ある男 (文春文庫 ひ 19-3)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • / ISBN・EAN: 9784167917470

作品紹介・あらすじ

愛したはずの夫は、まったくの別人であった――。
「マチネの終わりに」の平野啓一郎による、傑作長編。

弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。
宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。
ところがある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。悲しみにうちひしがれた一家に、「大祐」が全くの別人だという衝撃の事実がもたらされる……。

愛にとって過去とは何か? 幼少期に深い傷を負っても、人は愛にたどりつけるのか?
「ある男」を探るうちに、過去を変えて生きる男たちの姿が浮かびあがる。

第70回読売文学賞受賞作。キノベス!2019第2位。

感想・レビュー・書評

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  • 一読でこの話で伝えたかったことが全て理解できたのかというと…おそらくできていないんだろうなぁ…
    国籍や在日について、林業、ジャズ、カクテルなど、そこまで詳しくない部分が出てきたため、もう少し調べて再読したい。

    自分のこと、他人のこと、どちらに関してでも、愛するということに大事なのは今の状態だと感じた。
    過去は見る人によって捉え方も違えば、嘘をついているつもりもなく違うことを伝えてしまうことだってあるし、戸籍を交換しているなど大きな話だけではなく自分の身の回りでもそうだろうなと思う。

  • 文庫化を心待ちしていた作品。
    こ難しい。
    でもこれは、平野さんの作品に対する、とてつもない褒め言葉だ。
    この小説で初対面の言葉が多く散りばめられていて、それは漢字を見ればだいたいの意味はわかるのだけれど、こんな言葉どこでどうやって知るのー!って言葉がたくさん出てきた。
    そして、彼の作品は常にベースに深いテーマが潜んでいる。
    今回も、幸福・生きること・アイデンティティについて、物語が進んでいくと同時に、そのテーマもぐじゅぐじゅしながら掘り下げられてゆく。

    P131「彼は今、自分とは何か、ではなく、何だったのか、ということを、生きるためというより、寧ろどういう人間として死ぬのか、ということを意識しながら、問い直すように迫られていた」

    最近読書をしていると、様々な作品の中に東日本大震災の描写が含まれている。作家さんが、自分なりにあの出来事を表現として昇華している証だと思う。
    年月を重ねたことで、現地で直接的な被害を受けたのとは別の、震災に対する心緒を作品の中から感じることが多い。
    あの出来事で人生観が大きく変わった人もいただろうし、この作品に出てくる主人公「城戸」もその一人だ。

    P138『社会への関心は、香織が呆れる通り、どことなく白々しい、優等生的なものというのが本当で、ただ、それだけとも言い切れない、生来のお人好しもあるんだろう。自分の行動のどこまでが偽善でどこまでが真剣なのかなどと考えてみたところで、それこそ不毛じゃないか』
    P265「恐らく職業的な経験もあって、彼の世界観が、これほどの悲惨な事件でさえ、あり得ることと認識していて、それに遭遇することを、一種、運命的な、事故的な何かのように見せているからだった」

    城戸は弁護士をしている。わたしは法律家ではないけれど、福祉の専門家という自覚は第一線を離れてもずっとあって、何かのニュースで自分で口にした感想に対して、自分で「本当に?」と疑うことがある。その感想にはどこか、職業人としての偽善的な思いが潜んでいるような。本当にそう思うのなら、なぜ第一線で子どもの命を救わないのか。
    人の命に関わる専門家は、どんなに悲惨な、凄惨な事件でも、仕事として、その事件に向き合って、対応をしないといけない。それが続くといろいろなことが麻痺してきて、通常身近では遭遇しない出来事も、まあまああり得ることになってゆく。

    そして、幸福のこと。
    P156「みんな、この世界の評価が高すぎるんですよ。願望ですよ、それって。だから、人が不幸になっても、本人が悪いって責めるし、自分の人生にも全然満足できないし」
    生きること。
    P180「とても真っ当な考えとは思えなかったが、最も愛する人たちが、自分よりも先に死んでくれているというのは彼女の死の不安を宥め、孤独な生を支えてさえいるところがあった」
    アイデンティティ。
    P313「それにやっぱり、他人を通して自分と向き合うってことが大事なんじゃないですかね。他者の傷の物語に、これこそ自分だ!って感動することでしか慰められない孤独がありますよ」

    わたしは本や音楽、映画を通して感情を外に出すことが多い。いろいろな人の気持ちを聴いて、「わかるなぁ」なんて思うことはあるけれど、じゃあ自分がどう思うかって、白紙の状態から自分の気持ちを伝えないといけないとなるとうまく表現できなくて、作品の力を借りないとうまくできない。でも、それでいいんですね。

    帯にある「愛したはずの夫は、まったくの別人だった」
    こういうことって、マッチングアプリが流行してる今ならありえることなのかもしれない。
    目の前にいるアプリで知り合った人が全然プロフィールと違うことはよくあるし、なにせ共通の友人がいないのは、信頼関係を築く上でやはり不安要素として残る。
    その時にどうやって目の前の人がその人であると証明できるだろう。
    わたしはどうやってわたしであることを証明できるだろう。

