奥様はクレイジーフルーツ (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2019年5月9日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784167912734

作品紹介・あらすじ

結婚して三年ほどの三十歳の主婦、初美。編集者の夫とは仲が良く、優しい彼に不満はないが、夜の営みが間遠に。欲求不満で同級生の男と浮気をしそうになったり、義弟に妄想、浪人生を誘惑、果ては乳房を触診する女医にまで発情する始末。夫婦はエロさから遠ざかる? 幸せとセックスレスの両立は難しい?

〝セックスレス〟という名のモンスターに挑む主婦は、禁断の果実をかじってしまうのか!?

解説 小橋めぐみ(女優)

感想・レビュー・書評

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  • 『セックスがないのはもはや我が家だけじゃない。日本中の夫婦に起きていることなのよ』。

    “カップルのうち、どちらかがセックスをしたいと望んでいるのに、長期間それができない状態”を指すとされる『セックスレス』という言葉。朝日新聞の調査によると、一年の内にセックスが全くない、もしくは数回と回答したカップルは、20代で11%、30代で26%、40代で36%、50代で46%と、歳を重ねる毎に増加していく傾向にあるようです。そんな『セックスレス』の原因は”仕事で疲れている”、”出産後何となく”、そして”面倒くさい”といった理由。ただ、これらは調査結果であって、

    あなたは、『セックスレス』ですか?

    …と普段の会話の中で話題に出すことはあり得ないでしょう。自身と相手の間に認識があっても、そのことを外から窺い知ることはできません。また、そもそもそんなプライベートの極地のような内容を他人がとやかく言うこともできません。しかし、そうしたこともあって、自分達の性生活が他と比べて、どうなのか、その解はますますわからなくなってもしまいます。

    カップルとは相手があっての話です。食事や衣服、暮らしの好みが異なれば、お互いそれを認識し、不満も口にすることでしょう。しかし、性行為はどうでしょうか?夫婦であっても歳を重ねるにつれ、それを口に出して相手に求めるのはなかなかに難しい状況も生まれてくるのではないでしょうか?

    それは、必ずしも夫婦の危機ということではありません。それぞれがお互いを愛しあっている状況、浮気なんて言葉とは全く無縁の状況であったとしても、

    『啓介さん。ねえ、これからセックスしようよ。そうじゃないと、私、欲求不満でどうにかなっちゃうかも』。

    と思い切って妻が夫に迫ったとしても、

    『うん、今度ね。今はね、くたくたなんだ…ブランチにしよう。駅前にできたパンケーキ専門店に食べにいこうか』。

    な〜んて言われてしまうと、『この幸せを守るためには、性欲のはけ口が別に必要だ』と妻が思いつめてしまうのを一概には責められないとも思います。

    さて、この作品は、『彼そもそも、あんまり性欲ないみたいなの』という夫との関係に悩む妻の物語。『私、いっぱいたまってるの。乳がん検診の触診で感じるくらいに!』と、抑えきれない性欲に悩む妻の物語。そしてそれは、性欲と向き合う暮らしの中で夫婦の未来に明るい希望を見出だす一組の夫婦の物語です。

