夜の谷を行く (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2020年3月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784167914523

作品紹介・あらすじ

連合赤軍事件の山岳ベースで行われた「総括」と称する凄惨なリンチにより、十二人の仲間が次々に死んだ。
アジトから逃げ出し、警察に逮捕されたメンバーの西田啓子は五年間の服役を終え、人目を忍んで慎ましく暮らしていた。
しかし、ある日突然、元同志の熊谷から連絡が入り、決別したはずの過去に直面させられる。

みんなの感想まとめ

過去の凄惨な事件と向き合う主人公の内面が描かれた作品は、連合赤軍事件を背景にしています。主人公の西田啓子は、事件から逃れた後、静かに暮らしていたものの、元同志からの連絡によって過去と再び対峙することに...

感想・レビュー・書評

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  • 文庫版のこのカバー装画を見ていると、どことなく陰惨なイメージが浮かんでくる。
    それはいわゆる1971〜72年に起きた「山岳ベース事件」を基に描かれた作品だからだろう。
    とはいえ陰惨なシーンは少なく、その後を生き伸びた人間の葛藤や秘密などが、主なテーマだと思われる。

    ベースから逃走し、逮捕されて刑期を終えた主人公の女性の人生が、約40年の時を経て「永田洋子の死」と東日本大震災から、再び動き出す。
    家族との関係の変化、元同士との再会、記憶の差異、そしてラストはやはり……と読み進めて、納得する。

    過去は蜘蛛の糸のように、一生ついて回るものでもあることを認識させられる。

    当時の永田洋子像の描き方が、今まで見聞きしていた従来のものとは違い、そういう一面もあったのかもしれない。

    • bouquet0606さん
      こんにちは。
      感想を読ませていただいて、読みたくなりました。早速私の読みたい本リストに入れさせていただきました。
      図書館にあるかな(本は極力...
      こんにちは。
      感想を読ませていただいて、読みたくなりました。早速私の読みたい本リストに入れさせていただきました。
      図書館にあるかな(本は極力買わない主義なので)。
      いつになるかわかりませんが、読んでみたいと思います。興味をそそる感想をありがとうございました。
      2026/04/07
    • りをうさん
      bouquet0606さん
      コメントありがとうございます!
      私も色々な方の本棚を拝見し、参考にさせて頂いております♪
      こちら文庫版ですので単...
      bouquet0606さん
      コメントありがとうございます!
      私も色々な方の本棚を拝見し、参考にさせて頂いております♪
      こちら文庫版ですので単行本版か、どちらかがに図書館にあれば、ぜひ読んでみて下さい。
      bouquet0606さんの感想も読んでみたいです!
      2026/04/07
  • 桐野夏生『夜の谷を行く』文春文庫。

    連合赤軍の山岳ベースから逃亡し、警察に逮捕され、5年間の服役を終えて人目を忍んで暮らしていた初老の西田啓子を主人公にした中編小説。

    結末が物足りない。西田啓子の現在と過去を結ぶ線が少しずつ太く明確になっていく過程は非常に面白いのだが……

    連合赤軍とオウム真理教は似ているな。

    本体価格670円
    ★★★

  • 本書のストーリーのベースとなっている事件は、ウィキでは「山岳ベース事件」として扱われている。それを引用する。
    【引用】
    山岳ベース事件とは、1971年から1972年にかけて連合赤軍が群馬の山中に設置したアジト(山岳ベース)で起こした同志に対するリンチ殺人事件。当時の社会に強い衝撃を与え、同じく連合赤軍が起こした、あさま山荘事件とともに新左翼運動が退潮する契機となった。
    【引用終わり】

    事件の首謀者の1人であった永田洋子は裁判で死刑を言い渡される。ただ獄中で病を得て、死刑執行の前に病死する。それは、2011年2月、東北の大震災の直前であった。
    永田が地裁で死刑判決を受けた際の判決文は、下記のように事件の原因を論じている。これも、下記に引用する。
    【引用】
    被告人永田は、自己顕示欲が旺盛で、感情的、攻撃的な性格とともに強い猜疑心、嫉妬心を有し、これに女性特有の執拗さ、底意地の悪さ、冷酷な加虐趣味が加わり、その資質に幾多の問題を蔵していた。
    【引用終わり】
    本書の文庫版の解説は、本事件を扱った弁護士の1人が書いている。この弁護士によれば、本事件を上記のような永田個人の資質のせいであるという判決はおかしく、控訴審では、「可能な限り事実を正確に、何が起きたかのかを歴史に刻む」ことを方針として裁判を戦ったということであった。

