- 文藝春秋 (2022年5月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (464ページ) / ISBN・EAN: 9784167918729
作品紹介・あらすじ
「図書館を愛した」喜和子さんと、「図書館が愛した」人々の物語
上野公園のベンチで偶然、出会った喜和子さんは、
作家のわたしに「図書館が主人公の小説」を書いてほしいと持ち掛けてきた。
ふたりの穏やかな交流が始まり、
やがて喜和子さんは
終戦直後の幼かった日々を上野で過ごした記憶が語るのだが……。
日本で初めての国立図書館の物語と、戦後を生きた女性の物語が
共鳴しながら紡がれる、紫式部文学賞受賞作。
解説・京極夏彦
みんなの感想まとめ
図書館を愛した女性とその思い出を通じて、戦後の日本の歴史と人々の絆が描かれた物語です。主人公は、偶然出会った喜和子さんから図書館をテーマにした小説を頼まれ、彼女の幼少期の記憶や、図書館に関わった文豪た...
感想・レビュー・書評
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15年ほど前、わたしは上野公園のベンチで、とても魅力的な白髪女性の喜和子さんと出会った。
約束もせずに別れたけれど、上野の図書館で私たちは再会し、わたしは喜和子さんに上野の図書館が主人公の小説を書いてほしいと頼まれる。
お題は『夢見る帝国図書館』。
福沢諭吉が発した「ビブリオテーキ!」という言葉とともに建てられたこの図書館には、多くの文豪や著名人たちが熱心に通い詰めていました。
名前を次々と改め、震災や戦争を乗り越えていく図書館の歴史が、中島京子さん独特のユーモアを交えて分かりやすく語られていきます。
けれど、これは単なる図書館の歴史をたどる小説ではありませんでした。
木造の小さな家で暮らす喜和子さんの、終戦直後の上野での思い出話に取りつかれたわたしは、喜和子さんが亡くなってからも、彼女の交友関係や幼い頃の曖昧な記憶をたどって真実を突き止めようとします。
「戦災で家を失くした人たちによって自然発生的に作られたバラック集落」であり、「上野はいつだって行き場のない人たちを受け入れてきた」
そんな時代を越えて、建物はいつもここにあり、人よりもずっと長生きするのです。
図書館を愛した喜和子さんの人生が尊く、儚く、そしてわたしと喜和子さんの偶然の出会いがまさに夢のようにも思える優しい物語でした。 -
帝国図書館にまつわる話と主人公の半生を織り交ぜながら描いている。著名な文豪も数多く出てきて面白いのだが、私には理解できない内容も多かった。あー、無知な自分が恥ずかしい…。現代の小説に慣れすぎているせいか、本作品は読むのにはとても苦労した。
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これはなかなかに面白かった。
ふだん軽めの話ばかり読んでいるので、久し振りにしっかりした話を読んだ印象。
語り手であるフリーライターの〈わたし〉が、仕事で国際子ども図書館を訪れた帰りに上野公園のベンチでたまたま隣に座った女性・喜和子さんと言葉を交わしたところから始まる物語。
かつては図書館に「半分住んでいたみたいなもの」だという喜和子さんが〈わたし〉に、上野の図書館の小説を書かないかと持ち掛けて…。
二人のつかず離れずの交流が始まるのだが、二人の話の間に挟まる、日本で初めての国立図書館にまつわる「夢見る帝国図書館」と題された数々の話が、まず抜群に面白い。
図書館の創設前夜から始まり、樋口一葉から宮沢賢治や林芙美子、和辻哲郎に谷崎潤一郎その他多くの文士たちとの関わり、お隣の動物園の黒豹や象の花子の逸話、果ては蔵書たちの嘆息まで、時代の波に翻弄された図書館を取り巻く喜怒哀楽が色んな手際で語られて、こちらの好奇心も刺激される。
占領下の図書館にジープで乗りつけたアメリカ軍人の若い女性が、新しい憲法の草案のまっさきに「この国の女は男とまったく平等だ」と書いておかなければと誓うシーンのなんと眩しいことか。
喜和子さんと〈わたし〉に加え、喜和子さんの元愛人だという大学教授、元下宿人の藝大生、行きつけの古本屋などが絡んで語られる話は、現在の話とそれぞれの記憶の中の昔の話がないまぜになり、『どこかで時間を止めてしまったような風情が漂う』上野界隈の情景も相俟って、時空を超えて縦横無尽に展開し、その不思議な雰囲気に飽くことがない。
喜和子さんが亡くなってからは、喜和子さんが探していた絵本や彼女宛の葉書に書かれていた数字の謎を軸に、喜和子さんの生涯を辿っていくちょっと謎解きっぽい話になるが、どこまでは真実でどこまでが虚構か、いつの話をしているのか、まかれた伏線が次々と覆されるように色んな喜和子さんが現れる。
