悪人 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2021年6月8日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (464ページ) / ISBN・EAN: 9784167917081

作品紹介・あらすじ

土木作業員の祐一は、出会い系サイトで知り合った佳乃が山奥で置き去りにされているのを助けようとして殺害してしまう。時を前後し、同じサイトで出会った祐一と光代は互いに惹かれ合い、逃避行の旅に出る。加害者と被害者、その家族や友人。一体誰が悪人なのか。交差する様々な思いを克明に描いた不朽の名作!

みんなの感想まとめ

人間の複雑な心理と道徳を問いかける作品で、登場人物たちの思いや葛藤が深く描かれています。主人公の祐一は、過去の苦労や人との接し方に悩みながらも、他者を思いやる心を持っています。彼の行動が引き起こす悲劇...

感想・レビュー・書評

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  • 暗い気持ちになりました。
    祐一は子供の頃から苦労して、人との接し方がわからなくて。でも他の人のことを思いやる気持ちはちゃんと持ってた気がする。
    殺された佳乃とか、濡れ衣を着せられかけた増尾の方が個人的には悪人に思えた。
    法律を犯した者が悪人なのか。。
    法律は犯していなくても悪人と呼べる人間はたくさんいると。。
    祐一と光代を、もっと早く出会わせてあげたかった。。。

  • 1人の女性が殺害された。
    犯人と被害者、その周りの人々の状況と心情の移り変わりを書いたストーリー。

    祐一の、母親から捨て置かれた過去に起因する愛着障害の様態が結構グロテスク。
    ヘルス嬢の入れ込んでた時期のエピソードとか本当にキモくて、一二三がそこに理解を示してるのが尚のこと嫌で、祐一のこと全然好きになれない。
    でも、こんな祐一のことを"「ついてる方」に選り分けてくれるかも"と盲目的に愛せてしまう光代も凄いなぁ、と。
    光代にもバスジャック事件(ネオ麦茶事件?だったかな?)のトラウマが強く残ってて、そこから引き上げてくれると祐一に期待して、たとえ殺人犯だとしても"愛そう"としているのが哀れな感じがします。


    結局追い込まれた時に光代の首に手を掛ける祐一。
    祐一の供述は光代を庇い、自分を異常者だと語る様相を見せつつも半分は本当なのかも。
    光代は殺人という行為を認めてしまったことへの後悔を語り、佳乃への謝罪を述べながらやっぱり祐一への思いを捨て去りきれないでいる。ストックホルム症候群なんだろうけど、やっぱり祐一を悪人と思いきれないから、そうなんですよね?の問いかけで終わるラストに痺れました。

    祐一の「どちらも被害者にはなれんよ」という言葉も衝撃というか。
    どうしようもない依子をどうにか許したいからお金を無心して、依子を被害者にしたいんでしょうね。

    依子の独善的な供述、佳男と増尾、鶴田の邂逅、床屋を開けた里子、バス運転手の優しさと房枝の決心。
    事件後の登場人物一人一人に心惹かれるエピソードがある。

    斉藤壮馬さんがあとがきで、ラストの光代のように「悪人」とはなんですか?と問い掛けてるのが考えさせられる一言でした。

  • 祐一は、あぁ〜こういう人いそうだなぁと思う不器用な人。暗くて人との距離感が意思疎通が苦手で、それを隠すように金髪と赤い服を着てみるけど垢抜けない。ピュアなんだけど他人から見たら何考えてるか分からない人。光代は孤独を感じているけど基本的には優しいまっとうな人。
    お互い寂しさを埋め合うように逃避行を続けた2人だけど、本当に普通の出会い方をしてたらこんな風に盛り上がっただろうか?とも思ったり。
    佳乃は嫌な人間だよなぁとは思うけど、女同士のマウンティングや男を品定めする態度は、巷にそれなりにいそうなタイプでもある。 
    そして祐一に共感して読んでると、あの時殺めてしまったのも、あぁ‥そうなっちゃうよなぁという気持ちになる。結果的には殺人はしていないけど、最初から最後までクズだったマスオ‥ここまでくるともう別の生き物みたいで対話したりするのも虚しくなるよね。色んなところにうっすらと希望を残していて、佳乃のおかあさんが店を開け始めたり、ナースの子が佳乃に手紙書こうかなぁって言ってたり。
    光代がいつか最後の祐一の行動の意味に気がついて、出所出てきた祐一と結ばれる‥なんて夢を見たくなります。2人で星を見ながらのんびり幸せそうに過ごせる日が来てほしいです。

  • 2021.9.16
    11年前に読んだこの作品をあらためて読了。
    上下巻になっていたのが、今回は1冊にまとめられていた。

    覚えていたところ、朧げだったところ、そして忘れていたエピソードがあったけれど…
    読み直してみてもやはり「傑作」だと思う。
    「人間」って側から見えるほど単純じゃない。