    以下、ネタバレにならないように、本書について書く。
    桐野夏生は、本事件に参加していた女性に注目し事件の、1つの側面を捉えなおし、ストーリーをつくっている。裁判ではなく、小説でありフィクションであるので、「可能な限り事実を正確に」というよりは、「この事件の本質」を本小説を通じて明らかにしようとしているのだと思う。まるで良くできたミステリーのような衝撃的な結末であった。

  •  この小説の題材は、一九七二年連合赤軍事件。
     昆虫や蜘蛛がそう嫌いではなくなったのは、この歳になってからだ。若いころは虫も蜘蛛も蛇も大嫌いで、血が逆流するほどの嫌悪と恐怖を覚えた。しかし山の生活で血相を変えて逃げ回り、仲間から「失格者」と烙印を押されたに違いない。だから虫嫌いを誰にも悟られずにいつも虚勢を張ることが出来たのだ。
     長く生きるということは、あらゆる恐怖や禁忌から解放されることかもしれない。西田啓子(主人公)は古いアパートに住み着いた小さな蜘蛛の方を向いて苦笑いをする。
     ある日、妹の和子からの知らせで日曜の朝刊を見た。途端に、悲鳴が洩れそうになった。
     「永田洋子死刑囚が死亡 連合赤軍事件 大量リンチ殺人」「東京小菅の東京拘置所で多臓器不全のため死亡した六五歳」とある。
     とうとう、永田が死んでしまった。
     三十九年前の昨日、啓子は君塚佐紀子と共に脱走した。啓子は妊娠三か月。これ以上山にいたら全員が総括で死んでしまうかもしれない、という恐怖、いや諦観があった。
     山を降りたところで二人は警察に逮捕された。懲役五年、父は肝硬変で死んだ。母も…。親戚からも縁を切られてしまった。
     啓子と和子は、初老を迎えているというのに、口が達者である。口喧嘩というより論争に近い、延々と続く論争は、姉妹だけに終(しま)いが無い!
     本書の中で山の生活の真の目的が語られたが、多くの生命を奪った事実は相殺されない。事件から四十年、誰も語らなかった真実が明らかにされる。
     ふと気配を感じて、台所の壁を見ると冬の蜘蛛が姿を現していた。
     実におもしろい!

  • 去年、反日武装戦線の元メンバーで、本名は桐島聡だと名乗ったあと病死した男のことを思い出しながら読んだ。
    この小説の啓子は桐島と違って、捕まったあと服役し、ひっそりと生活していた。
    それは、ずっと逃げ回る日陰の身か、元犯罪者として、家族からもそのことを周りに知られないよう生きていくことを暗に強いられる身か、の違い。
    親族の結婚にまで過去の犯罪は影を落とす。

    桐島も啓子も、若気の至りなんて軽い言葉では片付けられないが、死ぬまで引きずる十字架はなんて重いのだろう。
    実在の人物の桐島聡や永田洋子。彼らも、こんなことになるなんてと暴走しすぎてしまったことを、最期には後悔しながら亡くなったと思いたい。
    本名を名乗ったのも、逃げおおせたというフラッグではなくて、反省と謝罪の意味だったと思いたい。
    それとも思い通りの革命ができず無念のままだったのだろうか。もう知る由もない。

    啓子は投獄され、出所後も過去に引きずられ、でも誰かに分かってほしいともがき苦しむが、ラストのシーンのある男の「僕はお礼を言いますよ」の言葉に全て救われる。

  • 昭和の半ば1970年代にもとんでもない事件がいろいろあった。「連合赤軍のリンチ殺人」もそう。「永田洋子」という氏名は忘れられない。この小説はその事件に参加してしまった女性のその後の人生を虚実まじえて描いている。