    『これ、まんま西瓜の味だね…どんどん飲めちゃうね』と、『グラスを次々に重ね』るのは主人公の島村初美。『他に客の姿はない』こともあって『かれこれ、三週間くらいしてないよ』と際どい話題を振ってくるのは『大学のゼミ』が一緒で、先週に偶然再開した羽生(はぶ)。『大学病院の看護師さんなんて、ハードだろうねえ』と返すと『子供つくんないの?』『夫さん、いくつだっけ』と訊いてきた羽生。それに、『いずれは欲しいと思ってるけど』『来月で三十五歳かな。五歳上』と返す初美は、『うちなんてもうずっとセックスしてない』と『酔っているせいもあ』りはっきりと話します。それに最初ぎょっと反応したものの『結婚してまだ三年とかでしょ』と返す羽生に『彼そもそも、あんまり性欲ないみたいなの』『たまにセックスに至っても最後までいくこと滅多にないし』と続ける初美は、『女性誌の編集長』で忙しい日々を送る夫のことを思います。そんな時『おっぱいが、テーブルの上に載ってるんですけど』といきなり言い出した羽生にはっとする初美。『もしかして今、中に着ているのって、ユニクロのブラトップ?』と言いながら『ブラウスの胸元に手を差し込み、肩ひもに指をかけ』る羽生を『何故だか振り払えない』初美。そして羽生の手は『胸の谷間をなぞり、乳首の周辺を行き来』します。『楽なタンクトップなんて身に着けてるから、セックスレスになるんじゃないの』と言いながら手を引き抜いた羽生。そんな瞬間、『強烈に物足りない気がし』、『身体が熱くて仕方がない上、足の間が潤んで大変なことになって』しまった初美。『夫が大好きで、今の生活に不満はない』ものの『羽生ちゃんの手の感触を全身がもっともっとと求め』る自身の感情に驚きます。『この近所に、残業で終電を逃した時に使うビジネスホテルがある』と言う羽生に『行かないよ!』と言い切ったものの、一方で『羽生ちゃんの性器をじんわりと握りしめたい。乳首を刺激して欲しい』と思う初美。しかし、そんな思いを振り切って『私、帰らなきゃ。さよなら』と席を立ちます。ところが『会計を済ました羽生ちゃんにすぐに追いつかれ』た初美は『羽交い締めにされ唇を奪われ』ます。そして、『強い水音で目が覚めた』という初美は『やってきたタクシーに夢中で飛び乗っ』て羽生から離れた昨夜のことを思い出しました。そんな初美に『おはよう、はちゅ』と優しく声をかけてくれる夫。『校了日明けでくたくただろうに』と夫の気遣いに優しさを感じる初美。しかし、そんな初美は『これだけは言わなければ』と『勇気を振り絞り』ます。『啓介さん。ねえ、これからセックスしようよ。そうじゃないと、私、欲求不満でどうにかなっちゃうかも』。そんな初美の求めに『うん。今度ね。今はね、くたくたなんだ』と、パンケーキを食べに行こうと誘う夫。そんな夫から離れてベランダに出た初美は羽生に急いで電話をかけます。『羽生ちゃん、心は決まったよ。浮気しよう』と一息に話す初美。『夫が大好きで、今の生活に不満はない』ものの『セックスレス』の日常に不満を募らせる初美の悶々とした日々が描かれていきます。

    「奥様はクレイジーフルーツ」という不思議な書名のこの作品。結婚三年、仲の良い夫との二人暮らしに満足する一方で、『彼そもそも、あんまり性欲ないみたいなの』という夫との『セックスレス』な日々を憂う主人公・初美の姿がコミカルに、それでいてシリアスに描かれていきます。

    そんな作品で特徴的なのが書名にもある『フルーツ』への拘りです。12の短編が連作短編の形式をとるこの作品ですが、いずれの短編のタイトルもフルーツの名前がつけられています。そして、そのフルーツがその短編内でカクテルになったり、そのまま食べたりと色んな形で顔を出します。この選定、および登場のさせ方が何とも絶妙です。三つほどご紹介しましょう。まず一編目の〈西瓜のわれめ〉では、『白髪の男性バーテンダーが、半分に切った小玉西瓜をスプーンでくり抜』くと、『赤い汁が飛び散り、瓜科のみずみずしいにおいが辺り一面に広がる』という鮮烈なシーンが描写されます。一方、そんなシーンで、『おっぱいが、テーブルの上に載ってるんですけど』と羽生は艶やかな話題に初美を引っ張りこんでいきます。また〈蜜柑のしぶき〉では、『蜜柑だけが、この汗ばむような空気から自分を救ってくれる』とこたつに入って蜜柑を剥く初美の姿が描かれます。一方でそんな初美は、『義弟のこちらに向けられた力強い眼差し』を感じ『こうして男とこたつにあたることさえ、もはや卑猥に感じられてくる』という悶々とした心の内が描写されていきます。そして、〈グレープフルーツをねじふせて〉では、『バーテンダーが、丸々としたグレープフルーツをひねりつぶしている』、『種と果肉の粒がこぼれ、甘酸っぱいさわやかな香り』が広がる場面が描写されます。その一方で『赤の他人に乳房をつかまれるというのはかなり刺激的』と乳がん検診のことを熱く思い出す初美…という感じで、初美の抑えきれない欲情感が、艶めかしい雰囲気感の中に描かれていきます。フルーツの生々しく鮮烈な描写が、艶かしい雰囲気感を打ち消すどころかさらに官能的な雰囲気を絶妙に彩っていく不思議感。そして、フルーツによる繋がりで12の短編に適度なまとまり感が出て、官能感が全編に渡って止まらなくなるこの作品。フルーツと官能世界の相性がこんなにも良いとは思いませんでした。柚木さん、凄い着眼点!改めて柚木さんの作品作りの上手さを感じました。

