静かな雨 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2019年6月6日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (176ページ) / ISBN・EAN: 9784167912932

作品紹介・あらすじ

会社が潰れた日、パチンコ屋の裏の駐車場で、やたらと美味しいたいやき屋を見つけた行助。そこは、こよみさんという、まっすぐな目をした可愛い女の子が一人で経営するたいやき屋だった。行助は新たに大学の研究室の助手の働き口を見つけ、そのたいやき屋に通ううちにこよみさんと親しくなり、デートを繰り返すようになる。



だがある朝、こよみさんは交通事故の巻き添えで、意識不明になってしまう。家族のいないこよみさんのために、行助は毎日病院に通う。三月と三日経った日、奇跡的に意識を取り戻したこよみさんだが、事故の後遺症の高次脳機能障害で、短期間しか新しい記憶を留めておけないようになっていた。



二人は一緒に住むようになるが、こよみさんは、その日の出来事を覚えていられない。だが、脳に記憶が刻まれなくなっても、日々が何も残していかないわけではない。忘れても忘れても、二人の中には何かが育ち、ふたつの世界は少しずつ重なっていく。それで、ふたりは十分だったーー。



第98回文學界新人賞佳作に選ばれた瑞々しいデビュー作。



文庫版にはアンソロジー『コイノカオリ』(角川文庫)収録の「日をつなぐ」を併録。中学時代の恋人と結婚し、知らない町で一人子育てをする真名。くつくつと豆を煮る描写が効果的に挿入され、30数ページの中に凝縮された女性の半生と思いが描かれる。



解説・辻原登

みんなの感想まとめ

心に残る感情と日常の中での絆を描いた短編集は、2つの物語を通じてキャラクターたちの深い思いを丁寧に紡いでいます。一つ目の物語では、記憶を失ったこよみと彼女を寄り添う行助の関係が印象的で、日常の中で交わ...

感想・レビュー・書評

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  • R4.6.13 読了。

     「静かな雨」「日をつなぐ」の2編の短編集。
     静かな雨はこよみさんを想う行助さんの気持ちが痛いほど伝わってきて、思わずウルッときちゃいました。この二人の生活をもう少し見ていたかったなあ。
     日をつなぐは好きな人と結婚して新しい家族も増えて幸せな毎日が待っているわけではなく、現代の仕事が忙しい夫と育児に奔走する妻がすれ違いの毎日の中で、どのようにしたらその幸せな生活に近づいていけるだろうと模索している部分をもう少し見ていたかったなあと思いました。
     宮下さんの作りだす独特の世界観が好きですね。ほかの作品も読んでみたいです。

  • 大学に勤める行助と、たい焼き屋のこよりの物語。
    こよりは、交通事故に巻き込まれ、高次脳機能障害を負い、記憶を一日しかとどめられなくなります。
    この物語では自分の「存在」とは何かというテーマついて描かれています。
    以下、こよみの言葉。
    「あたしたちの世界は実際に経験したこと(中略)考えたり感じたりしたこと、そこに想像力が少し加わったものでしかないんだから」
    確かに、どれだけ体験を積めたかが自分を形づくっている。だから、読書も優れた体験のひとつだと思うし、いろんな体験って大事だとつくづく思いました。
    「あなたにとって黄砂は知識のひとつにすぎないけれど、あたしには世界の一部なのよ。」
    自分にとって異なるものでもその人の世界の一部であるのだから、そこをリスペクトしていきたい。
    「もし、面白いと思えるものがあったら、それが世界の入り口なんだよ。(中略)そこから世界に出られる。」
    自分の好きなこと、これくらいならできそうだと思えること、私ならもっとこうやるのに、というところに自分の原点があると思います。自分の進むべき道があるので大事にしたいところだと思います。

    日々の些細なことが人間をつくっていくというのに、行助とこよみの関係にそれが積み重なって行かないことがとても寂しいのは共感できます。
    それぞれ違うのが人だと改めて思うのだけれど、それでも「重なりあう」部分があるといいなと考えさせられました。

