ファースト クラッシュ (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2022年10月5日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784167919443

みんなの感想まとめ

初恋をテーマに、三姉妹の視点から描かれた物語は、心のモヤモヤを初恋と認識する瞬間をドラマティックに表現しています。各キャラクターの個性的な性格が織りなすユーモラスな展開は、現代らしさを感じさせつつも、...

感想・レビュー・書評

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  • 初恋を3者の視点から描いた本作でしたが、初恋の描き方が凄く印象的でした。

    初恋はしばしば小説のテーマになりがちですが、この作品では恋を知らなかった人が、心のモヤモヤを初恋であると認識した瞬間を実にドラマティックに表現しているように感じました。

    物語の内容については、3者の個性的な性格も相まって、ユーモラスな印象が強かったですが、今時こんな人たちいる?っていう印象もまた強かったです。

  • 久々の山田詠美。エイミー。僕は勉強ができない、は何度も読んだ。ほかにも、瑞々しくて本能に忠実でちょっと大人な恋の話を、若い頃はドギマギしながら読んだ。綺麗なだけじゃない人と人との関わりの中で生まれる感情、登場人物のそういった感情や考えを、赤裸々にあっけらかんと語るその文章は健在。

    ファーストクラッシュとは、初恋のこと。物語は、資産家の三姉妹が住む家族のもとに、父親の愛人の息子が引き取られてやってきた当時の日々を、三姉妹それぞれの一人称で語られる3章からなる話。彼女たちのファーストクラッシュの相手は全員、そのもらい子の男の子。だけれどもそこは山田詠美、甘酸っぱくてウフフな初恋ではない。三人三様の初恋模様が面白い。大人の読者からしたら、姉妹の目に映る母親の心の内や苦しみにも思いを馳せると思う。

    なおこれらの物語は、おとなになった三姉妹の回想という形をとってるのも良い。姉妹の一人称による観察や出来事の描写から、その少年はどんな気持ちでどんなおとなになっていったかを、読者はものすごく想像する。掻き立てられる。そうこうしてるうちに迎える全編のエンディング…ほぅ。大人って、どんな人だって、子供のころの延長線上にいるんだよねぇ。わりと好きなエンディング。

  • はじめての山田詠美さん。
    力強い文体と恐ろしく細かい描写に、江國香織さんが好きそうな感じだなぁと思った(泣かない子供の作中で紹介されていた作家さんが山田さん)。
    とっても女性らしい作品で、こんなに感情を分析でき、文章にできる力量に乾杯したい。文学の力を実感した。
    この作品は本当に「女」っぽい。

    薫子、よかったね。

  • 表紙を初めて見た時、裏のあらすじを読んだ時、すごくドロドロしたものなのかなと覚悟しながら読みました。でも実際そんなことはなくて、でも女性の「誰にも見つけられたくない部分」みたいなものは描かれていて…。読了後はうわあああぁぁとなりました。いい意味で。短いのでサクッと読めつつも、満足感は大いにありました。

  • 久々も久々に山田詠美さんの作品。
    10代に出会った頃の衝撃を思い出した。
    いつも衝撃と言葉と文学、そして恋という感情を教えてくれる。
    そう、恋愛のど真ん中なのに、けして恋愛だけではないのが山田詠美さんだった。
    かっこよくて大人な大人を教えてくれる。
    20代でも、もっと読んでおけば良かったなぁ。

    解説も良かったので、文庫で読んで良かった。

  • 初めての山田詠美作品。
    初恋のことを「ファーストクラッシュ」と呼ぶと初めて知った。たしかにこの作品においては「クラッシュ」という響きがしっくりくる。

    登場人物の誰にも共感できなかったけど、そういう感覚になる人もいるのか、と新鮮な気持ちで読み進められた。場面転換で空白行がないのは、語り手の思考の流れをそのまま読んでいるような感覚にするためなんだろうか。

    咲也が気持ちを吐露する場面や、島崎藤村の詩を聞いて昔のことを思い出すシーンが映画のようで美しかった。
    ラストは「けっきょくそうなるの!?」という終わり方だったけど、鬱蒼とした森を抜けた時のような解放感を覚えて何となく安心した。

  • 初恋のことをファーストクラッシュという。その1行だけでもう最高。この先ずっと私はファーストクラッシュの感覚を忘れないし、忘れたくない。好きな人は特別で愛おしくて、憎い。なんでこんなにも恋に対する表現が豊かなのだろうと山田詠美さんにはいつも驚かされる。

  • 初恋という熱病におかされるのは一度しかないのは幸福であるのと同時に女であることからは逃れられないことだと

  • 父の愛人の子に恋してしまった三姉妹の物語

    父の愛人が亡くなって引き取られてきた男の子、新堂力(リキ)

