ブルーネス (文春文庫 い 106-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (459ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167914738

作品紹介・あらすじ

はぐれ研究者たちの情熱溢れる理系エンタメ小説!「津波監視システムの実現に手を貸して欲しい」――。東日本大震災後、地震研究所を辞めた準平は、学界で異端視される武智に誘われる。武智のもとに集まったのは、海洋工学や観測機器などのエキスパートながら、個性が強すぎて組織に馴染めない〝はみ出し者〟たち……。前人未到のプロジェクト、はたして成功するのか!?「この作品は、私たち『変動帯の民』が覚悟を持って試練に備えることの大切さを説いている」――「解説」・巽好幸(神戸大学海洋底探査センター教授・センター長)

感想・レビュー・書評

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  • 東日本大震災後、津波監視システムを実現すべく奮闘するはみだし者の研究者たちを描く。

    随分時間をかけてしまったけどやっと読了!今の仕事と関連ある内容なのでじっくり調べたりしながら楽しめました。
    付箋貼りながら読んだの初めてかも。

  • 東日本大震災で、想定されなかった現実に立ち向かい、「予知」を目指して活動する科学者たちのお話。

    やや、序盤の仲間集めがもったりしている。
    大学でポジションに就くことの難しさ、研究でお金を貰うことの難しさ、そこにコネクションが絡んできて、なかなか思うように進まない。

    この話の面白さは、やはり「ウミツバメ」という津波計測器をどう動かしていくのかにある。
    最初は、敵対していた人や組織も、やはり人命を守ることや、過去を未来に繋げるという思いの部分において、同じ方向を向いていく。

    今を生きる日本の人にとって、地震や津波は、避けては通れない災害だ。
    その規模を考えた時、技術だけでは被害をゼロにするのは難しいと思う。
    けれど、そこに人の願い、思いは、きっと不思議に作用する。残念ながら、負の作用をすることもあるのだけど。

    50年後、100年後、人はどのような思いを形にしているのだろう。

  • 東日本大震災の地震予知、津波観察の失敗を受け、実際に科学的根拠を持って書かれた小説。
    一秒でも速く津波情報を被災地に届けようとするシステムは、現在でも実際に進められているようだけど、やはり学会の派閥などの影響もありスムーズには進んでいないようだ。
    その辺も含め書かれているので、大変興味深くかつ面白く読めた。
    海底に張り巡らされたケーブルから津波情報を取得するシステムは、膨大な経費がかかる。
    この本では、ケーブル方式ではなく、海底に沈めた観測機から、会場に浮かべた発振器からの情報で予測するというもの。
    ただ、それには問題も多く、ひとつひとつ解決して行かねばならない。
    ケーブル推進派からは圧力や妨害もある。
    その辺の話が小説として面白かった。

  • 3.11で感じた無力感と、それでも前に進もうとする科学の力とを感じられる。役に立つか、立たないか。それが、いつ役に立つか。とても重要な視点。役に立たないと言って切り捨てることも、将来的役に立つからと遅々としてしまうのも違う。このモヤモヤした気持ちを含めて作品のリアリティが素晴らしい。

  • 3.11の後の地震や津波の研究者たちの物語。
    大地震を予測できなかった敗北から、未来に向かってできることを考えていく。それぞれに熱い思いがあるのに、形にしようと思うと方向性が合わなくて、はみ出しもの扱いになってしまう。同じ分野の研究にも、和を乱すとか足の引っ張り合いとかあるのね。目的や使命感を共有することを諦めないで、何度でも歩み寄って。各々の正義を貫こうとする姿がカッコよくて羨ましかった。
    システムの理解は何となく。完全に理解できなくても楽しめた。
    221019読了、図書館本。

  • 題材が題材なので読むのに思い切りが必要だったけど、読んで良かった。被災した人たちにしか気持ちがいってなかったけど、そうだ色んな人が関わって色んな風に傷を抱えたんだよなと見えるものが広がった。チームとしてのみんなと、そこから先にむかう姿勢に泣けた。

  • 震災後、地震研究者が打ちひしがれているという報道に、今こそ奮起してくれよ!と思ったものだったけど、自分が研究していたことがなんの役にも立たなかった、となったらそれは確かに茫然自失にもなるわな、と思った。
    トンガの地震による火山性地震が起きた後に読んだからものすごくリアリティがあった。
    大槌の市川君は青ノ果テの三井寺先輩と近しいものを感じた。訳あって学問の道を選択できないけれど学ぶことを諦めないという姿勢に心打たれるし、おそらく伊予原さん自身がそう願っているからなんだろうなと思う。
    NHKでドラマかアニメにしてもらいたい作品。

  • 地震津波研究に関する豊富な知識をベースにして、津波予知に挑むはぐれ者研究者たちの奮闘を描いた快作

    さすが伊与原先生の作品。知的好奇心も満たしてくれるし、何といっても痛快なドラマでした

  • 東北大震災以後、地震を研究する人達は予測できなかったことで避難されていた。どうすれば正確な津波の予知ができるのか、どうすれば津波から人を救うことができるのか。様々な人が出会い、それぞれの知識や知恵で地震予知システムの計画を達成していくドラマ。
    あくまでフィクションなのでどこまでが現実かわからないが、地震予測をする人達が避難を浴びたのは事実なのではないだろうか。あと書きにもあるように実際に同じようなものが現在でも研究実験されているようだ。ぜひとも実用化してほしいと素人ながら思う。
    ☆3つなのは、個人的には少々展開が遅く感じた為。
    単行本版を読んだが、表紙イラストがとても良い。

  • 津波屋さんが、東北のあの、津波の事でそんなに批判されてたなんて知らなかった。
    つい最近では、水害の避難情報も頼りにならないとか容易く非難してしまいがちだけど…
    多くの科学者の方達の日々の研究のおかげで、助かった命も沢山あるんだと思う。
    コロナも批判したくなることもあるかもしれないけど、今出来ることをしっかりと考えて行動するようにしようと思った。
    そしてもし願いが叶うなら、もう少し正確なお天気アプリを開発していただきたい 笑
    私のアプリ、曇りや晴れと言ってて雨降ったらクレーム来るけど、雨って言っとけば、仮に晴れてもクレームにはならないと思ってる節が感じられて、降らないのに雨情報があまりにも多いんだけど…という批判 笑

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著者プロフィール

1972年、大阪府生まれ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了。2010年、『お台場アイランドベイビー』で第30回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、デビュー。19年、『月まで三キロ』で第38回新田次郎文学賞を受賞。20年刊の『八月の銀の雪』が第164回直木三十五賞候補、第34回山本周五郎賞候補となり、2021年本屋大賞で6位に入賞する。近著に『オオルリ流星群』がある。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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