穴あきエフの初恋祭り (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2021年7月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (192ページ) / ISBN・EAN: 9784167917234

作品紹介・あらすじ

近づいたかと思えば遠ざかり、遠ざかると近づきたくなる、意識した瞬間にするりと逃げてしまうもの――。

十年ぶりに再訪したはずの日本(「胡蝶、カリフォルニアに舞う」)、重ねたはずの手紙のやりとり(「文通」)、何千何万年も共存してきたはずの寄生虫(「鼻の虫」)、交換不可能な私とあなた(「ミス転換の不思議な赤」)。

ドイツと日本の間で国と言語の境界を行き来しながら物語を紡ぎ、『献灯使』で全米図書賞(翻訳部門賞)を受賞するなど、ますます国際的な注目が集まる言語派作家・多和田葉子さん。「移動を続けること」が創作の原動力と語る著者が、加速する時代の速度に飲み込まれるように、抗うように生まれた想像力が鮮烈なイメージを残す7つの短篇集。

みんなの感想まとめ

言葉の遊び心が詰まった短編集は、読者を不思議な世界へと誘います。多和田葉子の作品は、音や視覚に訴える独特の表現が魅力で、漢字や平仮名の変換による戸惑いや、思わず笑ってしまうような擬人化された描写が印象...

感想・レビュー・書評

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  • 短編集。
    言葉遊びのようなところが、日本語って面白いなと思う。音だけなら通じることも、でたらめな漢字に変換したら視覚的に、え、と戸惑ったり、平仮名にしただけで、なにこれ、となったり。
    表題作の中の「こらら、いと、こら、ぜろ」も一瞬首を傾げて、炭酸の甘い飲料に見えてくる。正解なんてあるのか知らないけれど、ふふっと楽しい。

    「胡蝶、カリフォルニアに舞う」
    主人公Ⅰが就職試験の為に帰国し、面接に臨もうとする話。
    解説では、なんとなく感じていたことを説明されて、なるほどと思う。でもそんなことは置いておいても、Ⅰの過去や行動についての文章表現が単純に好きだな。

    「てんてんはんそく」
    引っ越しに伴い通信会社を変えようとする話。
    確かにこういう契約、解約って本当に面倒くさい。それが擬人化されていて可笑しかった。
    思考の転がりも、連想でどんどん遠くへ運ばれていくあの感じは私もよくそうなる。

  • いつも不思議な世界に導いてくれる多和田さん
    「下半身が目に見えない無気力の霧に包まれて動けない」
    「ガムでも噛んでいるみたいな感触で時間が過ぎていくね」
    こんな言葉遊びのような文章に惹きつけられる!
    文字が踊っているような、リズムを刻んでいるようで、思わずふわふわと頭の中が掻き回される。
    この心地良さはなんなんだろう!

  • 今の自分には、わかんなかった部分もあったけど、わからないままでいいかと思った。わからないけど良かった。

  • 多和田葉子さんの百年の散歩を読んだ後、この小説をみつけた。短編だったが、文字がぎっしり詰め込まれていて、読み応えがあった。言葉遊びの特徴ある文章はいつものことだが、なんとも文学的であった。

  • やっぱりなんか好きになれないんだよな~。変な当て字とか言葉遊びみたいなのが合わないんだと思う。
    ストーリー(?)というか描写自体はぬるりざらりとしていて割と好きだけど…

  • ハードカバーで読んだので、文庫版の解説が少し気になる。

    胡蝶、カリフォルニアに舞う
    Iが主人公だったので、各編の主人公がそういう呼ばれ方をするのか?
    と思ったが、そんなことはなかった。

    文通


    鼻の虫
    堺雅人さんの寄生虫博物館に行った話を思い出した。

    ミス転換の不思議な赤


    穴あきエフの初恋祭り
    穴あきエフはアナーキー+キエフなのか?
    確かに初恋でお祭り。魚籠透(ビクトル)も初恋祭りに含まれるのかな。

    てんてんはんそく

    おと・どけ・もの

  • 書店でタイトルと帯が気になり買ってみました。
    詩的で色っぽくて文字を追いたい欲求を刺激してくれますね
    同著者の本も読んでみたいなー

  • 多面的な表情を見せる7編の短編集。

    就職試験の面接を受ける為、10年ぶりに日本へ帰ってきた『I』。久しぶりですっかり変わってしまった日本に不安を感じ、面倒に思いながらも『優子』の家に身を寄せる。-胡蝶、カリフォルニアに舞う-
    主人公の行動を淡々と綴っているうちに摩訶不思議な様相を見せる1編目。どこまでが現実で夢なのか、タイトルからそんな感じの短編集なのかと思いながらとみ進めていくうちに、途中現代社会に対する風刺なのかとか、さらに曖昧模糊とした話の連続に理解が追いつかない。解説を読んでさらに分からなくなった。
    私にはこの世界を楽しむ感性は持ち合わせてなかったようだ。

