祐介・字慰 (文春文庫 お 76-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 652
感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167912741

作品紹介・あらすじ

クリープハイプ尾崎世界観、慟哭の初小説!「尾崎祐介」が「尾崎世界観」になるまで。書下ろしのスピンオフ短篇「字慰(じい)」を文庫版で初収録。「俺は俺を殴ってやろうと思ったけれど、どう殴っていいのかがわからない。」スーパーでアルバイトをしながらいつかのスポットライトを夢見る売れないバンドマン。恋をした相手はピンサロ嬢。どうでもいいセックスや些細な暴力。逆走の果てに見つけたものは――。人気ロックバンド「クリープハイプ」のフロントマン尾崎世界観、渾身の初小説。「祐介」の世界からスピンオフした「字慰」は、著者最新の書き下ろし作品です。解説は『コンビニ人間』が世界的高評価の芥川賞作家、村田沙耶香さん。たったひとりのあなたを救う物語。

感想・レビュー・書評

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  • クリープハイプ・尾崎世界観さんの、まさにエピソード・ゼロ。
    何をやってもうまくいかなかった頃の物語を、五感フルマックスで、緻密に綴っている。
    エッセイではないので全て事実というわけでないけれど、退廃的で強烈な出来事ばかり。

    ———あらすじ(公式より)———

    「俺は、俺を殴ってやろうと思ったけれど、どう殴っていいのかがわからない。」

    スーパーでアルバイトをしながら、いつの日かスポットライトを浴びる夢を見る売れないバンドマン。ライブをしても客は数名、メンバーの結束もバラバラ。恋をした相手はピンサロ嬢。
    どうでもいいセックスや些細な暴力。逆走の果てにみつけた物は……。
    人気ロックバンド・クリープハイプの尾崎世界観による、「祐介」が「世界観」になるまでを描いた渾身の初小説。
    たったひとりのあなたを救う物語。

    ———感想———
    面白いというより、ヤバいという言葉の方がしっくりくる。
    めちゃくちゃヤバい。強烈。
    祐介のセリフ、行動には全く理解できないものもあるし、筋が通っているわけではないけれど、なぜかしっくりくる。どこか哀愁もある。
    共感より、そんな感情もあるのか、そんな行動をとるのか、と気づきの方が遥かに多かった。

    僕は共感より発見を求めているし、未だ味わったことのないものに出会いたいタイプなので、かなり刺さった。
    アルバイトの日々、バンドメンバーとの確執、認めてもらえないことへの怒り、夜行バスと京都でのクライマックス、どれも強烈で印象的で、頭の中に一度描いた映像がずっと消えずに鮮やかに思い出せる。静かな怒りをずっと感じながら読んだ。

    文庫版にだけ収められている『字慰』もヤバい。
    タイトルからは物語が想像できず、読んですぐ意味がわかった。
    ラストシーンはかなり笑ってしまった。

  •  先日読んだ『火花』の又吉さんがアメトークの読書芸人で薦めていて、『コンビニ人間』の村田沙耶香さんが解説を務めている。『火花』は売れないお笑い芸人の話だったが、本作は売れないバンドマンの話なので、又吉さんには共感するところが多かったのかもしれない。
     実際に共通点は多く、特に売れないことによる貧困の苦悩は頻繁に描かれていた。お笑い芸人は収入がないだけで済むが、バンドマンはライブハウスを借りる費用もあるので活動するほどマイナスになるとも。
     しかし、『火花』では貧困の苦悩と同じくらい芸の追求についても触れられていたが、『祐介』では金銭的余裕がないことから活動の幅が狭まり、音楽に対しても思うように向き合えない苦しさがあった。熱量は失われつつあるが、音楽に対しては一応まじめな思いがある。ただ、一応音楽で売れたい夢はあるが、今となっては売れるしかないというような夢に囚われる形になってしまっている。なんとか進もうともがいて活動の幅を広げてみてもうまくいかない。
     その苦しさは怒りに変わり、周囲の人間に当たり散らしてしまう。つらいのはわかるが、正直この素行の悪さを見ていると、売れないのは日ごろの行いが悪いからだと思ってしまいそうになる。祐介の周りに彼を救う人間がいないように、多くの読者も彼を見放すことだと思う。
     それでも、と自らを奮い立たせようとするラストシーンでは高潔さが見えた。著者の尾崎世界観はクリープハイプというバンドで活躍していて、本作は彼の半自伝的な内容らしい。多くの競争相手がいて、その中で生きることさえ苦しい世界からどう這い上がったか。読者にはバンドのファンが多いので評価がやや高めな傾向にはあるが、単なる芸能人本とは切り捨てられない小説だった。