    そんなこの作品、とにもかくにもテーマとなるのは『セックスレス』です。このテーマをどう思われるかは皆さんそれぞれの価値観にも直結するところがあるので何とも言いがたいですし、そもそもそんなテーマが題材になった小説なんて、と目を細められる方もいらっしゃるかもしれません。『女性にも性的欲求はあるし、妄想だってします(笑)。ただ、初美の性欲はお腹が減ったから食べたいという類のもので、だからこそ日常に普通にセックスがあってほしいと思っているんですね』と語る柚木麻子さん。そんな柚木さんが描く主人公の初美の性欲は作品を読み進めれば進めるほどにどんどん募っていきます。冒頭、大学時代の同級生・羽生にバーカウンターでいきなり『ブラウスの胸元に手を差し込』まれても『何故だか振り払えな』かった初美。義弟と二人でこたつに入っているシーンでは、『彼の性器がぐんぐんと伸び、こちらに侵入しているのではあるまいか』などと勝手な妄想に耽る初美。そして、乳がん検診で女医に触診された状況でさえ、『なんかこう、こってりした手つき』だ、とその手の動きに意味を感じてしまう初美。そんな初美の性欲の発現描写はコミカルに描かれてはいますが、一方で次第にそこから悲壮感さえ漂ってもきます。しかし、一貫して言えるのは初美が夫を愛している、そして、夫も初美のことを愛しているという相思相愛の関係が揺らがないという点です。『歩くときは必ず手をつなぎ、お風呂は一緒に入り、ハグもキスも欠かさない』という二人。『とても仲良く、楽しく生活している』という二人には、浮気という考え方自体登場しえない状況です。性欲を感じる状況に陥っても決して一線を超えない初美、そしてそんな初美を信じてやまない夫。なんとも仲睦まじい夫婦な二人は、人間として精神的な安定感の中にあります。しかし、唯一そこに横たわるのが『セックスレス』という人間の中の動物的感覚が目を覚ます領域の問題です。『夫婦として大切にいたわり合うほどエロからは遠ざかっていくんですね』と続ける柚木さんは、『迫る初美、あるいは迫られる夫・啓介にご自身の姿を重ねたり、同志だと思って楽しんでもらえたらうれしいですね』とまとめられます。今、このレビューを読んでくださっているあなたは、『セックスレス』という問題をどう捉えていらっしゃるでしょうか?性欲という領域は人によってその大小は大きく異なると思いますし、その是非に正解はないようにも思います。しかし、今の時代だからこそ問われる『セックスレス』という言葉には、何かしら意見はお持ちだと思います。普段なかなか口にできないこの言葉について、そんな風に何かしら思うところがあるとしたら、是非この作品をそんな問題に向き合う一つの機会としていただければと思います。とても読みやすく後味も悪くないこの作品。『セックスレス』というテーマを考えるにはとても興味深い作品だと思いました。

