あしたの君へ (文春文庫 ゆ 13-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167913779

作品紹介・あらすじ

寄り添う事で、人の人生は変えられるか――『孤狼の血』『盤上の向日葵』『慈雨』の次はこれ!!柚月裕子が描く感動作!!裁判所職員採用試験に合格し、家裁調査官に採用された望月大地。だが、採用されてから任官するまでの二年間――養成課程研修のあいだ、修習生は家庭調査官補・通称“カンポちゃん”と呼ばれる。試験に合格した二人の同期とともに、九州の県庁所在地にある福森家裁に配属された大地は、当初は関係書類の記載や整理を主に行っていたが、今回、はじめて実際の少年事件を扱うことになっていた。窃盗を犯した少女。ストーカー事案で逮捕された高校生。一見幸せそうに見えた夫婦。親権を争う父と母のどちらに着いていっていいのかわからない少年。心を開かない相談者たちを相手に、彼は真実に辿り着き、手を差し伸べることができるのか――。彼らの未来のため、悩み、成長する「カンポちゃん」の物語。●柚月裕子は正義が似合う。 調査を通じて、なぜ罪を犯したのかを考えさせる。 ここがうまいんです。とても泣けます。 だから『あしたの君へ』という作品がいちばん好きなんです。 ――今野敏氏

感想・レビュー・書評

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  • 家裁調査官のお話

    人は皆 自分目線でしか物を見れない生き物
    でも家裁調査官は自分の主観や、書類上の上っ面で判断が許されない

    物事を俯瞰で見て判断することが必要なお仕事

    この主人公もそうですが
    仕事等、悩みに直面してる時は物事を至近距離で見てる
    目の前の事にとらわれている状態で視野が狭くなる

    このお話すべての案件
    読み進めると事柄を最初に、主人公と同じ【狭い視野】で物語を読み始め、終盤はベテラン調査官のアドバイスや、主人公の気づきで
    【ひろい視野】に変わり
    まるで、強い棋士に【自分で想定出来なかった詰め方をされた】状態になり
    主人公と一緒に真実に直面する

    凄い面白かったです。

  • 久しぶりの柚月作品。「背負う者は」読んだことある~、アンソロジーに収載れていたんだ。家庭裁判所調査官補(カンポちゃん)の新入り・望月の苦悩とやりがい。厳しい相談ばかりだが、その相談相手に対峙していく。ネットカフェで母・妹と暮し差ざるを得ない少女、母の過度の期待を背負った男子高校生、夫のモラハラによりマインドコントロールされている主婦、両親の離婚調停によりどちらにつくべきか悩む小学男子。家庭裁判所調査官が扱う対応は全てのケースで異なり方程式は一切ない。これに挑む同僚同士の情報共有が重要な職場なんだろう。⑤

  • 家裁調査官補として、あらゆる家裁事案と向き合い、時に迷い疑い嘆きながら、成長していく主人公の姿を描いた連作短編集。

    家裁調査官の職務がどれほど繊細で奥深く、決まりきった正解などない問題と日々対峙しているのか、ということを垣間見れた作品であった。

    そうして私も主人公と同じ目線で同じように思ったり、悩んだり、迷ったり。

    まったくもう。まだまだ私も成長の途中なのだな。

    • akodamさん
      sakuragaiさん、こんばんは。

      私のボヤキレビューを拾っていただきありがとうございます。

      小説読書デビューをして1年3ヶ月。
      色ん...
      sakuragaiさん、こんばんは。

      私のボヤキレビューを拾っていただきありがとうございます。

      小説読書デビューをして1年3ヶ月。
      色んな作品から、沢山の感情を貰っています。

      酒もタバコもギャンブルも辞めて数年、読書ライフこそ私の生き甲斐となりました。

      sakuragaiさんの本棚にもチョコチョコとお邪魔しておりますので今後ともよろしくお願いします^ ^
      2021/11/09
    • sakuragaiさん
      こんばんは。
      今日一気に読みましたよ!
      この様な考えさせられる小説、好きです!
      家裁調査官と言う職業は知っていても詳しい内情は知り得ませんも...
      こんばんは。
      今日一気に読みましたよ!
      この様な考えさせられる小説、好きです!
      家裁調査官と言う職業は知っていても詳しい内情は知り得ませんもの。人の内面と関わる事は普段の生活に置いても本当に難しいのに、それが仕事なのですから。良い小説に巡り会えた事、感謝です。
      そして、私も…
      (まったくもう。まだまだ私も成長の途中なのだな…)
      習うは一生 ですね。
      2021/11/17
    • akodamさん
      sakuragaiさん、こんばんは。
      今日読破されたのですね!
      私も本作の家裁調査官をはじめ、医者の研修医など成長録作品に感情移入しやすくて...
      sakuragaiさん、こんばんは。
      今日読破されたのですね!
      私も本作の家裁調査官をはじめ、医者の研修医など成長録作品に感情移入しやすくて困っております…

