風に恋う (文春文庫 ぬ 2-3)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167915094

作品紹介・あらすじ

かつては全国大会金賞、マスコミにも頻繁に取り上げられた、名門高校吹奏楽部。幼馴染の基(もとき)と玲於奈(れおな)は入部したものの、現在の部にかつての栄光は見る影もない。そこへ、黄金時代の部長だったレジェンド・瑛太郎がコーチとして戻ってきて、あろうことか3年生たちを差し置いて、1年の基を部長に指名する。選抜オーディション、受験との両立。嫉妬とプライド渦巻く部で孤立する新入生男子の部長は果たして、全国大会開催地・名古屋国際へ行くことができるのかー―かつての輝きを懐かしむすべての大人たち、部活動に青春をささげるすべての中高生の胸に、リアルな言葉が突き刺さる王道青春エンタメ小説!人気作を連発する額賀澪が、松本清張賞受賞作『屋上のウインドノーツ』から10作目に原点である吹奏楽を舞台に挑んだ渾身の大感動エンタメ!

感想・レビュー・書評

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  • 『音だけでわかる。みんなが笑いながらそれぞれの楽器を演奏しているのが。音にそれが滲んでいる。音に一人ひとりの顔が見える』。

    あなたは、何か楽器を演奏したことはあるでしょうか?小さい頃からピアノを習っていた方、バンドを組んでいた方、一方で小・中学校時代にリコーダーを吹いただけ…と人によって楽器に触れた経験はマチマチだと思います。そんな私は中学時代に吹奏楽部に所属していた過去を持ちます。”運動部”ではなく、”文化部”である吹奏楽部。当時、私の通った中学校では、圧倒的に”運動部”がメジャーだったこともあって、友達からも親からも、どうして吹奏楽部なんだとかなり詰られました。今となってはなんでそんなことで詰られる謂れがあるのかと反発の思いだけしか残っていません。

    そんな反発の想いが残る私は吹奏楽の場で素晴らしい体験をしたという想いが未だ強く残っています。授業を終えて音楽室に集まってくる面々、ロングトーンで音を重ねていく、それぞれの楽器の音が積み重なっていく、みんなで一つの音の世界を作り上げていく、そのことがこんなにも幸せなことなんだ、と当時の私は吹奏楽の場が何よりも好きでした。

    そんな吹奏楽の場を舞台にした小説も幾つか刊行されています。私が今までに読んだ作品では、額賀澪さん「屋上のウインドノーツ」があります。額賀さんのデビュー作でもあるこの作品は、かつてご自身も吹奏楽の道に囚われていらした額賀さんの思いが、デビュー作という特別な場でいかんなく発揮された傑作でした。そんな額賀さんが再度”吹奏楽もの”にチャレンジされた作品がここにあります。そんな作品を『青春は自分から遠いものだと思っている、大人の人達にこそ』読んで欲しいとおっしゃる額賀さん。『子供から大人になる過程で、忘れてしまった尊いものは全部、青春小説の中にある』とおっしゃる額賀さんは、『それを読んで、見つめ直すことで、取り戻せるものがいっぱいある』と私たちに問いかけられます。そんな額賀さんの熱い想いがこもったこの作品。それは、「風に恋う」という”王道のコンクールもの”として描かれた、吹奏楽に青春をかける高校生たちの物語です。