  • 別人の人生を生きていた夫。
    そうとは知らず、その夫を愛し結婚した妻。
    在日三世のルーツを持つ、弁護士の城戸。
    それを理解した上で結婚した妻。

    「愛にとって過去とは何か?」
    「愛に過去は必要なのだろうか?」

    初めて読む、平野啓一郎さんの作品。
    何とも壮絶な物語でした。

    自分の過去を捨て、他人の人生を引き継ぎ、生きていく。
    そうしなければ、生きていくことが困難な人もいる。
    考えた事もなかったので、そのストーリーにどんどん引き付けられていった。

    もし自分の夫が、全くの別人だったら?
    一体自分は誰と過ごしてきたのだろう。
    共に過ごした時間が幸せで、信じる事ができれば、過去は関係ないと言い切れるだろうか?

    城戸が妻との気持ちのすれ違いに悩み迷う中で、正面から向き合う場面も心に響く。


    もうすぐ映画も公開されるようなので、そちらも気になります。
    平野さんの他の作品も読んでみたいと思う。

    • aoi-soraさん
      bmakiさん、こんばんは^⁠_⁠^
      平野啓一郎さんの本、沢山読んでいるんですね!
      本当に凄い文章力で、私にはちょっと難しく感じました
      他の...
      bmakiさん、こんばんは^⁠_⁠^
      平野啓一郎さんの本、沢山読んでいるんですね!
      本当に凄い文章力で、私にはちょっと難しく感じました
      他の作品はもっと難しいんですね(^.^;

      「決壊」面白そう♪
      上下巻ですか
      大作ですね
      2023/02/01
    • bmakiさん
      はい、平野先生のファンになって、当時は刊行されていた平野先生の小説全部購入しました(^^)
      未だに、難し過ぎて読めない小説が一冊積読状態で...
      はい、平野先生のファンになって、当時は刊行されていた平野先生の小説全部購入しました(^^)
      未だに、難し過ぎて読めない小説が一冊積読状態です(笑)

      最近の本、ある男とか、マチネの終わりにとかは凄く易しく書かれていますね。

      決壊も難しいですが、ミステリ要素が多分にあって、ミステリ好きの私は一番好きな本です。再読もしてます(^_^)

      葬送という作品もあるのですが、これが本当に凄いですよ。もう罰ゲームなみに凄いんです(笑)

      でも読み終わった時の爽快感と言ったら、こんな気持ち味わったことないくらい凄かったです(笑)
      そのくらい難しかった^^;
      私の頭には。。。
      2023/02/02
    • aoi-soraさん
      罰ゲームって……(⁠ノ⁠*⁠0⁠*⁠)⁠ノ
      うん
      でも読んでみたいです!

      気になる作品が沢山あって困りますが、少しずつ読めたらいいな、と思...
      罰ゲームって……(⁠ノ⁠*⁠0⁠*⁠)⁠ノ
      うん
      でも読んでみたいです!

      気になる作品が沢山あって困りますが、少しずつ読めたらいいな、と思います^⁠_⁠^
      2023/02/02
  • 自分を偽るのではなく、偽りの自分で生きるのでもない。自分ではない何者かの、人生を引き継いで生きる。背乗りについて、そのように考えた事はありませんでしたので、新鮮な感じでした。
    それが、必要である過去を持つ人達。
    それを、念願する家族を持つ人達。
    彼らは、戸籍だけでなく、思い出さえも譲り受ける。自分を構成したものを作り替えて生活する。

    一人の息子を育てながら山村の実家で暮らしていた女性が、控えめな佇まいの男性と恋に落ち、結婚して娘にも恵まれる。その男性が事故死した事で、彼が語っていた彼ではなかったことが判明する。死んだ夫は誰だったのか。知り合いの在日3世の弁護士の協力を得て判明させていく。物語はこの弁護士が主体となっている。彼自身の出自への悩みと絡ませてくるのですね。
    たぶんかなり取材されたのではないのでしょうか。戸籍の背乗りの有り様の手法だけでなく、そこに至ったそれぞれの経緯を解明していきます。
    ある男の妻だった女性は、全てを知っても、自分で選んだ夫であったこと、愛情のあったことを受け入れる。愛情に過去は作用するのか、といった主題もあると思いますが、現実となれば、そこは難問ですよね。

    • 土瓶さん
      おびのりさん、こんばんは~^^
      突然ですが以前観た映画を思い出しました。

      「嘘を愛する女」
      たしか恋人が重病で倒れ、その免許証が偽...
      おびのりさん、こんばんは~^^
      突然ですが以前観た映画を思い出しました。

      「嘘を愛する女」
      たしか恋人が重病で倒れ、その免許証が偽造されたものだと判明して……。
      ヒロインは彼が何者なのかを弁護士に依頼して自らも捜査に加わるのだが。

