祈り (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.11
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本棚登録 : 1054
感想 : 90
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  • Amazon.co.jp ・本 (494ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167915100

作品紹介・あらすじ

東京になかなか馴染めない25歳のサラリーマン・楓太は、ある日公園で信じられない光景を目にする。炊き出しのうどんを食べる中年男・春輝が箸を滑らせたその瞬間――。“田舎者”の劣等感を抱える若者と、“望まない力”を持つがゆえ暗い過去を背負って生きてきた中年男の人生が交錯するとき、心震える奇跡が起きる。解説・杉江松恋ベストセラー『代償』『悪寒』の著者渾身作。どうして、自分が大切に思うものは消えて行くのか。お願いです、どうか――。冴えないサラリーマン・楓太。不思議な力を持つ中年男・春輝。ボランティア活動をする謎の美女・千穂。春輝と行動を共にする強面の男・鶴巻。都会の孤独が少しずつ絡み合い、引き返せない終着点へと向かっていく。その時――。

感想・レビュー・書評

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  • アパレルメーカーの営業として勤める楓太と、変わった能力を持つ春輝。それぞれ不器用な2人の生き様が徐々に交差していく、ファンタジーでハートウォーミングなヒューマンドラマ。

    久しぶりの伊岡瞬。
    改めて伊岡瞬の人間描写の巧みさを堪能。
    いつもながら脳内で各登場人物の姿見が自然と形成され、登場人物それぞれの性格や心理描写や風景描写もリアルに伝わってくる。安心して、信頼して作品に没頭出来る。これぞ伊岡瞬品質だ。

    紹介文にあった『人生が交錯するとき、心震える奇跡が起きる』との一節。ふむ。これはミステリではないんだと弁え読みに耽った。

    東京に馴染めないだらしなく他人任せな楓太と、不器用で優しい春輝の2人称視点で進んでいくのだが、終始危なっかしい。第三者による人間の欲深さ、身勝手な悪意に二人がどんどんと巻き込まれていくさまが何とももどかしいのだ。

    【特別】を持った人間は称賛される一方で、非難をかうこともある。人はあらゆる感情を働かせて誤解したり、期待したり、自己都合で解釈し折り合いをつけて生きている。そして時に善意を、時に悪意を持った人との出会いにより人生の天気模様は変わっていく。

    バイプレイヤーである元裏社会の経営者である義理堅い鶴巻と、金融営業の傍ら福祉活動をしている謎深い千穂が物語の舵を取り進行していくのだが、主役よりもキャラを立たせているあたりが秀逸。伊岡瞬の魅力がまたここでも伺えた。

    春輝が最後に切に願った祈りは叶ったのか否か、読者の解釈に委ねられる終い方は私的に好みであったが人によって評価が分かれる作品であろう。


    そして改めて痛感したこと。
    私はやはり伊岡瞬のミステリが好きだ。

  • 以前書店で、「ハマるぞ!伊岡瞬」というPOPを見てから伊岡さんの本を何冊か読んでみているが、なかなかハマらない。
    女性より男性に好まれる作品が多いのかなー。

    この本は交互に出てくる二人の登場人物がどんな風に関わってくるのか、楽しみながら読んだ。
    ラストは不思議な終わり方。
    夢か現実か??どちらにしてもゾワッとした。
    明らかに裏がありそうな女性に夢中になるなんて、ほんと馬鹿だなー。

    まだ伊岡さんの積読本がある。 POPや帯に惑わされすぎてる感があるが、次こそはハマるかもしれないのでまた読んでみよう。

  • オリンピック前の話なんで、まさか延期とかは考えんわな(^◇^;)
    オリンピック景気はね…

    自分に特殊な能力がある。
    そんなに大層なものではないかもしれんけど。
    こういう主人公だから、その力を有効というか、お金の道具にせずに、めっちゃしないから…
    何かその生き方に好感持てるけど、何かやり切れんもんがあるなぁ〜
    能力を隠すけど、昔の記事でバレてツライ目に…で、逃げる。
    新しい生活始まって、ええ感じ!で、バレる。の繰り返し。
    ある出来事で人を助けて、ええ感じになって来たのに…
    「ひとりでいるのが好きなのに、困っている他人が気になってしょうがない。そうして気を揉んでは、己の至らないところを見つけて自分を責める」
    何かやるせない終わり方やな…

    最後の千穂さんの元気にご立腹( *`ω´)

  • このジャンルは何になるんでしょうか?
    伊岡さんの中でも、極めて特殊なジャンルに思えました。
    個人的にはめちゃくちゃ引き込まれて最後まで気になり1日で読んでしまい、、
    ラストは、謎!!人によって解釈想像なのか??

    主人公は2人。
    主要なる関係人物も多くなく、それぞれのキャラの描写も逸材、さすが伊岡さん!

    鶴巻さん、かっこよすぎて出てくるたびにほっとする!尚彦がとにかくとにかく嫌!!
    田崎さん地味に1番良い人だなあ。

    好き嫌い分かれる作品かと思います、、
    YouTubeで検索、その方もラストの想像を話されておりました。
    これは、伊岡さんに意図を直接聞きたい!!