    『なあ、茶園、本当に吹奏楽やめちゃうの』と隣で訊く杉野に『そうだね』、『やめるよ』と答えるのは主人公の茶園基(ちゃえん もとき)。『およそ半年前の西関東吹奏楽コンクール』で『目標だった全日本吹奏楽コンクールに進めなかった』基のいる大迫第一中学吹奏楽部。『燃え尽きたっていうか、やりきったって感じがする』と答える基。そんな基は、三月の卒業前恒例の『定期演奏会』の場にいました。『ソロパートが回ってきて』、愛するアルトサックスとの『最後のステージ』に思いを込める基。終了後、ホールを出た基は演奏を聴きに来てくれていた幼馴染みの鳴神玲於奈(なるみ れおな)と帰途につきます。『ソロ、よかったじゃん』、『高校でも続けたらいいのに』と言う玲於奈は『千間学院高校 ー 通称・千学の吹奏楽部』で部長をしています。『大学受験もあるし…』と誤魔化す基。しかし、そんな『千学の吹奏楽部が全日本に出場したのは、もう何年も前』のことでした。『あの頃と今では千学は別物』という今の千学吹奏楽部。そして、舞台は変わり、『今日から三年間を過ごす』千学の門をくぐった基は、チャペルの建物を見て『昔、ここで吹奏楽部の演奏を聴いた』ことを思い出します。『全日本吹奏楽コンクールで金賞を受賞』した時代の千学吹奏楽部の演奏を聴いて『雲の上の存在』と感じた基は、それがきっかけで吹奏楽を始めました。そんなチャペルの中に人影を見る基は、『あの人がここにいるわけがない。あの人が千学にいたのは、何年も前だ』とその姿を過去に見た人物に重ねます。そして、教室へと入った基は、『春辺第二中学校吹奏楽部』でトランペットを吹いていた堂林慶太と出会います。旧知の堂林と話をする中で、やはり『まさか吹奏楽部入らないの?』と驚かれる基。そんな堂林はスマホである動画を基に見せました。そこには、『夢やぶれて』を一人奏でる基の姿がありました。『玲於奈っ!』と勝手に動画を投稿したであろう犯人の元へ抗議に赴いた基に、玲於奈は『消してほしかったら、放課後に音楽室においで』と条件をつけます。『行ったら最後、入部届に名前を書かされる』と思うも堂林と音楽室へ赴いた基。『わー!一年生来た!』と黄色い声が響く音楽室。そんな所に『チャペル』で見た人物が現れました。『今日から吹奏楽部のコーチをする、不破瑛太郎だ』と名乗るその男。『君達を全日本吹奏楽コンクールに出場させるために、千学に戻ってきた』と語る瑛太郎は『入部希望?』と基に訊きます。そんな問いに、『全身を震わせるようにして』『はい』と答えた基。そんな基が、『全日本吹奏楽コンクール出場』へ向けて吹奏楽に青春の全てをかけていく日々が描かれていきます。

    「風に恋う」と、どこかロマンティックな書名が付けられたこの作品。額賀さんの作家デビュー三年目にして10作目となるメモリアルな一冊という位置付けです。額賀さんと言えば、そのデビュー作の「屋上のウインドノーツ」は『茨城県行方第一高等学校吹奏楽部』で新しく部長に就任した日向寺大志が『東日本学校吹奏楽大会』への出場を目指して部を率いていく姿が描かれていました。そこでは、『ドラムセットを編成に取り入れたらどうだろう』と、一人の少女との出会いが物語を大きく動かしていく一つの青春ドラマの姿がありました。そんな額賀さんは10作目の小説執筆にあたり、編集者から『恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」を渡されて”次は王道のコンクールものにしませんか?”と言われた』と語ります。私もかつて吹奏楽部に所属した過去を持ちますが、コンクールとは無縁のゆるい活動(笑)でしたので知識は持ち合わせていませんが、吹奏楽の世界に”運動部”同様のコンクールの世界があることは知っています。この作品で舞台となる『千間学院高校 ー 通称・千学』は埼玉県にある私立高等学校という位置付けです。埼玉県に強豪が揃っているというのは吹奏楽の世界では有名な話のようで、この作品では、デビュー作が額賀さんの出身地である茨城県の中学校だったのが、強豪揃いの埼玉県に変更されたのはよりリアルさを追求してのことだと思います。そんな千学が『吹奏楽部にとっての甲子園』とされる『全日本吹奏楽コンクール』への出場を目指して活動していくというのが物語の大筋です。しかし、ゴールまでの道には『地区大会を皮切りに、県大会、西関東大会を突破する必要がある』というように、三つの大会での勝利を積み重ねていく必要があります。この感覚は”運動部”であれば当たり前の世界だと思いますが、いわゆる”文化部”では珍しいものだとも言えます。私も吹奏楽部時代には、腹筋を鍛えるために筋トレに精を出しましたが、そんなところも含めて吹奏楽部は”運動部”に感覚としても近い部分があるように改めて思いました。

