
    過去の記憶の忘失に苛まれる若宮。
    山内を守るためには冷酷に作戦を組み、猿たちを殲滅する、雪哉。
    そして、猿たちの遥か過去からの山神や八咫烏への怨恨。
    この先の山内の、八咫烏の未来はどうなっていくのか?
    『空棺の烏』での勁草院時代の人物たちや、長束や路近、
    浜木綿や真赭の薄等、登場人物たちの行動や心の動きが、
    細やかに描かれていて、物語全体を引き締め、彩っています。
    雪哉の心情・・・仲間や部下を失った悲しみ。特に友を失った慟哭。
    だが山内を守るため、非情に指揮官としての行動に徹する。
    様々な死に接し心の闇に囚われるが、それを救ったのは生。
    生気溢れる姫宮の笑顔に接して、透明な涙を溢す彼の姿に、
    安堵しました。
    なによりも、女性たちの強さが際立っています。
    宗家の行く末を想い、真赭の薄に側室になれと進言する、浜木綿。
    自分の出来る事を模索しながら積極的に行動する、真赭の薄。
    だが、今後の山神との関係から予想される、山内の行く末。
    変容してきた神・・・大猿が取り戻したかった過去の在り様と
    同じく、山神や金烏も戻る事は出来ない。
    時の変遷に取り残されたような楽園にどんな変化が現れるのか。
    第二部は楽しみでもあり、怖いです。

  • 玉依姫の裏側の話で、話を思い出し、照合させながら読んでいきました。
    玉依姫の内容もあったので、こういうことだったのか、どうして⁈といろんな感情に翻弄されました。とても辛い内容もあったけど、読了後は良かったという思いと切ない思いでいっぱいに。
    いや、烏の世界の先を考えるとやはり少し切ないかな…

  • 八咫烏シリーズ第1部完結。
    リアルタイムで読み続けた甲斐があったなー。
    以下、多大なるネタバレ。気をつけて!




    個人的には前作『玉依姫』がすごく好きです。
    山神と化け物の境を行き来する椿は、まるで『千と千尋の神隠し』の世界だな、と思うのでした。
    引き続き、真名を喪うことの重みを八咫烏側から描いた、この『弥栄の烏』はまた、どこまでも苦しい展開でした。

    思えば、第一巻からどんどんと金烏は頼りなくなってゆき(笑)
    代わりに、雪哉が目覚ましい成長を遂げてゆく。
    二人のパワーバランスは、金烏が自分自身を掘り下げることに執心してゆく反面、雪哉が八咫烏という種族を代弁する存在になってしまった所で、決定的に崩れたんだろうなと思う。

    とまあ、男性陣の割と暗くてシリアスな展開が続く中、正妻・浜木綿と女房・真赭の薄の女性コンビが、もうめちゃくちゃ良かった。
    子を成そうが成すまいが、貴女は貴女。
    ただ、女性の役割を革新することは、玉依姫の悲劇にも繋がるわけで。

    そう考えると、第1部完は、必然にも思える。
    ただ。ここで終わって欲しくないですね。

    奇しくも、金烏が象徴と化し、紫苑の君という女性後継者が誕生するところが、なんだか今の日本を彷彿ともさせる。
    続き、ぜひ読みたいです。

  • 雪哉をとめてあげたいと思った。真赭の薄の葛藤と彼女が感じる違和感こそが救いになるような気がした。一度、動き始めた激流を止めるのは本当に難しい。それでも、感じる違和感を大事にしなくてはいけないのだと思う。誰かの犠牲の上に成り立つ平穏な日常で、本当にいいのかを考えなくてはいけない。

  • 裏表紙のあらすじに「八咫烏と大の最終決戦」とあったので、序盤に大猿が登場したときは「いきなり最終決戦開始?」と思ってヒヤリとしました。けれどその後は前作「玉依姫」と内容が重なってて、そちらの経緯と顛末が分かっているためか、ハラハラする緊張感を楽しめなかったかも。

