僕が殺した人と僕を殺した人 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 28
  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167914851

感想・レビュー・書評

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  • 2015年、アメリカを震撼させた連続殺人鬼〈サックマン〉が逮捕された。彼の弁護を担当することになった国際弁護士の〈わたし〉は、30年前、当時13歳で台湾で少年時代を送っていたとき、後に〈サックマン〉となった少年のことを知っていた。
     1984年から1985年、当時中学生だった台湾の三人の少年の物語が回想される。
     彼らの住んでいたのは台湾の廣州街と言う町で、線路によって〈大陸人側〉と〈台湾人側〉に分断されていた。語り手の元少年は、〈大陸人側〉に住んでおり、線路を越えた向こう側へ行くことは大人から禁じられていた。
     兄の死、親の不仲、義父からの虐待など家庭に問題を抱えている三人の少年は、つるんで万引をしたり、ブレイクダンスの練習に明け暮れたり、タバコを吸ったりそんな青春時代を過ごし、絆を固くしていた。
     線路の向こう側へも行った。中一から中二の多感な時代、大人から禁じられている〈線路の向こう側〉へ行くことは、彼らたちにとって、怖いものを見ることであり、大人への橋を渡ることであった。そして同時に自分たちの精神や性の〈向こう側〉を知ることでもあった。
     自分達を取囲む大人のどうしようも無さを知り、また分かりあっていると思っていた自分たち親友同士の理解しあえない部分を知り、彼らは大人になっていく。彼らだけでいるときは楽しかった日々が少しずつ狂い始めていく。
     ある日、三人のうちの一人をどうしようもない家庭環境から救うため、彼らはある計画を立てるが、その時から彼らの時間は止まってしまう。
     この小説は、初めから連続殺人鬼〈サックマン〉が語り手の元少年と30年前、台湾で共に過ごした元少年だといっているので、「犯人は誰?」という謎はなく、「サックマンがどうしてサックマンになったか?」という疑問を持って読み進めるわけであるが、それでも犯人を明かされた時には、背筋を冷たいものが走った。
     〈サックマン〉がアメリカで逮捕された、2015年には三人の元少年たちは、台湾、アメリカで生活していたが1984年に台湾で過ごした時の記憶が再び三人を結びつける。
     大人になり、「あの時彼らにとって本当は一番大事だったもの」を知った元少年。大人になれないまま時間が止まった元少年。サックマンの行為は人々を震撼させるが、元少年たちだけが共有てきる青春の思い出には心温まるものがある。

  • 第34回織田作之助賞
    第3回渡辺淳一賞
    第69回読売文学賞
    三冠達成と、小川洋子さんの「いたましいほどに美しい少年小説の誕生を喜びたい」という帯に魅かれて読みました。

    「1984年の夏休み前後の三カ月がぼくとジェイを結びつけた。アメリカへ渡った両親においてけぼりを食ったぼくは、ジェイのおじいさんのかわりに布袋劇をやり、バスケットシューズを万引きし、ブレイクダンスの練習に夢中になり、ジェイにキスをされ、そのせいで殴り合い、また仲直りをした」

    そして30年後の2015年冬、アメリカを震撼させた連続殺人鬼<サックマン>が逮捕されます。
    彼の弁護を担当することになった国際弁護士の、2015年の「わたし」と1984年の「ぼく」の視点で、物語は交互に語られます。
    「わたし」は30年前に台湾で過ごした少年時代を思い出し、なんとか子供時代の親友を助けようとしますが…。

    この、なんともやんちゃ過ぎるとしかいえない4人の少年たち、ユン、アガン、ジェイ、ダーダーの物語(ミステリー)で最後に泣かされるとは、まさか思いもしない展開でした。

  • 一万円選書サービスで選んでもらった本の中の一冊。
    自分では決して選ばないであろう本。
    正直言って好みのジャンルではない。
    にも関わらず面白かったのだから、作者の力量の素晴らしさに感嘆します。

    本の世界から流れてくるアジア特有の湿気含みの暑さに息が詰まるようで、決して楽しくて気分の良い読書体験ではないです。
    にも関わらず
    やはり、面白かったです。

  • 何か途中で、予想した人物が違ってた。
    名前が、少し分かりにくいのか、勘違い作者のミスリードが効いてるのか、最有力は、物覚えが悪いか…で、登場人物のページと読んでるページ行ったり来たり…^^;
    連続殺人鬼とそれを弁護する弁護士、共に過ごした少年時代を絡めながら、進む。3人の少年時代と現在を交互に語りながら…
    原因は少年時代にあるんやな。確かに、家庭環境は厳しそうな…結構悪さしながらも青春って感じ。
    でも、何か決める時に神頼みみたいなんやめよ!自分らで考えて!関羽さん困ってるよ!
    それもこんな殺人鬼になる原因は関羽さんになるんか?(まぁ、違うけど(^^;;)
    最後は、何か切ないような感じやけど。
    でも犯人あんまり後悔してなさそうで…

