やわらかな足で人魚は (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2021年3月9日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784167916596

作品紹介・あらすじ

一体どうしたら自分は人間になれるのだろう。
当たり前に愛される人間の子供に。

タワマンを舞台に電話詐欺の嘘によって結びつく偽物の母と息子。
“前科”のある中学教師と孤独な少女。
悲しみを抱えた二人が出会うとき、世界は色を変える。
『昨日壊れはじめた世界で』が話題沸騰のオール讀物新人賞作家の、痛々しいほど危うく美しい傑作短編集。

四六時中わけもなく淋しくて、悲しくて、心許ない。
まるで私たちの足元にはちゃんとした地面がないかのようだ。──「水に立つ人」

人魚姫が王子を刺せなかったなんて、やっぱりウソだ。いつの間に引っ張り出したのか、赤い万能ナイフは陽の手の中にあった──「やわらかな足で人魚は」

この短編集の五人の主人公たちは、皆、「どこにでもいるけれども、悲しみを抱えているとは傍目に分からない人たち」だ。
香月夕花の描く世界は、どこまでも儚く、残酷で、美しい。
満場一致でオール讀物新人賞を受賞したデビュー作「水に立つ人」と同名の短編集を改題し、「逃げていく緑の男」を追加して再構成。
解説:川本三郎

みんなの感想まとめ

人間になりたいと願う登場人物たちが織りなす、切なくも美しい物語が詰まった短編集です。主人公たちは、孤独や悲しみを抱えながらも、どこか温もりを感じさせる存在であり、彼らの抱える問題は現代社会の影を映し出...

感想・レビュー・書評

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  • 初読みの香月さん♬とても良かった〜!
    5編の短編集です。
    なんとなく柔らかくて優しいイメージを勝手に抱いてたけど、描いてたイメージとはちょっと違ってわりとビターな印象でした。
    それぞれの主人公の「悲しみ」を描いた作品。
    香月さんの描く文章が凄く好きでした。
    直接的に感情に訴えかけてくる様な感じではなく、むしろ穏やかなんだけどじんわり心に残るというか、、。
    うまく言えないけれど、静かに余韻が残る感じが絶妙に好きでした!

    どの話も良かったけど、私は表題作の「やわらかな足で人魚は」が1番良かったな♡♡

    あ〜、また1人好きな作家さんが増えてしまった〜\♡/"

  • 切ない短編集。

    人魚姫が王子を刺せなかったなんて、やっぱりウソだ。いつの間に引っ張り出したのか、赤い万能ナイフは陽の手の中にあったー「やわらかな足で人魚は」

    文章・言葉使いが好き。

  • 他人に触れてほしくない心の暗い部分を描いた内容が多く、個人的には読んでいて苦しかった。
    特に「水風船が壊れる朝に」は、何の苦労もなく生きてきたように見える天海に対し、深く傷ついている澪の八つ当たりのようなシーンは読んでいて澪の気持ちも天海の気持ちも考えるととても苦しかった。
    「水に立つ人」も、アルバムを置いていなくなった葛城の死を認めることができず、一瞬葛城の幻を見る。やっと本当に他者を愛することができるとわかった矢先のことで、主人公の気持ちを想像すると本当に辛いと思った。あまりに幻を見るシーンがリアルなので、小説によくあるあり得ない展開なのか、と思ったがそうはならないあたり、現実味を感じられてより一層苦しくなった。
    どの作品にも雨が降るシーンが描かれており、登場人物の心を表しているようであり、また「人魚姫」のような切なく苦しい気持ちが表題作以外にも通じて表れていたように思う(原作の人魚姫は確かにあまりハッピーエンドではなかったな、とも思い出した)。
    正直、読んでいて苦しい気持ちになるので読み返せる自信がないが、このような気持ちにさせる作品はそうそうないと思う。

  • 言葉にできない悲しさや淋しさは誰とも分け合えず
    水の上に立つような不安定さがある。
    一人でいる孤独より誰かと一緒にいる孤独の方が大きい。
    そんな淋しさ、悲しさ、心許なさを共有したいと思える相手がいるのは救いになる。
    会いたいという願いは何より切実で絶大な感情である。
    先生はずっと色んなことを曖昧にすることで淋しさと付き合っていたけれど、彼に対して明確な願いをもったことは大きな変化で、彼のために何かしたいというのは自分の生きる理由にも繋がると思う。
    関係性を築くことはどうしても相手を傷つけてしまう。
    相手を傷つけた記憶も、救われた記憶も、救いにも呪いにもなる強烈さがある。
    そんな強烈な記憶があるから人は生きていける。
    美しいものしか撮りたくない彼が、彼を切実に願った泣き顔を美しいものとして捉えて、不安定な地面で飛び込んで行ってしまうのは、先生にとってまた強烈な記憶になると思う。
    水に立つ人が好きだった。

