傑作はまだ (文春文庫 せ 8-4)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167918712

作品紹介・あらすじ

「永原智です。はじめまして」そこそこ売れている50歳の引きこもり作家の元に、生まれてから一度も会ったことのない25歳の息子が、突然やってきた。孤独に慣れ切った世間知らずな加賀野と、人付き合いも要領もよい智。血の繋がりしか接点のない二人の同居生活が始まる――。明日への希望に満ちたハートフルストーリー。

感想・レビュー・書評

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  • 2024.1.10 読了 8.6/10.0


    新年最初の読書記録です、遅ればせながら明けましておめでとうございます!
    いつも私の拙いレビューを読んでくださる方々、ありがとうございます^_^
    今年もたくさんの良き本に、豊かで素敵な時間に出逢えますように


    さて、今回は瀬尾まいこさんの『傑作はまだ』です。
    前回読んだ『卵の緒』のレビューでも僭越ながら書かせていただきましたが、彼女の作品はちょっと複雑な家族関係を、重くならずに優しく、そして時にユーモラスに、だけどちょっぴり切なく描いているなぁ、と実感します。


    「家族」という言葉ひとつとっても、さまざまな形があります。家族というのは、人と人との結びつきの形、その呼称にすぎません。だとしたら、いろんな家族が、いろんな結びつき方が、あってもいいはずです。


    厳しい現実もあるけど、明るさや幸せもたくさんある。明日はもっと素晴らしい、そんなメッセージ性が瀬尾作品にはあります。

    そして本作には、瀬尾さん自身の作品に対する向き合い方や読書というものへの考え方が随所に垣間見えます。


    「小説を読むことは、人間の生きることや真実を見せてくれる。」
    「本を読めば読むほど自分の中を掘り下げていけるようで、一つ文字を体にいれるごとに自分に深みがますように思えた。」
    「生きるとは何か。人間とは何か。自分とは何か。書き方や話の内容は違っても、小説の根底に流れるのはそういうことではないだろうか。」
    などなど、読書とは何かについての言葉が心に刺さります。


    数えたことはないけれど今まで500冊以上は本を読んだ自分ですが、自分はそこまで深まったのか。人生が何か変わったのか。時々問いかけます。

    実際のところ、さほど変わってないのかもしれません。
    しかし、自分の知らない世界や仕事、価値観、生き方を知れましたし、何より感動と豊かな時間を味わうことがたくさんできました。
    そんな自分の読書ライフを振り返りながら読み進めた作品でした。

  • たけさんが「おっさんの成長物語が、こんなにも美しいのは奇跡的」だとレビューしていた。確かに、青年が成長する話ならば巷に満ち溢れている。おっさんは成長しない、できないだろう。そう、紛れもないおっさんの私は思っていた。思っていたので、これは読むべき本だと思い紐解いた。

    そういえば、「25年間編集者と会う以外はコンビニに行くぐらいしか家を出たことがない」というこのおっさん同様、私もからあげクン食べたこともなければ、スタバラテて何なの?の男ではある(←ホントです)。女子高生が、スタバでおどおどしているおばあさんのために大声で注文している。智くんは「後ろのためにやり方を示しているんだよ、そんなの普通だよ」という。この説明に心底驚いた。今時の若者は、人との距離の取り方が違うだけで、心根の優しい者はいくらでもいるのだ、きっと。私が驚くぐらいだから、おっさんはもっと驚いただろう。次第とおっさんの心境に変化が訪れるのは理の当然だと思う。

    というわけで、こんな引きこもり男で世間知らずのおっさんが、既に30冊も本をモノにしている小説家になっているという。その彼に25年間一度も会ったことのない25歳の息子が一カ月居候をすると言ってやってきた。30冊て、小説舐めるな、違和感ありありだ、というレビューが続出しているかと思いきや、異様に少ない。読者は みんな素直に受け入れている。別におっさんの味方ではないのだけど、私としては「おそらく経験よりも万巻の読書体験のバリエーションで「なんとか」してきたんだろう。」と、わざわざ彼を擁護する言い訳を用意していたのだけど、肩透かしだ。今時の若者は案外素直なのだろうか。

    智くんは何故、今になっておっさんのところにやってきたのだろうか?
    最大の疑問はこれだ。
    私はずっと推理していた。
    最後の方になって、やっと智くんから種明かしがされる。