    ただ、その緊張感が無かったとしても、真赭の薄が山神の世話に向かう際に見られる浜木綿との友情シーン、長束と奈月彦が大滝で会話する場面と、その直後の長束と路近のやりとりなど、それぞれのキャラの想いなどが伝わってくる名場面が目白押し。本作で見納めなのかと思うと、若干寂しい気持ちにもなりますが、なかなかにグッとくるポイントは多かったと思います。

    大猿との戦いに関しては烏側が圧勝しますが、大猿側の事情(=金烏が失っていた記憶)が分かり、いち読者としては素直に喜べず。歴史上、征服されて消滅した民族や一族を想起させられ、猿や烏というのはそれらの暗喩のように思えてきて、大猿達の末路がそれらと重なって切ない気持ちになります。

    また、雪哉についてよくわからなかった点が二つ。1つは博陸侯景樹が雪哉のために焚書を行ったということ。これは烏が大猿を殲滅したとき、それを行った者が罪の意識にさいなまれないよう、猿側の事情を事細かに記した文書を破棄したと解釈しているのですが、自信がなくてモヤモヤ気分。

    2つめはラストシーンで、姫宮を見て涙をながすところ。何故雪哉は涙したのかが分からなくてモヤモヤ…… 軍の参謀になってから戦いのことで頭がいっぱいになって、人間らしい感情や心を無意識に押し殺していたということなのかなぁ。全然わかんない(涙)

    と、モヤモヤしたところがありつつも、一時期京都に住んでいたことがあったので、見知った名所が出てきたところは感慨深かったです。賀茂御祖神社(下賀茂神社)と賀茂別雷神社(上賀茂神社)はちょくちょく訪れていましたし、下賀茂神社の近くに日吉神社があって、ここで猿(神猿)の石像を見ていたりしたので「俺、意外とこの世界(八咫烏シリーズの世界)の近くにいたんだ」と壮大な勘違いに浸れたのは、とても良かったです(バカですなー、私(笑))。

  • 第1シリーズからは想像もつかない物語の展開
    あの近習がこんな青年になるなんて、、
    辛い道を選ぶ雪哉の決意_φ(・_・

    2020/10/16 ★4.8

  • 八咫烏シリーズ第6弾で、最終巻。
    八咫烏の一族が暮らす山内を大地震が襲ったことから、彼らの運命が一変する。
    得体の知れない怪物のような山神、そしてその神使としての大猿が若宮を呼び出して…。山内の行く末や如何に?八咫烏の運命は一体…?

    待ってました!シリーズの大詰め!
    くすぶっていた猿との軋轢が判明し、戦いの火蓋が切られる。徹頭徹尾、憎たらしいほど冷静かつ聡明な雪哉がカッコ良かった。辛辣とまで思えるほど冷徹な判断は、彼の大好きだった友の死があったからだと考えれば、最後に見せた雪哉の涙の理由が分かる気がする。
    若宮に明るい未来が見えたエンディングは、第二部の期待を大きく背負う。はぁ…早く続きが出ないかしら、八咫烏シリーズ。阿部智里先生、待ってます!

  • 雪哉の心情を思うと本当に苦しい。垂氷の家族を守るためならぼんくらを演じるし、山内の民を守るためになら化け物にだってなる。本当は故郷で兄を支えつつのんびりと暮らしたいはずだったのに、誰かがするしかない汚れ役を買って悪役に徹する雪哉。大猿が死んだ場面で、殺戮を後悔していることを認めることすらできずに笑う雪哉が痛ましくてならない。姫宮に会う資格すらないと考えていたのかと思うと背負ったものの重さに苦しくなる。最後の最後で涙を流すことができて本当によかったけど雪哉にはもっと救われて欲しい…

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著者プロフィール

1991年群馬県生まれ。2012年早稲田大学文化構想学部在学中、史上最年少の20歳で松本清張賞受賞。デビュー作から続く「八咫烏シリーズ」は、松崎夏未氏による漫画化、中台翻訳など進行中。19年『発現』(NHK出版)刊行。

「2021年 『烏は主を選ばない(1)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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