- 本 ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167917470
作品紹介・あらすじ
愛したはずの夫は、まったくの別人であった――。
「マチネの終わりに」の平野啓一郎による、傑作長編。
弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。
宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。
ところがある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。悲しみにうちひしがれた一家に、「大祐」が全くの別人だという衝撃の事実がもたらされる……。
愛にとって過去とは何か? 幼少期に深い傷を負っても、人は愛にたどりつけるのか?
「ある男」を探るうちに、過去を変えて生きる男たちの姿が浮かびあがる。
第70回読売文学賞受賞作。キノベス!2019第2位。
映画『ある男』(2022年公開)は、第46回日本アカデミー賞で最多の8部門受賞!
最優秀作品賞
最優秀監督賞(石川慶)
最優秀主演男優賞(妻夫木聡)
最優秀助演男優賞(窪田正孝)
最優秀助演女優賞(安藤サクラ)
最優秀脚本賞・録音賞・編集賞など。
感想・レビュー・書評
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一読でこの話で伝えたかったことが全て理解できたのかというと…おそらくできていないんだろうなぁ…
国籍や在日について、林業、ジャズ、カクテルなど、そこまで詳しくない部分が出てきたため、もう少し調べて再読したい。
自分のこと、他人のこと、どちらに関してでも、愛するということに大事なのは今の状態だと感じた。
過去は見る人によって捉え方も違えば、嘘をついているつもりもなく違うことを伝えてしまうことだってあるし、戸籍を交換しているなど大きな話だけではなく自分の身の回りでもそうだろうなと思う。
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何とも言えない難しい本だったな。
生まれてくる場所や環境、それによって生じる境遇は選択の余地なく、パーソナルルーツとして刻み込まれ、自身から離れることはない。人生をやり直そうとしたら『(自分で)死ぬ』か『(自分を)殺すか』のいずれか。この作品からは、その選択肢をも越えた生き方に人間の生への執念を感じた。幸い私は日本という国で、小さな悩みをちょこちょここなしながら、何の苦労もなくここまで生きてきた。誰かの人生と比較しながら暮らすのはストレスだとは理解しているものの、きっと自分の境遇は恵まれていて、他と比較しても優位な立場にあると感じているからこその、この何とも言い難い読後感なのかも知れない。この感覚に幾許かの羞恥を感じる。 -
2024.4.16 読了
愛したはずの夫は、まったくの別人であった――。
「マチネの終わりに」の平野啓一郎による、傑作長編。
文章が固くて難しく、読むのにすごく時間がかかってしまいました。
読み終えた時、内容よりも「やっと読み終わったー!」という気持ちが大きかったです。
哲学的でかなり読み応えがある…と肯定的に言えばそうだが、自分にとってはかなり読みづらく、堅苦しく、苦手な作品でした。
ただ、内容的にはかなり考えさせられるものであったゆえに、「読むのが大変」が先行してしまって勿体無さを感じました。
平野啓一郎ファンはたくさんいるだろうし、すごい方なんだとは思うが、自分には合わなかったです。 -
文庫化を心待ちしていた作品。
こ難しい。
でもこれは、平野さんの作品に対する、とてつもない褒め言葉だ。
この小説で初対面の言葉が多く散りばめられていて、それは漢字を見ればだいたいの意味はわかるのだけれど、こんな言葉どこでどうやって知るのー!って言葉がたくさん出てきた。
そして、彼の作品は常にベースに深いテーマが潜んでいる。
今回も、幸福・生きること・アイデンティティについて、物語が進んでいくと同時に、そのテーマもぐじゅぐじゅしながら掘り下げられてゆく。
P131「彼は今、自分とは何か、ではなく、何だったのか、ということを、生きるためというより、寧ろどういう人間として死ぬのか、ということを意識しながら、問い直すように迫られていた」
最近読書をしていると、様々な作品の中に東日本大震災の描写が含まれている。作家さんが、自分なりにあの出来事を表現として昇華している証だと思う。
年月を重ねたことで、現地で直接的な被害を受けたのとは別の、震災に対する心緒を作品の中から感じることが多い。
あの出来事で人生観が大きく変わった人もいただろうし、この作品に出てくる主人公「城戸」もその一人だ。
