注文の多い料理小説集 (文春文庫 ゆ 9-51)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167914813

作品紹介・あらすじ

「料理」をめぐる極上の7つの物語うまいものは、本気で作ってあるものだよ――最高級の鮨&ワイン、鮪の山かけと蕗の薹の味噌汁、カリッカリに焼いたベーコンにロシア風ピクルス……おやつに金平糖はいかがですか?物語の扉をそっと開ければ、今まで味わった事のない世界が広がります。小説の名手たちが「料理」をテーマに紡いだとびきり美味しいアンソロジー。【本書登場の逸品たち】塩むすびと冷たい緑茶ハルピンのイチゴ水全粒粉のカンパーニュに具を挟んだサンドイッチきときとの富山の海の幸・ゲンゲ汁生クリームと栗の甘煮のパンとアイスコーヒー食堂のカレーライスと福神漬星屑のような白い金平糖

感想・レビュー・書評

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  • 鮨、家庭料理、和菓子、料理レポーター、福神漬け、パンなどを取り上げた7編の料理小説集。玉石混交というところかな。独身の伯父と中学生の甥の交流を描いた伊吹有喜の作や、健気な江戸娘が和菓子のアイデアを思いつく坂井希久子の作、最後にあっと驚かされるパン職人の柴田よしきの作が好きだ。ほっこりしているのが好みかな。不倫を描いたものは男の身勝手さが感じられて好きじゃない。伊吹有喜のものなど続きが読みたいぐらい。

  • 料理にまつわるアンソロジー7編。

    表紙を見て、「注文の多い料理店」の表紙だか挿絵だかがそっくりだったと思い出し、絶対読みたい!と思って予約。しかし、件の表紙はネットで検索しても出てこない…ハテいつの記憶なのやら…。

    お馴染みの作家さんもはじめましての作家さんも収録されていたが、それぞれの味を堪能させて頂いた。
    ここのところ、ちょっと心に重い本が続いていたので、小気味良く爽快な話が多く、心が軽くなった。

    初めて読んだ坂井希久子さんの時代小説は、是非シリーズが単行本化したら読みたい。
    どなたかも書いていたが、私もやはり伊吹有喜さんの短編が一番好きかも。ストーリーも食べ物描写も本当にいい!2020.8.6

  • どれも味わい深い、一冊。

    七人の作家さんで紡ぐ、“食”が寄り添う人生の1ページのような物語。

    柚木さんでいきなりスカッと感を味わえ、伊吹さんはスローに築かれていく二人の関係にじんわり涙した。

    坂井さんの色に溢れた和菓子も想像するだけで心キラキラ。

    深緑さんは不思議な時間が新鮮で良かったな。
    きちんと身体を労わることも大切だ。

    トリをかざった柴田さん。
    パンのふわふわ感とハードなどっしり感の対比を噛み締めながら味わっていたら…こんな素材が盛り込まれていたとは…!

    まさに“かくし味”ってやつかしら。

    味わい深い短編集、人生の1ページ、どれも良かった。

  • 最後の柴田よしきさんのお話には、やられました。「料理」をテーマにした七人の作家のアンソロジー。柚木麻子さん以外初めて読む作家さんばかり。どの短編も味わいが違ってて面白い。
    柴田さん、柚木さんは勿論、伊吹有喜さんの「夏も近づく」が好き。複雑な家庭環境にある中学生の葉月と田舎暮らしの彼の叔父、拓実のお話。土鍋で炊いたご飯が食べたくなる。青竹を切ってコップにして飲む沢の水も美味しそう。

  • 柚木麻子、伊吹有喜、井上荒野、坂井希久子、中村航、深緑野分、柴田よしき『注文の多い料理小説集』文春文庫。

    少し前に読んだ、徳間文庫の日本文藝家協会・編『短篇ベストコレクション 現代の小説2020』に収録されていた柚木麻子の『エルゴと不倫鮨』が非常に面白かったので親本である本作も読んでみようと思った。『注文の多い料理小説集』というタイトル通り、小説家たちによる料理をテーマにした短編小説の競作集である。いずれも甲乙付けがたい秀逸な短編が並ぶ。

    柚木麻子『エルゴと不倫鮨』。見事なまでに起承転結がはっきりしていて非常に面白い。下衆不倫でお馴染みのアンジャッシュの渡部あたりが好みそうな会員制イタリアン創作鮨店というおバカな店に集う訳ありカップルたちというのが、さもありなんという感じで笑えてしまう。そういう店には絶対に似つかわしくない乳児をエルゴ紐でくくりつけた体格の良い中年女性が突然入って来るというシチュエーションも面白い。さらに、意外にもその中年女性がかなりの食通・ワイン通で店のコースなど無視してメニューに無い鮨を調理方法を指定して赤ワインのボトルと共に次々と平らげていくという意表を突く展開がストーリーを盛り上げる。そして、中年女性が男どもの下心を見事なまでに粉々に打ち砕くという結末の爽快感。

    伊吹有喜『夏を近づく』。心洗われる素晴らしい作品。田舎の実家で独り慎ましく暮らす弟の沢井拓実は、ある日突然、実の兄から前妻との間に出来た中二になる息子の五月を預けられる。前妻の息子ということで義母や義姉妹からも疎まれ、家では居所を失い、固く心を閉ざしていた五月だったが、拓実との田舎暮らしながら自然の恵みを楽しみながら次第に心を開いていく。少しずつ五月が生き生きとした少年に成長していく描写が見事。夏は田舎に限るよ!

