表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬 (文春文庫 わ 25-1)

著者 :
  • 文藝春秋
4.24
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本棚登録 : 9509
感想 : 741
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167915827

作品紹介・あらすじ

第3回斎藤茂太賞受賞! 選考委員の椎名誠氏に「新しい旅文学の誕生」と絶賛された名作紀行文。

飛行機の空席は残り1席――芸人として多忙を極める著者は、5日間の夏休み、何かに背中を押されるように一人キューバへと旅立った。クラシックカーの排ガス、革命、ヘミングウェイ、青いカリブ海……「日本と逆のシステム」の国の風景と、そこに生きる人々との交流に心ほぐされた頃、隠された旅の目的が明らかに――落涙必至のベストセラー紀行文。特別書下ろし3編「モンゴル」「アイスランド」「コロナ後の東京」収録。解説・Creepy Nuts DJ松永

いざキューバへ!

ぼくは今から5日間だけ、
灰色の街と無関係になる。

ロングセラー傑作紀行文
書下ろし新章
モンゴル/アイスランド/コロナ後の東京

俺は誓いました。
あなたのように
生々しく生きていこうと。
(Creepy Nuts DJ松永「解説」より)

感想・レビュー・書評

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  • リトルトゥースである。
    彼らのラジオは、いつも、何かしらの違和感を凝りほぐしてくれる。

    寝不足の通勤電車で読んだ、DJ松永の解説。思わず嗚咽でも漏れてしまうのではないかと、焦りつつも読むのを止めることができなかった。だから、くしゃみと咳が同時に出てしまったようなふりをして、その場を乗り切った。自意識過剰である。

    違和感と自意識。
    そんなものを常に抱えている人、この国で生きづらさを抱えている人にとって、若林さんの表現は救いとなる。
    作品の中で、自身を「少数派のくせに一人で立つ勇気を持たず、出る杭のくせに打たれ弱くて、口が悪いのにナイーブで、それなのに多数派に賛同できない」と表現している部分があり、共感しすぎて首がもげそうになるほど頷いた。若林さんは、ご自身の感じ方や価値観を言葉にするだけでなく、自分そのものを表現することにも長けている。

    P42「5日間、この国の価値観からぼくを引き離してくれ。同調圧力と自意識過剰が及ばない所までぼくを連れ去ってくれ。」
    P61「誰かの顔色をうかがった感情じゃない。お金につながる気持ちじゃない。自分の脳細胞がこの景色を自由に、正直に、感じている。」

    組織に所属している以上、上司の言うことは聞かないといけない。逆らうことは「くびにしても構いません」と言っているのと同じこと。理不尽なことを言われても、会社からお給料をいただいて生活をしている以上「わかりました」と笑顔で言って、淡々と仕事をこなさなければならない。言いたいことが言えない。
    違和感。
    絶対に自分が正しいとは言ってない。でも、いくら会社に所属しているからって、なんでも上司の言うことを聞かないといけないなんて、会社に人質を取られているようなもの。言いたいことが言えない。
    違和感。
    違和感。
    会社を辞めようにも、生活やキャリアを考えると誰しもすぐには今の会社を辞めることができない。それを見透かされ、利用される。搾取。
    違和感。
    違和感。
    違和感。
    違和感。

    違和感で満たされるわたしの心。

    P75(ゲバラの名言)「明日死ぬとしたら、生き方が変わるのですか?あなたの生き方はどれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」
    明日死んでも後悔しない生き方をしているつもりでも、きっと目前に死が迫ったら、後悔の念で押しつぶされるだろう。わたしはもっと言いたいことを言いたい。こんな違和感にまみれたまま死にたくない。