P138『社会への関心は、香織が呆れる通り、どことなく白々しい、優等生的なものというのが本当で、ただ、それだけとも言い切れない、生来のお人好しもあるんだろう。自分の行動のどこまでが偽善でどこまでが真剣なのかなどと考えてみたところで、それこそ不毛じゃないか』
P265「恐らく職業的な経験もあって、彼の世界観が、これほどの悲惨な事件でさえ、あり得ることと認識していて、それに遭遇することを、一種、運命的な、事故的な何かのように見せているからだった」
城戸は弁護士をしている。わたしは法律家ではないけれど、福祉の専門家という自覚は第一線を離れてもずっとあって、何かのニュースで自分で口にした感想に対して、自分で「本当に?」と疑うことがある。その感想にはどこか、職業人としての偽善的な思いが潜んでいるような。本当にそう思うのなら、なぜ第一線で子どもの命を救わないのか。
人の命に関わる専門家は、どんなに悲惨な、凄惨な事件でも、仕事として、その事件に向き合って、対応をしないといけない。それが続くといろいろなことが麻痺してきて、通常身近では遭遇しない出来事も、まあまああり得ることになってゆく。
そして、幸福のこと。
P156「みんな、この世界の評価が高すぎるんですよ。願望ですよ、それって。だから、人が不幸になっても、本人が悪いって責めるし、自分の人生にも全然満足できないし」
生きること。
P180「とても真っ当な考えとは思えなかったが、最も愛する人たちが、自分よりも先に死んでくれているというのは彼女の死の不安を宥め、孤独な生を支えてさえいるところがあった」
アイデンティティ。
P313「それにやっぱり、他人を通して自分と向き合うってことが大事なんじゃないですかね。他者の傷の物語に、これこそ自分だ!って感動することでしか慰められない孤独がありますよ」
わたしは本や音楽、映画を通して感情を外に出すことが多い。いろいろな人の気持ちを聴いて、「わかるなぁ」なんて思うことはあるけれど、じゃあ自分がどう思うかって、白紙の状態から自分の気持ちを伝えないといけないとなるとうまく表現できなくて、作品の力を借りないとうまくできない。でも、それでいいんですね。
帯にある「愛したはずの夫は、まったくの別人だった」
こういうことって、マッチングアプリが流行してる今ならありえることなのかもしれない。
目の前にいるアプリで知り合った人が全然プロフィールと違うことはよくあるし、なにせ共通の友人がいないのは、信頼関係を築く上でやはり不安要素として残る。
その時にどうやって目の前の人がその人であると証明できるだろう。
わたしはどうやってわたしであることを証明できるだろう。 -
別人の人生を生きていた夫。
そうとは知らず、その夫を愛し結婚した妻。
在日三世のルーツを持つ、弁護士の城戸。
それを理解した上で結婚した妻。
「愛にとって過去とは何か?」
「愛に過去は必要なのだろうか?」
初めて読む、平野啓一郎さんの作品。
何とも壮絶な物語でした。
自分の過去を捨て、他人の人生を引き継ぎ、生きていく。
そうしなければ、生きていくことが困難な人もいる。
考えた事もなかったので、そのストーリーにどんどん引き付けられていった。
もし自分の夫が、全くの別人だったら?
一体自分は誰と過ごしてきたのだろう。
共に過ごした時間が幸せで、信じる事ができれば、過去は関係ないと言い切れるだろうか?
城戸が妻との気持ちのすれ違いに悩み迷う中で、正面から向き合う場面も心に響く。
もうすぐ映画も公開されるようなので、そちらも気になります。
平野さんの他の作品も読んでみたいと思う。-
bmakiさん、こんばんは^_^
平野啓一郎さんの本、沢山読んでいるんですね!
本当に凄い文章力で、私にはちょっと難しく感じました
他の...bmakiさん、こんばんは^_^
平野啓一郎さんの本、沢山読んでいるんですね!
本当に凄い文章力で、私にはちょっと難しく感じました
他の作品はもっと難しいんですね(^.^;
「決壊」面白そう♪
上下巻ですか
大作ですね2023/02/01 -
はい、平野先生のファンになって、当時は刊行されていた平野先生の小説全部購入しました(^^)
未だに、難し過ぎて読めない小説が一冊積読状態で...はい、平野先生のファンになって、当時は刊行されていた平野先生の小説全部購入しました(^^)
未だに、難し過ぎて読めない小説が一冊積読状態です(笑)
最近の本、ある男とか、マチネの終わりにとかは凄く易しく書かれていますね。
決壊も難しいですが、ミステリ要素が多分にあって、ミステリ好きの私は一番好きな本です。再読もしてます(^_^)
葬送という作品もあるのですが、これが本当に凄いですよ。もう罰ゲームなみに凄いんです(笑)
でも読み終わった時の爽快感と言ったら、こんな気持ち味わったことないくらい凄かったです(笑)
そのくらい難しかった^^;
私の頭には。。。2023/02/02 -
罰ゲームって……(ノ*0*)ノ
うん
でも読んでみたいです!