      というストーリーでしたね。
      結末は、私の自慢の脳細胞がほぼ完全に消去したので覚えてません(笑)
      でもたぶん、本書の方がいろんな問題が絡んでそうですね。
      2022/10/19
    • おびのりさん
      土瓶さん、おはようございます。

      敬称を忘れていたので、書き直しです。
      ある男も映画化されているようです。
      知らなかったからヒットしなかった...
      土瓶さん、おはようございます。

      敬称を忘れていたので、書き直しです。
      ある男も映画化されているようです。
      知らなかったからヒットしなかったのでは。
      平野啓一郎氏初読です。
      恋愛としては、成就させたかった感じがあります。
      そして、少しいろんな問題を絡めたい気持ちがわかります。
      2022/10/20
    • 土瓶さん
      おびさん、おはようです(⁠^⁠^⁠)
      敬称……ああ、別にいらんいらん(笑)
      平野さん。今気づいたけど【マチネの終わりに】の人だね。
      あれも映...
      おびさん、おはようです(⁠^⁠^⁠)
      敬称……ああ、別にいらんいらん(笑)
      平野さん。今気づいたけど【マチネの終わりに】の人だね。
      あれも映画化されてたし、儲けてんな~(⁠~⁠ ̄⁠³⁠ ̄⁠)⁠~
      2022/10/20
  • 記録のみ

  • 文章が固くて難しく、読むのにすごく時間がかかってしまった。
    読み終えた時、内容よりも「やっと読み終わったー!」という気持ちが大きかった。

    ストーリーは面白かったので映画は見てみたい。

  • 突然事故死してしまった夫は、実は他人の戸籍を使ったまったくの別人だった。
    自分が愛したはずの夫はいったいどこの誰だったのか。
    依頼された弁護士が、この「ある男」の正体を探る物語。

    続きが気になり一気読み。面白かったし、とても良かった。
    「マチネの終わりに」でもそうだったが、平野さんは人物描写がとても丁寧な印象。
    その分登場人物にとても感情移入してしまう。

    ミステリー仕立てになってるけど、人権問題とか色々と考えさせられる部分も多かった。
    生まれ育った境遇によって、本人とは関係のない所で幸せになる権利を奪われてしまう事もある。
    戸籍に関しては実際にこういう事もあるんじゃないかなと思えた。

    もし彼の本当の過去を知っていたら同じように愛しただろうか?
    彼に最後の幸せな数年間があってほんとに良かった。


  • ベストセラー小説『ある男』は、心に染みる人続出!平野啓一郎が自ら語る、美涼の「三勝四敗主義」 | AdvancedTime
    https://advanced-time.shogakukan.co.jp/14056

    『ある男』(文藝春秋) - 著者:平野 啓一郎 - 沼野 充義による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS(2018/11/13)
    https://allreviews.jp/review/2708

    平野啓一郎「ある男」書評 夫は誰なの? 霧の先に差す光|好書好日(2018年12月08日)
    https://book.asahi.com/article/11997344

    『ある男』感想(亀山 郁夫) 平野啓一郎公式サイト(12月 18th, 2018)
    https://k-hirano.com/hirano20th/2421

    【第17回】間室道子の本棚 『ある男』平野啓一郎/文藝春秋 | 特集・記事 | 代官山T-SITE | 蔦屋書店を中核とした生活提案型商業施設
    https://store.tsite.jp/daikanyama/blog/humanities/5796-1031180328.html

    文春文庫『ある男』平野啓一郎 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167917470

  • 愛する夫が急死した。
    死後整理をしていると、驚くべきことに。
    夫の名前も、思い出として聞かされてきた彼の過去も全てがウソだった…
    だとしたら、あなたは一体どうするだろう??

    正確には、ウソというより別人の名前と過去を語っていたということなのだが。
    これだけ聞かされても普通もう意味がわからないだろう。
    これはこの意味がわからないことへの答えを探していくストーリー。

    現実にないとも言いきれない人生のとりかえっこ。

    彼の真実を知っていても妻は彼を愛したのか?
    真実を知ったあとに形を変えて愛は育っていったのだろうか?

    戸籍も心持ちもすっかり他人と入れ替わってしまった彼が何を考え妻や子をどのように愛していたのか、すでに知る由もない。
    彼の心の片鱗を集めるたびに、弁護士城戸の心は揺れ動く。

    読み応えのある構成で時間を要した本だった。
    もし。
    夫の死後に里枝が恭一に連絡しなければ、登場人物全員に全く違う人生がもたらされたに違いない。
    人生はいつもほんの少しの出来事で大きく展開が変わってしまう。

    映画も見たくなる本だった。



  • 愛したはずの夫は、別人だった。

    夫が亡くなり、一周忌後に没交渉になっていた実家へ連絡すると別人だとわかる。
    戸籍を交換していた理由。
    事実を知っていたら本当に愛せていたのか…
    過去を変えて生きていた彼は、幸せだったのか…

    どんなかたちであっても出会って、今を生きているのなら許せても亡くなったあとに知ったからこそ悩ましいのだろう。

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著者プロフィール

作家

「2017年 『現代作家アーカイヴ1』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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