    表参道のセレブ犬はきれいに手入れをされ、飼いならされている。でも、カバーニャ要塞の野良犬はちょっと汚いけど、自由がある。そう、自由なのだ。

    今、わたしがほしいもの。自由と楽。
    それは今のわたしを満たしてくれる。
    でも、同時にとても大切な何かから目をそらしているのではないか、という気持ちにもさせられる。
    大切な人、と呼ぶべきポジションにいる人との関わり。
    それは、自分と向き合うことでもあって、自己嫌悪との闘いでもある。
    けれど、自由と楽からは得がたいものが、きっとある。
    わたしはそこから逃げているような、そんな気がしている。
    人と関わることにこんなに疲弊していても、まだそんな風に思う自分がいる。
    どうしてこんな風に自分を追いつめる。
    周りがみんな結婚して子どもがいて、幸せそうだから?
    同じものを、わたしは欲しいのか?
    まさか。
    本当に?
    だってそれではストレスにさらされてばかりになってしまう。
    だから楽と自由を選んだのに。
    自分の選択に自信がないの?後悔しているの?
    楽と自由を選んだのに、一方で選ばなかった人間関係を後悔する。
    なんというめんどくさい性格なのだ。

    P315「ずっとぐじゅぐじゅしてて、熱くて、抑圧されていて、でもある瞬間、誰もが口を開けてドン引きするぐらい吹き上げて一瞬で空に消えて行っていいならば、ぼくがずっとぐじゅぐじゅして抑圧されて恥ずかしいから熱い部分を隠していることも、これから死ぬまでずっとそうであることも救われる。そして、自分でそれを肯定できる。」

    P316「人間は欲張りな生き物だ。安定と安全を求めるくせに、それに飽きると不安定と危険が恋しくなる。死にたくなるけど、生きてるって実感したい。」
    よく友達に言われるんだ。「わざと自分で自分を不幸にしているよね」って。そうなのかもしれない。自分の歩いている道がでこぼこの不安定な道だって自覚はある。でも一方で平坦な道では生きてるって実感がない。だから、わたしはこれからもでこぼこ道を選んで生きてくんだろう。生きてる実感がほしいから。人と関わって、違和感を感じて、大切な人と向き合って、傷ついて、絶望して。だから時々逃げるんだろう、自由と楽に。この苦しみを、表現することができるかどうか。人生がその繰り返しであることに、諦観と希望を持って、喜びと感じることができるかどうか。

    若林さんがキューバへ行こうと思ったきっかけ、そこで得た日本との違い、日本が大切にしているものへの気付き、自分の価値、結婚願望、父との別れ。
    それらについても触れられていて、すごく胸が詰まったのだけれど、それをここに載せると作品の魅力が低減してしまうだろう。若林さんの旅と心の動向はセットになっているので、その流れの中で感じていただきたい部分だ。ここでは割愛する。

    • naonaonao16gさん
      sinsekaiさん

      おはようございます!
      お返事遅くなりました、すみませんm(_ _)m

      コメントありがとうございます。
      そう言って頂...
      sinsekaiさん

      おはようございます!
      お返事遅くなりました、すみませんm(_ _)m

      コメントありがとうございます。
      そう言って頂けるの、すごーく嬉しいです!
      是非是非、素敵な読書の旅を!
      2020/11/15
    • naonaonao16gさん
      Yokoさん

      こちらでも失礼しますm(_ _)m
      是非是非、よろしくお願い致します(^^)
      Yokoさん

      こちらでも失礼しますm(_ _)m
      是非是非、よろしくお願い致します(^^)
      2020/11/15
    • sinsekaiさん
      コメントありがとうございます
      是非見てみます!

      たしかに、エアコンにこだわってるところは
      面白かった!よっぽど暑かったんでしょうね…笑
      コメントありがとうございます
      是非見てみます!

      たしかに、エアコンにこだわってるところは
      面白かった!よっぽど暑かったんでしょうね…笑
      2020/11/19
  • お笑い オードリー の若林さんのキューバ、モンゴル、アイスランドへの紀行文。
    若林さんの心情が語られていて、彼の人間性がにじみ出ている。
    この本を読んで、彼のことが好きになった。

    死ぬまでにモンゴルで馬に乗り、アイスランドで花火を見ながら年越しをしたい。
    目標ができました。
    良い本でした。

  • 今年読んだ本の中で一番面白い本でした!
    若林が心底、旅を楽しんでいるのがもよすごく伝わってきて、読んでる自分も楽しくなってくる
    そして、若林が旅で感じた言葉の1つ1つがセンスがあって、すごく心に刺さりました。