  • ・静かな雨
    "胸元からバンビでも飛び出してくるような気分"どんな気分?(笑)でもなんだか表現が良いな。
    とにかくこよみさんの人柄がとても素敵。たい焼き食べてみたくなった。
    自分が学生時代にこよみさんの言葉を知りたかったな。学校での勉強の大半は意味ない!大人になって使う事なんてない!と思ってた。
    今ならもっと学びたいと思える。知らない事を知る事の大切さと面白さをあと10年20年早く知りたかったなと思う。
    寝たら忘れてるって寝るのが怖くなるな。起きた瞬間も????から始まっちゃうのかな。
    もっと2人の続きが読みたいなと思った。

  • 「人間ってなんでできていると思う?」との問いに「生まれてからの今までの記憶。意識に上るかどうかは関係なく、経験したぜんぶのことが人をかたちづくってると思う。それと、その人が生まれるまでにたどってきた先祖の記憶。それが受け継がれて人は生きていくんだって思うようになったな」と答える。

    では、昨日の記憶を留めておくことができなくなったら…今日の出来事が、明日になるとなくなってしまう人がいたら「人間はなんでできているんだろう?」と新しい問いを探してしまう。

    『ん?』これって、昔、新垣結衣さんが一度寝てしまうと記憶がリセットされてしまう“忘却探偵”に扮し、謎多き事件を次々解決していく「掟上今日子の備忘録」に似てる…と、思ってしまった。
    一種の記憶喪失の話のため、ある話ではあるのだろう…

    さておき、私の宮下奈都さんの印象はこの「静かな雨」のような感覚。「羊と鋼の森」に通じる本作は言葉に立ち止まり、『あぁ、だから…』と、その言葉の意味が深くなる。そして、登場人物の周りを流れる空気が無色あるいは透明で澄んでいる感覚。決して、登場人物の心が綺麗であるとか、描写が美しいとかそんな意味ではなく、感覚的に空気が停止して、遠くが見渡せる感覚。過去のことを振り返ると見通せるような…(例えば、生きてきた奇跡を振り返ると確認できるとしたら、後ろを見たら淀みなく確認できるような…そんな感覚)

    例えば、主人公・行助の高嶺の花であるたい焼き屋のこよみ。セレブという意味でもなく、美人であるという意味でもなく、気持ちの上での高嶺の花。相手の気持ちを「高嶺の花」で形容している。こんなところがとてもピュアに感じる。
    そして、その「高嶺の花」が、ぽろっと落ちてくる。『なぜ、ぽろっと落ちてきたのだろう?』と、この後の展開を背伸びをして観察する。その結果が、分かった時『そんな意味だったのか』と、後ろを振り返ると、この言葉を振り返って眺め直す。私には終始、そんな感覚がまとわりつくつくような作品であり、これが私のイメージする宮下奈都さんの小説である。(だからワンさぶ子ちゃんのエッセイを否定しているのではなく、あれはあれでウケた)

    「明け方の雨に泣いていたこよみさんを、僕は忘れない。目を閉じれば、黄砂に吹かれて歩くこよみさんも見えるようだ。僕の世界にこよみさんがいて、こよみさんの世界には僕が住んでいる。ふたつの世界は少し重なっている。それでじゅうぶんだ。」
    作者がこの言葉で本作を終えた気持ちが、わかる。一方で、夢から覚めてこれから現実を受け入れる気持ちのようにも思える。

    もう一つ「日をつなぐ」も、「静かな雨」と似た感覚の作品だった。(似た感覚とは、作品が醸し出す雰囲気とでも言うのか…)
    内容は美しい恋愛小説ではない。中学、高校と同級生であった男性・水沢修一郎と結婚し、異郷で出産する私。仕事に忙しい夫、育児に疲弊していく妻。なのに、そんな生活の中で、バッハのフーガ、バイオリンの音色の響きが本作を雑音を取りさらう。「今日は早く帰ってきて」に「俺も真名に話したいことがある」
    物語は話したい内容を知ることなく終わる。何を真名に修一郎が話すかはわからない。それは読者に想像させている。(幸せな結論を想像したい…)