気になる作品が沢山あって困りますが、少しずつ読めたらいいな、と思...罰ゲームって……(ノ*0*)ノ
うん
でも読んでみたいです!
気になる作品が沢山あって困りますが、少しずつ読めたらいいな、と思います^_^2023/02/02
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自分を偽るのではなく、偽りの自分で生きるのでもない。自分ではない何者かの、人生を引き継いで生きる。背乗りについて、そのように考えた事はありませんでしたので、新鮮な感じでした。
それが、必要である過去を持つ人達。
それを、念願する家族を持つ人達。
彼らは、戸籍だけでなく、思い出さえも譲り受ける。自分を構成したものを作り替えて生活する。
一人の息子を育てながら山村の実家で暮らしていた女性が、控えめな佇まいの男性と恋に落ち、結婚して娘にも恵まれる。その男性が事故死した事で、彼が語っていた彼ではなかったことが判明する。死んだ夫は誰だったのか。知り合いの在日3世の弁護士の協力を得て判明させていく。物語はこの弁護士が主体となっている。彼自身の出自への悩みと絡ませてくるのですね。
たぶんかなり取材されたのではないのでしょうか。戸籍の背乗りの有り様の手法だけでなく、そこに至ったそれぞれの経緯を解明していきます。
ある男の妻だった女性は、全てを知っても、自分で選んだ夫であったこと、愛情のあったことを受け入れる。愛情に過去は作用するのか、といった主題もあると思いますが、現実となれば、そこは難問ですよね。-
おびのりさん、こんばんは~^^
突然ですが以前観た映画を思い出しました。
「嘘を愛する女」
たしか恋人が重病で倒れ、その免許証が偽...おびのりさん、こんばんは~^^
突然ですが以前観た映画を思い出しました。
「嘘を愛する女」
たしか恋人が重病で倒れ、その免許証が偽造されたものだと判明して……。
ヒロインは彼が何者なのかを弁護士に依頼して自らも捜査に加わるのだが。
というストーリーでしたね。
結末は、私の自慢の脳細胞がほぼ完全に消去したので覚えてません(笑)
でもたぶん、本書の方がいろんな問題が絡んでそうですね。
2022/10/19 -
土瓶さん、おはようございます。
敬称を忘れていたので、書き直しです。
ある男も映画化されているようです。
知らなかったからヒットしなかった...土瓶さん、おはようございます。
敬称を忘れていたので、書き直しです。
ある男も映画化されているようです。
知らなかったからヒットしなかったのでは。
平野啓一郎氏初読です。
恋愛としては、成就させたかった感じがあります。
そして、少しいろんな問題を絡めたい気持ちがわかります。2022/10/20 -
おびさん、おはようです(^^)
敬称……ああ、別にいらんいらん(笑)
平野さん。今気づいたけど【マチネの終わりに】の人だね。
あれも映...おびさん、おはようです(^^)
敬称……ああ、別にいらんいらん(笑)
平野さん。今気づいたけど【マチネの終わりに】の人だね。
あれも映画化されてたし、儲けてんな~(~ ̄³ ̄)~2022/10/20
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記録のみ
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文章が固くて難しく、読むのにすごく時間がかかってしまった。
読み終えた時、内容よりも「やっと読み終わったー!」という気持ちが大きかった。
ストーリーは面白かったので映画は見てみたい。
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愛する夫が急死した。
死後整理をしていると、驚くべきことに。
夫の名前も、思い出として聞かされてきた彼の過去も全てがウソだった…
だとしたら、あなたは一体どうするだろう??
正確には、ウソというより別人の名前と過去を語っていたということなのだが。
これだけ聞かされても普通もう意味がわからないだろう。
これはこの意味がわからないことへの答えを探していくストーリー。
現実にないとも言いきれない人生のとりかえっこ。
彼の真実を知っていても妻は彼を愛したのか?
真実を知ったあとに形を変えて愛は育っていったのだろうか?
戸籍も心持ちもすっかり他人と入れ替わってしまった彼が何を考え妻や子をどのように愛していたのか、すでに知る由もない。
彼の心の片鱗を集めるたびに、弁護士城戸の心は揺れ動く。
読み応えのある構成で時間を要した本だった。
もし。
夫の死後に里枝が恭一に連絡しなければ、登場人物全員に全く違う人生がもたらされたに違いない。
人生はいつもほんの少しの出来事で大きく展開が変わってしまう。
映画も見たくなる本だった。
著者プロフィール
平野啓一郎の作品





