木になった亜沙 (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2023年4月5日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (192ページ) / ISBN・EAN: 9784167920227

作品紹介・あらすじ

★今村夏子ワールド全開の衝撃作! 
 村田沙耶香の解説で文庫化

アパートで母親と暮らす亜沙。
友だちも、金魚も、家族でさえも
彼女の手からものを食べようとしない。
「お願い、食べて」
切なる願いから杉の木に転生した亜沙は、
わりばしとなり若者と出会った――(表題作)。

他者との繋がりを希求する魂を描く、
いびつで不穏で美しい作品集。
単行本未収録エッセイ3篇を増補。

〈目次〉
木になった亜沙
的になった七未
ある夜の思い出
ボーナス・エッセイ

解説・村田沙耶香

みんなの感想まとめ

他者との繋がりを求める亜沙の物語は、独特で幻想的な世界観を通じて描かれています。彼女は母親とアパートで暮らしながら、周囲の人々や家族から受け入れられない孤独感に悩んでいます。その切なる願いから木に転生...

感想・レビュー・書評

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  • ほんとうにタイトルのままの作品だった。
    つまり、木になった亜沙ちゃんの物語だったのだ。

    わたしの作ったものを食べて、と願う女の子、亜沙が主人公の表題作は、わずか42ページの短編。お昼休み中、ごちそうさまでした、をしてから読み始めても、お昼休み中に読み終わってしまった。世界観の独特さが、読んだことをずっと忘れさせない。そんな印象を抱かせる。午後の仕事に集中できない。

    その後に続く『的になった七未』も同じスタイルの作品で、わたしに当てて、と願う女の子七未が主人公の短編。こちらは『木になった亜沙』の倍以上ある、88ページにもわたる作品で、こちらは『木になった亜沙』よりも寓話のような要素が強く、浮かんでくる映像はマンガかアニメーションのようだった。わたしには寓話よりも、背景描写がしっかりしたコメディのように感じられる部分が強かったように思うのだけれど。

    いずれの作品も女の子が主人公で、この二人の女の子の人生がかなり壮絶というか悲しいというか悲惨で、寓話だったとしたらリアルだし、リアルだったとしたら寓話であってほしいと願うくらい、悲しかった。この子から相談を受けたら、どのように返してあげたらいいんだろう、と、仕事柄そんなことを考えながら読んで、途中からそんなことを考えながら読むことがもったいなくなって、没頭した。傷を描き、抉る。

    作品の最後には、作者である今村夏子さんの日記が収録されていて、この今村夏子さんという作家さんが普段何を考えているのか気になりまくっているわたしにはかなり嬉しいものだった。描かれているのはコロナ禍の子育ての様子で、その大変さはもちろんなのだけれど、どちらかというとわたしには今村さんの不器用さ(ごめんなさい)の方が強く伝わってきて、だけどそれがその人自身の等身大のリアルな生活なんだろうな、と思えてわたしは好きだ。

    木になったり的になったりする独特な作品、いや、ここはあえてこの言葉を使うと、”クレイジーな世界観の作品”の解説は村田沙耶香さん。もっともっとクレイジーな解説を求めていた自分がいた。

    帯にある「食べて、お願い。私の手から。」を見て浮かんでくるのは、マカロニえんぴつの『ブルーベリー・ナイツ』
    サビのラスト『誰でもいいよ、私を掬って、食べて』というその歌詞に含まれるもう一つの意味、『私を救って、食べて』。
    みんなも是非聴いてくれよな!!!

  • すごーく独特の世界観を満喫できました。不気味過ぎるのですが、なぜか引き込まれて一気読みでした。
    「むらさきスカートの女」に引き続き2作目に読んだ今村夏子さん作品。楽しめました。

  • 幻想的な世界感で人と上手く関われないのを独創的に描き、なんとも言えない面白さとほんわかな空気感で読む手を止められない、奇妙で不思議な物語 だった。

  • 表題作の「木になった亜沙」は、自分が手につけたものを、中々受け取ってくれないジレンマに、悩んでいる亜沙が、木になって、伐採され、割り箸になり、人に触れてもらい幸福を感じる作品な
    のですが、孤独感を感じる主人公が、木に転生することによって、触れられる人生を味わうという
    幸福感が、文章から感じれて良かったです。
    どこか不思議な目線が今村さんの作品の特徴だと
    私は感じていて、「奇妙」と「現実」の境界線を
    上手く作品に表現しているなと感じました。