    井上荒野『好好軒の犬』。描かれる料理は魅力的なのだが、様々な意味で重苦しく嫌な空気を感じる作品。火事で焼けてしまった近所のラーメン屋、好好軒。小説家の妻である私は好好軒の犬にまつわる子供たちの噂をヒントに小説を書いてみる……過去に何度も女で失敗し、今も新たな女の影がちらつく小説家の光一郎に季節の物や手塩をかけた料理を振る舞う私……

    坂井希久子『色にいでにけり』。初読みの作家。収録作品の中で唯一の時代小説。職場の火事で失明した元摺師の父親と長屋で慎ましく暮らすお彩は類い稀なる優れた色彩感覚を持っていた。ある時、上菓子屋が新たに作る上納菓子の色について相談されたお彩は……目に浮かぶような上品な色の和菓子。

    中村航『味のわからない男』。元アイドルで売れない芸能人の岩上は恋人の伝で辛うじて食レポの仕事を得ていた。ある時、食レポ8本撮りの仕事で富山に出向いた岩上は下心を出したばかりに……

    深緑野分『福神漬』。苦しい日常の暮らしの中で、食だけが唯一の楽しみというのが良く解る。主人公にはどうか幸せになってもらいたい。両親が経営する喫茶店が借金が膨らみ立ち行かなくなり、店も家も売り払い、大学を休学し、掛け持ちのアルバイトに勤しむ私。ある日、清掃のアルバイト先の病院の食堂で僅かばかりの贅沢に福神漬が山盛りのカレーライスを食べていると、夢かうつつか解らぬ状況に陥る……

    柴田よしき『どっしりふわふわ』。50歳を過ぎて東京から故郷の村に戻って来た主人公の朋子。東京ではパン屋を共同経営していたが、人間関係の縺れで立ち行かなくなった。紆余曲折。最後の短編なのに、どうにもしっくり来ない。

    本体は650円
    ★★★★★

  • 装丁がかわいらしく素敵なのと深緑野分さんと井上荒野さんに惹かれて購入。お二人の風味豊かなお話はもちろんあまり馴染みない方々のもなかなか良かった。

  • 7人の作家さんによる「料理」に関するアンソロジー。
    坂井希久子さんは初めての作家さんですが、「色にいでにけり」は良かったな。時代小説ですが、日頃忘れている色を思い出させてくれます。
    柴田さんの「どっしりふわふわ」はジワっとくる話の最後が良かった。二度美味しい話です。

  • シリーズものを抜き出した作品が多いようで、続きが読みたいと〜。
    どの作品も良作で面白かった。

  • 柴田よしきさんの篇が印象に残った。
    初めで読んだ柚木麻子さん、坂井希久子さんの篇も好みだったので他の物語も読んでみたい。

    料理が出てくる短篇集、美味しく読めるかは結末にも左右される気がする。嫌な終わり方だとモヤモヤして食欲がなくなるからだろうか…


  • 表紙がおしゃれ。紙もふだんの文春のつるっとしたのとは違い、少しざらっとして単行本の表紙みたい。
    7編どれも楽しく読めてよかった。ふだんあまり食事の描写に入り込んで読めない(具体的に思い描こうとしない)ので、物語の一要素としてするっと読み流してしまうんだけど、最初から「料理がキモの話ですよ」となるとさすがに身構えて読む。ミモレットの鮨、沢の水と素麺と掘りたてのタケノコ、噛むほど美味さが広がる個性的なパン――いろいろな食べ物を楽しんだ。
    『夏も近づく』(伊吹有喜)がとても好きな雰囲気。寡黙な二人、でも自然は雄弁でそれが人の背中を押す。

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著者プロフィール

1981年生まれ。大学を卒業したあと、お菓子をつくる会社で働きながら、小説を書きはじめる。2008年に「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞してデビュー。以後、女性同士の友情や関係性をテーマにした作品を書きつづける。2015年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞と、高校生が選ぶ高校生直木賞を受賞。ほかの小説に、「ランチのアッコちゃん」シリーズ(双葉文庫)、『本屋さんのダイアナ』『BUTTER』(どちらも新潮文庫)、『らんたん』(小学館)など。エッセイに『とりあえずお湯わかせ』(NHK出版)など。本書がはじめての児童小説。

「2023年 『マリはすてきじゃない魔女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柚木麻子の作品

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