    ただ自分が11年分歳をとったせいか…
    前に読んだ時は同情的な気持ちでいた主人公?2人に対して、今回はかなり冷めた目でしか見られなくなっていて、我ながら驚いた。

    「悪人」は「他」にいる…と思っていたのだけど。

  • 後半は命をなくす人が増えてしまうと嫌だなとドキドキしながら、踏みとどまってと思いながら読みました。
    根っからの悪人なんてあまりいないと思うけど、増尾と祐一の母親は、この作品の中では悪人に括ってしまう。佳乃も親不孝すぎるなあ。
    祐一の人生って何ともやりきれない。光代は本心ではまだ祐一を好きでいてほしいし、好きでいてくれるのではないかと思う。

  • 親と子の繋がり、姉妹の繋がり、祖父母と孫の繋がり、友人との繋がり、職場の繋がり、愛するもの愛されるもの、そのように思わせる何かの繋がり。人の繋がりとその連鎖に狂いが生じた時の副反応について深く考えさせられました。誰が悪で誰が善なのかも曖昧になるストーリー展開。登場人物達の苦悩は生々しく、目にしている世界の描写がその感情をリアルに伝えてくれます。人とはなぜもこのように脆いのか?愛や性はなぜに人を狂気にしてしまうのか?感情が強くぶつかる内容に心を奪われ、一気に読んでしまいました。大好き度❤️❤️❤️❤️

  • 映画化もされているが前知識なしに読んでみた。本当の悪人は誰か、というテーマなのだが、ステレオタイプがきついキャラクターがおり、苦手だった。

  • 私はこの『悪人』の映画版が大好きで、これまでに何度も観てきました。そして読もう読もう思いながらも、映画の世界観が壊れてしまうのが嫌で、ずっと原作を読むのを避けていました。

    うまく言葉に表すことができませんが、原作もひたすら寂しい内容でした。

    私も寂しい人間だから、きっとこの作品が大好きなのだろうと思いました。

  • 罪を犯した人が裁かれるのは当然だとは思うけれど、罪を犯す人が悪人だとは限らないと思う。その人との関係性や、好悪感情によっても感じ方は人によって違う。自分は祐一よりも、濡れ衣を着せられそうになった増尾や、被害者の佳乃の方が悪人にみえた。それでも親にとっては大切な娘。どんな人でも、誰かにとって良い人にも悪い人にもなり得るんだろうなぁ。

  • 悪人とは誰なのか。悪とは何なのか。
    人の一部分だけを切り取って全てがわかったような気になってはならないと思う。被害者の佳乃はいけ好かない女だったかもしれないけれど、親にとってはいつまでも可愛い娘だ。誰かの心を軽くする優しい言葉をかけることもできる人でもあったはずだ。
    祐一も、頭があまり良くないし、人にわかりやすく自分の魅力をアピールできるタイプではなかったが、思いやり深い男だったはずだ。母に置いて行かれた経験から自己肯定感が低いのか、他者に尽くしすぎるから、そこを重すぎるくらいの愛で埋めてくれる光代に早く出会えていれば違ったのではないかと思ってしまう。そして孤独に耐えることに慣れすぎていなければ、光世に対してああいう選択をしなくてもよかったはずだ。
    ほとんどの登場人物に、重い軽いはさておいて、なにかしらの罪があるように感じる。それが人間なのかなぁ。。
    それにしても増尾だけは許せないな。

  • 上手く言葉に出来ないけど、私はこの小説が苦手だった。微かな嫌悪感を常に抱きながら読み切った。この小説には、休息がないことが恐らく1番辛かった。一息つける場所、落ち着いた気持ちで読める場所がなかった。ずっと、眉間に皺を寄せながら読んでいた気がする。やっぱり言葉にするのは難しいけれど、私はこの小説が苦手だ。初めから終わりまで、ずっと苦手だと思いながら読んだ。にも関わらず、途中で読むのをやめることもできなかった。

  • 映画化されたよね。
    寂しさや悲しさを心に持っていてそれを自分で見いだせない人。
    世の中にはいろんな人がいるを
    皆、寂しいんだね。
    幸せになって欲しい。
    真っ直ぐな言葉を正直に伝える事って本当は難しいことなのかな。。。
    って考えさせられるた

  • だいぶ前に読んだけど、詳細や結末を覚えてなかったので再読。
    読み進めるにつれ、どんどん不穏さが増す。

    祐一は、光代を守りたかったんだね。
    自分を捨てた母親にお金をわざとせびるエピソードも相まって、祐一の強さと覚悟を感じた。

    ー 悪人は誰か? ー

    この人が悪人だ、と指を指すのは簡単だ(佳乃、増尾、祐一の母親・・・etc)。
    でもそれも、結局は自分が何を正義として判断するかによる。
    人には人の正義がある。
    自分の正義が正しいかどうか分からないけど、祐一には労いの言葉をかけたいなと思う。