    そんなこの作品、デビュー後三年で吹奏楽部を題材にした二つ目の作品を書かれるというのも額賀さんの強い思い入れを感じざるを得ません。そこには、『私は中学の三年間、かなり一生懸命に吹奏楽と合唱をやっていて、その時のことが未だに自分の中にこびりついている』という額賀さんの思いの強さあってのことです。そんな作品ではご自身のご経験も踏まえられてだと思いますが、演奏シーンが額賀さんの筆の力によって見事に描写されていく様に魅了されます。県大会の場面から少しご紹介しましょう。『今日で終わりにしたくないね』と順番が回ってきてステージへと出て行く面々。照明の光が照らす中、指揮をする瑛太郎。そんな彼の『指揮棒の先が揺れるたびに、ステージの上で音が弾ける』と進む演奏。『グロッケンとヴィブラフォンの透き通った音にチャイムが重なる』、それは『青空の下で教会の鐘が朝を知らせるようで』、『トライアングルの音色はそこを鳥が飛んでいくみたいだった』という詩的な表現。一方で『体の中の、深い深い場所に、チューバやトロンボーンが響いてくる』という中、『大きく息を吸って、サックスへと注いだ』という基。『シンバルの音に合わせ、さまざまな楽器の音が舞い上がる。風に巻き上げられるようにして、遠くへ飛んでいく』、『オーボエのソロが来る。無音の空間に響いたオーボエの旋律は、まるで祈りのようだった』と続く演奏。そんなオーボエの音色に受験勉強との両立に苦しむ玲於奈。『私、もうちょっとコンクール出たいし、吹奏楽やりたい』という彼女の願いを強く感じる主人公の基というこの場面。読者もコンクールの客席へと気持ちが飛翔するようなとても美しく描かれる演奏の場面は、吹奏楽の世界を知る人間には鳥肌ものです。この額賀さんのたゆたう表現の世界がこの作品の一番の魅力だと感じました。そこには、”個人戦”として描かれる恩田さんの「蜜蜂と遠雷」と対照的な”団体戦”ならではの魅力、そして複数の楽器に光があたる吹奏楽ならではの魅力があると思いました。

    “運動部”を舞台にした小説は数多あります。そんな作品の多くはその部の人間模様、特に部を引っ張っていく立場である部長となった人物、もしくはエースに光が当たり、勝利に向けての葛藤、青春まっしぐらに生きるそんな彼らの息づかいが描かれるもの、これこそが王道なのだと思います。その視点をまさしくそのまま”文化部”である吹奏楽部に持ってきたのがこの作品です。過去の栄光に比べ、『今じゃ、埼玉県大会も通過できない』という現状に沈む千学。そんな『弱体化した千学吹奏楽部に、黄金世代の部長が帰ってきた』と指導者となって帰ってきた不破瑛太郎の存在。そんな瑛太郎は『まずは一度、この部をぶっ壊すところから始めようと決めた』と、大胆にも『手始めに、部長を一年の茶園基に替える』というまさかの行動に出ます。これには、おいおい!と突っ込みを入れたくもなりますが、そんな無茶な展開を辿る物語は、それに表向き納得しても心の中で不満を抱える先輩たちの心の動き、大胆な対応をとった瑛太郎自身の心の動き、そして大役を任された基の葛藤などが丁寧に描かれていきます。自分を部に導く起点となった幼馴染みでもあり、部長職を奪い取ることになった玲於奈との関係の描写も見事です。『部長を一年』にするという大胆な設定の先にこれだけ描くことのできるドラマがある。ご自身二回目の”吹奏楽もの”にかける額賀さんの想いの強さをひしひしと感じました。

    そして、最後にもう一つ。それは、いわゆる”熱血スポ根もの”のマイナス面を指弾する『ブラック部活』という視点です。『部活動は価値のあるものだと思うよ。仲間との絆を深め、教室では学べないことを学ぶ』。その一方で『夏休みなのに一日の休日もなく朝から晩まで練習したり』、『生徒に暴言を浴びせる指導者』、そして『大人になって吹奏楽を続ける部員なんて一握りなのに、勉学より部活を優先させるのは異常』という考え方の先にあるものです。『ブラック部活の問題で語られていることって、日本社会の問題そのものだと思うんです』とおっしゃる額賀さん。『”一分一秒でも長く捧げた者が正しいし、美しい”という考え方だけが良しとされてきたけれど、それは間違っている』とはっきりおっしゃる額賀さん。そんな額賀さんは『そういう人達がコンクールで勝つ、というお話には絶対すまい、と決めていました』と執筆に向けて誓った自らの想いを吐露されます。そう、そんな額賀さんが描かれた”吹奏楽もの”の第二作であるこの作品は、決して従来の”スポ根もの”の感覚を賛美する結末を見ない作品。この点にメスを入れられているのがわかるその展開は、従来の”スポ根もの”に額賀さんなりの問いかけをするものでもあったのだと思いました。しかし、それでいて結末に至る感動の物語は、確かにそこにあります。そう、『ブラック部活』の先にある感動は、そんなものを取り去っても変わらずそこにあることを教えてくれるこの作品の結末。この作品で投げかけられた額賀さんの視点は、今後の”スポ根もの”のあり方に一石を投じるものなのかもしれない、そんな風にも思いました。