    「おっさんの小説だったらどう?」
    と俺の顔を見つめた。
    「小説?」
    「作家だとさ、どんなふうにこの状況を結末にもってくの?」(169p)

    ……結局、おっさんは3つぐらい設定を言ってみるも、息子から全部反駁されて仕舞う。
    でも、私は3つ目の「自分が余命1ヶ月だと知った息子が父親に会いに行った」という設定をその前にに考えていたのである。智くんからは「病院をそれで抜け出せるってどれだけセキュリティの甘い病院?しかもどれだけパワフルな身体なんだ。病気ってそんな身軽に動けるもんじゃないんだぜ」と批判されてしまう。でも、と私は思う。1ヶ月じゃなかったらどうなんだろう。半年だったら?もっと自由効くんじゃないか?それで、智くんが3つ目の設定にムキになったことも、途中病気でアルバイトをおっさんに気づかれないように休んでいたことも説明がつく。そうだ、それに違いない。この直後、智くんはきちんと種明かしをするけど、それは小説的フェイントだ、私は最後の1行まで「どんでん返し」があるのではないかと疑っていた、‥‥ことを告白しよう。

    最初のおっさんの考えた1番目の設定は智くんから「ホラーだ」と言われ智くん自身のキャラと合わないと言って却下されるのだけど、確かに瀬尾まいこの小説キャラには合わないからこの反駁には説得力あったけど、明るく始まってホラーで終わらせることのできる小説家は幾人かはいる(若竹七海とか)。‥‥いや話があちこち行こうとしているけど、そんなこんなとは関係なく結局真実は、ほんわか感動ものでした!いい意味で!

    でも「傑作」はやはり次の作品だよね。
    このおっさん成長できたんだろか?
    できたような、できていないような‥‥。
    おっさんとしては頑張るしかない(←何が?)。

    • たけさん
      Kumaさん、おはようございます!
      確かに成長しないのがおっさんだから笑、「おっさんの成長物語」は言い過ぎだったかもしれませんね。
      でも、小...
      Kumaさん、おはようございます!
      確かに成長しないのがおっさんだから笑、「おっさんの成長物語」は言い過ぎだったかもしれませんね。
      でも、小説としての傑作は結局「まだ」かもしれないけれど、自らの人生が実は「傑作」だったことがわかった。そこにおっさんとしては希望を感じたものです。んで、僕も頑張ろうと思いました。
      2023/08/21
    • kuma0504さん
      たけさん、
      滅多に流行小説に手を出さない私に読ませたという点だけでも「奇跡」です(^ ^;)。
      もう、自分と比べながら読んだので、「成長が美...
      たけさん、
      滅多に流行小説に手を出さない私に読ませたという点だけでも「奇跡」です(^ ^;)。
      もう、自分と比べながら読んだので、「成長が美しくない」と感じるのは理の当然ですよね。客観的には、少しは「美しい」場面はあったと思います。
      紹介ありがとうございました♪
      2023/08/21
  • 50歳引きこもりぎみな作家のオジサンの所に
    生まれてから25年会っていない息子がいきなり現れるお話。

    人との繋がりを面倒に感じる親
    人との繋がりを作るのが得意な息子

    普通、立場が逆な感じですが(若い子の方が人との繋がり面倒くさがる?…)

    この2人関係が最初から最後まで、強引に価値観を押し付ける訳でもないのに歩み寄って行く感じが心地良い。

    大人になりきれていないお父さん
    同年代の人達より大人な息子

    自分の考え、自分の目線だけで生きてると
    どれだけ良く見てるつもりでも
    結構 見落としてると気づかされる作品ですね♪

  • ハートフルストーリー!まさにそれ。
    さらっと涙が出たり、ほんわかと温かい気持ちになれたり。
    ものすごく心を揺さぶる訳ではないんだけど、人の温かさや登場人物のちょっとした気持ちの揺れや高まりがすーっと心に入ってくる。これぞ瀬尾まいこ作品なんだなぁ。
    加賀野さんが智くんに大福を買う場面が特に好き。それに対する智くんの対応も好感が持てた。

    加賀野さんの小説、読んでみたくなった。
    智くんに話したアイデア(別人格案?)が面白そうだった。
    心温まって油断してたので余計、そこだけドキッとした。