    『ベッドに横たわるなり、すぐに鼾をかき始める夫にどうやったらその気になってもらえるか、初美にはもはやよくわからない』という主人公の初美が、一方では『とても仲良く、楽しく生活している』という夫・啓介との関係に思い悩む様が描かれたこの作品。夫婦生活に何を求めるかは人それぞれです。しかし、ヒトの動物的感覚が失われない以上、『セックスレス』を不満に思う感情は決しておかしなものではありません。しかし、特にこの国では『セックス』という言葉自体、口にすることが憚られますし、余程の親しい間柄でもなければ、そんなことを話題にすることもないでしょう。その一方で、『セックスレス』という状況が増加してきているのも現実です。

    「奥様はクレイジーフルーツ」というこの作品。柚木さんらしいコミカルでかっ飛んだ物語展開の中に、絶妙な人の心理描写の妙を味わえるこの作品。官能小説でも恋愛小説でもなく、フルーツの瑞々しい表現と共に独自の立ち位置をとるこの作品。果たして夫婦とはどうあるべきだろうか、とふと自問してしまったそんな作品でした。

    • さてさてさん
      みたらし娘さん、ありがとうございます。
      卒業…と書いてしまうと確かにこの場からいなくなる雰囲気がありますが、私の年間最大レビュー可能数が1...
      みたらし娘さん、ありがとうございます。
      卒業…と書いてしまうと確かにこの場からいなくなる雰囲気がありますが、私の年間最大レビュー可能数が160冊。まだ一冊も読んでいない宮部みゆきさんの小説だけで80冊、吉本ばななさんとか、山崎豊子さんとかもまだゼロ冊、その先には樋口一葉さんとか、清少納言さんとか、紫式部さんとか、まったくゼロ冊の方が山のようにある一方で、今日も明日も女性作家さんの新刊が何かしら出版されていますので…という感じですね(笑) でも近々一つの挑戦レビューをUP予定です。目標というものは持つことが大切だと思っていますp(^_^)q
      宮部みゆきさん「ソロモンの偽証」、一冊目の候補に入れました。ありがとうございます。
      今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
      2022/02/18
    • みたらし娘さん
      さてさてさん、長くお付き合いいただき本当にありがとうございました!
      とても有意義な時間をありがとうございます✩.*˚
      確かに女性作家さんだけ...
      さてさてさん、長くお付き合いいただき本当にありがとうございました!
      とても有意義な時間をありがとうございます✩.*˚
      確かに女性作家さんだけでもものすごい人数で冊数ですね!!
      まだまださてさてさんのレビューを楽しめる時間がたくさんありそうでちょっとホッとしてしまいました笑 すみません笑
      でもその素晴らしい目標、応援しています!
      【ソロモンの偽証】楽しんでいただけたら嬉しく思います(^^)

      これから新しいレビュー読ませていただきます♪♪

      ありがとうございました✩
      2022/02/19
    • さてさてさん
      こちらこそ、楽しい時間をありがとうございました。「ソロモンの偽証」、ありがとうございます。
      今後ともどうぞよろしくお願いします!
      こちらこそ、楽しい時間をありがとうございました。「ソロモンの偽証」、ありがとうございます。
      今後ともどうぞよろしくお願いします!
      2022/02/19
  • 深刻な夫婦の問題だが、コミカル要素もあり、ついつい笑ってしまう場面がたくさん。きっかけがあればヒョイっと超えてしまうであろう境界線のギリギリ手前で戦う初美。頑張れ初美!と、ついつい応援したくなる主人公。また章ごとの果物にも女性心がくすぐられる。ももの種のところなんて共感(笑)
    両極端にあるものなのに、全てを手にすることはなかなか難しいのだと、二十代の時にはわからなかったものがつまってる。とてもおもしろかった。同年代の友人におすすめしたい本。様々な意見が飛び交い、話に花が咲くであろう。

    • 5552さん
      あささん、はじめまして、こんばんは。

      フォローといいねありがとうございます。
      この小説、面白かったですよね〜。
      高評価している方を...
      あささん、はじめまして、こんばんは。

      フォローといいねありがとうございます。
      この小説、面白かったですよね〜。
      高評価している方を見ると嬉しくなってしまう作品のひとつです。

      ところで、アイコンの灰色と黒の球体は何の球体ですか?
      よくよく見ると、アザラシを正面から写した写真に見えますが……。違いますかね。
      ナゾの卵にもみえる……


