色仏 (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2021年7月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784167917241

みんなの感想まとめ

艶やかで情熱的な物語が展開されるこの作品は、江戸末期の京都を舞台に、主人公の烏が十一面観音像に魅了され、仏師としての道を歩む姿を描いています。孤児として育った彼は、寺での修行を経て、真砂という女性との...

感想・レビュー・書評

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  • 花房観音『色仏』文春文庫。

    花房観音初の時代官能連作短編集。江戸末期の京都を舞台にいずれもタイトルに『仏』の文字が入る六章で構成されている。

    艶かしい十一面観音像に魅了された男が自らの手で観音像を造ろうとするが、十一面観音の刺青を背中に入れた真砂と出会い、女性の激しい情念と性愛を感じていくという花房観音らしい物語。

    近江の国で親の顔を知らずに育ち、烏と呼ばれた主人公の男は寺の僧侶に育てられる中、地元にある艶かしい十一面観音像に魅了される。烏が17歳になろうとする時、僧侶は京の町の大業寺に向かわせる。やがて27歳を迎えた烏は真砂という女性の背中にな艶かしい十一面観音を見て、仏門を捨てて仏師になる決意をする。しかし、仏師では生業が立たず、烏は猿吉の紹介で女性の生き写しの人形を作ることになる。

    『第一章 姫仏』。烏の元に猿吉が連れて来た身分の高い若い女性は不思議な艶かしさを醸し出していた。烏は女性の全てを紙に描き写し、細部までそっくりな人形にしつらえるが……

    『第二章 母仏』。猿吉が烏の元に連れて来た女性は近江で烏の母親代わりだった5歳年上の茜だった。人妻となった茜だったが……

    『第三章 恋仏』。猿吉が烏の元に連れてきた女性は背中の桜吹雪の刺青も人形に再現して欲しいと言うが、烏は依頼を断る。

    『第四章 鬼仏』。故郷の近江で育ての親の住職が亡くなったという話を聞いた烏は真砂を伴い、故郷に帰る。再び目にした十一面観音像……

    『第五章 女仏』。猿吉からの新たな依頼は観音様を人形にしつらえることだった。なかなか人形が造れずに悩む烏……

    『第六章 生仏』。烏は真砂の背中に十一面観音の刺青を彫った真砂の元夫と会う。真砂に殺されかけ、右腕を失った元夫……

    本体価格730円
    ★★★★

  • 花房観音さん。この本とは別のサイン本を一冊はもっているのだが、官能小説のようなジャンルだと知りなかなか読む機会がなかった。だが友人が「俺は好き」と言ってたのでこの機会に読んでみた。

    確かに性描写は多いもののそれが不快ではなかった。艶めかしい、潤い、滴る、と言った表現が多いが物語も楽しめる。そしてある程度構えて読んだので性のドロドロさはまずまずだった。ただこの物語には底知れぬ情念が感じられる。音楽で言うと演歌。時代も江戸末期でそんな風に感じた。

    近江地方の寺のお堂の軒下に捨て置かれた烏。そこにある観音像に心を奪われたままで女を知らずに今に至る。京都の寺で僧侶になる修業をするのだが、その道を捨てて観音像を彫るために生きることになる。だがそれだけでは生活が成り立たず、真砂という茶屋の女将に援助を受けて生きながらえていた。その生業として猿吉の依頼、女の人形を作る仕事をして糊口をしのいでいた。
    その客は不明なのだが、依頼された女体を隅々まで見て写し取り彫るのだ。その女たちで物語を紡いでいく…。なかなか面白かった。

    「目をそらしたらあかん。男と女の果ては地獄や」

  • 2021年、11冊目は、花房観音の文庫化新作。

    北近江出身の「烏」。孤児の彼は寺の住職に育てられる。住職は彼に寺を継がせるよう、京都に修行に出す。しかし、彼は修行に集中出来ずにいた。そして、仏師を目指し寺を出る。彼の心は、地元の十一面観音に奪われていた。

    花房観音、久々のクリーンヒット、長打コース。今作は「人並みの価値観に一石を投じる」女史の一貫したスタイルの変化球。「情欲」と「業」に絞って、幕末の京都を舞台に展開される。

    『官能時代小説』の帯の括りだが、『官能』の男を欲情させる機能は今作も低め。もちろん、それなりに性描写は多いが、すでに女史の足元はそこには、勃っていない。人の裏や、内の顔を描く、題材が「性」であるだけのような気がする。人の「素」が一番表れる場面が、一糸纏わぬ、まぐわいの時なのだから。

    「観音様」アラフィフの自分より上の世代では、女性器の隠語だった言葉だ。その辺の言葉のチョイスも素敵。

    惜しむらくは、もう少し分量があれば、「俊覚」「梨久」「沙那丸」のエピソードや、顛末、真相等がクリアになったのでは、と思う点。それでも★★★★☆評価は充分。

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著者プロフィール

1971(昭和46)年、兵庫県豊岡市生まれ。
京都女子大学文学部中退後、映画会社や旅行会社などの勤務を経て、2010年に「花祀り」団鬼六賞大賞を受賞しデビュー。男女のありようを描く筆力の高さには女性ファンも多い。
著書に『寂花の雫』『花祀り』『萌えいづる』『女坂』『楽園』『好色入道』『偽りの森』『花びらめくり』『うかれ女島』『どうしてあんな女に私が』『紫の女』『京都に女王と呼ばれた作家がいた 山村美紗とふたりの男』など多数、最新刊は『縄 緊縛師・奈加あきらと縛られる女たち』。

「2025年 『生きてりゃいいさ 河島英五伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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