  • ユン・アガン・ジェイの3人(+ダーダー)の中学時代の話がメインで、所々に現在の話が出てきながら話が進んでいく。

    読み始めは、中国語の漢字の名前の読みが不明やしちょっと読みにくく、なかなか進まず挫折しかけた。
    中盤くらいから面白くなり一気読み。

    サックマンが誰かは予想の通り。
    3人の青春時代、その時に起ったたくさんの出来事。3人の特別な絆を感じた。

    失ったものや後悔や、取り返しのつかない事もたくさんあり、3人の関係に憧れは抱かないが、でもなんとなくその絆が羨ましく思う部分もある。

  • 以下ネタバレ感想文。

    ジェイが書き記した少年時代のユンとジェイとアガンのお話。
    誰だって連続殺人鬼に初めから感情移入したり、共感するのは難しい。この本は「構成」を巧みに使い人間が無意識のうちに作る線引きを作らせず、読者を「サックマン」という一人の人間に向き合わせようとする話だった。

    ブラックライダーより読みやすく、ユーモアある文章で『しばらく待っても地球は滅びなかったので、表に出た。』など、不貞腐れた少年の心情描写が愉快で所々くすっと笑える。
    親を選べず愛されなかった力のない子供達が世界を呪うには十分でどうしようもないことばかりだったが、悪いことばかりじゃなかったと当人達が悲観的でないのがいい。
    誰もが罪を犯し間違えながら生きていて、すべての人間が自分の行動に責任を取り、現実と向き合いながら生きているわけじゃない。ユン一人が悪かったわけじゃないと彼を傍で見ていた親友二人が思っていることが救いだ。

    個人的にはユンはジェイやアガンが思っているようなヒーローではなく、人並みに心の弱い寂しい少年だったのではないかと思っている。
    彼が本当にサックマンになったのは記憶喪失になった後ではなく、親友アガンを殺そうとしたときではないか。(ダーダーが乱入していなければ一番初めの被害者はアガンだった)
    彼の殺人衝動を全て別人格のせいにしてしまうのは少し違和感がある。ジェイ視点の本だから彼の優しさや甘さ、願望があったのか。

    内容は悲劇的な話だが、この作品で最後に残るものは温かくて優しい、懐かしいような情景だ。
    『人生在世是瞬然(人がこの世にいるのは一瞬のこと)』は作者からサックマンへの励ましの言葉だったのかもしれない。

  • 東山彰良さんの作品には大好きなものがいくつもありますが、これは特別好きな一冊でした。

    1984年、台湾。ここを舞台とした少年たちの日々の鮮やかさがまずは際立ちます。
    ページそのものがきらきら輝いちゃうレベルで眩しくて読めないゼ……みたいな名場面が序盤にあるのは、とても良いなとつくづく思いました。私にとってとりわけのそれは、炎天下での『冷星風雲』でした。
    そのまま、眩しがりながら楽しく読み進めていきました。

    しかし言われるように、光が濃ければ影も濃い。
    彼らがこっそり抱いている各々の傷は、過酷な現実に晒されて少しずつ容赦なく、綻びを大きくしていきます。抗うかのように強くなる光、応えて深みを増していく影。彼らの決意と、その結末。

    それから時間が経ち、2015年アメリカで、連続殺人鬼サックマンが捕まります。
    凶悪犯と弁護士(またその依頼人)として、彼らは再会する。
    弁護士は、犯人がなぜ少年たちを次々と殺害したのか知ろうとした。しかし辿り着いた地は答えとしてのゴールではなく、スタート地点でした。
    いっしょに螺旋階段を降りていく――という件はとてつもない重さで胸に迫ります。

    終盤、この物語が何に由来しているか知らされた時、帯びる色合いがふと変化しました。
    劇的にガラリと様変わりしたわけではなく、光源がちょっとずれたか種類が変わったかのような気がしました。
    夏の太陽とそれの如く身を焦がすやり切れなさを、月に似た柔らかな光が祈りや慈愛になって、覆っていくようでした。

  • 80年代の台湾を舞台に描かれる少年達の美しい夏。一つひとつのエピソードを丁寧に、しかし短く繋いでいくのでとても読みやすいです。
    だからこそ騙されるんだけどね。もう、タイトルを読んだ時から。。。

  • 台湾の少年時代が、アメリカでの事件に繋がる。少年たちの息遣いや、ガジュマルの陰影、温度や湿度、香りや匂いを感じる文章。アメリカへ舞台を移してからの展開に、少しついていけなくなったが、読み手により解釈は分かれるだろうか。著者の作品は初めてなので、他の作品も読みたい。

  • カズオイシグロの日の名残りのような、余韻が残る読後感がある

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著者プロフィール

68年台湾生まれ。09年『路傍』で大藪春彦賞、15年『流』で直木賞、16年『罪の終わり』で中央公論文藝賞、17年『僕が殺した人と僕を殺した人』で織田作之助賞、読売文学賞、渡邊淳一文学賞を受賞。

「2021年 『緊急事態下の物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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