      2022/08/08
    • あささん
      5552さん、はじめまして、こんばんは^^

      こちらこそありがとうございます!
      面白かったです〜!この本を高評価されてる方々とは話が弾みそう...
      5552さん、はじめまして、こんばんは^^

      こちらこそありがとうございます!
      面白かったです〜!この本を高評価されてる方々とは話が弾みそうですよね!5552さんの本棚探索中、けっこう同じ映画を見ていて嬉しくなりました。またお邪魔させてもらいます^^


      おぉ。大正解でございます。こちら京都水族館の愛らしいアザラシでございます。なるほど、ナゾの卵にも見えるのか…と久しぶりに自分のアイコンをマジマジと眺めました。何の球体ですか?と言う質問にふふふっとつい笑みがこぼれました。ありがとうございます♪
      2022/08/08
    • 5552さん
      あささん、お返事ありがとうございます☆

      やはり、アザラシでしたか!
      いきなりの質問に快くお答えいただき、ありがとうございます。
      笑...
      あささん、お返事ありがとうございます☆

      やはり、アザラシでしたか!
      いきなりの質問に快くお答えいただき、ありがとうございます。
      笑っていただけたら、本望です♪
      いえ、一瞬、うずらの卵のような模様の、映画『メッセージ』のナゾの物体的な球体にみえてしまったんですよ。あれは、お菓子の「ばかうけ」の形ですが。←フォロワーさんがレビューで書いてらして大ウケ。
      何だこれは?と。
      日常がSFになった瞬間です 笑

      映画のレビューは書いてらっしゃらないのですね。
      残念です。
      2022/08/09
  • 欲求不満を燻らせてる
    クレイジーな奥様の話


    初美の空回りぶりがなんとも言えず
    可愛らしくもあり、哀しくもあり、
    夫婦をやっていくって大変だと改めて思いました



    夫婦2人だけで全てを満足するって
    なかなか難しいですよね


    私も夫とはいつまでもラブラブでいたいけど
    とっくに家族として見られているとわかってるので
    キュンキュン不足です笑笑


    そういうのは別の、
    ドラマとか、本とかから得て
    家族としてでも仲良くいられればいいかなと
    最近は思います


    他の家庭ってどんななんですかねー

  • 官能的?なのに全然そういうドロドロな感じ?というか嫌な感じもなく、サラッと性的な描写が書かれてるところがとても良かった。

    セックスレスって重い話題だと思うし、主人公である初美の葛藤とか考えたら全然笑えないはずなんだけど、【グレープフルーツをねじふせて】なんかは笑っちゃったし、全体を通して「頑張って!初美!」と応援したくなる1冊だった。

    フルーツはどうやって絡んでくるんだろうかと思っていたけど、1話ごとにそれぞれのフルーツもちゃんと主役というか、物語を盛り上げる大事なキーワードになってるのがすごい。


    主人公と自分が重なりすぎて無我夢中で読んだけど、こういう夫婦って割と多いんだろうなと思った。
    初美はいつ夫以外の人と一線を越えてしまうのか…!?と先が気になって仕方なかったが笑

    【セックスレス】ってワードなだけに誰彼構わずってわけにはいかないかもしれないけど、色んな人に勧めたくなる1冊になった。

  • コメディのようなストーリーだと感じた。でもシリアスな悩み、問題も所々散りばめられておりあまり無い趣向の本だなと感じた。
    多かれ少なかれ、特に既婚女性は初美さんのような感情を持ってるのではないでしょうか?ただ、初美さんはちょっと行き過ぎてる感じもしたけど笑
    要は人間「無いものをねだる」ということかなと。
    それを性欲にフォーカスするとこの本のような話になるんじゃないかなと思った。面白い本だと思います。

