このあたりの人たち (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2019年11月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (160ページ) / ISBN・EAN: 9784167913809

作品紹介・あらすじ

『蛇を踏む』『神様』『溺レる』『センセイの鞄』『真鶴』『水声』──
現代日本文学の最前線を牽引する傑作群を次々に発表し続ける作家・川上弘美が、8年の年月をかけて丹精こめてつくりあげた、不穏で、温かな場所。
どこにでもあるようで、どこにもない、〈このあたり〉へようこそ。

そこは〈このあたり〉と呼ばれる「町」。

そこには、大統領もいて、小学校も、公民館も、地下シェルターもNHKもある。
朝7時半から夜11時までずっと開店しているが、
町の誰も行くことのない「スナック愛」、
六人家族ばかりが住む六人団地の呪い、
どうしても銅像になりたかった小学生。
どこにでもありそうな懐かしい場所なのに、
この世のどこよりも果てしなく遠い。
〈このあたり〉をめぐる26の物語は、どれも短いのに、ものすごく長い。

「この本にはひみつが多い。
そんな気がする。」 ──作家・古川日出男(解説より)

近藤聡乃さんの挿絵に彩られたこの物語を読み終えるとき、
全身が奇妙な感動に包まれる。

感想・レビュー・書評

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  • 川上弘美さんの掌小説。
    初めは、単なる子供の頃の記憶を描いたものなのだろうかと思っていた。
    語り手は、大人とはちがった目線でものごとを感じているようだし、妙に古臭いような懐かしいような匂いがする。

    もしかしたら、ここに出てくる同級生や近所に住むおばさんやおじいさんは、自分が子供の頃に出会ったことがあるのではないかと錯覚しそうなくらい現実的に思える反面、それは噓やろってツッコミを入れたくなるような非現実的な世界も混ざっていて、不可解すぎて面白い。

    「スナック愛」のおばさん、不良になったかなえちゃん、長屋に住んでるタクシーのおじいさん、アメリカ帰りの川又さん一家など、この連作を読み進めるうちに、このあたりの人たちから抜け出せなくなってくる自分がいました。

    この本にはひみつがたくさん隠されています。
    かなえちゃんのお姉さんが、そのひみつを一番よく知っていたのではないかと思います。
    不穏で温かで、ほんとうに不思議な魅力をもった本です。

  • ひとつひとつが短い26の物語。微妙に繋がっていて、142頁といううすさの中、時間の経過が長い。思いがけず深く、特に後半になって読み解けず、いったん時間を置いて再読。
    (自分が)小さい頃、町には色々な人がいて、奇妙だったり他所の家には何かと秘密があったり。子供心に、暗黙の了解だった空気を察し、そういう町の中で育ってきた気がする(このストーリーは奇妙すぎるけれど)。
    不穏、秘密があってこそ感じる幸福感、とでもいうか。
    現実と非現実が入り混じり嘘話?があったりで、登場人物がお人形さんのように感じ、その世界観は川上弘美さんだなぁと。
    埋め部って(笑)、埋め部の部員はどういう顔で埋めているのだろう。そして、コロナ禍を思い起こさせる章もあった。鳩鳴病がはやりはじめ、伝染力は強く感染してしまう。人類を脅かす感染症は繰り返すということ…

    昭和のはじめの頃の懐かしい雰囲気のような。このあたりの町にいる不思議な人たち。他所から見ればこちら側も不思議に見えるのかもしれないな。

  • 川上弘美さんの作品は「神様」しか読んだことがないのだが、ふと図書館で本書が目に留まり、そろそろ他の作品を読みたかったのもあって借りてみたら、これがとても面白かった。

    約四ページで完結する、ショートショートが二十六篇あり、共通点は『このあたりの町』に関する話で、現在と未来を縦横無尽に駆け巡る展開はたった四ページなのに、内容がとても濃い。

    その濃さには人それぞれ好みもあるのかもしれないが、とにかく登場人物の良いところとは思えなくも、絶妙な味のある個性と、よく分からない不穏で奇妙な出来事と(それでも楽しく思えるのがすごい)、町自体が波瀾万丈な事に加えて、あっさりと何十年も時を経過させて結末に着地させる、といった、もはや何でもありのやりたい放題感が満載で、ショートショートでこれだけ密度の濃さを感じたのは初めてかもしれないが、品の悪さは感じられず、その不穏さや奇妙さを味わい深いものに思わせる、川上さんの世界観と表現力はすごい。

    しかも、それぞれの登場人物が何度も他の短篇に登場する上に、その登場する年代の幅が広すぎて、ショートショートを全て読むことで、それぞれの登場人物の奇妙な人生模様まで知ることができることが、いわゆる庶民的な『このあたりの町』なんだけれど、とても奥が深いものを感じ、毎日が平穏そうに見えて実はそうではない、人間の日々の生活に隠されたきらめきを感じさせられると共に、何をしようが、何が起ころうが、人生なんてどうとでもなると言われているようにも感じられて、これで前向きな気持ちになれたのも意外だったが、何か惹き付けられる、愛おしいものも感じられたからかもしれない。

    ちなみに登場人物は、かなえちゃん(いちばん好き)と、そのお姉さん、ドリー、赤井キヨシ、犬学校の校長先生に、スナック愛のおばさんに、農家のおじさん、等々、個性の強い人物ばかりで、もっと彼らのことが知りたいと読後に思ってしまった。

    これの続編、出ないかなあ。読みたい。

    • 111108さん
      たださん、こんばんは!

