科学オタがマイナスイオンの部署に異動しました (文春文庫 あ 79-1)
- 文藝春秋 (2019年11月7日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167913823
作品紹介・あらすじ
「マイナスイオンドライヤーなどの美容家電製品は、廃止すべきです」大手電器メーカーに勤める科学マニア、羽嶋賢児は、自社の非科学的な商品にダメ出しをしたばかりに、最も行きたくなかった商品企画部に島流しに…。空気を読まずに正論を言う。そんな賢児はやがて部の鼻つまみ者扱いになってしまう。賢児のまっすぐすぎる科学愛は、美容家電を変えることができるのか!?自分の信念を曲げられずに日々会社で戦っている、すべての働く人に贈ります。『わたし、定時で帰ります。』で話題の著者が描く、お仕事小説。(『賢者の石、売ります』を文庫化に当たり、改題。)
感想・レビュー・書評
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タイトル通りのお話だけど、イメージしていた展開とは違った
想像した展開としては、理系が最初は職場の無理解に苦戦しつつ、最終的には似非科学信者をぶっ倒す物語だと思っていたけどね
とりあえず、以下は公式のあらすじ
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「マイナスイオンドライヤーなどの美容家電製品は、廃止すべきです」
大手電器メーカーに勤める科学マニア、羽嶋賢児は、
自社の非科学的な商品にダメ出しをしたばかりに、
最も行きたくなかった商品企画部に島流しに…。
空気を読まずに正論を言う。そんな賢児はやがて部の
鼻つまみ者扱いになってしまう。
賢児のまっすぐすぎる科学愛は、美容家電を変えることができるのか!?
自分の信念を曲げられずに日々会社で戦っている、
すべての働く人に贈ります。
ドラマ化もされた『わたし、定時で帰ります。』で話題の著者が描く、お仕事小説。
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子供の頃から科学は好きだが、大学は有名私立の文系に進学した主人公の羽嶋賢児
論理的故に主張は正しいが、他者や家族と上手くコミュニケーションが取れない
特に非科学的な主張をする人を見下す傾向がある
科学は今も好きで、特集動画やロケット発射の生中継を見たり、シンポジウムにも参加している
しかし、鉱物のお店をしていた亡き父は自分には科学の道に進む事の是非を問うたが、友人には好意的な対応をしていた
結果、研究者になる事はなく、科学とお金儲けの狭間で苦悩する
賢児は似非科学の機能を売りにすべきではないと考えるが
商売としては似非科学の方が消費者の要望と売上と合致する
果たして、自分は何故何のためにお金を稼ぐのか?
STAP細胞は発表された当時はもてはやされたものだけど
再現性について懐疑的な状況になっても信じている態度はどうかと思う
ねつ造問題では未練タラタラと言うところがキャラブレというか、本質的な科学的思考ではないのだと理解した
科学の論理性ではなく、科学がもたらすロマンに魅力を感じているだけに見える
だから、「知りたい」という欲求ではなく、「いくらするのか?」という発想になるのではないかと
科学って実は泥臭い側面はかなりあるからなぁ
今までの定説がひっくり返るようなパラダイムシフトも起こるし、それに対してまた論理を再構築しないといけないしね
現在、世間で科学的に正しいと思われている事も、「今のところ矛盾はなく妥当と考えている専門家が多い」という程度で、恒久的な信頼情報ではないしね
しかしまぁ、科学とお金の問題なぁ
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科学は万能ではない。しかも科学にはカネがかかる。科学は使い方によっては不幸も生み出す。しかし科学を捨て去って生きることはできない。
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という文章ですべて説明されていると思う
人類には様々な課題が山積しているし、科学の発展が引き起こした課題もあるけれど、科学なしで解決できる問題はそうそうない
もし科学リテラシーが上がったらもっとよりよい社会になるのかとも思うけど
紛いなりにも義務教育を受けた人達が、似非科学やスピリチュアルなものに大金を払う商売が成り立ってる現状を見るに望み薄だろうか?
タイトルのマイナスイオンだけでなく、水素水、化粧品のコラーゲンやビタミンC、最近なら反ワクチンとか
人は自分に理解できないものでも、盲信する事ができるんですよねー
何とも厄介な……
似非科学でも稼げればいいという考えに対して
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本物の科学で金を稼ぐ。できるだけ稼ぐ。その金を科学にまた注ぎこむ。それができるのは商人だけだ。
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というところはカッコいい
ま、実際にそれを実現できればいいんですけどね
賢児に「未開人」とされている姉の美空
ある意味で科学的リテラシーがなくても幸せに生きていけるという証左なのかもしれない
ただ、作中の母乳問題とかでわかるように、自分の信じたいものだけを信じるとコロっとその幸せがひっくり返るけどね
あと、父が入院していたときの叔母とかには読んでいて本当に怒りを覚える
本人は良かれと思ってなんだろうけど、賢児と母の確執の要因だし、その後の掌返しにも不快感を覚える
標準医療をもっと信じようよ……
それにしても、朱野さんは文系出身なのに、理系の解像度が高い小説をかけて凄い
理系出身作家はこの手の理系リアリティのある作品を書きがちなのはわかる
蓼科譲が吐露する科学研究の置かれた立場というのはとてもよくわかる
価値のある研究である事を示さないと科研費は取れないし
そのためにデータを捏造する可能性とかまで言及されると、物悲しいけどそれが実態なんだよなぁと思ってしまう
博士でも、博士だからこそポストと職がないというのは何とかしないといけないと思う詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
軽そうなタイトルの割には、内容は重めだった。科学が大好きだったけど、お金がなくて将来は商人になって、お金を稼ぐと決めた主人公。でも似非科学商品を売る部署に異動してしまった。そこでの葛藤と親友とのすれちがいが、よく書かれていたと思う。
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新聞の書評を見て読みました。すっきり爽快ではないけど、人間味ある話で面白かった。タイトルの印象と違い、科学の知識で疑似科学を成敗するようなお仕事小説ではなかった。疑似科学に翻弄される人やお金を稼ぐこと、白黒つけられないコミュニケーション等が描かれる。よりキャッチーな方向への改題からも、商売の大変さがにじみ出ている。続編があったら読みたい。
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タイトルが勝ちすぎている感があるが、根本は世に蔓延る疑似科学、オカルト、詐欺商品の紹介と批判をおりまぜた、疑似科学撲滅小説。ただ、STAP細胞事件のような、化学への信頼の根幹を揺るがすネタもブッ込んで化学一辺倒ではなくバランスはとっている模様。
化学だ迷信だとドタバタして消化不良で終わったような… -
非科学的な圧力、宗教的な圧力で人生が曲がった
主人公の非常識な生き方を納得させる目的の小説
読者には冒頭から解答を示す方が面白い(´・ω・`) -
仕事に忙殺されてる時に読んだせいもありますが、主人公、主人公の母、姉などイラッとしてしまいました。正論は時に人を傷つけること、治療とお金。など、論理と感情がテーマとなっていました。どちらも行き過ぎはよくないですね。。。
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これまで読んだことのない新しい感覚
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