よみがえる変態 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 43
  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167913557

作品紹介・あらすじ

2014年に発売された星野源の著書『よみがえる変態』文庫版が2019年9月3日(火)に発売決定!文庫化にあたり、新たに書き下ろしたあとがきも収録!

資生堂アネッサCMソング「夢の外へ」、「知らない」と立て続けにヒット。アルバムもオリコンチャートを賑わせ、主演舞台に主演映画とうなぎのぼりの人気のさなか、2012年末にくも膜下出血で入院。手術後数ヶ月で復帰したものの、再発。長期の休養を強いられた。「面白いものが作りたい」と、音楽・俳優・文筆とむさぼるように仕事をしてきた著者。
アルバム制作や撮影現場などの“ものづくり地獄”の舞台裏から、エロ妄想で乗り越えようとした闘病生活、完全復活まで。怒濤の3年間を綴った、くだらなさと緊張感とエロと哲学、ミックスにもほどがある垣根なしのエッセイ。雑誌『GINZA』好評連載「銀座鉄道の夜」の書籍化+書き下ろし。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった!
    ツイッターで「『忙しい忙しい』言ってる人が突然倒れるエッセイ」という感想を見かけて、読んでみた。途中暗転するページがぞっとした。


    ここからめっちゃ語りますが、
    私は星野源ファンで、エッセイもまあまあ読んでいる。ファンフィルターでプラスアルファがある気がするけど、星野さんの文章についての評価は「嫌いじゃない」ぐらいだと思っているので、読んだり読まなかったりしてる。星野さんの仕事のなかでは音楽が一番好き。好きなだけに「闘病」で「かわいそう」という気持ちで星野さんの仕事に色をつけて受け取りたくない、という気持ちがあり、たぶんそのせいで単行本発売時には読まなかったのかも。それが上述の感想を目にして、スッと「読んでみたい」と思ったのは、どういう心の動きなのか自分でもよくわからない。

    読んだら、星野さんが倒れた頃のことをまざまざと思い出した。
    倒れる3年位前に友達のすすめでsakerockを聞いたら好きになり、星野さんにはまった。その頃は「ジワジワきてる」頃で、音楽に詳しい人や舞台を好きな人なら知ってるくらいだった。インタビューや文章を探し求めて、大切に読んでいた。
    それが少ししたら「今きてる!!」の人になり、露出がものすごく増えて、インタビューとか雑誌とかを追いきれなくなったのを覚えている。その記憶と本作前半での「忙しすぎる、楽し辛い」という描写を読み合わせると「あの頃マジで大変だったんだな…」と思った。
    そして古参ファン(古参は言い過ぎかもしれないけど)あるある「遠い人になっちゃって寂しい感情」に陥り、また、知ってる人が増えたけど「星野源好きのサブカル女」みたいに揶揄されることも増え、若干複雑な感情を抱えていた頃、星野さんが倒れた。無事復帰を果たしたものの、再発。
    それから再度復帰して、無事ブレイクしたときには「寂しい」気持ちは霧散していた。なぜかは自分でも良くわからない。「今きてる!!」の最中に倒れ、場合によっては復帰してもまたその波を始めることはできないんじゃないかと思っていたので、こんな、大ブレイクして紅白にも出たりして本当に「よかったね」という気持ちになった。今はドームツアーなども「すごい!うれしい!よかったね!」という感情しか湧かないので、良いファンになれて良かったと思う。

    復帰後の星野さんには、倒れる前の星野さんにはない余裕みたいなものがある気がする。
    作品も素晴らしいし、より自由な感じがする。
    倒れる前の、余裕がなくて根暗で重くてキリキリした感じも好きだったけど、今の明るくて楽しそうな星野さんも、そこから生まれる作品も大好きだ。
    楽しそうにしてるから、見てると楽しくなる。
    本作で書いてあったことと、星野さんの仕事や、MCで話したりすることの断片から自分が受け取っていたこととあまりギャップがなくて嬉しくなった。

    あと本作を読んで、治療・手術が想像以上に辛そうだったことを知った。正直ここまでがっつり当時の話を知ったのはこれが初めて。そういう情報に触れることで「星野さんあんなに痛い辛い思いしたんだから、復帰後に発表されたCD(映画、本)良かったって思わなきゃ!!」という勝手でとんちんかんな価値を付加させてしまうことが嫌だったのでこれまで避けてきたけど、普通に面白かった。ただ「好きだから」だけで好きでいたい、「かわいそうだから」を混ぜたくない。なまじ好きだからこそ、私はそういうのをすぐに混ぜてしまうから。
    忙しすぎて段々煮詰まってちょっと精神状態が変になっていく様子や、闘病中の情緒体調両面の不安定さ、嬉しさ楽しさ喜びの再発見が平易な文章で表現されていて良かった。