    冒頭のニューヨークの場面
    かくしょにいくと、入場する前に必ずアメリカ人に「Let's enjoy!」と言われ、握手やハイタッチを求められた。それが僕の中に僅かにある「エンジョイしたい」という気持ちを悉く粉砕した。
    いかにも若林らしくておもわず笑ってしまった!
    そして一気にこの旅行記に引き込まれてしまいました。

    本文で好きなところをいくつか抜粋!
    この世を一言で言うならば、「オートロックのマンションを探す時には不動産屋でコーヒーが出てくる世界だ」

    あの犬は手厚い庇護を受けていない。観光客に取り入って餌をもらっている。そして少し汚れている。
    だけれども自由だ。
    誰かに飼い慣らされるより自由と貧しさを選んでいた。
    僕の幻想だろうか?
    それとも、キューバだろうか?

    その他にもたくさんの心に刺さる言葉が沢山あります。是非皆さんもこのナイーブな男の

    3つの国を巡る旅行記に浸ってほしいです
    そして、キューバ旅行の目的の真実…

    生々しく生きている若林がますます大好きになりました!

    最後にこの本に出会うきっかけを与えてくれた
    naonaonao16gさんありがとうございました!

    • naonaonao16gさん
      sinsekaiさん

      おはようございます!
      読まれたんですね~

      不動産屋さんのコーヒーのお話、よかったですよね!
      あと、一貫してエアコン...
      sinsekaiさん

      おはようございます!
      読まれたんですね~

      不動産屋さんのコーヒーのお話、よかったですよね!
      あと、一貫してエアコンにこだわってるとことか(笑)
      そして何よりカバーニャ要塞の野良犬。やはり、ここがこの作品の肝なんだな、という印象です。
      全体を読むと、なぜここをタイトルに持ってきたのかが分かりますよね…

      実は別の媒体で追記してアップしたブログがあるのですが…
      もしよろしければ、お時間ある時に読んで頂けると嬉しいです。
      2020/11/19
    • naonaonao16gさん
      sinsekaiさん

      こちらです

      飾らない苦悩と飾ることのたやすさ 若林正恭/表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬
      https://...
      sinsekaiさん

      こちらです

      飾らない苦悩と飾ることのたやすさ 若林正恭/表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬
      https://note.com/tattychannel/n/nf099b45552c3
      2020/11/19
    • naonaonao16gさん
      sinsekaiさん

      こんばんは^^

      馴染みのある(?)こちらのコメント欄に失礼します。
      先日は某漫画作品にコメントをいただき...
      sinsekaiさん

      こんばんは^^

      馴染みのある(?)こちらのコメント欄に失礼します。
      先日は某漫画作品にコメントをいただきまして、ありがとうございます。返信をする際に見たところ、すでに見られなくなっていたのですが、すごく素敵なコメントだったので、こちらに再度コメントをさせていただきました。
      丁寧に返信したいなと思っていると、返信が滞ってしまうのですm(__)m

      幸せについてのsinsekaiさんの捉え方が、わたしにとっては斬新で、それでいてすとんと入ってくるような、そんな感覚でした。

      この作品の若林さんと同様、捉え方がすごくネガティブなので「不幸ではない状態」が実はそれって結構いい状態なんじゃないか説は、ふっと心を軽くしてくれるような言葉、そして見方だなと思いました。

      ありがとうございました。
      どうしてもそれは伝えたくて。
      また是非遊びに来てください^^
      2021/02/08
  • 以前から気になっていた本作。
    文庫化されていたのを見つけたので購入、読了。
    若林さんの著書「完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込」、「ナナメの夕暮れ」に続きこの本も。

    いやーーー、本作めちゃくちゃ良かったです( ̄▽ ̄)

    「競争社会の生き辛さ」を乗り越えるために、若林さんが考え抜いて辿り着いた答えが書かれています。

    結論から言うと「血の通った関係と没頭」であると。
    「血の通った人間関係や、心から没頭できるもの(仕事や趣味等々、対象は何でも良いのかと)こそが勝ち負けが届かない別次元に連れて行ってくれる」と。

