マスク スペイン風邪をめぐる小説集 (文春文庫 き 4-7)

著者 :
  • 文藝春秋
3.39
  • (5)
  • (16)
  • (22)
  • (5)
  • (1)
本棚登録 : 228
感想 : 24
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167916138

作品紹介・あらすじ

100年前の日本人は、疫病とどう戦ったのか? 文庫オリジナル!

スペイン風邪が猛威をふるった100年前。作家の菊池寛は恰幅が良くて丈夫に見えるが、実は人一倍体が弱かった。そこでうがいやマスクで感染予防を徹底。その様子はコロナ禍の現在となんら変わらない。スペイン風邪流行下の実体験をもとに描かれた短編「マスク」ほか8篇、心のひだを丹念に描き出す傑作小説集。解説・辻仁成

【収録作品「マスク」】
見かけは頑健に思われているが、実は心臓も肺も、胃腸も弱い。そんな自分に医者は「流行性感冒にかかったら、助かりっこありません」と言う。だから、徹底的に感染予防に努めた。でも暖かくなったある晴れた日に、黒いマスクの男を見かけて――。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 短編集で「スペイン風邪をめぐる小説集」を集めたもので
    「100年前の日本人は、疫病とどう戦ったのか?」
    というこんなご時世柄、文春文庫さんが文庫オリジナル版を編みなさったわけ。

    「マスク」「神の如く弱し」「簡単な死去」「船医の立場」「身投げ救助業」「島原心中」「忠直卿行状記」「仇討禁止令」「私の日常道徳」

    「マスク」
    見かけは太っていて頑健そうに見えるが、実は弱いからだなんだ、と菊池寛らしい主人公は言う。何ですか、太っていたら成人病予備軍だよ、と突っ込みたくなるが100年前はね、栄養を取るのも大変だったでしょうからね、みんなガラガラにやせていたし、美味しいもの好きの主人公、ガッチリ美食していたのだね。案の定「インフルエンザにかかったら死にますよ」とお医者様に脅かされて、だから用心してマスクは手放せない。外出も避ける。死亡者数の増加に憂える。あら、今とおんなじだ。しかし、暑いような初夏にはとうとうマスクを外した。まだまだ感冒は流行していると新聞に書かれているのに、みんなしていないし・・・つける勇気が・・・でもでも、ある日、人だまりの野球場でマスクをしている人を一人みつけたよ!さあ、主人公はどう思ったか?

    「スペイン風邪流行」ネタなのは「神の如く弱し」「簡単な死去」くらいで「船医の立場」「島原心中」は広義の意味で病気もの、「忠直卿行状記」「仇討禁止令」は有名時代ものだし「私の日常道徳」は作家の矜持がわかり、菊池寛は人間性を突く、おもしろい短編を書いた作家なのです。

  • 百年前のスペイン風邪流行時の東京の雰囲気を知りたくて読んでみた。
    ワクチンはないけど、人口密度と移動量を考えると、流行り具合は大差無いのかもしれない。
    「マスク」における主人公の言動、発想は、驚く程現代とそっくりだ。

  • マスクなど短編集。マスクは100年前のスペイン風邪の流行時の話。菊池寛先生の怯えなんかが、コロナ下の今とほぼ同じなのが面白かった。他の短編、忠直卿行状記、仇討禁止令も面白かった。

  • コロナ禍中、ずっと読みたかったのだが後回しにしていたもの。
    スペイン風邪の…と書いてあったので、その当時の様子がメインなのかと思っていたら、
    菊池寛本人が身体が弱い判断が出されての、な話だったので少し印象が違った。
    が、結局マスクするのしないので心が移り変わる様子が描かれていて面白かった。
    本人の体験談というかエッセイのようなものなので、
    作品とはまたちょっと文体の雰囲気が違うのも生身の人間っぽくて良い。
    さすが文豪。

    これとは違うバージョンの電子書籍で読んだので、収録されている他の作品の
    ラインナップが違うかもしれない。
    私が読んだのはマスクの他は将棋、勝負事、出世、身投げ救助業が収録されていて
    どれも面白かったなぁ。身投げ救助業と勝負事が好きだったかも。

  • ⚫︎受け取ったメッセージ
    表題「マスク」より、人はいつでも自分本位…でもそこが人間らしさ。


    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)➕ネタバレ注意

    スペイン風邪が猛威をふるった100年前。作家の菊池寛は恰幅が良くて丈夫に見えるが、実は人一倍体が弱かった。そこでうがいやマスクで感染予防を徹底。その様子はコロナ禍の現在となんら変わらない。スペイン風邪流行下の実体験をもとに描かれた短編「マスク」ほか8篇、心のひだを丹念に描き出す傑作小説集。解説・辻仁成

    【収録作品「マスク」】
    見かけは頑健に思われているが、実は心臓も肺も、胃腸も弱い。そんな自分に医者は「流行性感冒にかかったら、助かりっこありません」と言う。だから、徹底的に感染予防に努めた。でも暖かくなったある晴れた日に、黒いマスクの男を見かけて――。

    誰もマスクをしないときにマスクをするのが文明人!と思っていたうちは、マスクをつけている人を同士よ…と思えていたのに、自分がマスクを外している時に見かけたマスクの若者を見て、小憎らしい!と思ってしまう。

    ⚫︎感想
    若者を見て、強者の態度を感じ取り、忸怩たる思いをする…という人間の自分本位な考えが浮き彫りになるのだが、マスクという軽い題材なので、クスッと笑える。

  • 強者と自惚れそうになる時に読み返す本

  • 表題の短編「マスク」では、今も明治も感染症対策は大差無いなと気づかされた。黒マスクって昔からあったのね。
    「身投げ救助業」が印象的。川に身投げして溺れた者を救助して小銭を稼いでいた老婆が...

  • 主人公の心の動き。
    自分がマスクをしている時としていない時の周りを見る目線がユーモアたっぷりに描かれている。笑っちゃいけにんだろうけど、つい。あ。

  • 物怖じしない反省文て感じ。これがテーマ小説ってやつか。

  • 表題が『マスク』だし、‘スペイン風邪をめぐる小説集’とあるので、その辺りの話ばかりかと思いきや、後半は特にそうではなく…その後半の作品たちが、とても面白かった。
    人の心の動き、人と人との関係(今ならコミュニケーションという言葉で表すのだろうけれど、もっと複雑な)日本的なもの。心が痛くなる瞬間が何度もあったけれど、心の表裏の描き方に心を奪われた。

全24件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1888年生まれ、1948年没。小説家、劇作家、ジャーナリスト。実業家としても文藝春秋社を興し、芥川賞、直木賞、菊池寛賞の創設に携わる。戯曲『父帰る』が舞台化をきっかけに絶賛され、本作は菊池を代表する作品となった。その後、面白さと平易さを重視した新聞小説『真珠夫人』などが成功をおさめる一方、鋭いジャーナリスト感覚から「文藝春秋」を創刊。文芸家協会会長等を務め、文壇の大御所と呼ばれた。

「2023年 『芥川龍之介・菊池寛共訳 完全版 アリス物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

菊池寛の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
小川 哲
カズオ・イシグロ
雨穴
瀬尾 まいこ
サマセット モー...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×