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Amazon.co.jp ・本 (368ページ) / ISBN・EAN: 9784167914554
作品紹介・あらすじ
嫁ぎ先を離縁され、母親と暮らすお咲は、年寄りの介護を助けるプロの介抱人。
誠心誠意、年寄りに尽くすお咲のもとにはさまざまな依頼が集まる。
多くの病人に出会いながら、逝く人に教えられたことがお咲の胸に重なってゆく――
長寿の町・江戸では七十,八十の年寄りはざら。
憧れの隠居暮らしを満喫する者がいる一方、病や怪我をきっかけに
長年寝付いたままの者も多く、介護に疲れ果てて嫁ももらえずに朽ち果てていく
独り者もまた多い。誰もが楽になれる知恵を詰め込んだ「介抱指南」を作りたいと
思い立った貸し本屋から協力ををもとめられたお咲。だがお咲の胸には、
妾奉公を繰り返してきた母親への絶望感が居座っている。
自分は、あの母親の面倒を見続けることができるのだろうか。
いったい、老いて死に向う者の心にはなにが芽生えるのだろうか――?
江戸に暮らす家族の悲喜こもごもを、
介護という仕事を通して軽やかに深く描く、傑作長編小説。
解説・秋山香乃
みんなの感想まとめ
介護をテーマにしたこの作品は、主人公のお咲が「介抱人」として様々な老人たちと出会い、彼らとの交流を通じて成長していく様子を描いています。江戸時代の介護の実情を背景に、家族の絆や人間関係の複雑さが巧みに...
感想・レビュー・書評
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江戸時代は、家族内(自宅)での看護・介護が主流で、職業としての介護はなかったそうですが、本作では、主人公のお咲が口入屋に斡旋され、「介抱人」として仕事をする設定です。この構成と展開が味わい深い作品でした。
8編からなる連作短編集で、様々な老人たちが登場します。この一人一人の老人を始め、登場人物の個性が際立っていて、人物造形が素晴らしいです。
各話が進む中で、お咲の離縁や毒親による借金などが明かされ、物語の深みも増していきます。
介護の陰鬱印象は薄く、けれども軽過ぎず…。人同士の交流が小気味よいです。過酷な介護の困難を超越して、お咲の誠実さ、人の心を推し量る共感力が素晴らしい! お咲ちゃんに私の老後をお願いしたい! けどやっぱり"ぽっくり"逝きたいなぁ。
時代も変わり制度も進んだとは言え、経済的・世間体などによる諸問題は現代にも相通じている気がしました。そんな中に、介護問題緩和のヒントと希望も感じ、読みながらハッとさせられることも多かったです。
江戸の市井の人々の暮らしや四季の情景が背景として散りばめられていて、その描かれ方も物語を支える要因の一つと感じました。題材は地味でも内容は乙な一品でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
江戸の介護を描いた時代小説。帯によると「隠れた逸品」とあるが、そのとおり。江戸時代は平均寿命こそ短かったが、これは乳幼児死亡率が高かったためで、60才まで生き延びれば70才、あるいそれ以上生きたらしい。
お咲は嫁ぎ先から離縁され、「介抱人」として働いていた。お咲は母親の借金を返済するため、通常の女中奉公より給金のよい介抱人をしていた。口入屋を介しての今でいう派遣労働者である。
現代も江戸時代も介護の状況は変わらない。日常生活の介助や食事の世話、そして下の世話である。現代ならば介護保険もあり、要介護認定によっては施設入所も可能だ、しかし江戸時代では、儒教思想から親の介護は子の「孝」として考えられていた。そして手が足りない、追いつかない時は、介抱人を頼むというわけだ。
それとてお金がかかるので、一般庶民には無理。本書に出てくる依頼人も裕福な商家や旗本である。そしてお咲が暮らす長屋で菊職人をしながら、一人で老母を介護する庄助の話が出てくる。自分の母親は介護保険を利用して、デイサービスや施設入所ができたが、昔は本当に大変だったと思う。
表紙カバーのネコのイラストを見て買ったのだが、タイトルの「銀の猫」とは、嫁ぎ先の舅からもらった銀製のネコの根付のことである。また、長屋にくるネコのことも指しているのだろう。 -
標題の「銀の猫」は別れた夫の義父から貰った銀細工の小さな御守り。別れた理由は、妾奉公ばかりしていた実母が、この義父から大金を借りたことから。この借金を返すために給料が高い「介抱人」となったのも、この義父の介抱があったからでもあった。何も出来ない実母と関わり合いになるのが嫌で、大変な仕事の介抱人をどんどん入れて行く。