    主人公西田啓子は前期高齢者の仲間入りが間近、事件の秘密を抱え、出所後目立たないように生きていたのに2011年2月「永田洋子」が獄死したことによって、昔かかわった仲間にも居場所を知られてしまい、フリーライターの取材を受けないかと迫られる。それは断るのだが身内にもさざ波が立ち、決別したかった過去がよみがえる。結末はあっけにとられるが、あり得ると思わせる・・・。

    「革マル派」「赤軍派」の特殊な団体の異常な事件だけれども、人間が共同社会で生きていくには避けられないことが含まれているのかもしれない。そののちの「オーム事件」でも知識人があり得ない行動をした。その時「なぜそうしたか?」はなまなか解明できるものではない。

  • 連合赤軍のメンバーとして五年間の服役を終えた啓子は、その後メンバーからは距離を置き、人目を避けた生活を送っていた。

    姪の結婚をきっかけにして、元同志たちがどのような暮らしをしているのかを追いはじめる。

    啓子の言動のあやふやさ、まるで一連の出来事と自分は隔たった場所にあったかのような語りに、苛立ちを感じる時があった。
    いじめの構図と同じ。
    傍観者は自分を事象から離し、加害者をコントロール出来ない人物に仕立て上げることで「仕方なかった」の論理に逃げていく。

    けれど、もう少し深いところで、啓子が言葉にしてきたものと、言葉にしてこなかったもの。
    そして、言葉にしなかったのに、生まれた虚像の姿があることも、分かった。

    自分がどれだけ枠の外に逃げたつもりでも、更に枠の外にいる人々からは、当事者でしかない。
    償いにタイムリミットなどなく、いつまでも現在進行形で罪に追われ続けることも、「自己責任」だと片付けられる。

    失敗すれば、排除されるシステム。
    けれど、この事件の要に同じものが潜んでいたのではなかっただろうか。

    啓子が言葉にしなかったもの。
    このシステムの最中にいて、言葉にしなかったものが一等輝きを帯びていることに、私は素直に単純に美しいなぁと思った。

  • 面白く読み応えがあった。最初のチラッと読んだらやめられなくなり一気に読んでしまったほど。
    連合赤軍、ニュースでしか知らなかったし、リンチや特定の中心人物しか知らなかった。だから末端の西田敬子に焦点をあて描いているのは大変興味深かった。
    主人公の西田啓子には1ミリも共感出来ない。共感出来るのは同志だけなんだろうなぁ。
    孤独感に苛まれる西田啓子、ラストは鳥肌ものでした。
    希望が見えた感じがした。

  • 山岳ベース事件を元に、その後ひっそりと暮らす主人公のはなし
    事件のせいで疎遠になった妹とのやりとり、
    とてもリアルで、私は主人公の身勝手さを
    感じた。妹もイヤな言い方をするんだけれど、
    その気持ちの方が普通というか。

    事件の関係者と40年ぶりに連絡を取りはじめる
    気持ちの動き、普段の生活の中にある疑心暗鬼、
    事件を思い出したく無い気持ちと懐かしむ気持ち、
    主人公の感情が伝わる。

    実際に起きた事件が元になっているけれど
    ラストは小説らしい驚きでよかった

  • 連合赤軍がらみの事件のことはネットで調べた程度の知識しか無かったけれど、ずっと興味はあった。
    とくに山岳ベース事件の方は、「総括」と呼んだリンチで仲間が仲間を殺してそれが12人にも及んだいう残忍なもので、その時そこで何が起こっていたのか怖いけれど知りたいような思いがあった。
    この本はあくまでも小説なので、事実を基にした物語だという前提を分かっているから、ドキュメンタリー本よりもまずは読みやすいかもしれないと思って手に取ってみた。

    主人公は60代の西田啓子。山岳ベース事件の頃20代だった彼女は、「総括」と彼らが呼んだ凄惨なリンチ殺人を目にした後、アジトから逃げ出し逮捕されて、5年の刑期を終えていた。
    そういう過去を持つせいで、家族や親戚のほとんどから距離を置かれ、60代になった現在は、実の妹と姪以外の人物とはほぼ付き合わずにつましい生活を送っている。
    しかしそんなある日、過去の「仲間」から突然電話があり、啓子を取材をしたいという若い記者の存在を知ったことから静かな暮らしに変化が訪れる。

