東京會舘とわたし 下 新館 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
4.22
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本棚登録 : 673
レビュー : 58
  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167913434

作品紹介・あらすじ

井上靖、三島由紀夫らの小説でも描かれ、越路吹雪も長く會舘でのショーに出演。1970年代はじめに改装。平成では東日本大震災の夜、帰宅できない人々を受け入れ、その翌年には万感の思いで直木賞の受賞会見に臨む作家がいた。そして新元号の年、三代目となる新本館が竣工する。解説 出久根達郎デビュー15周年。著者が初めて挑戦した感動の歴史小説です。

感想・レビュー・書評

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  • 東京會舘が舞台。1922年の開業から、二度の建替えを経て、現在へ。
    辻村さんの東京會舘への深い愛情と敬意をもって、従業員や客の目線で紡がれる10篇の物語が、緩やかにつながっていく。

    いやもう、ものすごく心揺さぶられた…!
    もちろんフィクションなのだけど、モデルになる人物や元になる実話(辻村さんご本人の直木賞受賞も)があるわけで。建物はそれ自体動くことも考えることもない建物でしかない。でも確かに東京會舘には『想い』がある。沢山の人の想い、心がこもって、こんなにも愛される建物になった。上巻もだけど、下巻になると東京會舘への想いが溢れ出てきて、一篇一篇に泣けて中断するもんだからなかなか読み進められなかった。

    そして読み終わった今、行ったことがないどころか名前すら知らなかった東京會舘が、私の中でもとても大切な場所になっていた。
    辻村作品には最後にどんでん返しがあることが多いのだけど、この本はほぼほぼない。新たな試みだったのかな、とも思う。でも、私にとって、辻村さんの新たな代表作にしてもいいのでは??というくらい心に残る作品で、撃ち抜かれた。

    コロナ禍で外出自粛が続く中、東京會舘は今どうなっているのだろう…。また東京と自由に行き来できる日が来れば、家族で東京會舘に行きたい。そして食べたことないのに「懐かしい…!」とカレーを食べて、見たことないのに「残ってた…!」と100年の時を経た荘厳なシャンデリアの前で写真を撮るの(笑)←おのぼりさん

    • マリモさん
      リュウシャオロンさん

      フォローとたくさんのいいねをありがとうございます(^^)私も本棚お邪魔させていただきます!よろしくお願いしますー。
      リュウシャオロンさん

      フォローとたくさんのいいねをありがとうございます(^^)私も本棚お邪魔させていただきます!よろしくお願いしますー。
      2020/04/21
    • ロニコさん
      マリモさん、こんばんは^_^

      「バッタを倒しに…」の感想にコメントをありがとうございます。
      マリモさんの本棚では、いつも新しい本との出会い...
      マリモさん、こんばんは^_^

      「バッタを倒しに…」の感想にコメントをありがとうございます。
      マリモさんの本棚では、いつも新しい本との出会いがあり、感想を読んでは、「これ読みたい〜」と、読みたいでポチッと登録しております。
      おすすめの、「孤独なバッタが群れるとき」も読んでみますね!

      この「東京會舘とわたし」を、私はハードカバーで読みました。
      それまでの辻村さんの作品と違う魅力に心を持っていかれ、一気読みした記憶があります(感想はちゃんと書けてませんが^_^;)。

      これからもマリモさんのレビュー楽しみにしております。
      2020/05/19
    • マリモさん
      ロニコさん
      ありがとうございます(^o^) レビューで読んでみたいと思っていただけるものがあればこんなに嬉しいことはありません。
      この『東京...
      ロニコさん
      ありがとうございます(^o^) レビューで読んでみたいと思っていただけるものがあればこんなに嬉しいことはありません。
      この『東京會舘とわたし』は、いい意味で辻村さんの従来の作品と違っていましたよね。また何度でも読み直したい作品です。
      私もロニコさんのレビューを楽しみにしております。これからもよろしくお願いしますー。
      2020/05/20
  • 上下読後、とてもあたたかい気持ちになりました。
    東京會舘のサービスマン達の仕事ぶりにも
    感動しました。

    どの章も好きですが、1番心が熱くなったのは
    第9章 煉瓦の壁を背に

    本当は実際に東京會舘に行って見てたいのですが、
    なかなかそれはできそうにないので
    1度シャンデリアを見に、明治村に
    行って思いを馳せようと思います。

  • 今年読んだ中で、間違いなく一番好きな本。
    辻村さんの作品の中でも、この作品にあまりスポットライトが当てられていないのが不思議なくらいです。

    辻村さんといえば、人間の奥底にある闇を静かにえぐりだすような、ドキッとさせられる描写が好きです。今までで一番好きだったのは「子どもたちは夜と遊ぶ」。水の底からさらに深く沈めていくような心理描写に、気が付けばのめりこんでいました。

    ただ、本作品は全くテイストを変え、従業員たちのプライド、人の温かさ、憎しみの裏にある愛おしさなど、辻村さん独自の感性で紡がれた「光」を感じることができる作品です。従来の辻村ファンたちがそこを敬遠しているのであれば、本当にもったいない。

    どの一篇をとってもすばらしいのですが、とある従業員のこだわりが見える何気ない一幕が印象に残りました。主人公の女性が、真鍮の柱を磨く玄関係に対し、「真鍮は汚れやすい。いっそのこと汚れにくい素材で作ればよかったのにね」との感想に対して、玄関係が返した一言。

