- Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167917111
作品紹介・あらすじ
第47回大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)受賞作。月刊「文藝春秋」の連載『堤清二の「肉声」』に大幅に加筆したもので、セゾングループの総帥だった堤清二氏が死の一年前、父・康次郎氏そして弟の義明氏との関係をじっくり振り返った一族の物語です。
清二氏が、著者の児玉さんに10時間以上も語った堤家の物語は、愛憎と確執に満ちた肉親相食む世界でした。大宅賞の選評で、選考委員の後藤正治氏は「インタビューを重ね、その足跡をたどるなかで、入り組んだ内面を宿した人物像を浮き彫りにしている。読み物として読み応えがあった」とし、奥野修司氏は、「筆力、構成力ともに群を抜いている」と評価しました。
康次郎氏は西武グループの礎を築いた実業家であると同時に、強引な手法で「ピストル堤」の異名をとり、異常な好色でも知られていました。清二氏ら七人の兄弟姉妹の母親だけで四人、そのうち二人とは入籍をしませんでした。関係を持った女性はお手伝いから看護士まで相手選ばず、清二氏の母・操さんの姉妹とも関係を持ちそれを操さんも承知していたといいます。その異常な環境で、清二氏・義明氏兄弟は静かな“狂気”を身の内に育まざるをえませんでした。
フォーブス誌の世界長者番付で世界一位に輝いた義明氏と、セゾン文化で一世を風靡した清二氏は、一転して凋落し、軌を一にするように堤家も衰退の一途を辿ります。
西武王国について書かれた本は数多くありますが、清二氏が初めて明かした一族の内幕は、堤家崩壊の歴史であると同時に、悲しい愛と怨念の物語であり、どうしようもない定めに向き合わなければならなかった堤家の人々の壮大な物語です。
感想・レビュー・書評
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こうした本を読むと思わなかったが、意に反して読んで良かったと思える本だった。
今では生活に普通にある西武。その西武の誕生とその歴史や家族のノンフィクション。
問題がある程ひとの関心を呼ぶもの。決して私利私欲だけではなく、大きな家族となった西武が辿った道というものを堤清二の目線で語られたもの。
清二さんという人の心はとても穏やかなのか、人柄に好感を持って読みました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
誰もが知っている有名人だが、血縁関係とか確執について知らなかったので興味深い内容でした。
義明の馬乗りやべぇ -
暗い
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20211229
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一代で西武グループ(コクドグループ)を作り上げ、衆議院議長まで勤め上げた豪傑堤康次郎の子として生まれた異母兄弟の堤清二と堤義明。
2人は帝国の後継として、その生い立ちから注目が集まり、弟である堤義明に全事業が相続されるということから、マスコミの駆り立てあり、兄弟関係りに亀裂が走る。
堤清二は倒産寸前の池袋西武百貨店のみを譲り受けながらも、そこから破竹の勢いでセゾングループを作り上げ、天才の名を恣にする。
清ニに対し、康次郎の指針を愚直に守り、天皇へと化していく義明。この2人の骨肉の争いは、西武グループの崩壊という形で幕を閉じる。
堤家はあれだけの起業家でありながらも、どこか負の側面を持って語られることが多いのは、康次郎の奔放さと、それが引き起こした内紛によることがよく分かった。
惜しむらくはインタビューに基づくため、やや内容に乏しく、もう少し内容に厚みが欲しかったところ。
とはいえ、西武グループ、コクドグループ、堤家について初めて勉強する方にはおすすめの一冊。 -
インタビューで作られている個人史。オーラルヒストリー的な手法がとられているのか、と思いながら読み進めたが、筆者の用いる評価の言葉が私には読みにくかった。
それにしても、堤家の人間関係の濃さはハンパない。康次郎の生み出したモノ(者/物)が、まるで因果応報のごとく、回収されていく。
歴史になるにはまだかなり生々しい。
ただ、なるほど、と思ったのは、堤氏が小林一三に会えなかった、という話。この話が星を一つ増やした。堤氏が既にあったモデルとして、阪急電鉄を参考にして、鉄道・宅地開発・デパートメントストア・映画・演劇などを結びつけた。
鉄道と消費文化のつながりは既にあったモデルと考えられた。そこに堤氏なりの新しい知見がミックスして、パルコやリブロが生み出されたんだろう。
私は堤清二氏が生み出した「消費する文化」を1980年代に最初は無意識に、そのうち意識的に享受した世代だ。現在もその残滓を消費している。リブロにいた田口さんのいるジュンク堂も糸井さんの「ほぼ日」も、もちろん、mujiもみんな残滓でしょ。
草津や彦根、米原に行くたびに、なんでライオン?と思っていた頃もあったけど、そもそも創業者の生まれ育ったところなら納得だし、サンシャイン60の話も三島の話も左翼から脱左翼の世代の話ならあまり驚かない。
それにしても、読み疲れた本だった。 -
【当事者が語る 堤一族 悲劇の真相】第47回大宅壮一ノンフィクション賞受賞!セゾングループを率いた堤清二氏が、死の前に明かした堤一族の栄華と崩壊の悲劇。
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中途はんぱな取材
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2016年大宅壮一ノンフィクション賞受賞作です、西武王国を創り上げた堤康次郎の暴君実業家としての姿、好色家だった父の五人の妻との葛藤等を、感じる嫡男の堤清二の葛藤と、作家・辻井喬の姿が・・・。