  • 生まれてから一度もあったことのない、25才になった息子がやってくる。50才の父親を変えていく生活が始まる……とこのように瀬尾さんの作品では冒頭から「えっ、何々?」と引き付けてきます。
    この作品には瀬尾さんの、作家としての作品との向かい合いかたが折々に顔を覗かせます。小説には人となりが自然とでると本書にもありますので。
    厳しい現実もあるけど、明るさや幸せもたくさんある。明日はもっと素晴らしい、そんなメッセージ性が瀬尾作品にはあります。

    さて、50才の正吉ですがこれがすごい。作家として成功しているもののほぼ引きこもり状態。一人でも全く気にならないという性格上の特性を持っています。研究者に近いんじゃないかと思えます。他人に興味がないのに小説って書けるのか疑問になるほどです。
    それが社会性豊かな真逆の息子、智と暮らし始めることで変わっていきます。
    人と繋がり、様々なところに出掛け、ついには身近にある幸せに気付きます。
    あっさり読めて読後感が良かったです。

    「小説を読むことは、人間の生きることや真実を見せてくれる。」
    「本を読めば読むほど自分の中を掘り下げていけるようで、一つ文字を体にいれるごとに自分に深みがますように思えた。」
    「生きるとは何か。人間とは何か。自分とは何か。書き方や話の内容は違っても、小説の根底に流れるのはそういうことではないだろうか。」
    など読書とは何かについての言葉が心に刺さります。
    仕事の専門書を除いて、千冊くらい本を読んだけど自分はそこまで深まったのか。何か変わったのか。時々問いかけます。
    実際のところ大して変わってないのかもしれません。
    しかし、自分の知らない世界や仕事、そして生き方を垣間見ることがたくさんできました。
    そんな自分の読者ライフを振り返りながら読み進めた作品でした。大人になって司馬遼太郎とノンフィクションばかり読んでいたのですがこれからも、フォロワーさんのレビューからいろんな作家さんの小説を読み続けようと思っています。


  • 50歳の作家加賀野正吉は、編集者と会う以外は人と関わることをせず、ほとんど引きこもりのような生活をしている。
    そんな加賀野の元に、永原智という青年が突然訪ねてくる。
    加賀野は、智の母親に養育費を払うたびに送られてくる写真を見るだけで25年間一度も会ったことのなかった息子と、いきなり同居することになる。

    加賀野と智の嚙み合わない親子の会話が滑稽で、どこかもの悲しさも感じるのですが、明るく活発な智に影響されて、加賀野も次第に自治会の人たちと関わることを覚えて、人の温もりを知るようになります。

    瀬尾さんの描く家族の物語は、個性的だけどいつも温かい。
    誰かと一緒にいられる日常は、あたりまえじゃなく、有り難いこと。
    傷つくことを恐れて一人きりで暮らしてきた加賀野が変わると、作風にも変化が現れます。

    これから始まる家族との時間がとても楽しみで、読んでいる私たちにも希望を運んでくれるようです。

  • 「そして、バトンは渡された」が良かったので、他の作品も、と手に取った本作。

    50歳一人暮らし、作家業の男性のところに、生まれてから一度も会ったことのない息子が突然居候にやってくる、という話。

    「そして、バトンは渡された」は、血のつながりなんてなんのその、という感じのハートウォーミングだったのに対して、こちらは血のつながりをガチガチに意識するもの。

    登場人物に悪い人が全然いなくて、みんな穏やかで優しくて、こちらもほのぼのと心温まる話ではある。だけど、なんかしっくりこない。地に足が着いていないようなふわふわした感じがずーっとあって、そのまま終わってしまった。

    小説だからこんなこと言っても、と思うけど、設定から「ん?」と首をかしげてしまうような、現実味がないものだったからかも。
    「あなたの子だ」と言われ、毎月養育費は払うけど、一度も会おうとか何か行動を起こしたことがない。その息子が突然やってきてなんだかんだうまく一緒に過ごした。ずっと帰ってなかった実家に帰ってみると、息子とその母親は実家の両親と仲良くやっていた。主人公はそれをずっと知らなかった。かつて「なんだ中身のない女」だと思った息子の母親に再会し、定期的に3人で会うようになる。

