このあたりの人たち (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 78
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (151ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167913809

感想・レビュー・書評

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  • 「この人たち」は「このあたりの人たち」なんかではない、と言い切れるほど、私はこのあたりのことをよく知らない。

    でも、街というよりは町で、町というよりはムラのにおいがするな、と思った。

    役割として色々な人のところに預けられ、育てられる「八郎番」という話が印象的だった。
    八郎は成人してからも外へは出ず、世話になった人にささやかな恩返し(と、ささやかな悪戯)をする。

    こういうことは、町の距離感でもまだ足りなくて、ムラの距離感のように思う。
    淫靡さも、奇妙が筋を通っていく感じも。

  • 川上弘美さんはシャ-ウッド・アンダソンの『ワインズバーグ、オハイオ』がとてもお好きで、ひとつの町を舞台にした連作短編集を「町もの」と呼び、こういう小説が書きたいと思っている…というエッセイを以前読んだのだけれど(http://bungei-bunko.kodansha.co.jp/recommendations/6.html)『このあたりの人たち』はまさにそんな「町もの」。ひとつひとつは短編というより掌編で、次々といろんな人たちが登場する。

    序盤は、著者自身の子供時代の回想だろうかと思うような、ちょっと懐かしい感じの、どこの町内にもいそうな「ちょっと変な人」の話が続いたのだけど、読み進めるうちにどんどん「変な人」ではおさまらない壮大な規模の話になっていき、思い出話どころかとんだホラ話レベルのことが大真面目に語られだして、でもそれがすとんと自然に、このあたりではそれが普通なのだ、と納得させられる感じが心地いい。

    意地悪なかなえちゃん、普段はかなえちゃんに苛められているが最終的には英雄になり銅像が建つかなえちゃんのお姉さん、嫌われ者の赤井キヨシと犬のクロ、「ざんげの値打もない」がカラオケ十八番の「スナック愛」のおばさん、犬学校の校長先生、子だくさん家庭の末っ子・八郎、アメリカ帰りの川又さんちのドリーとロミなどなど、このあたりの住人たちはとても個性的だけれど、影がふたつある影じじいは生きてるのか死んでるのかわからないし、豚を使ったギャンブルで蠅の王が荒稼ぎするし、鳩鳴病という鳩になってしまう謎の病気が蔓延し、巨大化した毒殺魔の親指姫が引っ越してくるし、六人団地は日本から独立して軍隊を持ち、、革命軍がNHKを占拠して大統領が人質になり政府が転覆したりもする。

    1話目の「ひみつ」だけちょっとテイストが違うなと思ったら、これだけ掲載誌が別だった。これとても好き。最終話で単行本時の描き下ろしの「白い鳩」は、かなえちゃんのおねえちゃんが大活躍、謎の臭いものが地球を救う、すごい話だった。

    ※収録
    ひみつ/にわとり地獄/おばあちゃん/事務室/のうみそ/演歌歌手/校長先生/スナック愛/不良/長屋/八郎番/呪文/影じじい/六人団地/ライバル/妖精/埋め部/バナナ/蠅の王/野球ゲーム/拷問/バス釣り/グルッポー/運動会/果実/白い鳩

  • 【どこにでもあるような、実はどこにもないような場所】八年の歳月をかけて創り上げた〈このあたり〉をめぐる物語。日本文学の最前線を牽引する作家が〈このあたり〉にあなたを連れていく。

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著者プロフィール

川上弘美(かわかみ・ひろみ)
一九五八年東京都生まれ。一九九四年「神様」でパスカル短篇文学新人賞を受賞しデビュー。一九九六年「蛇を踏む」で芥川賞、一九九九年『神様』で紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞、二〇〇〇年『溺レる』で伊藤整文学賞、女流文学賞、二〇〇一年『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞、二〇〇七年『真鶴』で芸術選奨文部科学大臣賞、二〇一五年『水声』で読売文学賞、二〇一六年『大きな鳥にさらわれないよう』で泉鏡花文学賞を受賞。二〇一九年紫綬褒章受章。

「2019年 『掌篇歳時記 秋冬』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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