東京會舘とわたし 上 旧館 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 861
レビュー : 51
  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167913427

作品紹介・あらすじ

大正十一年、社交の殿堂として丸の内に創業。結婚式やパーティ、記者会見などで訪れる人々の数だけ物語を紡いできた。震災や空襲、GHQの接収などの荒波を経て、激動の昭和を見続けた建物の物語。デビュー15周年。著者が初めて挑戦した感動の歴史小説です。

感想・レビュー・書評

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  • 簡単に、歴史のある建物とか、何代続くお店とかいう紹介をしてしまうけれど。
    流れていく時間の、どの部分をクローズアップして見せるかって、重要なんだな……と改めて気付かされました。

    第一章は、大正十二年。帝劇で行われたクライスラーの音楽会に、小説を書き続けるかどうか岐路に立たされている寺井が赴くという話。

    文中で軽く、梶井基次郎のことが触れられるのだけど、それを読んだ時、梶井の「器楽的幻覚」という短い小説を思い出した。
    梶井の瑞々しい倒錯感と、寺井の発熱と頭痛、それを忘れるほどの感動がぴたりと重なって、急に現実味を帯びた瞬間だった。不思議。
    その後、寺井は出来て間もない東京會舘に圧倒され、そこで、帝劇と繋がっているらしい通路を歩き始めるのだけど……。

    上巻の中で、一番お気に入りの章。
    地位や名誉に乏しい若者である寺井が、クライスラーや東京會舘にカルチャーショックを覚える所が、純粋に良かった。

    その後、東京會舘は大東亜会館、アメリカン・クラブ・オブ・トーキョーへと名前を変え、また東京會舘へと戻ってくる。
    簡単に言うけれど、その名称で営業し、その時間が成していた空気感は、その時にしかないものだと思う。
    ていねいに描かれるピースは、一体下巻ではどんな変化を見せてくれるんだろう。

  • 購入した本に挟まれていた、辻村さんコメント入りの小さなリーフ。
    「私が、東京で自宅の次に好きな場所の物語です。辻村美月」
    本編を読む前からとてもわくわくさせてくれました。

    実在の建築物とそこに行き交う人々の物語を時系列でつづる、斬新なカタチの作品。静かなロマンを感じる物語。それぞれの時代ごとに東京會舘と日本の歩みが描かれていて、その時代に引き込まれるような感覚で読み進めました。

    東京會舘自体が今も存在することは知ったうえで読みましたが、物語の中に登場するさまざまなディテール、例えば昭和9年開業のメインダイニング「プルニエ」、マッカーサーはじめ米国兵士たちに愛された「會舘風ジン・フィズ」、製菓部長のこだわりと情熱が詰まった手土産用クッキー「プティガトー」などが現在まで受け継がれていることには、代々ここで働く人々の情熱と、「東京會舘を守り抜く」強い信念を感じました。

    この小説は、各章に登場する人々のプライドの物語でもあります。それぞれの時代に、それぞれの持ち場や状況で、熱い思いをもって東京會舘に関わる。そんな彼ら、彼女らのまっすぐな生き方を見習いたい、と思わせられるストーリーにあふれています。
    そしてそれぞれの物語がゆるいつながりを持ちながら進んでいく構成もまた秀逸。

    一つの建物を中心に、こんなにも豊かな物語が書けるのだと、
    改めて小説の可能性を感じました。

    今から「新館(下巻)」を読みます!

  • 歴史を作るのは人だけど、思い出を作るのは場所なのかもしれないと感じてしまった。
    下巻も楽しみ(^^)

  • 「本書は、丸の内に実在する東京會舘の歴史を下書きとしたフィクションです。」(巻末より)

    「社交の民主化」を目指した東京會舘
    東京會舘に関わった人たちの人間ドラマ
    そして、そのドラマは別々のようでつながっている
    人が交われば、自然と影響し合う
    人はみな脇役でも主人公でもある

    実際に多くのドラマを生み出したであろう東京會舘
    是非一度行ってみたい

  • 久しぶりに刑事モノ以外の小説を読みました。
    時系列に並んでいたことで近代日本で起こった出来事を思い起こしやすく、一章一章読み進めるごとに作品にのめり込んでいきました。
    私にもいつかここまで強く心に刻まれた建物が現れることを願いたいものです。

  • 何の前評判も見ずに、辻村さんの本を久しぶりに読みたい!と思い手に取りました。
    辻村さんと言えば、学生とか若者を主人公にした作品が多いと思うのですが、これは時代背景も大正から昭和初期。
    意外!というのが読み始めた最初の感想ですが、
    読み進めるに従って、じんわりと『らしい』感じが心地よかった。
    いろんな時代、いろんな人から見た東京會舘への思いや、東京會舘を舞台とした物語が少しずつ重なり合って…
    上巻を読み終わり、とても温かい気持ちになりました。

    大事件があるわけでもなく、静かに丁寧に描写される東京會舘の物語。
    下巻はどんな大きな動きが出てくるのか、楽しみです♫

  • 歴史ものよろしく説明の多い文章で、辻村さんの作品としては珍しくとっつきにくかったけれど、読みすすめるうちにその世界にどっぷりと嵌った。
    まるで朝ドラみたいだなと思う。でもこの世界観をさらりとだせるのは、やはりさすが辻村さんなのかなと思ってしまう。

    本来なら下巻まで読み終えて感想を書こうと思っていたが、上巻の終わりがあまりに良すぎてレビューしている。
    日常のなかの非日常を東京會舘という舞台装置でものすごくありありと描き出している本作は、ささやかな幸せと、まっとうに生きるということの大切さを、気づかせてくれるような気がする。

    お仕事小説の面もある。それが胸に熱かったりもする。

  • 大正十一年、社交の殿堂として丸の内に創業
    結婚式やパーティー、記者会見場として、ここを訪れる人々の数だけ物語が成立する。

  • よかった


  • 心身共に豊かな人たちに感情移入より嫉妬的な反感が先立ってしまった。


    これは私の心が貧しいせいだなと思った。

    今は良い人生を歩む事はいいなと思える。

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著者プロフィール

辻村深月(つじむら みづき)
1980年山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞などをそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第6回ブクログ大賞、第15回本屋大賞などを受賞し、2019年6月からコミック化される。他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。2020年、河瀬直美監督により『朝が来る』が映画化される。

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