    “真鍮であることには意味があります。(中略)真鍮だからこそ、私たちは毎日、この柱を磨く必要があります。他の素材だったら、ひょっとするとおざなりになって、毎朝磨くことはないかもしれません。―この柱は、素材そのものが磨きなさい、という玄関係へのメッセージなんです。”

    東京會舘での何気ない一幕を描いたシーンですが、特に大きな役職のない「玄関係」の一人がこういった心持ちで仕事をしている場所、という印象が心地よく残りました。


    全編をとおして登場人物たちのゆるいつながりが描かれていますが、最後の章ですべてが鮮やかにつながり、そして本作品の核の部分が明らかになります。「東京會舘に行きたい」はこの本を読んだ誰もが感じると思いますが、読み進めるうちに「私も東京會舘の歴史に携わりたい!」と思わせてくれるような、深い印象とあたたかな余韻を残してくれる作品でした。

    P.S. 第八章のクッキングスクールのエピソードの中で、東京會舘のカレーの秘訣が出てきます。もちろん食材や調味料などは本場にかないませんが、この「秘訣」を試してみたところ、普通のルーで作ったカレーがびっくりするぐらい美味なカレーになりましたのでぜひ一度お試しを^^

  • 上巻でも十分心が満たされていたのに、下巻の最初の章から目頭が熱くなってしまい、電車の中で涙が溢れるのを必死に堪えていました。
    こんなにもさらりと読み進めることのできる文章で、心がほっこりさせられる作品と出逢えたことはありません。
    やはり読み終えて思うことは「東京會舘に行ってみたい」です。

  • 下巻があっという間すぎた。
    完全ネタバレはしてないけど、ストーリーは追っているレビューなので、注意。




    上巻は、時代の移り変わり、特に戦争が大きな影を落としていた。
    下巻は、時間が今に近づくわけだから、どんな出来事で読ませてくれるんだろうと思っていた。

    第六章、金環のお祝いでは、東京會舘が新館になり初めて訪れる老婦人が語り手となる。
    かつての東京會舘から変わってしまうことに、夫と共に複雑な思いを抱いていた婦人。
    寂しさで終わらせずに、それを温めるのは人で、彼女が一人でも楽しめる金婚式に涙が出た。

    続く第七章、星と虎の夕べでは、大スターの舞台裏の不安と緊張が描かれる。
    実在の人物が、それも知る人ぞ知るスターが、怖い怖いとマイクを持って震えている姿を見て、また涙が出そうになった。
    飄々としていたいのに、出来なくて、どんな風に見られているか、失敗したらどうしようと、心臓が落ち着かない気持ち、、、分かりすぎる。
    慣れない自分を単に弱いからだと決めていたけれど、それがあるから、スターになれたんだよという言葉に、不覚にも救われた。
    重なりようのない境遇から、自分の支えになる言葉が見つかるって、すごいなぁ。

    第八章、あの日の一夜に寄せて。
    2011年3月11日の話だ。
    東京會舘の料理クラブに通っていた新妻の頃と、震災が起きた今という二つのエピソードが含まれている話。
    美味しいものを食べさせたいという妻の想い。
    母に美味しい料理を作らせることを強いる父を理解出来ない娘。
    妻から広がる料理の世界に触れ、考えを改める夫。
    どれも、そうだな、と思う。
    ただいまと帰って、美味しいと言える、そんな素朴な幸せに満たされる。

    お気に入りの三章を挙げただけでも、えらいボリュームになってしまった。
    上巻は出来事がメインのようか距離感があったけど、下巻は人が出来事を繋げていくような、近さや温度があって、すごく良かったです。

  • 上巻はハマり切っていなかったですが、下巻はスラスラページが進み、涙が出そうになる箇所も多くありました。
    また、東京會舘や文芸界についての新しい発見も多くありました。
    一つ一つの人との関わりや、一つ一つの仕事を大切にしたいなと感じた作品でした。

  • この人はドラマをつくるのが本当に上手だなあと、ため息まで出る。
    感嘆してしまう。
    年代を経るごとに、「今の」東京會舘に近くなってくるのだろう。我々がいま、東京會舘に抱く思いに、登場人物の感じ方も近づいてくる。登場人物と東京會舘の距離ですら、この人にとってはお手の物である。

    この建物に、この場所に訪れる人は、どの人もそれぞれに特別な思いを抱いてやってくる。
    それを丁寧に、それぞれの人の物語を描いて、各人のなかの「東京會舘」を浮き彫りにしている。

    美しい話だ。
    東京會舘に行ってみたくなるし、レストランで食事もしてみたくなる。

  • 何故だかこの本はどうしても読まなくてはいけないような気がした。唯一無二の建物が持つ、唯一無二の物語たち。仕事に対するプライド、家族との愛や確執、戦争と平和。いろんなものが詰まっていた。

  • 読めることが幸福につながる作品というものは少ない。
    読み終わった時に優しい、暖かい気持ちになることができた。
    一度、わたしも東京會舘へ行ってみたい。

  • 時代を超えて人々を見守る東京會館がすてきです。
    "金環のお祝い"よかった(涙

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著者プロフィール

辻村深月(つじむら みづき)
1980年山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞などをそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第6回ブクログ大賞、第15回本屋大賞などを受賞し、2019年6月からコミック化される。他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。2020年、河瀬直美監督により『朝が来る』が映画化される。

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