    裕福な家庭に暮らす高見澤家の三姉妹
    長女の麗子は「お嬢様気質」
    しかしその振る舞いは空回りしているように見える

    次女の咲也は読書家で斜に構えるひねくれ者

    三女の薫子は天真爛漫
    力とは犬仲間のように思っている

    そんな三姉妹の三者三様の恋模様とその表現

    そして母親による力への攻撃


    もの凄く歪んだ愛の形なのか?
    三姉妹の誰もがそれぞれの方法で力に執着している

    麗子が空回りしているのはわかる

    これ系の物語の主人公として咲也が一番適切なんでしょうけど
    色々と拗らせすぎてるからなぁ
    でも、一番力の事をわかっていたのは咲也なのではなかろうか?
    だからこそ一緒にはいられないわけだけれどもね

    すったもんだの末に中年になってから薫子とくっつくというのが一番意外な結末だったな
    薫子、うーん薫子かぁ……
    ないわけではないけど、憐れんだという意味では三人とも同じなんですけどね
    執着し続けた年月の重さか?

    そんな意味で、母親エンドというルートも有りな気がするんだけどね

    家族の中で唯一憐れまなかったから王子様という理屈
    この辺が文学的な発想だよなーと思う

  • 買ったまま、積ん読になっていた文庫本。時間が空いた隙に読み始め。
    冒頭、次女・咲也の章のスタートのみ、珍しくモタモタと入り込めず…リキの登場からは一気にストーリーに入っていけた。
    読み終わって、少女時代の耽美な世界に遊んでしまい、現実世界に戻れず…笑
    いつもエイミー作品ではそんな感じになりますが、今作は、自分の年齢に近い登場人物たちが過去を振り返るから、さらにそんな世界に入り込んでしまい、そして、己の年齢に恥ずかしくなる…でも、きっと、私のように感じた、ファースト・クラッシュ体験を持ったオトナの女性たちが世には他にも居るのだろうと勇気付けられる作品でした。
    リキの視点からのストーリーで答え合わせがしたいところですが、それは読者の永遠の願いであり、答え合わせがないことが特権でもありますね。

  • 再読。ハードカバーの時、一回読んでた。
    何度読んでも、父親の愛人の子として高見沢家に引き取られ、みなしごとして憐れみをかけられながら、成長するリキの魅力的なことといったら、そりゃあ家中の女性たち、母、長女の麗子、次女の咲也、三女の薫子、お手伝いのタカさんまでも、それぞれのアプローチの仕方で近づき、振り回されていく。
    リキは憐れみよりも憎しみ罵倒されたほうがまだ良かったんだね。
    それが高見沢家では唯一、母のだったんね。
    ラストは犬同士の薫子との結ばれる感じで終わる。
    中年に近い歳になってるふたりだけど、それだけに年月が必要だったんだね。
    ファースト・クラッシュは初恋の意。
    初恋は砕けるものだから?

  • 再読。やはり山田詠美さんの恋愛小説は独特で、心を描いているのに肉体的、身体を描いているのに精神的。初恋の手に負えないモヤモヤした揺れが三姉妹の(あるいは母親の)それぞれに描き分けられているのがすごい。

  • 2026/8/7

    初恋のことをファーストクラッシュというらしい。
    まさにクラッシュな初恋の物語。
    島崎藤村の詩を読んで、初恋を自覚して涙が出るシーンがすごく良かった…!

  • 共感できるはずのない感情が立体的に迫ってくるような文章だと思います、すごいですね…。

  • 初恋って言語化できないものだと思ってたのが、覆された。

    とある男性にファーストクラッシュ(初恋)した、三姉妹の話。

    終わり方が良かった。

  • ラブではなくクラッシュ!不穏で残酷で繊細、そしてドラマティック。一気読みしました。

  • 高見澤誠(まこと):高見澤家の父。親しい友人が亡くなったということで、身寄りのない力(りき)を引き取り、家族に迎える。数年後に若くして亡くなってしまう。

    高見澤麗子(れいこ):高見澤家の長女。愛くるしい容姿と清らかな心を持っており、近所でも評判。時に天使を連想させる。12歳。

    高見澤咲也(さくや):常に仏頂面。愛想のかけらもなかったが、常に抱えていた本も相まって「知的」という印象を周りに与えた。心の中では相手を見下す。性格が捻くれている。10歳。力が居候の身でありながら、母や姉の優しさに甘えようもんならその性根を叩き直すべく、嫌がらせをするつもりだったが、力が控えめな性格のため拍子抜けした。それはそれとして、きつく当たる。