      この本はずっと前に登録だけしてて(単行本で)内容ほぼ忘れてたのですが、たださんのレビューで再読したくなりました。
      ...
      たださん、こんばんは!

      この本はずっと前に登録だけしてて(単行本で)内容ほぼ忘れてたのですが、たださんのレビューで再読したくなりました。

      川上弘美さんの世界、私には日常のちょっとずれてる所が愛おしくなる感じがしていいなぁと思います。
      2022/06/19
    • たださん
      111108さん、こんばんは♪

      お役に立てたようで、うれしいです(^_^)
      ありがとうございます。

      111108さんの『日常のちょっとず...
      111108さん、こんばんは♪

      お役に立てたようで、うれしいです(^_^)
      ありがとうございます。

      111108さんの『日常のちょっとずれてる所』が愛おしくなる感じ。まさにそれです!!
      「神様」でも、本書でも感じたことは。

      物語の波瀾万丈さや、自由な展開のことばかり書きましたが、中には、そうしたずれてる部分を感じても気にならず、代わりにそれが味となって、淡々と展開されるやりとりに、愛おしさや温かみを感じられた物語もあり、同じ町を舞台にしていますが、ショートショートそれぞれで、雰囲気や感じ方が異なったのも、また印象深かったです。
      2022/06/19
    • 111108さん
      たださんお返事ありがとうございます♪

      そうなんですよね、不思議さと淡々としてる所が普通のようで普通でない感ありますね。

      でも‥恥ずかしな...
      たださんお返事ありがとうございます♪

      そうなんですよね、不思議さと淡々としてる所が普通のようで普通でない感ありますね。

      でも‥恥ずかしながらその雰囲気しか覚えてなかったので、たださんの感想の「やりたい放題感が満載」とか登場する年代の幅の広さとかいうのを読み、これはもうじっくり味わいたいわ〜と再読を決意しちゃいました。
      ありがとうございます!
      2022/06/19
  • 現在この文庫本が2冊ある。絶対的に読んだ事あるけど図書館だったかなと出先で購入して読み終わって本棚にしまおうとして、もうすでに1冊あることを発見した。でも本棚にこの本が2冊並んでいてもいいんじゃないかと思える世界観。川上さんの東京日記を更に現実感薄くしたような、普通の日常の話かと思いきや摩訶不思議なものがすんなり紛れ込んでいるお話。

    短編だけど、登場人物はあちこち重なっていて、あっちの話の誰々がまたこっちの話で出てきたりもする。どれも短めのお話なのだけれど、主人公(主人公といっても一人称はない、私はなどの書き出しもない、ただどの話も誰かの目線で見て語られている物語なので多分その話を語っている誰かが主人公なんだと思う)の友達のかなえちゃんは姉妹で出番が多くて、その傍若無人ぶりが好きだった。あとは影じじいとか、犬学校の校長先生とか、六人団地とか、埋め部とか、鳩鳴き病とか、八郎番とか川上さんの頭の中ってどうなっているんだろうなぁ、すごいなぁと感動する。好みは別れると思うけど不思議な世界観が好きな人は読んでみてほしい。たまにこの世界に入りたくなって川上さんの本って何度も読み返している。

  • とても読みやすかったけれど、とても変わった短編がぎっしり‥‥
    こんな人たちにはかかわりたくないなあと思いながら

    まあこのあたりには、いるはずもないけど。

  • 短めの作品なのでさくっと読めるのかと思ったら、違った。
    クセの強い、ちょっと意地悪な性格だったり幸せとは遠いところにいるような、近所にいそうでいない、このあたりの人達。
    植物や動物が独特なタイミングで生々しく登場するのが川上さんお得意な感じ。嗅覚も刺激されたりする。
    出てくるハーブ(マロウ、セボリー、ボリジ、ヒソップ)は調べてみたら本当にあるものだった。素敵。
    埋め部、クラブ活動してみたいな。
    かなえちゃんとお姉ちゃんの動向が気になったり、スナック愛って怖いもの見たさで行きたくなったりもする。
    結局、川上さん流の答え合わせのないまま終わってしまった。このあたりの人達のその後、が気になったりもする。