    豆のスープの話が出てくる…「太陽のパスタ、豆のスープ」に共通したキーワードがあるのだろうか?この作品も読んでみようと思った。

  • 夜寝る前に今日一日を振り返るひと時。あの場面ではこうすれば良かった、ああいう人にはこう接すればいいんだ、と色んな瞬間が思い起こされるとともに、今日一日で学びを深めた、昨日より前に進んだ自分に気づきます。それが、恋人どうしだと、夫婦だとどうでしょう。彼があのように物事を考えてるなんて知らなかった、彼女にはこんな一面もあるんだな、とその気づきが二人の関係をさらに深めていくきっかけにも繋がります。でも、もし、今日の記憶が今夜眠ることで白紙になってしまったとしたら、今日の経験が無かったことになってしまうならどうでしょうか。その時、その人は果たして今日という日を生きたと言えるのでしょうか。

    『遠くないうちにだめになるだろうと予想はついていたけれど、まさかこんなに早く来るとは思わなかった』と、冒頭の一文で主人公・行助が職を失ったことが語られます。そんな帰り道にふと見つけた『たいやき屋』。何気なく買っただけなのに、わざわざ戻って『これ、おいしい』と作ってくれた こよみに話しかけた行助。これをきっかけに二人の関係が始まりました。『いつも、ありがとう』そう返してくれたこよみに『それだけで体温が二度ほど上昇するような、胸元からバンビでも飛び出してくるような気分だった』という行助。一方、この表現の登場で早くも宮下さんを感じた私も全く同じ気持ちになりました。

    しかし、幸せは続かないもの。バイク事故に巻き込まれたこよみ。三月と三日の長い眠りから目覚めますが、『古い記憶はしっかりしています。ただ、残念ながら新しい記憶は残らないようです』衝撃的な事実を告げられた行助。でもここからこよみと行助の本当の歩みが始まっていきました。

    『病院でもらった診断書には、外因性精神障害と書かれていた。無性に腹立たしくて、僕はこよみさんには黙って病院に電話をかけた』、精神障害という言葉に引っかかる行助。ここで宮下さんは鋭い視点を入れます。『事故に遭って足を悪くした人が、先天性の麻痺を持つ僕を見て、こっそり、あの人とは違う、と線を引く。そういうことを僕は今まさにやっているのだった』、生まれつき足に麻痺があり松葉杖に頼ってきた行助。自分がされてきたこと、自分がそういう風に見られてきたことを、逆に大好きなこよみにしてしまっている自分に気づき愕然とする行助。人は線を引くのがとても好きです。辛いことがあると特にそうです。そうやって何か他人との間に線を引いて自分を区分けて納得する。どこまでいっても自分のことである以上、それで納得できるならそれでもいいとも言えますが、される側とする側を経験した行助を描くことで、人にそういった一面が誰にでもあることを強く意識させてくれます。

    そんな中、二人の関係のこれからについて、『迷ってるうちは進まないほうがいいよ』と姉に言われた行助。でも逆にその言葉をきっかけに歩みを確かなものにしていきます。

    作品では、中盤から後半にかけて、宮下さんならではの表現が惜しげもなく登場します。
    『あたしの世界にもあなたはいる。あなたの世界にもあたしがいる。でも、ふたつの世界は同じものではないの』
    『もし、面白いと思えるものがあったら、それが世界の戸口なんだよ。あなたにとっては突破口かもしれない。いつでも開ける。そこからあなたは外に出られる』
    宮下さんの本を読んでいるんだという喜びに満たされる瞬間です。そんな中でこよみが大切にする本の話が出てきました。『数学者は毎朝、自分の記憶が短時間しか持たないことを確認して、泣く』、映画は見ましたが本はまだ読んだことがない、小川洋子さんの「博士の愛した数式」のことだとピンときました。そもそもこよみのシチュエーションは博士と似た設定です。「博士」もとても印象に残る作品でしたが、この作品では毎日記憶がリセットされるこよみと行助の繋がりが描かれていく中で、そもそも人は何でできているのか、人生を作り上げていくものは何なのか、という問いかけがなされていきます。同じような設定でも「博士」とはかなり異なる印象を、そして宮下さんが描きたい世界を感じました。短い作品ですが、後半に行けば行くほどにとても読み応えのある作品でした。