  • 7編の短編集。特に、「鼻の虫」「ミス転換の不思議な赤」の二作品が面白かった。
    「鼻の虫」は、衛生博物館の「体の中の異物」という展示で見た人間の鼻の中で、何千何万年もの愛、共存してきたという虫を、ふと意識するようになる「わたし」の物語である。「わたし」は、携帯電話を梱包する工場での就職が決まり、海辺の町へ引っ越してきたが、この工場の描写や、社会描写からは、この世界が、現実とは異なる世界で、その工場は、どこか怪しげな雰囲気であることを感じさせ、しかし、「わたし」は、同僚の女性従業員がみな解雇されるなか、自分だけ課長に昇進し、管理職となる。
    そんな生活の中、「わたし」は、朝起きると鼻の虫が、鼻の中に戻れるように、布団からすぐに起き上がらないように気をつけ、寝る前には、虫たちの食事や生活を想像しながら眠る。それは、引越し後、ペットを飼いたいと思ったこともあったが、鼻の中に虫を飼っていると思うと、目の前が明るくなるほどだった。そして、ある日、「わたし」が、いつもの工場へ向かうバスにあえて乗らず、逆の方向へと歩き出す所で、物語は終わる。
    後半、「わたし」は、今の生活から、本音では解放されたいことを語る。そして、「寄生虫と人間は共存して」いて、「一度彼岸花を眼にしてしまったら、夢幻に墓場を訪れる度にその花を無視することができないのと同じで、一度博物館に足を踏み入れた者はもう眼には見えない寄生虫を見て見ぬふりをすることはできない」と言う。小さな虫の存在を知ってしまったことで、生きる活力を得た「わたし」のどことなくパッとしない毎日が、共感された。

  • 多和田葉子ってこんな笑える文章もかけるんだ。所々表現が難解で、ちゃんと解釈できてるか不安な箇所があるんだけど、多和田葉子らしい詩的で仄暗い言葉が散りばめられてて最高でした。私は新しめの短編が好みだった!

  • イメージはフィクションはテクストは楽しい。最後の「おと・どけ・もの」が好きだけど他もたぶん好きだったなぁ

  • 28冊目

    2009年から2018年に『文學界』に発表された7つの掌編。

    現実にいながら、ふと違う次元に迷い込んでしまうような一瞬、不条理な部分もあって夢をみているかのようです。そこに意図的誤変換からの言葉遊びが加わると私の精神もぐらぐら揺れ動いてしまいます。

  • 難しい。難しいが読ませる。
    詩を読んでいるように、言葉の連なりを楽しんだ。

  • 「胡蝶、カリフォルニアに舞う」のストーリー性に牽引され、「穴あきエフの初恋祭り」でかく乱される。多和田さんの作品には、人称の問題とセットで語り手の問題が埋め込まれていることが多いのだけれど、やはり、この本もそうだった。「おと・どけ・もの」は、多和田さんが詩人でもあることを強く感じさせる一編。韻文と散文を自在に往還できる作家さんは、本当に魅力的だ。

  • 読了2021.11.07
    多和田さんの小説を読むと、日本語を"言語"として強烈に意識します。
    意図的な変換ミスや、翻訳したかのような体言止めを用いたり。
    読んでいて不意につまづく瞬間に言葉が誤配され、思いもよらない記憶と体験の引き出しを開けます。

  • 難しいけど、読みづらくはないという不思議な作品。小説というドラマを盛り上げるためにつらいシーンが不用意に出てくることはないので、かまえて読まなくてもいいものの、「物語」として成り立っているかどうかは微妙なので(※貶しているわけではない)、集中してサッと読まないとストーリーを見失ってしまう。
    起承転結があって最後で締められるわけではないし、展開も予測できなくて没頭してしまう。人に薦めたり紹介するには難しいかもしれないけど、多和田さんの小説はたぶんこの先もときどき読みたくなると思う。癖になる。

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著者プロフィール

多和田葉子(たわだ・ようこ)
小説家、詩人、戯曲家。1960年東京都生まれ。1982年よりドイツ在住。日本語とドイツ語で作品を発表。「かかとを失くして」で群像新人文学賞、「犬婿入り」で芥川賞、ドイツでゲーテ・メダル、クライスト賞を受賞。著書に『容疑者の夜行列車』(谷崎賞)『雪の練習生』(野間文芸賞)『献灯使』(全米図書賞翻訳部門)『地球にちりばめられて』『星に仄めかされて』ほか多数。

「2021年 『オオカミ県』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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