    『ぶつかり合うから、音楽は輝くんだ。仲良しこよしじゃなくて、戦って、たくさんの敗者が出て、そうやって、磨かれていくんだ』。そんなコンクールの場へと青春をかける高校生たちのひたむきな想いが詰め込まれたこの作品。そこには、『そうだ、こういうのが楽しくて、嬉しいから、吹奏楽は楽しいんだ』と、演奏によって一つの理想の世界を作り上げていく生徒たちの瑞々しい姿が描かれていました。“王道のコンクールもの”として、額賀さんが『入れられるものは全て入れよう』とその思いの丈を注いで描かれたこの作品。青春ってやっぱりいいよね、デビュー作の読後同様にそんな想いいっぱいに満たされた、そんな作品でした。

  •  熱いです! 吹奏楽が熱い! 夢と希望に満ち溢れ、活力みなぎる若い時代‥そう、アオハルです! 大切な仲間と苦楽の時間を共有し、その初々しさが濃密に描かていて‥。そうです、青春は〝密〟なんです!(何処かで聞いたな)

     受験、オーディション、家族‥、生徒も指導者も苦悩し葛藤しながら、進むべき道を自らに問い続ける物語です。こんなに大変でも、一途に困難に立ち向かう姿に感銘を受けます。一人一人の登場人物が生身の人として描かれ、それらの感情と奏でる音楽が絡み合い、共鳴・調和し、その響きが読み手に大きく伝わる描写です。まるで演奏後の拍手喝采のように、胸が打たれる読後感です。ブラボー! ぜひとも多くの中高生に読んでほしい一冊です!

     本書のレビューから逸れますが、ここ3年ほどはコロナ禍もあり、中高生の部活動に携わる皆さん、指導者、保護者の方々には、新たな乗り越えるべき多くの壁に直面したことと思います。
     少なくとも、部活動に青春を賭けた中高生には、大会のある・なし、結果だけで、3年間の部活動の価値を決めないでほしいと、心から願います。頑張ったことそのものが、必ず活かせる場面がきっとくるはずですから。(あー、なんか偉そう‥。何様?)

     吹奏楽コンクールの課題曲は、マーチが多いそうですね。よく考えたらマーチは行進曲だから、前を向くための曲なんですよね。いやー、若いっていいなぁ‥。
     全国の中高生諸君、頑張れー!

  • 公私ともバタバタになってきたので簡単に。

    吹奏楽部で全国大会を目指す高校生のお話。
    話としては悪くなくサクサクと読み進めることが出来た。
    あまり大きな山場もなく、ちょっとしたトラブルはあっても全体としては順調に話が運び、あまりドキドキ感はなし。
    W主人公の生徒と先生がそれぞれ独りで力みかえっているようで、全編通して周りがよく彼らについていけるなあという感じが拭えなかった。

  • ❇︎
    高校の吹奏楽部が開催した演奏会を聴いて
    吹奏楽を始めた少年と幼馴染の少女が 
    憧れの高校に入り、全日本コンクールを
    目指す部活物語。

    部活内の上下関係や出演者を決める競争、
    進学のための勉強と部活動のバランス、
    いろんな葛藤をしながら目標に向かって
    努力する高校生たちの物語。

    全国大会出場を目指した経験がないので、
    強い憧れや熱量に共感はできないけれど、
    学生という限られた時間の中で目標を持って
    過ごした時間という部分では想像ができて
    懐かしさを感じました。

    作中で記者が発した『眩しい』という一言の
    方が今の自分としては共感です。

    将来への悩みや夢と希望、精神的な葛藤など、
    ジレンマより、真っ直ぐ走れる高校生という
    時間の瑞々しさ感じた物語でした。





  • 熱い!眩しい!
    高校生の青春吹奏楽物語!
    部活、オーディション、受験、塾、、
    生徒も親も指導者もそれぞれに葛藤がある。
    やりたいこととやるべきことの間で揺れ動く高校生の心が手に取るように分かった。
    でも、大人になった今だから言えるのは、好きなことにあそこまで時間をかけれるのはあの時代だけ。
    えー。また練習かーーってその当時は思っても、
    それはほんとうにほんとうに尊い時間だったんだって、大人になってから分かる。
    でも、ブラック部活問題もある。生徒の好きなものがやりすぎて嫌いにならないように、好きなものをずっと好きでいられるように指導者には導いてほしい。