  • 闘病のところは、自分の手術(作品に出てくる病気や手術法などと比べたらはるかに軽いものだけど)のときの体験を思い出した。身近な人へ感謝したくなる思いとか、理由もなく涙が出てくるとか。
    そして、今のポップカルチャーを牽引していると言っても過言ではない星野源がこんなに変態で良かったと安心した。

  • 『よみがえる変態』 星野源

    Apple Musicで星野源が解禁された。恐ろしいもので、Apple Musicにない音楽は、自然と聞く機会がなくなる。大学2年生くらいに一時期気が狂ったように聞いていた星野源ともご無沙汰していたが、解禁した瞬間から通勤通学歩行全てのBGMを星野源に切り替えた。この本も大学生当時読んでいた『そして、生活はつづく』を思い出し、ちょうど文庫化されていたのでアマゾンで購入し、すぐに読んでしまった。
    星野源のエッセーのタイトルは面白い。『そして、生活はつづく』というタイトルは『く そして、生活はつづく』そう、クソして生活は続くというある種の生活への讃美歌であった。働きづめになると、生活はおろそかになり、仕事の大義とか、夢とかばかりが見えてしまうが、結局人間はクソをして生活をしているだけだという話だ。
     『よみがえる変態』はどうだろう。どこからよみがえるのかというのが問題だが、やはり闘病記がメインなので、地獄からかと思うのだが、読み進めるとそうでもない。「地獄でなぜ悪い」という歌があるが、今回のエッセーで星野源が訴えたのは、この世は既に地獄であるという発想の転換である。地獄は死んだ後に訪れるものではない。読めばわかるが、闘病生活は地獄そのものだったようだが、その中で、ポジティブに、クソみたいなことを考えながら生きる星野源がいる。看護師が可愛いとか、その看護師に座薬をいれられたら気持ちよくならなくてはいけないとか、がんじがらめの生活の中で、エロいことを考えたりしながら、地獄を進んでいる。「地獄でなぜ悪い」の歌詞にもあるが、「ただ地獄を進むものが、悲しい記憶に勝つ」のである。どちらかというと、地獄の様な外的環境からよみがえるのではなく、この後記す「変態」の遺伝子が、表出化(有徴化)することを「よみがえる」と言っているように思える。
     そして、もう一つ、はっとさせられた発想の転換が、「変態」についてである。これはあとがきに書いているのだが「人間より長い歴史を持つ動物を『普通』としたら、服を着て着飾ったり、向かい合ってセックスすることを正常位とする人間はもうフェティッシュの固まりだし、みな『変態』です。つまり、『変態であること、それすなわち普通の人間である証明』なのだと思います。」というのである。変態こそが、人間の姿そのものであるという人間観は面白い。昔読んだ人類学の本に書いてあった「いま我々がいる世界はWEID(=変な)ものである」という一節を思い出す。驚くなかれ、人類学において「WEIRD(=変な)」ものは「Western ,Educated, and from Industrialized, Rich, and Democratic(頭文字をとってWEIRD)」な社会であるというのである。日本は東洋であることを除けば、私たちの社会そのものである。長い射程でみれば、人間は皆「変態」であり、私たちの社会は「変な」のである。
     本エッセーでは、後半が闘病記となっているが、前半は様々なエッセーの集合体である。
    ひときわ心に残ったのが、「川勝さん」である。「川勝さん」はあり余る才能を持ちながら自宅火災でなくなった川勝正幸さんへのレクイエムであり、アルバム名にもなった「POP VIRUS」について繋がる一節がある。「様々な作品に触れたウイルスに感染した川勝さんが、さらにそのウイルスに自分の遺伝子情報を加えてパンデミックさせる。そしてその輪は広がり、様々な表現や人物に影響を与えていったので。もちろん、自分もその一人。ポップウイルスに感染した川勝さんは今、ポップウイルスそのものになった」と、生前の川勝さんについてウイルスという言葉を用いて語る。自分が面白いと思ったものに真っすぐに、面白さを人に伝えていく川勝さんの姿勢を称賛した上で、自分自身に留めるというこの節には、グッとくるものがある。
     大学生になってから本を読むようになり、記録している限りだと5年で400冊くらいになる。今まで読んで、というか最近読んでグッとくるのは、なんだかレクイエムばかりである。著者・星野源の「川勝さん」、オードリー若林の『ナナメの夕暮れ』での「前田健さん」と『表参道のセレブ犬~』の「父」への回想、そして内田樹が同世代最大の知性と賛辞をおくる「竹信悦夫」への回想録などなど。平野啓一郎の分人という概念を用いれば、亡くなった人の為に自分の中にある分人を丁寧に文章化する作業そのものに、何か特別な力が宿るのかもしれない。往々にして、自伝を残す人は限られている。仏陀やイエスキリストでさえ、自伝は残しておらず、彼らの伝承者を自認するもの達の文章が今に残るだけである。文章を書く意味が、歴史を語る意味があるとすれば、死者と、それに相対する自己の分人への鎮魂こそが、それなのかもしれない。
    湿っぽくなってしまったが、この文章を書いている間に、一度トイレに行った。死の淵をさまよったわけではないが、私も2か月前までは急性大腸炎で入院していた。退院してからというもの、自分の大便をトイレでまじまじと観察してしまう。長い時は3分くらいみていることもある。急性大腸炎で自宅療養している時、飼っている犬の糞を処理していて、「犬でさえ便を固められるのに…」とショックを受けたことがある。今、自分の便をまじまじとみてしまうのは、便を固めることができた自分の大腸に感銘すると共に、その成果物を見て恍惚とするからである。固い便がでることは、奇蹟である。決して水に流していい些末な日常ではない。(さすがに次の人に申し訳ないので、流すボタンの「大」を押して、トイレを後にする)。自分の中でよみがえる変態を感じつつ(これが、ユングの集合的無意識なのか?)、クソして生活はつづく。