  •  う~む…期待していたほどではなかったかな。

    好きな人は好きそうですが、私はあまりハマらなかったです。世界観は、素敵だと感じました。

  • 掌編小説集。静かにじんわりと狂ってる。

  • ここに出てくる人たちには、昭和ならその辺にいたかもしれないような懐かしさを感じるのだけれど、いや違う。きっとどこにもいない、不思議な町の住人たち。
    別に普通ですよみたいな顔で、ものすごく個性的だ。
    中でもかなえちゃんのお姉ちゃんはすごい。イタコに射撃に銅像。そんなワードが出てくる人生。

    八郎番、埋め部、運動会の競技など、当然のように話されるその町の習慣は、現実とはどこかずれていて、おなかの底からふつふつと、なんか面白いという気持ちが湧いてくる。
    この世界好きだなあ。

  • 実に難解な小説… 難解すぎて、もうクタクタに疲れた仕事帰りの電車で読むのが本当に最適だった。
    唐突に登場する西郷輝彦だけは笑いが堪えきれず電車内で恥ずかしい思いをしたけれど。
    川上弘美さん最高!

  • 独特な世界観であるのに、
    ふふ、特に変わったところはありませんよ。
    と言われている感覚。不思議です。

  • すごい変な町に紛れこんだ。最初の話で心掴まれて
    次の話から、ずっこけて、どの話も不思議な余韻で終わる。登場人物が非常に良い!かなえ、かなえの姉、赤井、スナック愛、ラーメン五郎、八郎、川又さん家のドリーとロミ、影じじい、道夫、農家のおじさん…もう、素敵すぎや。これでもか、これでもかと溢れる魅力のキャラ。日本の素晴らしい童話でしょ、これ。どの作品も読み終えて、一言言わずにはおれない。なーんやそれ!

  • 不思議な世界の不思議な人たち。
    2、3ページで終わる短編が連なる作品。徐々に登場人物に見慣れてきて、愛着が湧いてくる。とんちきな人たち。なんだか誰かの夢の中を覗いてるような気持ちになって、ふわふわしながら読んでいた。

  • 読書とは何か、改めて考えさせられる時間でした。

    基本的に私は通勤の電車内で小説を読むのですが、このとっても薄い小説を読む間は“このあたり”を何十年分も旅させてもらって…!

    ついつい正解を求めてしまう日々の生活の中で、もっと広い視野(解説で言う鳥の目)から自分の幸せを見つめたいなと感じました。

    また10年後くらいに読み返したいです。

  • 川上弘美はありそうでなさそうな、なさそうでありそうな町を書くのが上手すぎる。ゆめゆめあり得ないと頭では分かるが、「このあたり」があまりにも素知らぬ顔で存在しているもんだから。たとえ日本が滅亡しても、この町だけは残りつづけるはずだ。この町にはなんだかつるつるとした怪しさがある。「かなえちゃんもわたしも、早くおっぱいが大きくなって、宇宙人や悪の教団と戦いたかったのだ。」

  • 変わっている(面白い)周りの人たちの変わったお話
    犬校長先生インパクト大だった

    かなえちゃんのお姉さんのおかげで地球は救われた笑

  • このあたりにいそうな人達、いや、絶対このあたりにはいない人達、そのちょうど狭間?
    無さそうだけど有りそうな
    あるんだけど知らないだけの世界のような
    川上弘美ワールドです

  • なんでもいいからとにかく面白い小説が読みたいと言われたらこの本を紹介する。文学のヤバさを味わって欲しい…!というツイートをだいぶ前に見たから思い出して購入。

    面白かったなあ…!って思いたかったけど
    そういう感じとは少し違いました。

    そもそも面白いとは何なんだろう。
    この本は何故生まれたのだろう。

    不思議な街で、不思議な人々に
    不思議な出来事がたくさん起こる話。
    でもそれに登場人物は何の感情もなくて
    ただ受け入れ?るというか流されるというか。

    よくわからなかったけど一気読みしたし
    もっと読みたい気分になった。

  • この文量でこの満足感。すごいものを読んでしまったなと読み終わったときに呟いてしまった。
    最初のうちはこのあたりはどこなのか?どうなるのか、と考えていたが、そういう街であり、これが日常なんだよなぁと『おばあちゃん』辺りでこのあたりに溶け込んでからは日常系の緩さを感じるほどになる。だが立ち返ってみると、今自分が思うこのあたりと、本書の中のこのあたり全体の常識のズレから、ほっこりしたなと気持ち悪いなが共存する。
    読了後の感覚としてそれほど持ったことのないものを感じられた。

  • 霧の中に迷い込んだかのような読書体験。よくわからなかった、というのが正直な感想。
    物語の秘密を掴んだと思ったが手のひらの中には何も無い、というのを何度も繰り返している感覚。出口を目指していたはずなのに、気付けば更に濃い霧の中にいた。不思議な読後感。
    何度も繰り返し読むことで、見えてくるものが広がっていくのかもしれない。時間を置いて再読したいと思う。

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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