    自分も同じく社会で勝ち続けきた人間では無かったので、全く同じような思考を経て、全く同じような結論に至ったなぁと(笑)
    その答え合わせが出来たようで、とても嬉しい感覚になりました。

    若林さんがその考え方をしっかりと言語化されているので、自分の考えや頭の整理もできて良かったです。

    結論だけ書いてしまう何だかとてもあっさりしてしまいましたが(笑)、本当に素晴らしい本だと思いました。
    また人生に悩むときがあったら、この本を読んで勇気をもらおうかなぁと。


    あと、新自由主義と社会主義の考察も個人的にはとても面白かったです。

    キューバを体感して「社会主義ってみんな仲良しで最高(*´∇`*)」的な安易な気休めを期待していた自分…
    でも実際は違って、やはり廃れるには廃れるなりの理由がありました。

    日本の自由競争は機会の平等であり、結果の不平等。
    キューバの社会主義は結果が平等になることを目指していて、機会は不平等。

    競争に負けてボロい家に住むのと、アミーゴ(知り合いのコネ)がいなくてボロい家に住むのだったらどっちが納得するだろうか?と、日本では無いか?と。
    ※キューバでは社会主義を司る政府へのコネがある方が良い家に住めるという背景があるそうです

    そもそも人間は競争したい生き物であり、その気持ちが「元々、平等でありたいという気持ち」をだいぶ上回っていたというところが、社会主義が「失敗したもの」と言われる所以ではないだろうか、と。

    何というか、でもまさにその通りだなぁと…

    「共生が善」と謳いながらも、生物として根底には「弱肉強食」が遺伝子レベルで組み込まれている。
    つくづく人間って、メンドくさい生き物だなぁと改めて思いました(笑)

    まあひとまず、「血の通った関係と没頭」を命綱にしてもう少しこの世を渡り歩いてみようかね…

    <印象に残った言葉>
    ・ぼくは気づいた。「マルチネス、人見知りだわ」(P68)

    ・日本の自由競争は機会の平等であり、結果の不平等だろう。キューバの社会主義は結果が平等になることを目指していて、機会は不平等といえるかもしれない。自分に尋ねた。競争に負けてボロい家に住むのと、アミーゴがいなくてボロい家に住むのだったらどっちがより納得するだろうか?と。そして、その逆も。もしかしたら「競争に負けているから」という理由の方がまだ納得できるかもしれなかった。そして、日本を発つ前に新自由主義に競争させられていると思っていたが、元々人間は競争したい生き物なのかもしれない。元々、良い服が着たい生き物。元々、良いものが食べたい生き物。元々、良い家に住みたい生き物。それは当たり前なのだが、それが「元々、平等でありたいという気持ち」をだいぶ上回っていたというところが、社会主義が「失敗したもの」と言われる所以ではないだろうか。(P151)

    ・ぼくは、物見櫓から13世紀村を眺めて絶対仕事先以外にも所属する集団を作ろうと決心した。具体的にいうと、金やフォロワー数のような数字に表されるようなものではない揺るがない心の居場所を作りたいと思った。そういう居場所を複数持っていれば、一つの村に必要とされなくなった時に他の居場所が救いになるからだ。この先で、芸能の世界から必要とされなくなった時にぼくは絶対に所属欲求の危機など感じてやらない。そのためにも他の居場所を必ず作ろう。(P242)

    ・親父が亡くなる10日前に家族全員に「自分の命よりも大切なものがあることを知れた」という内容のメールを一斉送信してきた。その時に、自分の命をよりも大切なものを見つけたい、というよりも自分のことばっかり考えてきたな、ということをぼくは反省した。だから、これからは親父のように自分の外に命を使っていきたい。そう思った。(P249)

    ・俺にとって自信とは、欠落があったからこそ巡り会えた価値だ。それがあったからこそ、血が通った関係や仕事や趣味に出逢えた。そして、それはサル山の序列と経済と世間が届かない場所まで俺を運んでくれる。(P332)

    ・行き易い人は内面をそこまで覗き込む必要がない。スムーズに走行をしている車のボンネットを開ける必要がないからだ。(P333)

    <内容(「Amazon」より)>
    オードリー若林、東京から楽園キューバへ逃亡を図る! 