数奇な生涯、とりわけ戦後の荒波を生き抜く中で『記憶の断片をたどって、自分が自分であるために必要な物語を、作ろうとした』喜和子さんの深い内面世界が浮かび上がり、その心情が切ない。
「夢見る帝国図書館」の最後のエピソードの中には、図書館の前で復員兵と出会う幼い女の子。喜和子さんの生涯もこの図書館の歴史の一部であったことが知れ、とても感動的な幕切れだった。 -
ゆったりとした気分で読了。視点人物はもちろん、出てくる人々が皆「普通」の感覚を持ち合わせているので、読んでいて安心感があります。
途中途中に挿入される「帝国図書館史」的なエピソードは、フィクション部分も含めて、とても興味深く読みました。個人的には吉屋信子に纏わるエピソードが、このような小説に描かれているのを初めて目にしたと思います。
"繰り返し再読しても新たな発見がありそうな小説"に久しぶりに出会えた感じがして、とても満足です。お薦めです。 -
上野で、飄々とした、ちょっと変わった
年の離れた女性、喜和子さんと知り合い、
友達となったフリーライターのわたし。
その喜和子さんから、図書館を主人公にした
小説を書いて欲しいと頼まれる。
奇妙な友情のような喜和子さんとの交流。
やがて、その喜和子さんが亡くなり、
わたしは、生前、喜和子さんが探していた
「としょかんのこじ」という絵本の存在を
探し始める。
タイトルだけ見ると、図書館の歴史を書いた、
ちょっと固い本のように思えるけれど
(私も実はそう思っていた)全くそんなことは
なくて、帝国図書館の苦難の歴史と、喜和子さんの話が交互に語られ、やがて現在に繋がって行くと
いう構成になっている。
喜和子さんを愛した、大学教授の古尾野先生と
ホームレスの五十森さん、女装が趣味の芸大の
学生、谷永雄之助くんなど、喜和子さんの周囲の
人達がなんとも魅力的。
途中から登場する、喜和子さんが婚家に残して
きた娘との関係、孫娘との絆や約束など、
図書館の苦難の歴史と喜和子さんのそれまでの
人生がうまく合わさり、物語に深みを増す。
読み終えた後、いい本を読んだなあと
しみじみと感じた。
時代に翻弄された、かつて帝国図書館と呼ばれた
建物は現在、「国立国会図書館国際子ども図書館」として、その建物を引き継いで運営されている。 -
日本にも英国のような図書館を作ろう、と上野に建てられた帝国図書館。現在は国際子ども図書館になっている。明治、大正、昭和と、数々の事件や戦争の影響を受けたり、予算がないとして建設や増築が進まなかったり、大変な歴史があったようだ。
本作は、この帝国図書館を舞台に、戦後を図書館近くのバラック地区で過ごしたことのあるおばあさん(喜和子さん)と、ひょんなことで知り合った若い小説家の交流を描いている。この帝国図書館には樋口一葉など多くの有名な作家が通っていたとか、戦時中に図書を守るために蔵書を疎開させていたとか、図書館の歴史について書かれていて、歴史の勉強をしてる気分にもなった。
私は上野の図書館には行ったことがないけど、荘厳な建物の様子とか、閲覧室での静かな雰囲気が想像できた。こういう古い建物って、入ると、なんかトリハダ立つよね。
お話のほうは、喜和子さんの壮絶な生い立ちが印象的で、女性が凄くしいたげられていたり、昔はこれが当たり前だったと言われても、なんかもやもやしてしまった。戦後の上野にバラック地区のような場所がかなり長い間あったなんて知らなかったので、知ることができて良かったと思う。 -
喜和子さんの人生と夢見る帝国図書館の2つの物語が進みゆく
物語の中で目にする名だたる文豪達の名前が登場
史実を元にしているのだとは思うが、その辺は私は無知なので物語の1つとして楽しんでいた
なんというか普通に、あっ!知ってる名前発見!!的な感じで…笑
もしかしたら、文豪たちや帝国図書館の歴史について詳しい人なら私とは違う楽しみ方をできるのかな?と思ったり
喜和子さんの人生は温かく寂しく悲しく楽しく1人の人生の歩みを覗き見る
彼女はどんな気持ちだったのだろう
彼女は幸せだったのだろうかと
きっと語り部の「わたし」も色々な想いになったことだろう
喜和子さんと「わたし」の不思議な関係性を、私は羨ましいなと感じられる
物語で出会った喜和子さんに関わる人々を通し、彼女がどんな女性で彼らにとってどのような存在なのかを見ると、本当に感じ方は人それぞれ
実際の歴史を全くもって私は知らないので想像するしかないのだが、本が貴重な時代の中では学ぶために帝国図書館へ多くの者が足を運んだことだろう
そして帝国図書館に彼らは愛されていたことだろう
喜和子さんも、帝国図書館に愛された1人なのかもしれない
京極夏彦先生の解説を読み、少し感じ方を変えるのもまた一興だなと -
小説家志望のライターである語り手の「私」は、ある日図書館帰りの上野公園で喜和子さんと出会います。