     文庫版で書き下ろされた「字慰」は、同級生の女子が書く文字に恋をした小学生の男の子の話。とてもきれいな文字に惚れて、同じ文字を書きたくて練習し続け、ついに彼女と同じ文字が書けるようになる。しかしある時その女の子が別の男の子に手紙で告白したことを知ってしまう。彼は受け取った男の子に手紙を見せてもらい、その文面を覚え、宛名を自分の名前に変えて全く同じ内容の手紙を書き投函する。
     うーん、怖い!彼が恋したのは彼女の文字なのか、文字を通した彼女なのか、それとも文字に注目するあまり別のものを見てしまったのか。
     本当はいいところを持った相手自身を好きなはずなのに、その特徴に注目しすぎて、そこが少し変わっただけで相手への気持ちが変わってしまうことってあるなあ。

  • その男には金がない。家賃もまともに支払えない。スーパーでバイトをしているが態度は悪い。
    男はバンドのギターボーカル。ライブをやってもぜんぜん客は入らない。ベースとドラムの二人から見放される。人望もない。

    男はひとりで出演できるイベントに誘われて京都まで行き、嫌な思いをさせられた。挙句の果てに打ち上げで出会った女と寝たら、ボコボコされて裸のまま外に放り出される。

    女子小学生から体操服を奪い、それを着てみたが、彼は明らかに変態。その体操服を買い取ろうとする男子小学生も現れた。
    彼らが間違っているのか。世界が間違っているのか。それは誰にもわからない。

    ---------------------------------------

    世界を憎んでいるような、舐め腐った態度の男が、世界から愛されるわけがない。誰からも認めてもらえない苛立ちを日常にぶつけている。
    けれども、まだ、どこかに自分を評価してくれる人がいるのでは、と男は期待している。惨めで、浅はかで、とても人間臭かった。

    破滅的に生きるバンドマンと、なかなかの変態っぷりを見せつける小学五年生が出会うラストは異様だけど、そこだけが真実であるようにすら見えた。

  • 月額定額制の僕の恋人
    もう時間ないから口でよろしくね

  • 読みづらさと受け入れづらさ。
    モヤモヤ感が残った。

  • 尾崎世界観ってタモリ倶楽部で聞いた覚えがあるなと手に取った。「祐介」は文学系な小説で、エロくてクズなバンドマンの私小説っぽい作品。文章も重くて微妙なところもあったが、最後まで読めた。「字慰」は設定が妙な文芸作品という感じ。

  • キロク

  • 話がどんどん移り変わる感じが読み進めやすかった

  • クリープハイプの存在を知ったのは、前職の後輩が10年前ぐらいに、イベントでDJしてたときにかけてた「オレンジ」を聴いて、好きになって買った覚えが。それからは他の曲も聴いたりはしてなかったけど、先日、喫茶つばらつばらで何気なく手にしたフリーペーパー「灯台にて」で尾崎世界観「祐介」が熱く語られていたので、居ても立っても居られず、買いに走りました。村上龍「限りなく透明に近いブルー」の生臭い血の味を思い出すとのことでしたが、個人的には、西村賢太「苦役列車」をマイルドにした感じと受け取った。絶えまなく描かれる周囲の人への怒り、嫌悪、悪意。主人公の彼らへの視線が伝わったかのように、バンドメンバーも何もいわずある日ライブに来ず、離れていき。細い線をたどってステージにあがったソロライブでも得るものはなく、ファンの子には「ある程度音楽でやってから、小説でも書けばいいじゃない。どこかの編集者にそそのかれて勘違いして、好きなだけ比喩を使って、小説でも書けばいいのよ」と言われ。ある意味窮地を救ってくれた小学生の「僕達、間違ってませんよね」が響く。

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著者プロフィール

1984年、東京都生まれ。ロックバンド「クリープハイプ」のヴォーカル、ギターを担当。作家としても活動し、これまでに小説『祐介』、日記エッセイ『苦汁100%』『苦汁200%』(いずれも文藝春秋)、『犬も食わない』千早茜との共著(新潮社)を上梓。

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