読者の共感を呼んだ前作「社会人大学人見知り学部 卒業見込」を出発点に、新たな思考へと旅立ったオードリー若林の新境地! 

累計20万部に迫る前作『社会人大学人見知り学部 卒業見込』。 
そこで吐き出された社会への違和感、悩みは普遍的なものだと思っていたけれど、 
「あれ? これって人が作ったシステム上の悩みに過ぎなかったのか?」 
と気づいてしまった著者。 
「俺が競争したい訳じゃなかった! 競争しなきゃ生きていけないシステムだった!」 
新しい発見に意識がいったところで、 
「別のシステムで生きる人々を見てみたい」 
と、猛然とキューバへ旅立った。 

キューバはよかった。そんな旅エッセイでは終わらない、間違いなく若林節を楽しんでもらえる、そして最後はホロリと泣ける、待望の書き下ろしエッセイです。 
本当にプライベートで若林さんが撮ったキューバ旅行の写真も多数掲載予定。

  • 今年初読破本はこちら。
    若林さんの本は初めてで、旅行記の部分もあり、生き方、人柄そのものが滲み出たエッセイのようでもあり、とても読みやすかった。
    若林さんの飾らないストレートな感想や感じ方にも共感したし、優しくて繊細な方なのが読み取れるようだった。
    職業柄、海外経験は多いけれど、行ったことのないキューバにモンゴルにフィンランドの話は新鮮で、とても興味深かった。

    モンゴル記に関しては、絶対前世に深い繋がりがあるだろうと思いながらよみすすめ、最後に「いや、ないんかい!」と、ツッコミ役にツッコんでしまった。
    ここ、なんとなく好きだな。とか、何かに誘われた気がする。とか、たまに感じるインスピレーションが共感できて、でも私のインスピレーションとは全然違っていて。

    上京してきた身としては東京はキラキラしていてたまに嫌になる程ビビッドなイメージを持っていたけれど、若林さんには灰色でドライな世界に見えているんだな。

    束縛と裕福、自由と貧しさの関係性には特に考えさせられた。人間も然り。どっちを取るのも自由な国なのに、優劣がつけられる。自由なのに、生きにくいのは、誰もが分かっているのに。


    「だけど、ぼくは革命博物館で「命を使いたい」と思った」

    「誰かに飼いならされるより、自由と貧しさを選んでいた。僕の幻想だろうか?それともキューバだろうか?」

    「ぼくは、煮こごりを食べながら日本人は集中力が高いのではないかと思った」

    「ピンク、ターコイズブルー、エメラルドグリーン」

    「これからは親父のように、自分の外に命を使っていきたい」

    「ぼくは旅先でほぼ叶えられる可能性がないであろう「では、また」が好きだ。ぼくは絶対この先ふとした時にこの人のことを思い出すだろうから、その時用の「では、また」なのだ」

    「空気を読めばいいのか、個性が大事なのか、どっちなんだよ」

  • 若林正恭 著

    オードリーの若林!と言っても、
    最近はピン!とこない 春日とコンビのコメディアンとしての登場をTVで見かけなくなったから…。
    若林正恭はコンビを離れたところでも…著書を色々出してるし、テレビの冠番組MC、ラジオにと大忙しだ しかし、以前から人見知りだということは、本人も言ってたし、よく耳にした気がするけど、じゃ何故コメディアンに?という思いもどこかで感じていたはずなのに…実際、自分も含めて人見知りなんて人間は多いし、だからといって、お笑いに興味がないことにはならない。
    私だってお笑いは大好きだしテレビを観てウケると大笑いする(⌒▽⌒)
    しかし、他人を囲んでお笑いを観て、大笑い出来るかどうかの自信はない。