    あれ、25年の歳月ってこんなに軽かったっけ?と思ってしまった。
    いやいや、小説なんだから、どんなに奇天烈な設定でもいいのだけれど、その現実味のない設定すらをも超えて、こう、ぐっと来てほしかった。(←私の語彙力のなさ、表現力のなさよ。)

    主人公は息子が来てくれたおかげで、引きこもりに近かった生活が一転、近所の人とも交流するようになって、やはり基本的に人は人と接して暮らすべきなんだなぁ、と思った。その他にも息子の突然の登場は主人公にプラスの影響を与えていて、それは自分の作品に関するところにまで及んでくる。これまで自分の小説は「人間の本質に迫るものを描いていて、それには深い闇の部分も書かなくてはいけない」と暗く重い作品ばかり書いていたのが、そこに疑問を抱き、作品の色も変わっていきそうな気配を残して本作は終わった。

    暗く重い話を避けたいときには、ピッタリの心温まるストーリーだとは思うけれど、やはり私は「そして、バトンは渡された」の方が断然好きだった。

  • 作家である主人公は、人との接触は最小限、孤独に生きてきた。
    そんな中、生まれて25年、はじめて会う息子と突然同居することに。思ったことはハッキリ言う清々しい息子智。
    ドギマギするスタートだったが、息子と接する中で戸惑いながらも起こる父の変化が面白い。
    一番印象に残ったのは母美月。いろんな感情はあっても、それを超えて息子を育て、人とつながり、主人公を陰ながら応援するってすごいな。智の振る舞いを見てより思う。最後3人のつながりは温かい気持ちになれた。
    人とのつながりはしんどい事もあるが、温もりもある。一歩踏み出せれば。

  • 独り暮らしで近所付き合いもなく、親との連絡もとらずに暮らしていた作家のもとに、生まれてから1度も会ったことのなかった息子の智が現れ、突然同居が始まるところから物語は始まる。

    最初は戸惑うも、次第に智を介して周囲の人と繋がることの心地よさを感じるようになり、最後には、智とその母、美月が毎月訪ねてくるようになる。

    結婚はせず、養育費をもらっている間は毎月、智の写真を送りつつも、25年間直接会わせることはなく、それでも智をこんなに伸びやかな人に育てた美月はスゴいと思うが、そもそも、そんなに浮世離れした作家に小説が書けるのか?ということも含め、リアリティのない設定にも関わらず、ほっこりした気持ちにさせてくれるのは、瀬尾まいこならではかも。

  •  人との関わり…。面倒なことも多いけれど、これがあるからこそ人としての喜び・希望・価値などを見出し、前向きな気持ちになるんだなぁ、と思わせてくれる温かな物語だった。
     五十歳、一人暮らしの小説家男のもとへ、一度も会ったことのない二十五歳の息子が現れて…。互いに「おっさん」「君」と呼び、息子の明るさ・社交性に戸惑いながら、五十男が次第に変容していく様子が楽しい。
     最後には、両親、妻、息子のこれまでが明らかになり…。実際にはあり得ないよと思うものの、人の繋がりの温かさと明日への希望を与えてくれる、よい物語だった。

    • やまさん
      NO Book & Coffee NO LIFEさん♪おはようございます(^-^)
      本棚を見たら、埜納タオさんの「夜明けの図書館」を登録し...
      NO Book & Coffee NO LIFEさん♪おはようございます(^-^)
      本棚を見たら、埜納タオさんの「夜明けの図書館」を登録したのを見ました。
      この本は、お勧めです。
      暁月市立図書館に採用された司書・葵ひなこさんが、明るく、楽しく、解りやすく図書館を紹介してくれます。この本を読んでから図書館を見る観方が変わりました。
      感想を楽しみにしています(*^_^*)
      やま
      2022/05/18
    • NO Book & Coffee  NO LIFEさん
      やまさん ありがとうございます。

      実は今読み進めている途中で、夜には7巻まとめた感想を書き込みたいと思います。
      ご丁寧に教えてくださり、感...
      やまさん ありがとうございます。

      実は今読み進めている途中で、夜には7巻まとめた感想を書き込みたいと思います。
      ご丁寧に教えてくださり、感謝します。

            NO Book & Coffee NO LIFE
      2022/05/18
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著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

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