  • 2020.05.21

    共感しかない。まるで私のよう
    夫に抱いてもらえない。もういっそ誰でもいいから
    女としての自分を見て欲しい。必要とされたい。愛してほしい
    行動はやや暴走気味だけど、気持ちは痛いほどわかる
    果汁とセックスと、泣きじゃくりながらすぎていく日々。
    夫の言い分や身体のこともあるだろう。本人しかわからない苦しみとか、知らないこととかも。
    でも、熟れた果実が誰にも手に取られることなく
    ゆっくりと腐っていくような、強い甘みと悲しみが
    各章ごとにあって、心が締め付けられる。
    あなたしかいない あなたが抱いてくれない
    行き詰まりの絶望感。なのにどこか明るいから
    そのギャップは“本当に悲しみを抱き“隠していることに他ならない

  • わーお、クレイジー!
    外から見れば滑稽に思えることが、本人には悲しい。お互いを大切に思える仲の良い夫婦なのに、タイミングとか、仕事とか、なんかうまくいかない気持ちわかるな。性の問題を、何の問題もなく満たし合える、しかも持続できるって、そんなことあんのかなー。

  • 思ったより官能?小説でした笑。可愛い表紙絵に惹かれてジャケ借りしてきましたが、短編ごとの扉絵も色っぽい短編タイトルに合っていたし当たりでした!美味しそうなカクテルを作ってくれる控えめなマスターが居るバー、初美さんと行ってみたくなりました。

  • 面白かった!
    主人公の初美の奮闘ぶりが可笑しくて、何度も笑ってしまう。健気で一生懸命なところが好きでした。
    個人的に一番笑ったのは「グレープフルーツをねじふせて」の、銀座の真ん中で自ら恥をかくシーン。初美、絶対良い子。
    「林檎をこすれば」では、初美と芽衣子の会話が共感しすぎた。
    「ピオーネで眠れない」も、初美が過去と向き合い自分の本当の気持ちに気づき、未来へ帰っていくという場面も印象的で良かった。

  • 夫婦が家族になってしまうこと。
    その切なさやどうしようもなさやゴールの見えない闘いの最中にいる初美の気持ちを想うと読んでいて辛かったけれど、
    かけがえのない夫という存在の、温かみも描いているところが好き。
    他の男よりも親身に家族として心から心配してくれて、ただ寄り添っているだけで幸せで。

    ゆっくりでいいから、心も身体も休めて、そして2人のペースでやっていけばいい。
    理屈で頑張ってどうにかなるものでもない。

    現代の夫婦は昼も夜も忙しすぎる。

  • 割と重めのテーマなんだけどコミカルに、でも真剣に書かれていてさっくり読めた。はちゅが健気で可哀想で愛おしい。だがしかし私も他人事とは言えないのであった…。

  • 子供が欲しい人には必要なのかもしれないけど、私みたいな子供は絶対要らない主義からすると、結婚する必要性も意味も無いわけで。
    結婚しちゃうから簡単に他の人に走ることもできないわけで。
    人間なんていくらでも心変わりするし、性欲だって備わるべくして備わってるもの。
    結婚してるせいで、自然に生まれた心の変化や肉欲までもが不貞行為だの言われ非難されるこの世の在り方が私にはそもそも疑問。世知辛い。

    「結婚なんかしなきゃ良いのに、楽なのに」という揺るぎない思いと、「果たしてそんな私だけど、もしか将来それでも結婚したいと思う状況に陥ることがあるのだろうか」という予測も答えも付かぬクエスチョンとがよく頭の中で混ざり合ってます。

  • 2019.10.9.読了
    あらすじを書くのもはばかれる内容であるのに、柚木さんのくったくない、軽い描き方に笑わされた。そういえば性交渉をエッチと書かないところは非常に好感が持てた。馬鹿馬鹿しいと思いながらとっても明るい読後感でよかった。

  • 幸せな結婚をした。夫のことは好き。でもセックスだけがうまくいかない。身体の相性だけで選んだわけじゃないけど、長い結婚生活、性生活も大切だ。…という葛藤を抱えた主人公の物語。
    セックスはしないけど優しい夫。浮気する勇気もない。しかし欲求は満たされない。恋人から家族になったら性の対象として見てもらえないのか?これは妻だけの問題なのか?自分1人だけ悩んでいるみたい…などなど。
    主人公の気持ちが痛いほど分かる。この本が売れるということは、世の中の一定数の夫婦は少なからず抱えている問題なのかなと感じた。
    正直、激しく共感しました。