    どんな偉大な作家にも始まりの作品はあります。初々しさの残る作品に触れるのは、その後に大きく飛躍された人であればあるほどに、とても楽しみな瞬間でもあります。この作品は宮下奈都さんのデビュー作。この作品から11年後に「羊と鋼の森」で本屋大賞を受賞される宮下さん。読み終わった感想は、最初から宮下さんは宮下さんだった、ということでした。初々しさの残る、それでいて深いところに何かが響く。読んで、世界に触れて、そして、自分の中にすっと染み込んでくる、初々しさが故の味わいを深く感じられた作品でした。

  • 思いがけず仕事を失い、駅のそばのパチンコ屋の裏の駐車場にたい焼き屋を見つけた行助。
    焼きたてのたい焼きは驚くほどおいしくて、店の奥にいたまっすぐな感じの女の子、「こよみさん」に一目惚れをする。
    軽やかに歩くような速さで、ふたりのあいだが縮んでいくように思われたのだが、ある日こよみさんは事故にあって、一日分の記憶しか留めておけなくなってしまう。
    こよみさんは事故のことを覚えていないし、新しい記憶を作れない。一日経つと忘れてしまう。
    けれど僕とこよみさんは確実に親しくなっていた。事故の前よりもずっと。
    ふつうに話して、ふつうに食べて、ふつうに寝る。
    そしてまた新しい今日がやってくる。
    こんなにも新鮮な世界が二人を取り巻いているなんて。
    繰り返される毎日を二人で送れる。きっとそれでじゅうぶんなのだと思う。
    「静かな雨」というタイトルと表紙がとても綺麗だ。

  • 宮下さんの04年デビュー作と、もう一つの短編。確実に『羊と鋼の森』に繋がる静かで美しい世界。絵に描いたようには上手くいかず、不器用なりに着実に駒を進める男女の物語に、思い出しますし、共感もします。

  • やっぱり作家はデビュー作に作風が詰まってる。
    何を読んでもスっと心に入ってくる宮下作品。デビューもすごいな、、
    「静かな雨」も「日をつなぐ」も一見ありきたりな設定ではあるけど、私たちの生活からそう遠く離れていないところに登場人物たちの暮らしがある、暮らしを感じられるのがいい。

    行助はこよみさんのことをとても大切にしている。でもそれはこよみさんの弱みを理解した上で、自分のために利用したり、傷つけたりしているとも捉えられる。だからって一概に行助を責めたりできない。

    「日をつなぐ」は、人によって捉え方がかなり違うみたいだけど、私はバットエンドを想像したなぁ。バットエンドになっても立ち直るところまでが宮下作品だと思う。

    大好きな作家さんのデビュー作。どちらの話も続いていく感じがいい。私たちの日常と同じで、淡々と毎日は流れていくから。物語にも完全な終止符は必要ないなと思わせてくれる作品だった。

  • 「静かな雨」
    明け方の雨のシーンが特に印象的でした。
    行助がこよみさんの中に、これ以上の澱を積もらさないようにと思います。

    「日をつなぐ」
    読んでいて、ずっとしんどかった。
    人によってハッピーエンドかバッドエンドかは分かれると思います。
    私は・・・後者かな。


  • 宮下奈都さんの小説は、綴られる文章がとても丁寧で、柔らかくて、どんな事件が起きてもどこか静かで、まるで作中に出てくる滋味あふれる豆のスープのようだと思う。
    優しい小説ってあんまり好みじゃないのだけど、宮下作品は、文字を追ってるだけでじんわり幸福感がある。
    それでいて時々「迷ってるうちは進まないほうがいいよ」など、ちょっと立ち止まって考えさせられる一文があったりして、そこがまた物語のコクになっていて良い。