現代でも家族の介護は大変だが、江戸時代は息子や後継者が介護をすると決められていたとか。他人が入ることで良い方に向かうという事で、色々な問題を抱えた家に入って、介護される側との交流が小気味良い。元気な意地悪婆さん、大身の旗本の隠居、大奥勤めを引退した老婆など、意外な交流とその後が面白い。最後には嫌っていた実母との邂逅もあり、心が暖かくなる。 -
よかった。ほんとによかった。
お咲も佐和も庄助もおぶんも、みんなほんとによかった。
登場人物が全員魅力的。
江戸東京博物に行きたくなったので、調べてみたら2025年まで(予定)長期休館中でした…
好きな人が老いて弱っていくのは悲しい。
そんなとき私は笑って介抱できるだろうか。優しい声を掛けられるだろうか。
そのときになってみないとわからないけれど、もし思い詰めたときは『銀の猫』を再読したいと思います。 -
舞台は江戸時代、年寄の介抱を仕事としている主人公お咲と、彼女に関わる人々との物語です。
作中に出てくる解放される人達の振る舞いは、一見すると身勝手なように捉えられます。しかしお咲との関わりと通してその人達の背景が見えてくると、なぜこの振る舞いとなったのか分かるようになります。ーこの振る舞いとなったのは、その人が今まで生きてきた過程の中で根底に残る事柄があるのではないか?これは現代の介護の世界でも見受けられる光景や理解をする際に必要な視点なのではないかと感じました。
よく参考書や教科書などでは、行動の背景に何があるのか知ることが、その人らしさを尊重しつつ適切な援助が行えるようになる…といった事を書かれていますが、この作品では物語(主人公)を通してその気づきを得られるような感覚がありました。実践とまではいきませんが、具体的な例のようにすっと理解できる感じです。
また主人公の人との関わる姿勢が印象的です。戸惑いや理不尽なことに対する怒りなどの感情があっても、相手と正面から向き合い関わっていく姿が心強く思えました。
介護の場で思うことがあった時だけでなく、作品を通して人と向き合う姿勢を感じたいと思う際に読むのも良いかと思います。 -
介護(本作中では「介抱」)がテーマになる話を、現代を舞台にした小説で読んでいたら、実際に介護にかかわる日々を送っている読者にとっては、あまりにシビアで結構滅入ってしまったかもしれません。
本作を読んでみて、決して滅入ることはありませんでした。これは江戸の町人の暮らしの中での話…と割り切りながらも、老いるということの意味は昔も今も変わらないのだと思いました。
本作のよいところは、「こうあるべき」とか「こうあらねばならない」などと結論付けていないところなのかなと。むしろ本作そのものが、作中に登場する洒落の効いた『介抱指南』のようにも思えてきます。
他人さまの介抱にかけてはプロフェッショナルの域にある主人公の"お咲”が、こと自分の母親のこととなると冷静ではいられなくなる性分であるのも、とても親近感がもてます。
完璧な人なんていない。完璧でなくても、どうしようもない状況でも、少しでもお互いが楽になれるよう、みんなで助け合ってなんとかかんとかやっている。
実際の自分が経験している介護やこれから経験するであろう介護、あるいは自分が受けるであろう介護のことを、割と冷静に考えられる時間にもなりました。
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「親の介抱に尽くした者ほど、自身は誰の世話にもなりたくないと口にする。」親に対する介護の理想は人それぞれあるだろうけど実際は自分の生活、金銭的な問題、etc…。
江戸時代も同じだったのかなと思いを馳せなが読了 -
江戸時代の介抱人、お咲の物語。
人々の寿命が延び、江戸の人々も介護の問題に苦しんでいた。そこに目をつけたのが、口入屋。女中賃金に色を付け、介抱人としてあちこちに派遣していた。いま、こういうフリーの一流介護士さんとかいたら流行りそう…。
お咲は介護のプロとして、あちこちの隠居さんから引く手あまた。一人の介護が短編として描かれ、お咲と母親との確執についての問題が全体を通して描かれる。
お咲と自分の立場が何となく似ていて、途中つらくなって読みすすめるのに時間がかかっていまった。お咲が、介抱人としてはプロでも、人間としては、いたって普通(解説ではまだ未熟とかかれていたが)なとこが、いいんだよなあ。
すごく今っぽい時代小説でした。 -
初めて時代小説を読みました。
言葉の意味や、時代背景が理解できるか
不安もありながら読み始めましたが
いらぬ心配でした笑