図書館と小説というワードで意気投合した2人。「私」は喜和子さんから「図書館が主人公の小説『夢見る帝国図書館』を書いてほしい」と頼まれます。
日本の図書館の歴史を紐解く『夢見る帝国図書館』パートと同時進行で、喜和子さんの過去も少しずつ明らかに。
戦後を生きた喜和子さんの人生はかなり激動。そんな彼女にとって、大好きな本にどっぷり浸かれる図書館は自分を取り戻せる場所だったのかな。なんかわかる気がするなぁ。
一方図書館も、資金不足・書庫不足から火事・震災、戦争、戦後の混乱…と、だいぶ激動。
だけど、それを語る『夢見る…』パートがとにかくポップで重苦しさがなく、面白く読んでるうちに勉強にもなっちゃう。知らなかった事ばかりで楽しい!
ラストはほっこり、なんだか図書館の想いまでキャッチできたような気分。
時代の変化に健気に喰らいついてきた図書館、すでに意思をもってる感すらあって、こうなりゃ夢だって見てるのかもね。
昔『図書館は成長する有機体である』と習ったのを思い出しました。 -
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人の想いを縦糸、横糸のように織りなして未来を創造する。
紡がれるとはこういうことをいうのかもしれない。
帝国図書館が見てきたものは、図書館の歴史だけではない。日本の歴史でもある。
時に樋口一葉に恋をし、戦時下に蔵書達は互いに話し始め、図書館だけが知っている事実がここにはあった。
帝国図書館から国立図書館になった現在までのアルバムを覗いているかのような読書体験だった。
『国際子ども図書館』へ行ってみようかとふと思う。
いくつもの閲覧室があるらしく、そこを目的地に電車に乗って、喜和子さんの愛した上野という町を、たい焼きでもかじりながら、ただただその懐の深さを感じながら歩く休日というのも素敵ではないだろうか。
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史実とストーリーが入り混じって、へーそうなんだ!ってこともあれば、ベースとなるストーリーにも惹きつけられ。。。なんか少し世界が広がった気がする本でした。図書館を中心に、著名な作家とその物語が繋がっていく構成もすごく素敵でした!
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小柄でちょっと風変わりの、高齢だがどことなく少女チックな喜和子さん。ちょうど私の母と同じくらいなのか。駆け出しの小説家の私とある日めぐり逢い、帝国図書館のことを書いてくれという。戦後の混乱期、日々なんとか食いつないでいくしかなかった苦労人が山ほどいたことだろう。喜和子さんも義兄に嫁いだ母に捨てられたような感じ、結婚後も夫や姑から虐げられて、そこから逃げ出してきた。安定などなかった。図書館も存亡の危機を繰り返していた。
タイトルにある、夢見る図書館。
私たちが夢に見る図書館なのか、図書館が夢を見るのか。そのどちらでもあり。
樋口一葉のことをきっと図書館は恋してしまう。
そんな素敵な擬人化が出てくる。
肩こりで近眼の一葉は、本にぐっと顔を近づけて読んだ。
帝国図書館と樋口一葉、相思相愛。
文豪たちが通いつめ、そして戦禍に呑み込まれた帝国図書館。現在の国立図書館となるまでの数々のエピソードが読める。それと交互して、喜和子さんというひとりの女性の来し方が、彼女の死後、それこそページを繰るように少しずつ詳らかになっていく。たしかに波乱万丈ではあれ、なんでもありの戦後においては珍しくはなかったであろう境遇、その中で誰をも拒まず受容する上野という土地、そして図書館は、ひとりの女性の心の拠り所だったし、きっと他の多くの人にとって安らぎの場であっただろう。
豊かで優しいお話。
私も国立図書館の椅子に座り、想像するしかない百年の過去に思いを馳せつつひとときを過ごしくたく思う。 -
私には些か入り込むには知識が足りませんでした。
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福沢諭吉の提言で建設された日本初の国立の図書館。資金難の中で奮闘する図書館員と、図書館を愛した文豪たちの歴史。そして戦後を生き抜いた一人の女性「喜和子さん」の物語が交錯する。
自分自身の読書体験と重ね合わせながら、じっくり味わいたい一方で、喜和子さんをめぐるミステリーに頁をめくる手が止まらなくなってしまった。
壮大な大河小説を読み終えたような読後感。しばらく余韻に浸っていたい。
解説は京極夏彦。 -
上野にある国際子ども図書館を前に、女性二人が出会うお話。
喜和子さんの口からは帝国図書館だった時代の話が語られ、『夢見る帝国図書館』という小説を書いて欲しいと「わたし」に持ちかける。
結構、東京の歴史的な建物の小説は読んだけど、そういえば帝国図書館は初めてかも?