  • この人は文体が綺麗だ。
    羊と鋼の森も掛け値なしに綺麗だった。

  • 会社が潰れた日、パチンコ屋の裏の駐車場で、やたらと美味しいたいやき屋を見つけた行助。そこは、こよみさんという、まっすぐな目をした可愛い女の子が一人で経営するたいやき屋だった。行助は新たに大学の研究室の助手の働き口を見つけ、そのたいやき屋に通ううちにこよみさんと親しくなり、デートを繰り返すようになる。

    だがある朝、こよみさんは交通事故の巻き添えで、意識不明になってしまう。家族のいないこよみさんのために、行助は毎日病院に通う。三月と三日経った日、奇跡的に意識を取り戻したこよみさんだが、事故の後遺症の高次脳機能障害で、短期間しか新しい記憶を留めておけないようになっていた。

    二人は一緒に住むようになるが、こよみさんは、その日の出来事を覚えていられない。だが、脳に記憶が刻まれなくなっても、日々が何も残していかないわけではない。忘れても忘れても、二人の中には何かが育ち、ふたつの世界は少しずつ重なっていく。それで、ふたりは十分だったーー。
    「文春文庫BOOKS」内容紹介より

    二つの話が入っている作品.
    内容紹介にあるのは、一つ目の話.

    一つ目
    確率低くはあるが、ありえない話ではない設定.
    モノが違えば、十分ありえる話.
    同様の事故をニュースで聞いたことがある.
    日常ってありふれているように見えるから日常.
    当たり前は意識しないものだから当たり前.
    この二つが重なると、ともすると感謝を忘れる.
    体に不自由がなくても心に不自由を感じ、
    体が不自由でも心は自由なのだ.
    どっちに転ぶかは運次第、心持ち次第.

    二つ目
    「ハイペリオン」
    土星の衛星、ギリシャ神話の太陽神、高みを行く者.
    人は見た目や属性で他人を決めつける.
    でも、人がどう思っているかは見た目では分からないことも多い.
    その人自身でも分かっていない場合すらある.
    分かっていても、何かの役割を演じなければならない時間もある.
    ままならない.
    でも、ほんの少しの一歩で、もやもやから抜け出せることもある.
    きっかけは、外にころがっていることもあり
    きっかけは、自分の中にあることもある.

  • 「静かな雨」のみAudibleにて

    こよみさんの鯛焼き、そんなに美味しいのかー。食べたいよ…とずっと思いながら、物語を追いかけた。

    不慮の事故から記憶が1日しか残らなくなってしまったこよみさん。寄り添う行助(ゆきすけ)さん。
    日常の中に滲む二人の様々な感情。それらは時に強く、時に脆く。。
    切ないけれど、寄り添ってくれる人がいて、その人の温もりが生きて行く力をくれるのだと教えてもらった気がした。

  •  読みやすく、短いのでサラッと読み終えました。綺麗な文章が印象的でした。

     「静かな雨」も「日をつなぐ」も、敢えてなのでしょうが、これから…!というところで終わった感じがしました。
     あるあるな設定でしたが、主人公が変に感情的ではなくニュートラルだったので、感情移入しやすかったです。

     こよみちゃんの家族や過去が、もう少しだけ知りたかったなと思いました。
     

  • 事故の後遺症でこよみの記憶は毎日リセットされる。松葉杖の必要な行助にとって,高嶺の花であったこよみが,身近な存在となる。切ないけれど静かで優しい読後感。

  • ふたりで歩いた帰り道に浮かんでいた月だとか、そういう日々の暮らしの記憶が積み重なって…

    こよみさんとユキの物語。
    やっぱり宮下奈都さんの世界は優しい。映画も観てみようか。

  • 松葉杖の青年と、交通事故で記憶障害を患ったたい焼き屋の女性の物語。
    共に生きているのに、想い出を共有出来ない虚しさ。
    どうせ明日になれば、忘れてしまうのだからと、八つ当たりしてしまう青年。
    ブロッコリーのキッチンメモのくだりは、ちょっと苦しかった。