    話しは随分、逸れたが、この本については、以前から興味があり読んでみたかった。
    タイトルにも気をそそられる
    若林正恭さんの本を読むのは初めてだ!
    紀行文的な小説かな?私は、あまりエッセイは得意ではないので、入っていけるか不安になりつつ(^^;; 最初は素人が書いたような、
    憧れの(個人的な感想)キューバへの短い旅から始まる 知名度もない誰も知らないような人の旅の話なんて誰が興味持つのよと…この作品を手に取れるのも、若林がやはり、芸能人であることの特権かな?と感じる部分、個人旅行で思い立っての旅にしても庶民に用意されたものとは違うものも感じつつ、嫌味な気持ちを少し持ちながら、頁をめくっていくと、そこには、等身大の若林正恭が居て、途中からは結構楽しく読んでいた(^。^)
    そこに立ち、身近に風景が見えるような、キューバと言えば、カストロやゲバラを彷彿するが、結局、キューバ旅へのきっかけは、亡きお父さんだったんだ…お父さんの話しには、ちょっとしんみり泣けました( ; ; )

    表紙にもなっているカバーニャ要塞の野良犬
    “あの犬は手厚い庇護を受けていない。観光客に取り入って餌を貰っている。
    そして、少し汚れている。
         だけれども、自由だ。”
    若林正恭の感性に同じように横たわってる何にも介さないような自由な犬の姿が見えた。

    モンゴルでの無邪気な笑顔 分かる〜(゚∀゚)
    自分は行った事はないけれど、若林と同じく、テレビで観たモンゴルの草原とゲルで暮らす遊牧民たちの姿が目に焼き付いて、とても、雄大で素晴らしく、何とも、純朴な子どもたちの愛らしくも勇ましい姿に胸を打たれ、以前は一番行ってみたいと思ってた土地だった(だったというのは…もう行くことが叶わない自身の心情だけれど、少し、この作品で叶えてくれたような気がした)

    アイスランドのツアーの話し 少しクスッと笑えた(^◇^;)
    ツアーで一緒に行動したり会話することの気恥ずかしさと煩わしさ、でも…なんとかツアーの間だけでも、当り障りないような友好的関係を築かなくては…と思う気持ち。
    しかし、ほんと、なかなか、初対面の人に声をかけるのって難しい(・_・;
    上手くいかないから余計、変に見える行動に出たり、人と関わるのが苦手で煩わしいなぁって普段思っていても、旅の中では…(^^;;
    しかもツアーなんかだったりしたら、何とか上手くやり過ごしたいって思いと焦りが空回り(~_~;)
    同じツアーに同行する知らない人がかけてくれる、一言ってホント有難いんだよね〜って思う。
    何だか、一瞬救われたような
    、少し自分を出せるきっかけをもらったような…(笑)
    旅の話しであるようなエッセイかと思えば、
    結構、客観的な視点でまわりや世界情勢を見ていたり、自分自身のことも、客観的にしっかり捉えてることに、なるほど〜そうだなぁって私自身もしっくりきて、頷きながら読んでいた。

    この国は世界を信仰している。

    この国で世間の空気を読まなくていい人間は、一目でわかるほどの圧倒的な何かを持っていなくてはならない。
    それを持っていないならば、多数派に身を寄せつつ自分の位置を把握して空気を読んでいればそう生き辛くはない…- 中略 -
    でも、少数派のくせに繊細で、出る杭のくせに打たれ弱くて、口が悪いのにナイーブで、それなのに多数派に賛同できなかったら、こんなに生き辛い国はない。
    「空気を読めばいいのか、個性が大事なのか
      か、どっちなんだよ。」
    その疑問に、大きく頷ける
    内面を覗き込む必要がある人と必要ない人の対比する生き方話しは、とにかく、自分のことのように納得させられた、しかし、
    ボンネットを開けて欠落の構造を自分なりに理解した時に、これからもずっと生き辛いだろうし、そして、これからも大切な価値にたくさん出逢うだろう諦念と感謝が同時に生まれた。
    めんどうくさいけど走ってみるかと走り出すと、外に目が向けられるようになっていった
     すると、他人への興味が急激に湧いてきた
    人それぞれの欠落と武器を兼ね備えた個性は、どれもエモーショナルで、学ぶべきところが必ずあった。そして
    外の景色をよく見てみるとクソみたいなことで溢れていたし、没頭できる楽しそうなことでも溢れていた。
    なんだか…
      清々しい気持ちで締めくくり読めた。