  • 3話とも現実にはない世界 でも感じるものは伝わる。世の中の歪みが出ているし解決出来ないジレンマを言の葉にしてるのでは。外に出ないで15年、億劫で畳の上這いずり回る生活父親に追い出され夜の街を這いずり徘徊するジャックに出会い助けて貰う餌をあげるのぼるくん世話をするお母さんとジャックと子供を作る約束する夢か現実か。であまりにも切なくて、でも読み続ける。その後結婚して子供を作るのが救いかと、たくさんの賞を取る今村夏子さんを知ろうとしたけど届かなかった。こちらあみ子からずっと読んでも悲しくなるが先行してしまう自分はまだまだ未熟者

  • 今村夏子さんの本で一番好きなのは、むらさきのスカートの女です。
    それでものすごく今村夏子さんにハマって、色んな本を買いました。そのうちの1冊がこの「木になった亜沙」。

    木になった亜沙と的になった七未がわたしには印象的でした。切ないのだけど、救われる…。
    でも七未の方は救われたのか?七未からしたら救われたかもしれないけれど、読んでいるわたしたちからしたらバッドエンドのような気もします。噂のメリーバッドエンドというやつかもしれません。

    しかしこの不思議な世界観は今村夏子さんだからこそできる内容だと思います。本当に尊敬する…。
    エッセイも普通に良かったです。だめなのが更にだめになって…なんて書いてあるのを見て「あ…こんなにすごい作家さんでもそう思うことがあるんだ…」と思いました。

  • 疎外感は自分の中だけで肥大化する。すると無力感に襲われ、立ってることすら出来なくなる。ついに呼吸が乱れ、その苦しみの中に安息を求めてしまう。現実と妄想が混在したある夜、自分も転生してしまいそう。

  • 6冊目。
    今までは現実に地続きの寓話だったが、今回は寓話度数さらに高め。
    しかし確実に現実とつながっている寓話だ。
    分かってもらえないとか、自分が周囲をよくわからないとか、大きく言えば生きづらさという現実の感情が核にあるから、ファンタジーではなく切実に感じられる。
    それにしても今まではギリギリこちら側だったのに対し、今回はギリギリ向こう側に踏み出してしまった印象がある。
    今村さん、大丈夫だろうか(愚問)。

    ■木になった亜沙
    ■的になった七未
    ■ある夜の思い出
    ◆ボーナス・エッセイ3編(バイキング/日記とエッセイ/日記)
    ◇解説・村田沙耶香

  • 不思議な世界観。
    お話の展開がありえない設定だけど面白くて、次はどうなるんだろうと気になって読み進めていました。
    ちょっとゾワッとする感じが、なんとも言えない物語
    『むらさきのスカートの女』につづいて、この世界感にはまってしまいました。

  • 木になった亜沙 誰も自分の手から食べてくれない亜沙が杉の木に転生して割り箸になって、、
    的になった七未 色々投げつけられても全く当たらない七未が最後当てられると、、
    悲しくもあるけど淡々とした語りで話が進みそれが引き込まれます。
    ある夜の思い出 え?猫なの?人間なの?
    面白いけれど難しかったです。

  • どの話も突拍子も無いように思えるが、とても共感出来る感覚もあり何だか胸が苦しくなる。
    最後の村田沙耶香さんの解説が語彙力の無い私の言いたい事の全てだった。

  • 感想を書くのが難しい。

    衝撃的で奇妙で不思議な物語だった。
    次にどうなっていくのか気になってしまう作品だった。

  • 感想書くのが難しい。
    現実的な夢を見ているかのような話。
    自分が作った料理、よそった給食など誰も食べてくれず、最終的に割り箸になりようやく自分が手につけたものを食べてくれた話から始まり、残りの話も余韻を感じさせる本だった。

  • 以下、ネタバレ含みます。注意。




    自分の手に対する不信感がある。
    もう少し具体的に言うと、自分が作るものに対する不信感がある。
    それは、単に不器用というだけでは片付けられないような気がする。

    だから、亜沙の、手ずから渡したものを誰にも受け入れてもらえないことに対する、拒絶を感じる気持ちは、少し分かったりする。

    途中で、亜沙の手をきれいと言ってくれる先生に、好意を抱くシーンがある。(同じ構造は、的になった七未にも登場する)
    きれい、という言葉を、私は「何も出来ない」と言う風に受け取ってしまうと思う。

    伊藤亜紗の『手の倫理』を思い出した。(奇しくもアサ繋がりだな)
    触れることの、境界の侵食。

    亜沙の手は、誰とも繋がらない。
    感情が交わされない。
    支配的に扱っても、満たされない。

    そして最後に、木になりたいという、感情を削ぎ取ったような願いを抱くことが、切ない。
    (読んでいる最中は、あまりに突拍子のない展開に、思わず首を傾げた)

    小説は面白かったけれど、小説と同じ温度で書かれたエッセイを読んで、今村さんの生活ってどんなんなんだろう……と気になった。

  • 今村さんの作品は怖い。
    当たり前のように想像して読んでいるけれど、歪な世界が広がっている。
    これを普通じゃないと言ってしまうのが、良いか悪いのかもわからなくなってくる。
    世界が奇妙なものに見えているのではないか。
    読みやすくてサクサク内容が入ってくるのも怖いなと思ってしまう。