  • どんなにカッコよく素敵に見える人でも、その人にしかない痛みとか弱さとか迷いとかモヤモヤはあるなと改めて思った。だからこそ、その人の出した一つ一つの答えに対して否定はしたくないなと思った。自分にも言えることだけども。

    そして改めて「源さんはモテるな…」と確信。

  • 生きたさが涙になってでてきた。

  • この本を読んだのは、もう4年前くらいだろうか?
    単行本を読んで、こんなに心の中にルサンチマンを抱えた人がこんなところにもいたのかと目を見開いた。
    源さんのふつふつと湧き上がる自分への劣等感、他人から承認、葛藤…
    怒っている出来事は違うのに、感情はどうしてこんなにも共感できるんだろう?と当時ドッグイヤーをつけながらページをめくる手が止まらなかった。


    あれから、4年経ち、今病室でこの本を読んでいる。
    星野源というアーティストの今までの活躍を見てきた。
    彼はとことん自分と向き合い、自分がおもしろいと思うことを本当に黙々とやってきたんだなと
    文庫化に際してのあとがきを読んで、改めて思った。
    そのターニングポイントはこの本に描かれている出来事たち。
    時には苦しいと感じる地獄の日常だ。

    世間を変えることは難しい。
    だけど、おもしろい。と思える世の中になってほしいと僕は思っている。たがらこそ、源さんと同じように僕がおもしろいと思うことを黙々とやっていこうと思うのだ。

  • 過労から脳出血、術後再発あたりまでのエッセイ。

  • 本は薄いけど、中身はとても濃い。上手く表現出来ないけど、大変な経験をした人が書ける文章なんだと思いました。星野源さん、変態だけど大好きです❤️

  • 疲れた…………。
    全体的に暗く、混沌としています。
    それは、星野氏が非常に繊細であり、また白黒はっきり付けないと気が済まない性分のせいか、そんなに掘り下げたら疲れるよ…とも思いましたが、本人はどうしても気になるようで。
    書いてる最中に、何があったのか急にセンチメンタルになったりします。
    とりあえず挫折。
    また気分が良い時に読もうかな。

    追記
    星野氏が凄く好きとかなら楽しめたかなあ?
    完全なるエッセイです。
    生活はつづくが面白かったのですが、今回は重かったです。

  • 素晴らしい一冊。

    変態って事を堂々と書いているので、
    カッコいいと思いました。

    自分の事をさらけ出すことが、その人が魅力的に、見える部分だと感じ、
    また、死を意識した事がある人間って強いなと思いました。

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著者プロフィール

星野源(ほしの げん)
1981年、埼玉県生まれ。音楽家・俳優・文筆家。アルバム『YELLOW DANCER』(2015年)、シングル「SUN」(2015年)、「恋」(2016年)が大ヒットを記録。第66回・67回『NHK紅白歌合戦』にも連続出場。俳優としても第37回日本アカデミー賞新人俳優賞などを多数受賞。2016年ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』で大人気を決定付ける。著書に『蘇える変態』、『働く男』、『そして生活はつづく』、『星野源雑談集1』。『いのちの車窓から』 で第5回ブクログ大賞エッセイ・ノンフィクション部門大賞を受賞。2019年9月3日、『よみがえる変態』文庫を刊行。

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