大獄 西郷青嵐賦 (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2020年12月8日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784167916053

みんなの感想まとめ

歴史を通じて人間の真摯な生き様を描く本作は、西郷隆盛の前半生に焦点を当て、彼の信念や人間性を深く掘り下げています。著者は、吉之助としての西郷を通じて、彼が直面した政治的葛藤や歴史的事件を巧みに描写し、...

感想・レビュー・書評

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  • 現代ものが続いた後に、時代ものを読むとやはりホッと気持ちが落ち着く。まして手に取るのが葉室麟ならば、なおさらなのは読書人共通の感ではないだろうか。
    副題が「西郷青嵐賦」と示す通り西郷隆盛の前半生の行動が焦点ゆえ、本作では吉之助で通している。
    藩主斉彬に見いだされ、八面六臂の活躍をしながら、井伊直弼による安政の大獄を逃れ奄美大島に潜居するまでの、ほぼ史実に基づく歴史長編。
    架空実在を問わず、己の信念に真摯に向き合い清冽に生きる漢(おとこ)を叙情たっぷりと描く九州出身の著者ゆえ、西郷は書かずにいられない人物だったのだろう。
    吉之助のひととなりを彼の発する言葉で表現している。
    「涙も出らん男が強うなってどがいする。ひとが強うなっとは、ひとに優しくするためごわんど」
    「力により、弱き者を虐げる異国は不義の国じゃ。わが国は道義の国でなけりゃ、ならん。さもなければ異国に負けるのじゃ」
    一蔵にも語らせる。
    「吉之助さあと話していると、死ぬという暗い話をしながらも明るい気持ちになるのはなぜなんじゃろう」
    この一蔵とは、いつか袂を分かつことを早い段階で吉之助は見抜いていた。
    「おそらく一蔵どんはおいの敵になりもそ。憎くて敵になるのではごわはん。・・・一蔵さあの道を行くか、おいの道を行くかで争う日も来もそ。そんとき一蔵どんなどげな手を使ってでもおいを倒そうとするじゃろ」
    一蔵との違いについて吉之助は語る。
    「人を動かすのは心だけじゃ。久光様も一蔵どんも力はひとを動かすと思うちょる。・・・力で押さえつけられて本当に動く者はおらんじゃ。ひとを動かすのは心だけじゃ」
    日米通商条約は井伊大老が進めたと歴史上はなっているが、違勅の責めを負わせるべく、幕府の実務者に橋本佐内が仕掛けたとしている。井伊が望んだのは、あくまで調印の延期だったとか。史実として真相は・・・。
    また、自分の死は、父の斉興による毒殺だとの思いを抱きながら、斉彬は死の床につく。彼の排除は、斉興の側近に井伊が示唆したと、井伊自身が語る場面がある。史実として真相は・・・。
    歴史的事件を著者なりの構想で描いたこの作品、歴史ファン西郷ファンは読むべき一冊だろう。
    また、解説で、本作と対をなす悪品として松平春嶽が主人公の『天翔ける』を挙げている。続いて読まずにいられない。

  • 西郷さんが、薩摩藩が、なんかブラック…薩摩は勝ち組から見れば正義の味方みたいに書かれがちですが、政治ってどどちら側も結構汚いことやってたのね。

  • 「西郷隆盛」というような、色々な意味でよく知られている史上の人物は、多くの小説の中心視点人物(=主人公)のモデルとして取り上げられていると思う。本作もそうした作品の一つということになると思う。
    “大獄”というタイトルが示すのは、かの<安政の大獄>のことであろう。<安政の大獄>という時期に向かって行く、そしてその渦中に入る西郷隆盛、寧ろその時期は「西郷吉之助」と呼ぶべきであろうが、その生き様が描かれる小説だ。
    幕末から明治維新という時代が「何だったのだろうか?」というのは、相当以前から「大きな問い」であったのだと思える。そしてそれは今でも余り変わらないのではないか?
    そうしたことを踏まえ、「明治150年」も通り越した中で、「若き西郷吉之助」を通して「大きな問い」への回答に近付こうとしたというのが、読了後に強く感じる作者の意図である。
    西郷吉之助が、半ば“現人神”のように、眩し気に仰ぎ見た主君の島津斉彬のような世代の人達に見受けられた「遠くが見え過ぎていたかもしれなかった人達」と、「手中にすることが出来たモノを死守しようとした人達」との競り合い、或いは抗争の中に“開国”という局面に突入した時代は流れていたのかもしれない。
    半ば“現人神”のように、眩し気に仰ぎ見た主君による“啓蒙”を体感しながら様々な役目に奔走した、真直ぐな「仁勇の人」たるやや不器用な西郷吉之助…そして<安政の大獄>という局面で、奄美大島で暮らすことになって、更に様々なことに気付かされて行く…
    或いは?“西郷隆盛”という人物像が「仕上げられて行く過程」というような、伝記の中の「最も興味深いかもしれない部分」を題材に編まれた物語が本作であるように思う。
    そして本作は「遠くが見え過ぎていたかもしれなかった人達」と、「手中にすることが出来たモノを死守しようとした人達」との競り合い、抗争として<安政の大獄>なるモノが「確り!」と綴られているように思った。そういう意味で、多くの小説の中心視点人物(=主人公)のモデルとして取り上げられている西郷吉之助を軸とする物語でありながら「新しい!」とも思った。
    なかなかに好かった!広く御薦めしたい。

  • 2025/6/26 読了

  • 奄美時代までの西郷さんの伝記。葉室さんの本は初めて。
    一橋派と尊攘派の連携の様子など、分かりづらい部分も説得的に書かれている。西郷さんの海外観、運動の進め方などで、大久保と徐々に意識がずれていくのが、その後の展開を思わせる。
    総じてフラットな書きぶりで、西田さんや鹿賀さんの顔しか出てこない自分には読みやすい本だった。

  • 続きが読みたかった。

  • 西郷隆盛がどの様に見出され、世に出て行ったかを描いた作品。
    クライマックスで親友である大久保と訣別する未来を、お互いがそうなる大分前に気づき始めて終わる。
    人の心が、人を或いは世の中を動かす為にはもっとも重要であると訴えかけた作品のように感じた。
    続編があるのであれば、西郷の最後まで描いて欲しかった作品である。

  • 葉室さんの描く「西郷隆盛」中々味わいのある一冊でした(^^)

  • 【私は西郷隆盛を一番書きたかった!】西郷隆盛は薩摩藩主の島津斉彬に仕え、天下のことに目覚め、一橋慶喜擁立のため暗躍するが、安政の大獄により全てを失うが……。

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著者プロフィール

1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。09年『いのちなりけり』と『秋月記』で、10年『花や散るらん』で、11年『恋しぐれ』で、それぞれ直木賞候補となり、12年『蜩ノ記』で直木賞を受賞。著書は他に『実朝の首』『橘花抄』『川あかり』『散り椿』『さわらびの譜』『風花帖』『峠しぐれ』『春雷』『蒼天見ゆ』『天翔ける』『青嵐の坂』など。2017年12月、惜しまれつつ逝去。

「2023年 『神剣 人斬り彦斎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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