とても読みやすく、主人公のお咲や周囲の人の心情、江戸時代の介護の大変さが思い浮かびました。
人情話は切ない… 泣けますね。
また他の時代小説も読んでみたいなぁと思いました。
おすすめがあったら教えてください(^^) -
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江戸時代の介護のお話。当時は長男が親の世話を最後までみるから家督を譲られるということを知った。お金持ちは介護を今でいうヘルパーさんに頼み、彼女がやさしく対処するなかでのお話。人に優しくできる人は何らかの痛みを知っている人だということも描かれている。
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隠居の老人のために働く『介抱人』…今で言うなら訪問介護士を生業としているお咲が出会う、さまざまな老いの姿と、その背後の人々の姿を描く連作短編集。
ふつうのOLの等身大の物語が、江戸時代につながったような。
野心も持たず一生懸命にがんばっていて、ままならない事も思いがけない喜びもある。
毒親の作った借金のことで悩みながら突き放せず、縁あった他人の優しさに力をもらい涙する不思議。
朝井まかてさんの作品は『眩』が初読だったので、ドラマティックな熱い女性を描く作風かと思っていたのが、この作品を勧められて読んで、がらっと変わった。
平均寿命の短かかった江戸時代、病で早逝する者が多かった一方、隠居するまで息災だった人はその先が長かったという。そして、老親の世話をするのは跡取り息子と決まっていたという。
よろず手のかかることは、大昔から女のすることとされていたと思っていたので、意外だった。
経済的な余裕が無く、介護で心身をすり減らす子世代という現代的なテーマと、他人だからこそ頼りあえる関係、死に向かう人と向かい合う心…と、色々感じるところがあった。
そして、実の母娘なのにどうにも相性の悪いお咲と佐和が、ひとたび近づいてぶつかり合った後に、距離をとりあうことで許し合える、そんなところも現代に通じるところがあったかと思う。
いやまったく、他人事とは思えません。
ちなみに、単行本で読んだけれど、検索しても文庫本しかなかったのでこちらで登録。
『銀の猫』というタイトルは…
何かもっとあったんじゃないかなぁ。 -
江戸の介護の様子が描かれているけど、恥ずかしながら、私は江戸時代の江戸の人たちが長寿であるとか、倅が親の世話をするとか知らなかった。それが一番の驚きであったけれど、時代が変わっても、老後の介護を他人に任せることへの家族の抵抗や後ろめたさ、介護人を雇えない家族の苦労などは変わらないのだなと思うとちょっと苦しくもなった。
作者の思いや主人公の思いなど共感することも多く、改めて良いものを描かれる朝井まかてさんだなと思う。
「類」もお薦めです! -
久々の五つ星。
人生の道しるべの様な作品、朝井さんの引き出しの深さに驚きました。
介護の道しるべにもなるんだとうと思ってます。
巻末解説の秋山さんの言葉も感慨深いものです。 -
読んだのは単行本の方なんですが…文庫版の表紙かわいいな(^^)
江戸時代に介抱人として女中奉公をする、お咲が主人公の物語。現代風に言えば、派遣で勤める介護ヘルパーさんってとこでしょうか。介護する人とされる人、その家族を描いていて、現代にもじゅうぶん通じるお話。介抱人という呼称が実際あったかどうかは知りませんが、女中奉公という名で今でいう介護を担った人がいたかもというのはリアリティがあるなと思いました。「五十過ぎまで生き延びればたいていは長生きで」というのも、然もありなん、て感じです。お咲にはぜひしあわせになってもらいたいなぁ… -
江戸時代も介護問題ってあったんだなぁ。
江戸時代は今よりもっと親の介護は子供が何をおいてもしなければならないという世間体に縛られていて大変だったんだなぁ。
介護問題って、先には死しかなく暗く辛くなりがちだし、この物語の主人公は母親が毒親という悲惨な状況なのに、読み進めていくうちに、人は誰しもゆっくり老い弱っていくのは当たり前で、それとどう向き合っていくかという、ヒント、光を見せてくれてよかった。 -
介護士。当時はいなかったのだろう。人間は必ず死ぬ、それは今も同じこと、現代の病院では心臓が止まるまで死んだと認められないから、延命措置されて、死んだらみんながどうして死んだんだと嘆く。頑張って最後まで行きたねと言う人はいない。この主人公は最後の日々をどう過ごすのか分かる人だよ
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