      本作の主人公・大地の終盤の成長たるや否や、わやでしたよね。

      習うは一生

      激しく同意です!
      2021/11/17
  • 家庭裁判所調査官…今まで、お世話になった事ないし、はじめて聞いた。
    公務員が、安定だからって選ぶ職業ではないな。転勤も多いし。確かに、学生の頃に出会った人が契機にしても。
    主人公の大地さんは、自分に自信がないという感じやけど、アドバイスとか受け入れる素直さがあるから、今後に期待!
    (続編あるんかな?)
    非行とか離婚とか、色々、経験して頑張って〜!

    それはそうと、裁判官にしても、この家庭裁判所調査官にしても、試験通ったからって、新卒でいきなりするもんなん?ってのは思う。
    こんなのある程度、人生経験積んでからした方が、解決とかスムーズにいかんかな…その分、色々な垢は積もるにしても…
    社会人の一般常識も、「これから憶えていきます〜!」って感じの人らが出来んの?って思う。
    変な色付いてないから、逆にええんかな…
    話自体は、面白いし、ええ感じやけど、職業としては少し疑問やなʅ(◞‿◟)ʃ

  • それぞれの話全て始まりはスローペース、急に変化があってスピード感が増し読後。キーになる変化の場面と文章が立体的で短編とは思えないクオリティでした。内容が濃いです。

  • 家庭裁判所調査官補として研修をする望月大地が九州に配属され、様々な相談に対峙する物語。

    物語自体、一話一話で区切られていて非常に読みやすかった。家庭裁判所調査官の仕事が柚月さんらしいタッチで心情に醸し出される部分まで描かれていてわかりやすかった。

    大地自身、本当にこの仕事に向いているのか?様々な相談をこなしていく中で懊悩する日々が描かれている。仕事に向き不向きなんて無いと思う。大地のような、仕事に対する姿勢が一番大事なのではないかと痛感した。

    自分自身も仕事に対して考えさせられる事が多く感じられた作品だった。

  • 重い内容を扱っているのにさらーっと読める。
    先入観や第一印象でその人のことを決めつけてしまうと、それを覆すのはとても難しい。常に公正であろうとする大地くんがとても良い。

  • 柚月裕子『あしたの君へ』文春文庫。

    家庭裁判所調査官補の望月大地を主人公にした連作短編集。5話を収録。望月大地が少年事件、家事事件と様々な事案と直向きに向き合い、家裁調査官を目指し成長していく。

    柚月裕子が新しい分野に挑んだ意欲作だと思うのだが、主人公の望月大地が軟弱すぎるがために、少し消化不良という感じが否めない。

    様々な事案の背後にある複雑な家族の問題。単なる事案として処理する訳には行かず、背後にある複雑な家族の問題を丹念に解きほぐす必要があるようだ。窃盗を犯した少女、ストーカー事件を犯した高校生、離婚調停に挑む妻、離婚に際し、親権を争う夫婦とその争いに巻き込まれる息子……

    本体価格640円
    ★★★★

  • これもいい。毎回書いているがやっぱり人物がみんな魅力的で、実在しそうなリアリティがある。というか知り合いのような気すらしてくる。柚月裕子にハマってしまい、この人の作品ばっかり読んでいるが、一貫して哲学がある。読んでいておもしろいもあるが、学ぶところがあって良い。

  • 家庭裁判所調査官補の望月大地が、研修先の福森家裁で担当した5つの案件に取り組む様子を描いたストーリー。
    新人の調査官補が、悩みながらも、問題を抱えた家族に寄り添い、少しでも家族にとってよい結論を探ろうとする。

    家裁調査官という仕事にあまり馴染みがなく、そもそも、家裁で扱うのは離婚調停などの比較的軽微な案件だと思っていたので、家裁で裁判官がよりベターな結論を導き出す上で、調査官の役割がいかに大きいかを知り、参考になった。
    大変には違いないが、遣り甲斐もありそうな仕事。でも、個人情報保護法など、今の時代、なかなかやりにくそうかも。。

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柚月裕子の作品

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