  • 祐一が捕まってからの証言が印象的だった。
    母親のことを話した時に言っていた
    「どっちも被害者にはなれんたい」の言葉のまま捉えれば、徹底的に加害者であろうとした。

    でも、証言の半分は本音なのかもとも思った。
    そういう自分がいたかもしれない。
    自分の中にいる悪人を前に出した。

    きっと光代の感じていた優しい祐一も本物。

  • 一気読み。
    最後に救われる人がいて、本当によかった。
    善人も賢い人も出てこないけど、この混沌を理解させ、共感までに引きずりこむ作家の手腕が見事。

  • 昔、上下巻に分かれていた上だけ読んで、下は読んでいなかったので、まとめて読んだ。
    人物描写が巧みで、増尾や佳乃(被害者なのに…)にはイライラさせられ、佳乃の父親や裕一、光代には感情移入した。
    裕一の不器用な生き方が哀しかった。

  • 出会い系サイトで知り合った佳乃を、思いがけず殺害してしまった祐一。その祐一と同じサイトで知り合い、逃避行を共にすることになる光代。
    そしてそれを取り巻く人々の物語。
    読後に押し寄せる余韻の波がすごい作品です。
    人間は1人では生きていけません。
    人との関わりの中で(それが取り返しのつかない事だとしても)イヤな思いをさせたり、させられたり。
    一方、ささやかではあれ幸せを与えたり与えられたり。
    その人との関わりの中で“悪人”の捉え方も変わってくる訳で、とんでもなく切ない話でしたが、ほんのりと温もりも感じる物語でもありました。

  • 光代への感情移入が止まらなかった。
    30年生きてきて、初めて愛せる人に出会って
    ウキウキワクワクな1番楽しい時期に、
    その相手が犯罪者だったなんて…

    母性本能爆発しますよそりゃ。
    守りたい、離れたくない
    1日でも長く一緒に居たい。
    と思う気持ちがめちゃくちゃ分かる。

    祐一が言っていた
    「もっと早う光代に会っとればよかった。」
    ほんとこれに尽きる…
    光代は選り分けられたら必ず悪い方になると
    言っていたけど、祐一も同じやったんやろなぁ。

    犯罪者=悪人なのか…
    当事者にしか知りえない事を、
    何も知らずに憶測で報道したり、
    罵倒するような人が
    善良と言いきれるんやろうか…

  • 「悪人」は誰なのか?事件の犯人が「悪人」とは言い切れず、事件の関係者は、被害者も含めて誰もに「悪人」の側面が見える。単純に「悪人」と「善人」に分けることができない。
    誰もが誰かにとっては「悪人」なのかも知れない。
    なかなか重たい話でした。

  • 読んだ本 悪人 吉田修一 20230830

     読み始めたら先が読みたくて仕方がなくなるようなお話しでした。ある女性が殺されるのが物語の発端なんですが、殺されるまでの描写で、同情できない被害者と犯人らしいけど犯人じゃないようにと願ってしまう加害者が作り上げられます。そして、愛に乏しい犯人と同じく愛に乏しい女が出会って逃避行。って話なんですが、周りの人間が語られることで、主人公たちが描かれていく。そんな話の進め方に夢中になりました。だけど、最後に残酷でもいいから美しいもの、救いを求めて読んだのに・・・。でも、小説って書いてないことも想像できるんで、自分だけの結末を作っちゃいました。
     悪人、善人、弱者、登場する全ての人たちの個性が明確に描き込まれてる。人ってこんなに簡単にタイプ別に分けられるのか、って錯覚するくらいサラリと、行動や思考で性格を描写している。もちろん簡単なことではないんでしょうが、読者には簡単に伝わってくる。だから、一人一人への愛情や嫌悪が湧いてくるんですね。物語だけじゃなく、一人一人のキャラクターも魅力的な一冊でした。
     映画も観てみようかな。

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著者プロフィール

一九六八年、長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。一九九七年『最後の息子』で文學界新人賞を受賞し、デビュー。二〇〇二年『パーク・ライフ』で芥
川賞を受賞。二〇〇七年『悪人』で毎日出版文化賞。ほか、『パレード』『横道世之介』『さよなら渓谷』『平成猿蟹合戦図』『路』『怒り』『森は知っている』『犯罪小説集』など著書多数。ANAグループ機内誌『翼の王国』での短編小説とエッセイをまとめた書籍に『あの空の下で』『空の冒険』『作家と一日』(木楽舎)がある

「2017年 『最後に手にしたいもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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