  • この夫とはもう無理ちゃう…?
    レス夫妻、欲望のバランスが一致してれば別に良いけど奥様ばっかり必死でせつない

  • あらすじを読んで柚木麻子さんは
    こういうテイストも書かれるのか…!と
    思いながら手に取りました。

    ある意味で想像とは違う、奥が深いお話でした。

    男女として出会って結婚して
    一緒に暮らす時間が長くなって家族になって
    表面上ではとても『平和で幸せ』だけれども
    心の中ではどこか満ち足りない…
    そんな気持ちと向き合い、戦う初美がすごい。

    小橋めぐみさんによる解説の
    最後の一文も良かった。

  • 夫婦のセックスレスの話。
    章ごとに違った旬の果物が出てきて好き。
    日常の細かい感覚的なものの表現がうまくて飽きずにさくさく読める。
    千疋屋とかとコラボして深夜放送のショートドラマにしたらちょっと流行りそう。

  • ー 心の通い合っている夫婦のセックスレスの不幸は、なんの行動も起こせなくなるという点だ。
    浮気をするには罪悪感がありすぎる、今のままでも十分幸せ、身体の問題はゆくゆく時間が解決してくれるだろう、、、。いくつもの希望的観測がいつしか檻を形作り、現状維持のまま何年も過ぎ、取り返しのつかない場所まで静かに運ばれていく。 ー

    ✳︎

    夫を愛し、愛されながらも、セックスレスが続いている初美、30歳。
    同級生と浮気しそうになりながらも未遂で終わり、義弟によからぬ妄想を広げながらも勘違いで終わり、
    更には夫の同級生の女医に欲情しそうになりながらもブチ切れられて終わる、クレイジーな日々を送っている。

    ✳︎

    夫婦ってなんなんだろう、結婚って、性欲ってなんなんだろうと考えさせられた。
    長く夫婦で居たら〝家族”になってしまって、深く愛し合っているのに性生活はご無沙汰だという夫婦も多いだろう。

    主人公の初美は凄く健気で、持ち前のタフさと、一途な愛で、夫と向き合っていく。
    愛する人とセックスをしたいから。
    性欲のずっとずっと先にある命をこの手で掴みたいから。
    彼女の行き場のない性欲や愛情や母性が、どうか報われれる日が来ますように、と祈らずにはいられない。



    2020年読了、21冊目

  • 切羽詰まってる感じが切ないとゆうか哀れに思えてきた。特にオチもなく淡々としてた。

  • 乳首の色とハツラツさの関連性なんて思いつかないよ。面白すぎるよ。
    それを読んでふふっと笑った後、つい下を向いて自分のそれを確認してしまったよね。

    セックスレスや性の価値観の違いで悩んでいる女性の為のきっとお守りになってくれる作品

    主人公は夫を愛し愛されながらもセックスレスの30代初美。欲求不満故になにもかもを性に結びつき暴走しかける描写に途中までは官能小説なの..?!とも思ったが、紆余曲折経て性欲や夫婦関係に向き合っていく

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著者プロフィール

1981年東京生まれ。2008年「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞し、デビュー。2010年、同作を含む『終点のあの子』を刊行。2015年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞を受賞。ほか作品に『私にふさわしいホテル』『ランチのアッコちゃん』『伊藤くん A to E』『本屋さんのダイアナ』『マジカルグランマ』『BUTTER』『らんたん』『ついでにジェントルメン』『マリはすてきじゃない魔女』(絵・坂口友佳子)『あいにくあんたのためじゃない』などがある。2022年に初のエッセイ集『とりあえずお湯わかせ』を刊行。2022年、作家の山内マリコとともに「原作者として、映画業界の性暴力・性加害の撲滅を求めます。」と題した声明を発表する。

「2024年 『柚木麻子のドラマななめ読み!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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