  • 彼女たちの切実な願いは純粋で、生きていくうちに変形し、歪になっていった__
    今村さんの作品はいつも私を新しい世界に触れさせようとする。なんか気味悪い、でも読みたいと気持ちが浮遊するから面白い。
    ボーナスエッセイと村田沙耶香さんの解説がまた良かったのです。

  • 不思議な。でも嫌いじゃない感覚。42ページでここまで深みのある濃厚な物語を作れる今村夏子さんがすごいと思う。
    本が苦手〜!と言う方にはおすすめできないかもしれない。なぜなら、内容が不思議すぎるから。物語がタイトルのまんまでいろんなことを考えてしまうから初心者向けでは無いと思う。
    そんな意味で星4ですね。それでも私は面白いと感じたので、読んでみてはどうでしょう?

    ※あくまでゆーかりの感想です。

  • なんとも不思議でそれでいて物悲しい世界観。
    でもまたその世界に浸りたくなる。

  • あらすじだけ聞くと随分変わっている主人公たちだと思うのに、読んでみるとなんとなくなんで彼らがそうしたのか、そう思ったのかわかる気がしてしまう不思議なお話を3つ+ショートエッセイが収録されています。



    『木になった亜沙』
    主人公は「自分の手から誰かに何かを食べてもらえない」経験がとても多くあります。
    例えば飼い犬やクラスで飼っている金魚や、給食当番でよそった皿や、食べたいと言われて差し出したお寿司を死ぬ間際の母親についに食べてもらえません。

    食べてもらえない描写の羅列がすごくしんどかったです。なぜなのか自分だけ周りと違う反応をされることってありますよね。私はペットカフェなどで友達の周りには動物が沢山寄ってくるのに自分のところには全然こないとか‥。
    そういう一瞬の出来事だから次の日には忘れているけど、またその瞬間に出会う時にはあーあまた自分だけかぁって募っていく寂しさを凝縮されているようでした。

    「ゴミ屋敷」になぜなるのか、人の数だけ理由があるのだとは思いますがこんな経緯もあるのかもしれないと切なくなりました。

    「逆です、きみの手は、きれいすぎる。」



    『的になった七未』
    こちらの主人公はドッジボールやどんぐり投げなどことごとく「投げられる」状況によく当たり、けれど周りの子が次々物を当てられていっても最後の最後まで自分だけは当てられない子です。そして当たれば終わることに気づき、当たりたいという願望が強くなります。 

    ラストの余韻がなかなか抜けきりません。
    ハッピーエンドなのかそうでないのか、でも七未は望み続けた「当たる」ことはできたのが救いかもしれません。



    『ある夜の思い出』
    こちらの主人公はしばらく無気力な時期があり、その頃は家から出ず、かつ立つのすら億劫で匍匐前進をよくしていました。そしてある日、自分と同じく匍匐前進している男の人に出逢います。

    本作のみラストで主人公が急激に「普通」になります。現在は子供もいるし〜パートもしているし〜と、匍匐前進の過去なんて聞いてみないと決して想像できなさそうなくらいの暮らしっぷりをしています。
    主人公は当時のことを思いつつも「外で働くことは、わたしが思っていたよりもずっと楽しかった。」としています。
    私には匍匐前進するほど気怠げ、という経験はありません。けれど、ただ「そういう状況」の時期が誰の人生にもあるのではないかと感じました。
    辛いのか、だとすれば何に追い詰められているのか、別に意味はないけど習慣になっているのか、理由なんてあってないのかもしれません。
    それでもそうなるしかなかった時期があって、それを経て拍子抜けするほど社会に自然に馴染んでいけることが私のこれからの人生でもきっと起こる気がしました。
    ずっと誰にも言ってこなかったとある白昼夢のような体験を、打ち明けられたような読後でした。

  • 「木になった亜沙」「的になった七未」「ある夜の思い出」の短編三作が入っている
    今村先生の本はどの本を読んでもなんというか『普通』という枠に収まらない話が多いけれど、この本は特にそれが顕著だと思う
    奇妙な哀しみを主人公たちに感じる
    表題作が一番よかった!
    難しい表現はないのに、所々難解だった…
    今村先生の本はなんだか分からないのにぐいぐい読みたくなるんだよな〜文章に吸引力がある

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著者プロフィール

1980年広島県生まれ。2010年「あたらしい娘」で第26回太宰治賞を受賞。「こちらあみ子」と改題、同作と新作中短編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で2011年に第24回三島由紀夫賞受賞。

「2016年 『あひる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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