  • "はじめまして"の香月夕花さんは、とても印象深かった。 この文章、好みです。

    離婚・貧困・不登校・犯罪など、愛不在の悲しい子どもたち・大人たち。心やすらげる居場所がない。
    そんな哀しみをまとった人々の物語。

    でも、哀しいだけの物語ではない。温かさがある。
    だが、物語は、憐れみなどいらないとばかりに、淡々と進んで行く。
    そこに、わたしの感情は無く、物語を淡々と追う。
    そして、ラスト、"あぁそうくるか"と、納得、わたしの心は息を吹き返し、鮮やかな色に染まる。淡い淡いピンクに、明るいブルーに、といった具合に。 

    そんな風に感じさせてくれる香月夕花さんの文章は、とてもとても心地よかった。

    特に、それを感じたのが『水に立つ人』。
    淡々と綴られた文章、なのに、ラストのなんと甘やかなこと。素敵でした。

    そして『やわらかな足で人魚は』は、読み応えがありました。


  • 5つの短編から構成された本。
    どの話も良かったが、自分は特に4話目の水に立つ人がお気に入り。
    来るはずのない人を、全国各地の聖堂を巡りながら待つという、一見めちゃくちゃな女性教師の心境に強く共感した。
    香月夕花さんの本は、時に社会が抱える闇に鋭く切り込み、時に人間の心情を深く考察し、時に心を揺さぶる物語を書き。
    とても好きな作家さんの一人。
    これからも香月夕花さんの本を読んでいきたい。

  • 主人公の絶望に勝手にフタをしない書き手。つづられた物語は容赦がない。血の温もりで、硬直した心を溶かすように。

    「傷つけられたことへの補償はないのだ。たぶん、永遠に。悲しみは悲しみのまま残り、それでも人は生きていく。」

  • 切なくて悲しい短編集でした
    描写、文章がきれいで引き込まれました

  • 短編集だけど、どれも寂しかったり悲しかったり。
    ここ最近自分が穏やかに過ごせているので、あまりいい気分ではなかったかな。解説で他者の悲しみを知ることが時に大きな重荷になるという話があったけど、それだったな。

  • *一体どうしたら自分は人間になれるのだろう。当たり前に愛される人間の子供に。
    タワマンを舞台に電話詐欺の嘘によって結びつく偽物の母と息子。“前科”のある中学教師と孤独な少女。悲しみを抱えた二人が出会うとき、世界は色を変える。
    『昨日壊れはじめた世界で』が話題沸騰のオール讀物新人賞作家の、痛々しいほど危うく美しい傑作短編集*

    初めて読む作家さん。
    哀しみをふわふわと漂うように描くのが上手だなあと言うのが第一印象です。
    繊細で掴みどころのない空気感が独特。
    感性が合う方には心に響くんだろうなあ…

  • 前話から何かしらモチーフが引き継がれていく構成で、直接登場人物たちに面識はなくても、同じ哀しみを持った人々の物語だとわかる構成が綺麗だと感じた。

    『彼女の海に沈む』は、教師の「余計なことかもしれない」という過去の失敗からくる躊躇いに「わかる」と頷いていたら、思わぬ方に話が転がって驚いた。

    一番ぐっと来たのは、『水に立つ人』。
    「誰にも傷つけられないかわりに誰もすきになれなくなった」という一説には、身につまされるものがあった。

    どのお話も主人公の心理描写が繊細で、それが正負どちらの感情でも深い共感を覚えた。

  • 香月夕花『やわらかな足で人魚は』
    2021年 文春文庫

    初読の香月夕花作品。5篇からなる短篇集。
    解説にもありましたが、どれにも悲しみや寂しさを秘めています。それを主人公や登場人物たちがどのように受け止め、もがき、乗り越えていくのか。
    でもそう簡単には乗り越えられないもの。それを各篇ごとに様々なアプローチやきっかけ、人の心を糧に悲しみとともに乗り越えていきます。
    結局のところ悲しみはそうそう消え去るものではないと思います。でも悲しみに対する接し方を変えることができるという物語の紡ぎ方に感動しました。
    なかでも「水に立つ人」と「やわらかな足で人魚は」はぐっときました。
    どれもが、とても文学的で素敵な作品でした。

    #香月夕花
    #やわらかな足で人魚は
    #文春文庫
    #読了

  • 窪美澄さんや、千早茜さんが好きな方にお薦め。初めての作家さんでしたが、他の作品も読んでみたいと思える一冊でした。

    悲しさ、優しさ、温かさや人の弱さとか脆さとか色々織り混ぜられてるけど、読後感は至って穏やか。

  • 【人魚姫が王子を刺せなかったなんて、やっぱりウソだ──】悲しみを抱えていると傍目にわからない五人の主人公たち。『昨日壊れはじめた世界で』が話題のオール讀物新人賞作家、渾身の短編集。

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著者プロフィール

1973年大阪府出身。京都大学工学部卒業。2013年「水に立つ人」で第93回オール讀物新人賞を受賞。16年受賞作を含む短編集『水に立つ人』を刊行。他の著書に『永遠の詩』『昨日壊れはじめた世界で』がある。

「2020年 『見えない星に耳を澄ませて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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