  • 「祈り」 伊岡 瞬氏

    1.購読動機
    伊岡瞬氏は、初めましてです。
    書店巡りをして、たまたま手にとりました。
    その理由は、ずばりタイトル「祈り」。
    もしも、この本を読むことで、祈ることの虚しさとその対極にある希望への愛しさを感じられたら、、、と考えたからです。

    2.ブクログ「祈り」レビュー
    ブクログのみなさんのレビューから目についた内容は、以下のとおりです。
    ①主人公の性格、行動が規律がなく、少し腹立つこともある。
    ②主人公とその取り巻く人間に、妙味があり、また、人間味も感じられる。
    ③伊岡瞬さんファンで、ほかの書籍も堪能していること。

    3.わたしの「祈り」のレビュー
    わたしは、初めましてなので③に該当しないです。
    また、そもそも購読動機が祈りでしたので、①、②のように感情移入もしなかったです。

    では、祈りへの想いをもって読了した私は、なにを感じたのか?
    読書ノートに箇条書きにしてみました。
    1.他者との交わりは面倒、億劫である。
     だから、結果として、一人の時間、空間を大切に   
     したい時もある。
    2.しかし他者、社会との断絶はできない。
     もっといえば、先方の都合で、こちらの世界に
     勝手に介入してくる。
    3.それを拒否する勇気がない場合、後に残るは焼け   
     野原のような乾いた心である。

    そして、最後に祈る。
    世界がもう少しだけ、穏やかでありますように。
    人に関心を払うのは、資本の目的、論理ではなく、ましてや偽善でもなく、見返りを求めない心でありますように。。。と。

    祈りという行為に、疑問を含めた関心があるならば、手にとってみる物語です。

    #祈り
    #伊岡瞬 さん







  • 伊岡瞬『祈り』文春文庫。

    冴えないサラリーマンの宮本楓太と不思議な力を持つが故に暗い過去を背負う大里春輝との偶然の出会いと奇跡を描いた物語。

    様々な問題を抱えた人の人生が交錯し、この先どうなるのかと思ったが、予想の範囲の尻切れトンボのような中途半端な結末だった。この先は想像しろということなのか。

    サラリーマンの宮本楓太が仕事に悩み、日々の暮らしにも困る中、公園の炊き出しでうどんを食べる大里春輝という中年の不思議な力を目にする。大里に興味を持った楓太だったが……

    本体価格890円
    ★★★

  • いまいち
    ミステリーというよりヒューマンドラマ
    しかし、登場人物は嫌な人物ばかり
    「代償」同様、登場人物のヘタレ具合、悪役の悪役っぷり。嫌になっちゃいます
    さらに、エンディングがブツっと終わる...

    ストーリとしては、
    うだつの上がらないサラリーマンの楓太25歳
    不思議な力を持つ中年男春輝
    二人の人生が章ごとに切り替わり語られていきます。

    この風太のくずっぷり
    なんでも人のせいにして、ついにはヤクザに絡まれることに
    一方、春輝は不思議な力を持つが故に、子供のころからテレビに出演。周りから疎まれるとともに、インチキ呼ばわりされ、人とかかわることを避けて生きています。
    そして、春輝に執拗に絡んでくる悪役の悪役っぷり!

    風太と春輝が交錯し、そこに謎の女千穂、元ヤクザの鶴巻が絡んで物語は進みます。しかし、そのラストがあっけないんですよね。
    ちょっと肩透かしくらった感じ(笑)

    登場人物がみんな嫌な人
    その中で唯一よい人って実は元ヤクザの鶴巻

    ということで、「代償」同様、嫌いな物語でした(笑)

  • ひどくない!
    これって、「一人ぼっちのあいつ」の改題して
    「祈り」だって読者は「私みたいな読者は」
    今ハマってる伊岡瞬だっらすぐ買う
    今は買わないで予約する「図書館に」
    そして言わんこっちゃない。ガッカリする。

    本が売れないからー
    今、伊岡瞬が売れてるからー
    こんなやり方しないと本が売れない。
    読み始めてなんか変!一行で。
    表紙もまして題名も違う〜ひどい。
    この楽しみにしてたワクワク感を返せ!
    もう伊岡瞬はよまんぞ。
    伊岡瞬は悪くないか!いや悪いか!どっちだ。



  • 面白かったんだけど、尚彦がでてくるたびにイライラした。
    なんて奴だ。
    ラストはよくわからなかった。
    読む人の解釈に委ねるってこと?
    実際に二ノ宮キャスティングで映画にしたら面白そう。

  • 題名みて気になり買った一冊

    人生がうまくいっていない男性2人の話

    サラリーマンの若者と超能力をもつ中年の話が交互に綴られている。
    どちらの話も負の連鎖みたいな感じで嫌な方に話が進むが、それは本人の所為という所もありなんかイライラする。

    負の連鎖が続いてこれからいい事があると思い読み進めても、今までの負を覆すようないい事が起きない。
    読んでてスッキリしない。

    一番スッキリしないのがラスト
    理解力がないのか自分にはよくわからない謎のラストだった。

    ラスト以外はイライラする展開でも興味持って読み続けたが、ラストで一気に内容がわからなくなった小説でした。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。2005年『いつか、虹の向こうへ』(『約束』を改題)で、第25回「横溝正史ミステリ大賞」と「テレビ東京賞」をW受賞し、作家デビュー。16年『代償』で「啓文堂書店文庫大賞」を受賞し、50万部超えのベストセラーとなった。19年『悪寒』で、またも「啓文堂書店文庫大賞」を受賞し、30万部超えのベストセラーとなる。その他著書に、『奔流の海』『仮面』『朽ちゆく庭』『白い闇の獣』『残像』等がある。

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