    この西田啓子という人物に実際のモデルがいるのかどうかは分からないけれど、過去を振り返った事件の描写の際に出てくる人物名はほとんど実際のものだった。数人とても有名な人がいるから、ピンと来る人も多いと思う。
    だからこの啓子に近い人物も恐らく実際にいるのだと思う。リンチをする側でもされる側でもなく、傍観者としてそこにいた女性。自分がターゲットにならないよう腐心しながら、ターゲットになってしまった人たちを助けられなかった人物。
    今まで思っていたこととこの事件の真実は結構違っているのかもしれない、というのが個人的に思ったこと。
    あくまで「女たちの目指した革命」という意味でなら、こんな真実があったのか、と驚かされた。作者の桐野夏生さんは実話系小説を多く書かれている方なので尚のこと。

    若い頃のこととは言え、一度起こしてしまったことが人生にずっと付きまとうというのもきっと真実なのだと思う。
    1人の人間が見たもの、聞いたこと、感じたこと、目指したもの、が正しく他人に伝わることは恐らくほとんど無い。結局真実は、本人にしか分からない。
    啓子は孤独な人生だけど、それでも過去を分かち合えたり理解してくれようとする人がいてよかった。終始辛い物語だけど、それだけは救いだった。
    そして小説としてはとても面白かった。物語を読んだので、今度はこの事件のドキュメンタリー本も読んでみたくなった。

  • 桐野夏生作品にしては、どぎつくない。
    というと語弊があるかもしれないけれど、少なくともグロテスクな描写はない。

    浅間山荘事件という名前は、なんとなく聞いたことがある程度。
    学生運動にも馴染みがなく、どんな事件だったのだろうと、途中でWikiを見たりしながら読み進めた。

    主人公の妹の娘・佳絵の理解度が、ちょうど自分と重なる感覚があった。
    ピンとこない。
    調べてみる。
    そして、ひどい事件だったのだと知る。

    同じではないけれど、全く無関係な人たちが家族ぐるみで洗脳され、搾取され、身内同士で暴行や虐待に至る…
    ときどき耳にする、そういう事件と集団心理というところでは似てる部分がある感じがした。
    異なるのは加害側がそれを「悪」だと思っていなかった、という点。
    むしろ正義に向かっての総括だった…
    いちばん恐ろしい。

    正直、コメントはしづらい。
    その時代の空気感が、どうしてもよくわからない。

  • 連合赤軍で活動していた西田啓子は何故「夜の谷をを行く」ことになったのか?
    刑期を終え、ひとり目立たぬ様に暮らしてきた彼女は告白する。「確かに、あたしは自分のやってきたことは、どこかで道を間違えたんだと思う。でも、出発点は間違っていなかったと思う」と。
    連合赤軍のトップだった人たちも無惨にリンチで殺されていった人たちもきっとそうであったのだろう。
    まだ自分が小学生だった頃の事件。
    おかしな人たちの起こした無惨な事件てしてしか見ていなかったが、この作品を読んで、彼らの言葉も読んでみたいと思った。
    主人公の啓子は親にも死なれ、妹の和子ともあまり関係が良くなく、過去を知られた姪からも拒否される。
    そんな彼女の過去を知りたいと近づく若いライター古市。
    啓子の事を記事にはしないと言いながら、何故彼女の話を聞きたがるのか?
    それは最後の1ページ、彼女が頑なに守り通してきた秘密から彼女を解放し、物語にひと筋の光を投げかける。暗く苦しい物語から解放された。

  • なんとも救いのない話に思える。
    時代だなー

  • めっちゃ面白かった。
    毎晩寝る前に読んでいたのだが、一人で面白いわ〜と毎回呟いていた。そして読むのを止めるのができず次の日は寝不足になっていた。
    最後だけ取ってつけたようだったけど。
    題材も主人公の年齢も私からかけ離れたものだったから、楽しめるかちょっと不安だったけど、面白かったわ〜 
    桐野夏生ってこういう作家だったのかー。知らなかったー。
    彼女の作品をどんどん読みたい。