  • 良い本だった。
    作者の人柄がよく表れている。
    それはよくある所謂「暖かい、優しい人柄」なんてものではなくて、
    「世の中をナナメに見てて、ニヒルで陰キャでめんどくさい人柄」であり、だけれども、だからこそ、「そういうめんどくさい人達への暖かい優しい眼差しに溢れた人柄」である。
    自分を美化するでもなく卑下するでもなく、冷静かつ客観的に捉えようとしている。
    単なる旅行記かと思って読み始めたけど、核心はもっと深いところにあった。
    とはいえ旅行記としての部分も十分に面白い。たまにカッコつけた文章だなと感じる箇所があって、旅先のことを思い出して上がったテンションで書いていたのかなと推測。

    キューバ、モンゴル、アイスランド。どこも未踏なので行ってみたいと思った。

    あ、この本の大きな特徴。あとがきがメインディッシュ。一番好きです。そして巻末、DJ松永氏による解説(という名の公開ファンレター)。
    あとがきや解説が最も印象に残るなんてなかなか珍しい本。

  • オードリー若林正恭の旅行エッセイ。
    キューバ編に、文庫化に際してアイスランド編とモンゴル編を加えたもの。

    一人旅いいなあ、アイスランドの話テレビでしてたなあ、と思いながら面白く読めました。でもまあ、ガイドたくさんつけて贅沢な旅行だよなあ。

    旅行に気分をもっていくための工夫(映画みたり、音楽きいたり)は、やってみよう、と思いました。

  • とても面白かったです。
    普段インドアな若林さんのキューバ旅行の話。
    普通の旅行話かと思いきや、社会主義国であるキューバと日本の違いについて触れ、常に誰かと比べられ、競走しながら生きている新自由主義の私たちに本当の幸せは何かを笑いを交えて訴える。
    ところどころに、旅中の写真が載っており、日本との町の違いや、人の違いなどとても興味深かった。
    「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」というタイトルが本を読み進めていくと、なるほどと納得でき、考えさせられるものがあった。
    社会主義と資本主義。資本主義が発展する理由もよくわかるが、常に誰かと競い合い、常に誰かと比べられる社会で生きていくのも大変だなと改めて感じた。
    若林さんも言っているように結局はバランスなのかなと思う。程よく頑張って、程よく楽しく生きていきたい。
    最後は、若林さんのお父さんの話も出てきて、少しうるっときた。
    一人で旅行してたんじゃなかったのか。
    自分ではなかなかキューバに旅行に行こうとは思わないし、これからも行くことはないかもしれないが、本を通してキューバを体験でき、少し旅した人の感情に寄り添うことができるので、本っていいなと感じた一冊でした。

  • 若林さんのエッセイ第二弾と言うことで読みました。
    一作目はなんて捻くれた物の見方をする人なんだろう、と少々辟易していましたが(こんなことを言うとリトルトゥースの人たちに怒られそうですが)、本作では少し丸く素直になっていますね。

    作品を読み終わった後、ラジオでも同じ話を聞いてみたのですが、やはり耳で直接聞いた方が面白いな、と感じてしまいました。
    文章だけだとどうしても感情が読めないので…

    単なる観光旅行ではなく、様々な目的を持った旅だったことがラストで判明します。
    それも含めて、一生思い出に残る旅になっただろうなと思いました。

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著者プロフィール

1978年9月20日生まれ。テレビ朝日『しくじり先生 俺みたいになるな!!』、日本テレビ『スクール革命!』、NHK『マサカメTV』、ニッポン放送『オードリーのオールナイトニッポン』等テレビ、ラジオで活躍中。ダ・ヴィンチの好評連載を単行本化した『社会人大学人見知り学部卒業見込』を2013年に刊行。

「2017年 『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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