葬式組曲 (文春文庫 あ 78-2)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167919603

作品紹介・あらすじ

20代の女性社長・北条紫苑が率いる「北条葬儀社」。妙な関西弁を喋る餡子、寡黙で職人肌の高屋敷、生真面目すぎる新入社員の新実……癖の強い社員が目立つが、遺族からは「あの葬儀社は素晴らしい」と抜群の評価を得ている。なんと、彼らには故人が遺した“謎”を解明する意外な一面があったのだ。奇妙な遺言を残した父親、火葬を頑なに拒否する遺族、霊安室から忽然と消えた息子――。謎に充ちた葬儀の果てに、衝撃の結末が待ち受けるミステリー連作短編集。文春文庫化にあたり全面改稿。

感想・レビュー・書評

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  • 若き女社長が率いる「北条葬儀社」
    癖の強い社員たちが、故人様が遺した謎を解決していく。登場人物は変わらず、一つ一つのお話が独立している連作短編で、いわゆる、葬式ミステリーの作品です。私自身、葬式というものにあまり、接点は無かったのですが、この作品の中で、遺族たちの
    葬式に対する気持ちだとか、どうしたら、故人様たちに明るく葬式を送れるのかだとか、そういった葛藤なども感じれました。コロナ禍で葬式もあまりできない世の中で、心のこもった故人との別れをもっとさせてあげたいし、悔いの残らない最期をもっと、実現してほしいなと感じました。
    葬儀社の心の叫びみたいなものを感じてほしいです。

  • 故人との別れであるお葬式を舞台に葬儀社の面々が故人の遺した謎を解明していくミステリーです。

    他の方の感想でもありますが、最後が唐突すぎて驚きました。ちょっと無理を感じます。

    話自体は読みやすかったです。直葬という弔いを初めて知りました。式にこだわらなくてもいいんですね。

  • 27歳の女性が社長を務める葬儀会社が舞台の連作短編ミステリー。前書きと本編5話からなる。
             ◇
     葬式の不合理さや不透明さが問題視された結果、国の基本方針として直葬がスタンダードになった世界。
     だが、S県だけはその文化的側面を尊重した県知事によって葬式を執り行うことが認められていた。

         * * * * *

     というファンタジーじみた設定。
     でも実際に直葬が少しずつ増加してきているコロナ禍以降を見ると、荒唐無稽な話とも言えません。2012 年以前にこの作品を書き上げていた天祢涼さんはすごいと思いました。

     4話目まではS県の葬儀会社、北条葬儀社の社員3人が謎解きをしつつ、無事に葬儀を執り行うという展開。その謎解きも、北条葬儀社に依頼した遺族にまつわるトラブルで、刑事事件とは無縁のもの。
     同時に3人の社員( 新実、高屋敷、餡子 )の抱える事情が明かされていくのですが、ライトミステリーの部類なので気楽に読めていました。
     
     だから最終話で、真相が連続偽装殺人事件であり、犯人との緊迫した応酬が展開されるのには、予想していなかっただけに驚きました。
     そしてそういう目で読み返せば、それまでの各話にフィナーレのための伏線が巧妙に盛り込まれていたことに(やっと)気がつくのでした。

     ああ天祢涼さんに見事シテヤラれた!

     だけど、とても愉快で心地よいヤラれた感。
     天祢さんの作品を読むのはこの『葬式組曲』が2作目なのですが、どちらも「ムムッ」と思わせるところがあり、お気に入りの作家さんになりました。

  • お葬式にかかわるあれやこれやの謎についてのミステリー。死者を弔う儀式ではありますが、お葬式は生きている人が行うもの。人がいれば思惑もある。そんなお話。
    あとがきで作者も書いてるけど、最終話のあれはちょっと唐突だしやりすぎかな。ちょっともったいない感じもする。


  • 誠意のこもった故人のお葬式をお世話する
    事で評判の高い北条葬儀社。

    ご依頼を受けて執り行う葬儀の中で、
    少しずつ明らかになるそれぞれのご事情。

    別々に見えていたご葬儀が繋がった時、
    思いもよらない結末が待っていた。

    まさかの反則級ビックリラストでした。

  • 「葬式」をテーマにした連作短編集。収められた短編も全て「葬式」がテーマになっている。
    一つ一つの短編もさることながら結末に「なるほど」と唸った。やりすぎ感があるかもしれないが、構成はよく練り込まれているし、この仕掛けは簡単には見抜けない。

  • 新実ーーーー!!
    とりあえず叫びたくなる最後でした。いやこれもう餡子さんの格言もなにもかもすべてぶち壊しすぎです。遺族はどうすればいいのか。

  • どんでん返しのためのどんでん返しというか、かなり力任せの感じはある。でも、それまで故人と遺族の橋渡しとしての葬儀の話が続いたので、解説の狙い通りにかなり衝撃だった。ずっと不穏だったら粗に目がいくけど、そこまでのギャップでやられた。

  • 再読2回目。
    最終話、唐突やしやり過ぎ感あるけど、ぜんぜん想定してなかったから面白く読めたけどなぁ。それぞれの章がゆるく繋がって最後にズドンとくる感じ、わりと好きです。

  • 10年前に書かれた葬式を行わない国のなかで唯一葬儀のできる県の葬儀屋を舞台にした連絡短編を全面邂逅して二次文庫。
    コロナ後の世界。葬式を行わない直葬も日常の一コマになってしまった「今」に合わせた思い切った改変。
    葬式とはだれのためのものなのか、何のために行うものなのか、ということを考えさせられる連作ミステリ。
    それぞれのエピソードの中で家族の問題が浮き彫りにされていく。
    「え!?」と「うそ!!」と「まさか!」の三重奏を楽しんだ後の、最終章。最後まで気の抜けない一冊。

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著者プロフィール

1978年生まれ。メフィスト賞を受賞し、2010年『キョウカンカク』で講談社ノベルスからデビュー。近年は『希望が死んだ夜に』(文春文庫)、『あの子の殺人計画』(文藝春秋)と本格ミステリ的なトリックを駆使し社会的なテーマに取り組む作品を繰り出し、活躍の幅を広げている。

「2021年 『Ghost ぼくの初恋が消えるまで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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