  • 面白いという表現は違うのかもしれないが、すごく引き込まれてあっという間に読み終わった。

    私はその時代のことも、この事件のことも名前しか知らず、初めて知ることも多かった。

    あの時代変革を掲げて自分たちの子どもさえ新な時代の戦士として育てたいという理由もあって山岳ベースにはいった女性たち。
    その掲げたことさえもどこにいってしまったのか総括の対象になった妊婦の女性の亡くなり方が切なく苦しかった。

    その山岳ベースに入ったうちの1人の女性のその後に焦点をあてたこの物語。

    服役した後待っていたのは両親の死、親戚の絶縁、孤独。唯一妹と姪っ子と関係はあるが、そことも溝はある。終始彼女と関わる人との場面は言い争いが絶えない。主人公自身、自分の主張がすごく強いし正しいと思ってる節があるような。元闘争の時の夫婦となっていた男性が前に現れるがそこの場面もなかなか切ない。

    彼女が服役後もずっと人の目を気にして、世の中に許しを求めているのは、やはりそれだけ惨殺で残酷で残忍な事件だったから。

    ライターという古市。彼だけは彼女に対して穏やかに話す。なぜなのだろうと思いながら最後、啓子は出産して里子にだして、その子が古市だということがわかる。これは希望なのか?それとも新な風穴なのか、それは分からないが。生まれたことを後悔してないという場面はぐっときた。

  • 桐野夏生は過去に頭の良さを大っぴらにして男に潰される事なくここまできて、こんな作品を書き世に出せるまでになってる。それともデビュー時はここまでの女性すらも侮られてしまう程の時代だったのか?なら昨今の女性蔑視は少しでも世間の頭脳がましになってるということの現れ?という皮肉が浮かぶ。小説の面白さにも圧倒される。最近出版された新作はまだ未読なので読むのが楽しみ。

  • 元犯罪者の女性の老後についてのお話。
    最初の硬化した態度から最後の終わり方面白かった。
    革命の中で女性たちがやろうとしたことも心に残った

    西田さんの気持ちが表されないのに、文章から伝わってくるのがとても良いと思ったら

  • 以前から気になっていた連合赤軍の事件について調べてみたが、本の影響か特別に残酷な事件だと思えなかった自分が怖い。
    当事者が特別に残酷な資質を持っていた訳ではなく、複数の要素が重なれば人は誰でも罪を犯してしまうのではないかと思った。

    家族と言えど別々の人間だと認識できれば良いのだが、犯罪者への嫌悪が家族に及んでしまうのは避けられない事のように思える。
    主人公自身その事で苦しんできたが、どうにもできないことも事実で、責められて当然なのも事実で、八方塞がりなのが読んでいて辛かった。
    罪を犯した後の人生はまさに夜の谷を歩いているようだと思った。

  • それほど分厚くもない上に桐野夏生作品の中でも読みやすく、何の感慨もなく読んでいましたがラスト二ページで掴まれました。
    それまで主人公の西田啓子という女は、どこか一貫性のない自分勝手な女だと思ってました。自分が正しいと思っているような、偏見かもしれませんが正に教師という職業にふさわしい主人公。人間としては大したことない女です。それなのに他の登場人物は啓子を下から見上げているように見えました。誰も啓子を見下してない、それどころか妬んですらいる。
    啓子は“持ってる”人間だったんですね。きっと他の登場人物たちはそれを無意識のうちに感じていたのかもしれません。最後になってようやく彼女の一貫性のなさに納得しました。
    ラスト二ページ、モノクロに見えていた西田啓子に色がついて見えました。そしてラスト二行で、啓子自身も自分がリスタートをきれたことを感じたんじゃないかなと思います。刑期を終えて尚、ひとりきりで罪を抱えて己を戒めていた啓子のこれからにエールを送りたい気持ちになりました。
    なので最初は★3つのつもりだったけどひとつプラスしてみました。

  • おもしろかったー

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著者プロフィール

1951年生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞、1998年『OUT』で日本推理作家協会賞、1999年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、2004年『残虐記』で柴田錬三郎賞、2005年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞、08年『東京島』で谷崎潤一郎賞、2009年『女神記』で紫式部文学賞、2010年『ナニカアル』で島清恋愛文学賞を受賞。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

桐野夏生の作品

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