    高見澤薫子(かおるこ):活発。あどけない表情もやんちゃな立ち振る舞い。思ったことをすぐに口にする。6歳で3姉妹の末っ子。

    新堂力(しんどう りき):高見澤家に引き取られた少年。誠が親しかった友人の子どもと紹介。新堂力の両親は2人とも亡くなっている。麗子の目から見るとハンサムらしい。実際は父の愛人の子。

    タカ:高見澤家に勤める家政婦のおばちゃん。

    高見澤美沙子(みさこ):力の母に誠を寝取られる。そういうシーンがあるわけではないが、浮気されていることに気づいており、その子供である力に浮気されたことの鬱憤を八つ当たりしている。力が家に居候するようになってから、力に対しては情緒不安定になる。しかし、年が経つにつれ少しずつ力を受け入れ始める。

    家長の誠は仕事で家を空けることが多く、家は女性の園だった。

    誠の妻である美沙子、長女の麗子、次女の咲也、末っ子の薫子、そして、家政婦のタカさん。

    そこに少年力(りき)が1人加わることで、女しかいなかった生活が一変する。

    力は誠が愛人との間にできた子どもで、愛人(=力の母)はなくなってしまっている。

    力は高見澤家の三姉妹にとって、母違いの兄妹ということになる。

    女たちの関心が、不穏な調子で力を中心に巡っていく。

    謙虚で、自分の立場が揺らがぬ様、肩身を狭くしている力。

    そんな力に対して、お前は同情で居候させてもらってるんだから、良い気になって調子に乗るなよと、嫌がらせをして、悔しがったり、惨めになったりする力を見て、恋心をくすぐっている咲也。

    母親を「お母様」と呼び、漫画のヒロインの様に振る舞うお嬢様気質の強い長女麗子。「〜ですわ」とか「〜ですの」とかを普通に言っちゃう子。

    天真爛漫で、活発、三姉妹の中では最も庶民寄りの末っ子薫子。自分よりも5つ上の力に興味津々で、犬の様にまとわりつく。そして、力とは犬仲間と称し、よく絡んでいる。

    物語は力が家にやってきた頃から始まり、その過程で、家庭内の女性たちが力を様々な立場で気にかけたり、嫌がらせをしたり、歪んだ接し方をする。

    しかし、年齢を重ねるにつれ、男子を無視できない年齢になってくると、三姉妹はそれぞれの視点や価値観で力に恋心を抱く様になる。

    それを力はのらりくらりとかわしつつ、3人に対して力なりの敬意を示している。

    読んでて全然おもしろくない、誰にも感情移入できない物語だった。

    力のことが好きなのかもしれんが、三姉妹それぞれの考え方や恋心を抱くまでの過程が、僕が思う「普通」とか「一般的に」から外れており、あたおかに映ってしまった。

    特に咲也が一番感じが悪い。

  • 致死量の耽美…
    女の黒い部分ではなく
    生々しい赤紫色の部分が
    これでもかと漂ってて大変よろしかった。
    それでいて昼ドラほど
    ドロドロしたものではなく…
    ちゃんと上手に下処理の施されたお話。

    なんにせよ
    良いお家の女の園を描くのが上手すぎる。

  • 裕福な家庭の3姉妹の元に突然現れた父の愛人の息子・力。
    力に魅了される3姉妹とその母。

    全く違う性格の女達が1人の男性に惹かれていく様子がそれぞれの視点から描かれている。
    これが恋だとは認めていないものの、詩に出会って恋だと気づく瞬間がこれまで読んだ恋愛小説とは違う感じだった。

    ラストは意外な結末で、予想外にキュンとできてよかった。

  • 姉妹三人
    それぞれが語り手
    憐れみ方、優しさ、恋の落ち方、
    物事の捉え方、残酷さ
    三者三様
    面白かった。
    リキの視点のストーリーも見てみたい
    とも一瞬思ったけれど、とても辛いなとも思い。。。
    最後は
    想像し難いが
    悲しみ苦しみ絶望、そしておそらくの喜びを
    自分なりの解釈で、涙がでました。

    山田詠美さん、初めて読みました。
    恋愛における、喜び、もやもや、悲しみ
    とてもよく言葉に乗せられていて
    するする読み進められました。
    他にも山田詠美作品、読んでみたいと思います。

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著者プロフィール

1959年東京都生まれ。85年「ベッドタイムアイズ」で文藝賞を受賞、作家デビュー。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、2001年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』『賢者の愛』『珠玉の短編』ほか著書多数。

「2025年 『Amy's Kitchen 山田詠美文学のレシピ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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