  • 本の装丁とタイトルが素敵で絶対読みたいと思っていた。
    予想通り穏やかでゆったりして、この空気感は好き。
    勤務先が倒産することとなった傷心の行助は、帰り道たい焼き屋を営むこよみと出会う。
    行助は生まれつき足に麻痺があり、松葉杖を使う。出会う間もなく、こよみは不意の交通事故にあい、新しい記憶は短時間しか留めておけない障害を負う。
    行助を、そしてその後こよみとの二人を、心配し温かく見守る行助の家族(姉、父、母)の優しい気持ちがひしひしと伝わってきた。障害を抱えた二人の、心寄せ合うなんということない日常の描き方の穏やかな文章が印象的だった。
    あるいみ、あきらめを受け入れることの大切さを訴えているように感じた。あきらめは悪いことではないと、その中にもある幸せみたいな。

    後の、日をつなぐは、お豆のスープとバイオリンがでてきて(静かな雨も、たい焼きと音楽)。
    とにかく、一曲。一曲聴くことができさえすれば道が開けるような気がした。力を得られる、この無間から抜け出せる、と私は思う。この気持ちがよくわかる。
    無間とは、無間地獄のことなのですね、知らなかった。
    ラスト一行で、一瞬思考が止まりかけた。が、こういう結末を読み手に委ねる終わり方嫌いではない。好きでもないが。

  • "静かな雨"は、たい焼き屋を営むこよみさんと僕の話。
    こよみさんはいわゆるもらい事故で、短期記憶が残らなくなってしまう。そのこよみさんと僕が、一緒に暮らし始め、日々の記憶は残らなくても、美味しいもの好きな二人が、ゆったりした時間の流れの中で、丁寧に暮らすうちに、二人の間に何か大切なものがが育まれていると思えるところがいい。

    "日をつなぐ"は、高校時代の同級生と遠距離恋愛の末に結婚した修ちゃんと私だったが、赤ん坊が生まれ、育児ノイローゼ気味になっていく私を描いた話。
    子育ての辛さなど共感する人もいるとは思うが、個人的にはモヤモヤ間だけが残った。

  • 全体的に美しい。2編からなる。

    松葉杖の主人公が高嶺の花のたい焼き屋さんを好きになるが、たい焼き屋さんも事故で高次脳機能障害になる。
    二人の関係性が淡々と静かに書かれている。ブロッコリーのくだりでは主人公の気持ちの大きな揺れがみられるがそれ以外は静かな雨という本のタイトルに似合うような静けさがあった。たいやきという食べ物が彼女を再覚醒させて希望がみえた。
    私の好みの感じ。
    2編目は
    産後鬱様になっている新米ママの話。
    自分の産後と重なり追体験した気分だった。
    もうだめかと思うところで豆を思いだし、手間暇かけてゆっくり豆を仕込むことで立ち直っていく。
    最後の一文にひやりとしたので、解説を読んだ時に驚かずある意味狙い通りだったらしい(笑)
    どちらの話も母は大きな救いの存在になってるようになってる。静かな雨 が降るのが
    日常なら母はそこに差し込む太陽のような存在となっているのかも、と思いました。

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著者プロフィール

1967年、福井県生まれ。上智大学文学部哲学科卒業。2004年、第3子妊娠中に書いた初めての小説『静かな雨』が、文學界新人賞佳作に入選。07年、長編小説『スコーレNo.4』がロングセラーに。13年4月から1年間、北海道トムラウシに家族で移住し、その体験を『神さまたちの遊ぶ庭』に綴る。16年、『羊と鋼の森』が本屋大賞を受賞。ほかに『太陽のパスタ、豆のスープ』『誰かが足りない』『つぼみ』など。

「2018年 『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。   』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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