博物館みたいに施設に入ることにお金がかかるわけではなし、その上、本は「貸す」ものなんだから、確かにお金はかかる一方よな……。
作中では、帝国図書館と喜和子さんの関わりが解き明かされていくのだけど。
中島京子さんの描く「おばあちゃん」って、茶目っ気があって、楽しいなー。
けれど、自由に憧れる女性って、本当に生きにくかったというか、どこかに歪みを残したままのところがある。
いや、それは男性だって変わらないのかな。
喜和子さんを楽しく読みながら、ちょっとだけ寂しくなるのは、なぜなんだろう。 -
本を書こうとしていた喜和子さん。彼女と彼女が描こうとしていた図書館のお話が交互に書かれている。
喜和子さんは途中で物語から姿を消して、彼女の過去を突き止めようとする推理小説のような感じがした。
図書館の歴史は概論でさらっと流しただけなので、いろんな事があったのだなぁと感じたし、司書資格を持つなら、もっと知っておくべきであったと思う。
時代の混乱とも相まって、図書館も書籍も語る。
史実と創作の境がよくわからない。あり得たかもしれないおはなし。
近くに図書館のあることの幸せ。
本を読みに行くことができることの幸せ。
デジタル送信もできるようになって、さらに図書館は広がる。 -
上野で出会った喜和子さんと作家のわたしが交流する現代パートと夢見る帝国図書館パートが交互にやってくる作り。
この「夢見る帝国図書館パート」が誰かが書いた物語なのかうわ言なのかよくわからないまま読み進めていましたが、ラストですべてが丸く繋がります。
本名は貴和子だけど、ある時を境に喜和子を名乗り続けたという部分が、喜和子さんの笑顔や過去を経ての生き方を感じられてこの物語の中で一番好き。 -
貴和子さん亡くなってから、半分もだけど、話だったって、もはや貴和子半生記だった。帝国図書館と交互に書かれていてそれが面白いし、でも思ったより頭の中に入ってこずですから。亡くなった時の暗号めいた手紙の解読する図書館で会いましょうの件は微笑ましい。そして最後の帝国図書館の貴和子さん出てくる件でじんわりきてしまう。これは感動した、とつとつと推理小説の感じで流れていくがやなせんが舞台のふんわり出会いふんわり遊ぶ2人の関係は良い。途中蔑ろにしてしまった所はダメだけど
著者プロフィール
中島京子の作品

つい先日、上野の国際子ども図書館を訪れたばかりで、興奮してしまいました(笑)
娘と美術展を観たあとで、時...
つい先日、上野の国際子ども図書館を訪れたばかりで、興奮してしまいました(笑)
娘と美術展を観たあとで、時間もなかったので、ゆっくり出来なかったのですが。
建築物としても興味深く、素敵な空間でした。
この本、読んでみたいです!
国際子ども図書館に行かれたのですね!
この本の興奮がまだ冷めきっていなくて、ほんとに羨ましいです。私も行...
国際子ども図書館に行かれたのですね!
この本の興奮がまだ冷めきっていなくて、ほんとに羨ましいです。私も行ってみたい!
この本のおかげで中島京子さんがますます好きになりました。歴史にも興味が湧いてきました。
aoi-soraさんも、ぜひぜひ読んでみてくださいね♪