    学生時代に読みたかったって想いと、大人になった今出会えて良かったって想い。どちらもある 
    本当に演奏会を聞いたような音が聞こえてくるような読後感。

    好きなものを真剣に抱きしめた時間が、人を大きくする。

  • 吹奏楽が舞台の青春小説。個人的には「タスキメシ」に続いて本作も最高の“青春小説”でした。

    吹奏楽を始めるきっかけになった憧れの人に出会ってしまった基。
    嬉しい、悔しい、悲しい、苛立ち、戸惑い、焦燥、不安…。目指すものに辿り着くまで色んな感情を揺らし、悩みながらも切磋琢磨する吹奏楽部の部員たち。
    額賀さんの作品は、心を動かされる言葉やシーンが作品に散りばめられていて胸が熱くなります。

    主人公の基が眩しすぎる!!
    「素直な熱の固まり」という表現に納得。基が瑛太郞先生にかけたある言葉に私もグッときてしまいました。高校生のピュアで真っ直ぐな言葉が深く刺さる。先生と一緒に私まで胸を打たれてしまいました。

    瑛太郎先生もすごく素敵。
    こんな風に生徒にまっすぐに向き合って、気持ちに寄り添って心を揺らしてくれる先生がいたら、慕わずにいられないと思う。
    大人という遠い存在じゃなく、自分たちと同じ目線でいてくれると感じられるのも嬉しい。

    作品を読んで、改めて出会いって財産だなぁ。一つのことにここまで打ち込める青春って素敵だなぁって思いました。
    大好きな作品がまた増えました♪


    『一つのことに夢中になると、それ以外のことを考えるのが、よそ見をしているように感じるんだ。逃げているように感じるんだ。それでもみんな、やりたいこととやるべきことに折り合いをつけて、頑張ってるんだよ。君のお姉さんも、お父さんもお母さんも』

    『好きなものを好きでいるには、覚悟がいる。我慢や努力がいる。だから彼等の「好き」を守りたい。好きなものを嫌いにさせない。好きでいることで、彼等を傷つけさせない。好きなものを真剣に抱きしめた時間が、人を大きくする。そう、信じたいから』

  • 感動させられる吹奏楽の物語です!
    とくに、非常勤講師の不破瑛太郎と吹奏楽部の生徒一人ひとりが熱い思いをもって全日本コンクールを目指す姿が感動ものです。
    部員たちの葛藤、不破瑛太郎の過去のトラウマが読みどころでした。
    吹奏楽部の一員だった方は絶対に共感できる節があります!(とくにアルトサックスの方)
    部員ではなかった方もこの青春は共感できます!

  • 元吹奏楽部員ということもあり、すごく楽しめた。
    席を変えて、暗闇で、そんな合奏やってみたいな。そこまで打ち込めてはいなかったけど。

    単純に熱血部活もの!ではなく、拘束時間、将来、オーディション、大会……。取り巻く環境や問題についても触れているところがよかったです。

    基と瑛太郎の二人の主人公、どちらの葛藤もいい。特に、瑛太郎がいい。大切だったあの時間を悔やんでしまうことがないなんて言えない。だからこそ、そうなってほしくない。最後に決めるのは自分だけど、無責任なことを言わず一つ一つ選びながら声を掛けるのがいい。

    1年生を部長に大抜擢、その奮闘ぶりがもっと見たかったな。

  • 中高生のころに出会っても幸せだったかもしれませんが、大人になった今、この物語とであえてよかったです。

  • 凄くよかった!
    瑛太郎先生が高校生を眩しいと言ったけれど、本から眩しさが溢れていた。
    そして、真っ直ぐな高校生たちに、真っ直ぐに突き動かされる瑛太郎先生も眩しく感じた。
    たくさん涙のシーンもあったけど、終始気持ちよく読めて、スッキリ読み終えることができた。

    親や先生からの気持ちにどう応えていくか、悩みを抱える高校生たちに、自分のために演奏しよう、楽しもうという瑛太郎先生はとても素敵だと思った。
    瑛太郎先生にはいい先生になってほしいと思った。

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著者プロフィール

1990年、茨城県生まれ。日本大学芸術学部卒業。2015年、「ウインドノーツ」(刊行時に『屋上のウインドノーツ』と改題)で第22回松本清張賞、同年、『ヒトリコ』で第16回小学館文庫小説賞を受賞する。著書に、『ラベンダーとソプラノ』『モノクロの夏に帰る』『弊社は買収されました!』『世界の美しさを思い知れ』『風は山から吹いている』『沖晴くんの涙を殺して』、「タスキメシ」シリーズなど。

「2023年 『転職の魔王様』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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